「超人機メタルダー」第4話「魚雷アグミス対海軍少尉メタルダー」感想

2024年2月13日火曜日

感想 超人機メタルダー

t f B! P L

あらすじ

ヨロイ軍団・暴魂チューボ。戦闘ロボット軍団・暴魂トップガンダー。
機甲軍団・暴魂アグミス。手段を選ばぬモンスター軍団・雄闘ガマドーン。
ゴッドネロス4軍団精鋭の包囲網が、メタルダーに迫る。

自身の身体に託された願いを知り、超人機は「父」を知る

熾烈な戦いの中で、徐々に自らの力を使いこなし始めてきたメタルダー。
桐原は焦りを覚え、古賀博士がメタルダーにどれほどの力を与えたのかと戦慄する。
夜の闇に包まれ、ゴーストバンクに移動した桐原=ゴッドネロスを迎えたのは、ゴーストバンクの大広間に豪華な食材を多数揃えているネロス帝国軍団員の姿だった。
何事かと問うゴッドネロスに、クールギンたちは帝王ゴッドネロスの誕生日を祝う誕生パーティーを開こうと、軍団員総出で準備をしていたことを明かし、美しい女性たちを入場させると軍団員との社交ダンスを始めさせた。ゴッドネロスの玉座の前で整列して社交ダンスを見ている4人の凱聖たちがどことなくシュールなシーンだ。
初めは黙って見ていたゴッドネロスだったが、いつまで経っても終わりを見せない乱痴気騒ぎに流石に苛立つと、一喝して踊りを止めさせる。パーティーを中断させられて困惑するクールギンたちに、ゴッドネロスは自分を本当に喜ばせたいならメタルダーの首を持参せよ、と軍団員に発破をかける。その様子に軍団員も襟を正すのだった。
ゴッドネロスの誕生日を祝おうとするクールギンたちの姿は、本人たちは真剣にやっているがゆえの面白みがあるシーン。一方で、独裁者の機嫌を取るべく模索する配下たち、というのはどこか変なリアリティがある描写でもある。

ゴッドネロスはメタルダー抹殺のために、4軍団から精鋭を選出しメタルダーの行方を追うように軍団を率いる凱聖たちに指示を出す。クールギンはヨロイ軍団から暴魂チューボを、ゲルドリングはモンスター軍団から雄闘ガマドーンを選出する。
そして機甲軍団からドランガーが選びだしたのは、潜水艦の能力を持った暴魂アグミスだった。自身に野次を飛ばすムキムキマンとフーフーチュウをいともたやすく吹き飛ばし黙らせたアグミスは、全身が魚雷で出来ている自らの能力と、メタルダー抹殺の使命のためならばメタルダーごとの自爆も辞さない覚悟をゴッドネロスに示す。
最後に残った戦闘ロボット軍団からは、バルスキーが暴魂トップガンダーを呼び出した。
だが、トップガンダーはなかなか姿を現さない。戦いに美学を持つトップガンダーは、メタルダー一人に軍団員が何人もつるんで作戦行動を行うことを嫌い、そんな仕事はしないとバルスキーに反発するが、ゲルドリングに煽られ仕方なく他の三人と並び立つ。
選出された4人の軍団員は二人一組に別れ行動することに決まり、チューボはアグミスを相棒として使命。アグミスはその指名を、武芸に長けたチューボに相棒として選ばれたことを光栄に思うと喜び、二人の武人は結束を強くする。余ったガマドーンとトップガンダーが組むことになるが、ガマドーンの差し出す手をトップガンダーは跳ね除けるのだった。

この各軍団から精鋭が選び出されるシーンは、ネロス帝国軍団員の数多くのキャラクターが、通り一遍の悪役ではなく、それぞれの思惑を持って生きているキャラクターであることを明確に示した、「超人機メタルダー」ならではの見どころとなるシーンだ。
自らの命を犠牲にしてでも使命を果たさんとするアグミスと、その武人としての姿勢に感銘を受け、相棒として指名するチューボ。そんなチューボの勇名を知っているアグミスも相棒としての指名を喜び、敬意を持ってチューボに接する。
一方で、卑劣な手段を是とするモンスター軍団に所属するガマドーンと、メタルダー一人に多勢に無勢でかかることを良しとしない、戦いに独自の美学を持つトップガンダーは水と油。トップガンダーが戦いへの美学を持つ姿勢は、メタルダーと激突する次回へ向けての布石である。

シルバーカークスでは、暇を持て余したスプリンガーがモニターでアニメを見て楽しんでいた。前回のベンKとの戦いのダメージを修理した剣流星は、街へ繰り出す。
メタルチャージャーで街に向かった剣流星は舞と再会。剣流星の傷跡から、彼の身体が機械で出来ていることを知った舞だが、あれが本当に現実の出来事だったのか自分でも判断がつかない。
舞は剣流星に写真を撮らせてくれないかと頼むが、剣流星はそれに、自分が超人機だからか、と答えると、自身の体が機械で出来ていることを明かす。剣流星が本当にロボット人間であることを知った舞は、誰が剣流星を作ったのか尋ね、剣流星の口から古賀博士が超人機を作り上げたことを知る。古賀博士が日本で有名なロボット工学の博士であることを知っていた舞は、古賀博士のことを知りたいと願う剣流星の願いに応え、彼を図書館へ連れて行く。
剣流星は、舞が見つけてきた本から、古賀博士のことや、戦時中から現代に至るまでの知識を次々にインプットしていき、40年の空白を急速に埋めていく。その様子を見た舞は、剣流星が本当にロボット人間であることを確信する。
舞は、古賀博士の息子である古賀竜夫が、神風特攻隊としてその命を散らした海軍少尉であったことを剣流星に話す。剣流星は書物から、戦火によって苦しんだ人々の姿を知るのだった。
図書館を出た剣流星は、海が見たい、海の匂いを感じたいと舞に話す。
舞は、剣流星が海軍少尉だった古賀竜夫の性格を受け継いだことで、海を求めているのではないかと推測。剣流星を海に案内する。その様子を、密かに桐原の美人秘書が監視していた。

古賀博士の息子にして、古賀博士が剣流星の容姿・性格のモデルとした古賀竜夫は、旧日本軍の海軍少尉にして、特攻隊の一員としてその命を散らしていたことが判明する。
剣流星のモデルである古賀竜夫が特攻によってその命を散らしたという描写は、今まさにネロス帝国のアグミスが特攻による自爆で、自らの命をもってメタルダー抹殺を果たさんとする描写との対比だろう。特攻によって数多くの若き命そのものを武器として戦おうとしたことは、言うまでもなく日本の過ちである。ネロス帝国はアグミスが任務を果たすために命を散らせることを武人の栄誉と称え、いくらロボットとはいえ、命をメタルダーへの武器へと使おうとし、その過ちを現代で繰り返そうとしているのだ。ネロス帝国の行いは、誰かが決めた正義のために、いたずらに若い命を散らせた戦争の悲劇と同じことであり、だからこそ戦争の落し子として開発されながら、敵をも愛する大いなる愛を持って生まれた超人機メタルダーは、戦争の悲劇を繰り返させないために、ネロス帝国を否定しなくてはならないのだ。
そして、戦争の悲劇によって息子を失った古賀博士が、剣流星に息子の姿と性格、巨悪を砕く力と、その力を制御する自省回路によって敵をも愛す大いなる愛を与え、平和をもたらす使者となる願いを託したことに、生前の古賀博士が抱いていた平和への願いと、戦火に散った息子の魂の鎮魂を願う思いが強調される。「旧日本軍が生み出した最終兵器」という、現実の歴史と地続きの背景設定を持つ「超人機メタルダー」だからこそ描ける骨太のドラマ展開が圧巻だ。

ベンKがメタルダーに敗北した地に向かっていた4人の軍団員は、美人秘書からムキムキマンとフーフーチュウを通してメタルダーが海に向かった連絡を受け、ドライガンとダークガンギャリーに乗って海へ急行する。手柄の競い合いに燃える他の三人をよそに、トップガンダーは冷ややかな様子で距離を取る。集団でメタルダーを襲う作戦にまるでやる気を見せないトップガンダーを、メタルダーが恐いのかと煽るガマドーン。トップガンダーはそれを肯定すると、未知数の力を秘めた強敵であるメタルダーを恐れていると話す。これは、百発百中のヒットマンとして、常に正々堂々と標的と対峙してきたトップガンダーが、戦闘のプロとしてメタルダーが秘めたパワーを冷静に分析し、強敵と認識しているがゆえに恐れているという、トップガンダーのプロ意識の高さを演出するシーン。次回、メタルダーとの直接対決を迎えることになるトップガンダーが持つ力への期待感を否が応でも高めるシーンだ。
一方、そんな深謀遠慮を理解できないガマドーンは、恐いなら帰れとトップガンダーを追い返し、トップガンダーもそれに応え撤退を選択する。凱聖ゲルドリングへの遺言はないかと尋ねるトップガンダーに、ガマドーンは憤慨する。

メタルダーを待ち伏せる地点に到着したアグミスは海へ潜航し剣流星を監視する。
海に到着した剣流星は、戦闘マニュアルコンピューターの働きで、コンテナの影に隠れていたガマドーンの存在を察知、ガマドーンの襲撃で舞は気絶してしまう。
ガマドーンの触手に捕えられた剣流星は、強烈な電流に苦しみながらも感情を高め、メタルダーに瞬転し、レーザーアームの一閃で触手を切断する。
逃亡するガマドーンを追ったメタルダー。ゲーム「ロックマン」シリーズの悪役、Dr.ワイリーばりの土下座で許しを請うガマドーンは、誰が自分を狙っているのか、というメタルダーの問いに、ゴッドネロスという存在がメタルダーに軍団を差し向けていること、ゴッドネロスが自分のようなモンスターをバイオテクノロジーで作り上げていることをベラベラと喋ってしまう。ついに闘うべき相手の名を知ったメタルダーは、背後に暗殺者がいる、というガマドーンの嘘に動揺したところにガマドーンの一撃を受けてしまう。絵に書いたような卑劣漢だ。
「口八丁、手八丁、卑怯未練恥知らず」とモンスター軍団のスローガンを叫び、メタルダーを再び触手に捕え電流を流すガマドーン。その様子を、アグミスは海中から監視する。
抵抗が弱まっていくメタルダーの首を刎ねようと近づくガマドーンの一瞬の油断の隙を突き、メタルダーの戦闘マニュアルコンピューターがガマドーンの分析を始めた。
狙うべき神経中枢を捕捉したメタルダーは、パワー増幅回路を最大限にパワーアップさせ触手を切断し、拘束を脱出。戦いの舞台は巨大なコンテナ船上に移り、熾烈な格闘戦の果て、メタルダーはガマドーンの神経中枢を抉り出すと、海底に吹き飛ばして勝利を収める。
しかし、その戦いの様子を監視していたアグミスが、この機を逃すまいと特攻を開始した。
全身魚雷のアグミスの突撃でタンカー船は大爆発。脱出したメタルダーは爆風から舞を庇う。

ゴーストバンク。ネロス帝国軍団員は、回収されたアグミスの亡骸を前に、メタルダー抹殺という使命のために自爆し、志半ばに散ったアグミスの勇敢さと志を武人と称えていた。
一方、卑怯な手を使ったばかりか、ゴッドネロスの存在をメタルダーに教えてしまったガマドーンは、生還したものの軍団員たちから軽蔑される。
しかし、卑劣な行動を至上とするモンスター軍団・剴聖ゲルドリングは、ガマドーンが負けたのは卑劣な手段が足りなかったからだとし、より卑怯な存在への強化改造を決定するのだった。
一つの戦いが終わり、メタルダーは生き延びた。
剣流星は、古賀竜夫の姿と性格を受け継いだ自らの身体に古賀博士が託した願いを悟ると、古賀博士を父と呼び、生まれてきた意味を朧気ながら掴み始めたことを大空に報告する。
そして、自らを狙うゴッドネロスとは何者か、それを探ることが今の使命だと悟るのだった。
舞は、数奇な星の下に生まれ、人間と同じ感情を持つ剣流星に感銘を受けていた。

サブタイトルの通り、海軍少尉であり、特攻によってその命を散らした古賀竜夫の姿と性格を受け継ぎ、古賀博士から息子のかわりに平和の使者として生きる願いを託され生まれた剣流星と、特攻によって使命を果たし武人として散ったアグミスとの対比が描かれた回。
古賀博士が、戦争によって命を散らさなくてはならなかった息子の生まれ変わりとして、本来戦争のための道具になるはずだった超人機に息子の姿と性格を受け継がせ、「自省回路」によって敵をも愛し、誰かに利用されるのではなく自らの判断で守るべきものと抗うべきものを定める、大いなる愛を持った平和の使者として生きてほしいと願ったことが察せられる展開だ。
一方で、ゴッドネロスによって闘うための道具として作られた戦闘ロボット軍団や機甲軍団は誰かに既定された善悪の定義に従って命を散らしていることが、武人として死んだことで英雄と称えられるアグミスの姿で描かれており、それと対峙するメタルダーは、人と機械を超えた超人機として、誰かに既定された善悪の定義によって闘うのではなく、少しずつ自らの意志で守るべきもの、戦う相手を見定めていくことになる。
見方を変えれば、ネロス帝国軍団員は、戦争のための道具として、誰かが決めた戦う相手と戦いその命を散らした人々のカリカチュアライズであり、メタルダーはそんな、誰かが決めた正義のために人の命が失われていく戦争の悲劇を否定するために、古賀博士に言われたままゴッドネロスと闘うのではなく、自分で考え、戦う理由を見つけていかなければならないのだ。
古賀博士が自らに息子の姿を与えた意味、すなわち、誰かが決めた正義のために散った息子に、自分の意志のまま生きる第二の生を与えたかったという父の願いを悟り、剣流星は古賀博士を「父」と認識して、この回は幕を閉じる。

QooQ