「超人機メタルダー」第5話「耐える!百発百中のガンプレイ」感想

2024年2月16日金曜日

感想 超人機メタルダー

t f B! P L

あらすじ

帝王ゴッドネロスの世界制覇に欠かせぬ逸材で、VIP暗殺に命を懸ける必殺のガンマン・暴魂トップガンダー。勝利こそ正義、フェアプレーこそ殺しの美学というクールな殺し屋が、メタルダー抹殺の命を受ける。

忍耐力が勝負の分かれ目 孤高の戦士の重圧を耐え凌げ

春が訪れ、山々は緑に包まれたが、剣流星に休息の時はなかった。
ガマドーンとの戦いで、自らを狙う存在がゴッドネロスという名であることを知った剣流星は、シルバーカークスのコンピューターでゴッドネロスのことを調べるが、コンピューターにその名はインプットされていなかった。深まるゴッドネロスの謎に困惑する剣流星に、スプリンガーは旧日本海軍の短剣を手渡す。それは剣流星にとってもう一人の自分と言うべき、神風特攻隊の一員として戦死した古賀博士の息子・古賀竜夫の形見だった。

ゴーストバンクでは、ネロス帝国軍団員の乱痴気騒ぎが展開されていた。
前回のゴッドネロス誕生パーティーで用意していた料理を並べているようなので、せっかく準備した料理がもったいなかったようだ。そんな喧騒を物陰から眺めていた戦闘ロボット軍団・暴魂トップガンダーは、愛用の狙撃銃をぶっ放し、銃声を響かせて軍団員を黙らせる。
銃声を聞きつけ姿を現し、乱痴気騒ぎの有様に気づいたクールギンは馬鹿騒ぎを諫める。
銃声を響かせた犯人探しが始まると、トップガンダーは乱痴気騒ぎのあまりに見るに堪えない有様を呆れて撃ったと自ら名乗り出る。
前回、卑劣な性格でありながらも、なんだかんだ作戦をともにする相手とは上手くやろうと自ら声をかけたりはしていたガマドーンと馬が合わなかった描写と合わせ、トップガンダーが一匹狼タイプの性格であることを強調する展開だ。

ゴーストバンクに姿を現したゴッドネロスは、トップガンダーの優れた狙撃と暗殺の腕を高く評価しており、彼にメタルダー抹殺の任務を命ずる。
トップガンダーの狙撃の腕前は、凱聖であるバルスキーも高く評価するほどのものだった。
そこに、前回のガマドーンの失敗を挽回すべく、モンスター軍団・凱聖ゲルドリングが口を挟み、暴魂バンコーラを呼び出す。ゴーストバンクの掟の元、トップガンダーとバンコーラのメタルダー抹殺任務の権利を賭けた決闘が始まった。
狙撃銃を武器として持つトップガンダーは、特別な武器を持たないバンコーラに対等の条件として「一度自分のライフルを離れた場所に置き、それを先に取った方が勝ち」というルールでの決闘を提案。ゴッドネロスやバルスキーが認め一目置くほどの狙撃の腕前を持ちながら、それに頼らず狙撃銃を使わない対等の条件での決闘にも自信を覗かせるトップガンダーの底知れぬ実力と、対等の条件での決闘にこそ価値を見出す、独自の美学を持った姿勢が強調されていく。

睨み合いの末、しびれを切らしたバンコーラが伸縮自在の舌で狙撃銃を奪おうと動いた瞬間、それを察知したトップガンダーは素早い動きで狙撃銃の元へ跳躍。
そのまま手に取った銃を突きつけ、バンコーラに勝利しメタルダー抹殺任務の権利を得る。
ゴッドネロスはトップガンダーの腕前に満足し、もしトップガンダーがメタルダー抹殺任務に成功すれば、暴魂から豪将への出世を約束するのだった。
バンコーラとの決闘の描写や、後半のメタルダーの対決から見えてくるのは、トップガンダーの強みが忍耐力であることだ。直面した相手のプレッシャーに惑わされることなく、相手の隙をひたすらに待ち続け、しびれを切らした相手が動いた隙を見逃さずに狙い撃つ。狙撃手としても、直接対決を行う戦士としても、忍耐力によって隙のない立ち回りを行えることがトップガンダーの強みであり、彼を一級のヒットマンたらしめている。

ゴッドネロスの口から暴魂から豪将への出世という話が出たことに合わせ、ナレーションでネロス帝国4軍団の構成や、個々の戦士の役職の地位の順列が説明される。
ゴッドネロスのカリスマのもとに結集しているネロス帝国だが、決して一枚岩ではなくそれぞれの軍団がゴッドネロスの下で成り上がるためにしのぎを削っており、それが招く組織内の不和こそが、強大なネロス帝国の弱点としてメタルダーが付け入る隙であることは、第4話で4軍団から代表を選出したものの連携が取れずメタルダーを倒すに至らなかったことからも明らかだ。
そんな不和の象徴とばかりに、戦闘ロボット軍団だけにいい顔をさせまいとゲルドリングはモンスター軍団員に檄を飛ばす。モンスター軍団員たちはメタルダーだけでなくトップガンダーの首を取り、自分たちが豪将に出世しようと野望を燃やす。

愛犬であるマミーの散歩をしていた舞の前に、剣流星が顔を見せる。
マミーは内線が行われている中近東で特派員として派遣されていた舞の父親に保護され日本にやってきたセント・バーナード。日本語がわからず、自分の言うことを聞かないマミーが、剣流星に懐いていることに驚きを見せる舞。剣流星はマルチイヤーの働きで、マミーが内戦で住処を終われ、子供たちとも散り散りになって彷徨い、こうして平穏な日本に来た今も子供たちのことを思い悲しんでいることを感じ取り、舞にそれを伝える。
戦争の落し子として数奇な運命の元日本に来たマミーの姿に、剣流星は自らもまた戦争によって生み出された、戦うための兵器である出自を再認識させられる。

戦争の被害者であるマミーの哀しみを知り、戦争によって生み出された自らの出自を見つめ直す剣流星の描写は、後半、戦いを望むトップガンダーに自分は戦いを好まないと話す伏線だろう。
戦うための兵器として生み出されながらも、戦火によって若き命を散らした「もう一人の自分」である古賀竜夫の悲劇や、マミーの悲劇を知ったことで、戦いによってもたらされる犠牲の大きさを悟った剣流星は、戦いを忌避する自我を持つに至っていた。

トップガンダーはメタルダーの狙撃を行うために、剣流星が街とシルバーカークスを移動する際に通る道を見渡せる丘に簡易的な小屋を作ると、そこに潜伏して剣流星の到来を待った。だがトップガンダーは、岩陰で同じく剣流星を待ち伏せするモンスター軍団員の姿を感知する。
メタルチャージャーでシルバーカークスに帰還していた剣流星も、エレクトロアイの働きでモンスター軍団員の待ち伏せを感知。そこに銃声が響き渡った。
トップガンダーは仲間のモンスター軍団員を狙撃し、メタルダーと自分との戦いに手出しは無用と告げ、モンスター軍団員を撤退させる。剣流星は超遠距離からの正確無比な狙撃を容易く行うトップガンダーの実力を目の当たりにし、その腕前に戦慄する。

相変わらず暇を持て余していたスプリンガーは、シルバーカークスのモニターでまたアニメ鑑賞を楽しんでいた。「超電磁ロボ コン・バトラーV」の主役ロボット、コン・バトラーVの姿に喜ぶスプリンガー。ロボットだけあって、同じロボットが活躍するアニメがお好みのようだ。
そこに、なんとかシルバーカークスに帰還を果たした剣流星が帰ってくると、スプリンガーは自分とは別の犬の匂いを感じ取り、別の犬とイチャイチャするな、と軽口を叩く。
スプリンガーは剣流星より先に作られたこともあってか、古賀博士の手でシルバーカークス内に封印される前に豊かな感情を学んでいたようで、ずいぶんと人間的な言動を見せる。
シリアスなドラマが連続する「超人機メタルダー」序盤では、剣流星と舞との語らいのシーンと並んで息抜きとして楽しめるシーンだ。
そんなスプリンガーだが、敵が待ち伏せていることに戦慄する剣流星の姿に気を引き締める。

トップガンダーは、かつてゴッドネロスの命でVIP暗殺任務に就いた時に、最も信頼していた戦闘ロボット軍団員の裏切りにあったことを回想していた。
手柄を独占しようとしてトップガンダーを裏切った戦闘ロボットは、狙撃銃を地面に置くように要求、頭部を撃ち抜きトップガンダーを始末しようとしたが、トップガンダーはバンコーラとの決闘のように先に動いた相手の隙をつき、狙撃銃を奪回して生き延びたのである。
このことをきっかけにトップガンダーは誰も信じない一匹狼となり、それと同時に卑怯な行いを唾棄するようになった。勝つことこそが正義だが、その正義を守るためにはフェアプレーでなければならないという信念を持つに至ったトップガンダー。
信頼していた相手からの裏切りにより、トップガンダーは単なる殺し屋ロボットから、正々堂々とした戦いで得た勝利にこそ意味があるという戦いの美学を持つ戦士へと成長したのである。

仲間からの裏切りという苦難を味わいながら、その苦難をきっかけに成長したトップガンダーは、戦いの苦難の中で急速に自我を確立し成長していくメタルダーと、どこか似ている。
この2人が、直接対決を経てお互いを理解し、この後の戦いの中で無二の相棒となっていくのも、お互いに似ているがゆえに惹かれ合ったのだと言える。
あるいはトップガンダーは、偶発的にゴッドネロスが生み出してしまった、自らの行いを省みて成長する機械である「超人機」となって「しまった」存在なのかもしれない。

驚くべき執念と忍耐力、集中力でメタルダーの到来を待ち続けるトップガンダー。
シルバーカークスに隠れる剣流星に、トップガンダーは銃声を鳴らしプレッシャーをかける。
一方、ゴーストバンクでは、同じ軍団員であるモンスター軍団員に発砲したトップガンダーを糾弾する声が挙がっていた。しかしバルスキーは、モンスター軍団員が手柄を奪おうと独断専行していたことを逆に責める。すっとぼけるゲルドリングや、それでも軍機違反は軍機違反だと詰め寄るクールギンに、バルスキーはトップガンダーの実力や戦闘哲学を語る。
トップガンダーはゴッドネロスがゴルゴ13に似たヒットマンをインプットして作ったロボットだった。勘違いされがちだが、ゴッドネロスがインプットしたのはゴルゴ13そのものではなく、あくまでゴルゴ13に似たヒットマンなので「超人機メタルダー」の作中世界にゴルゴ13が実在の人物として存在しているわけではない。
だが、他作品の登場人物の名前を挙げて人となりを説明しているのが何処かユニークだ。
正々堂々とした戦いを好むトップガンダーの人となりを説明したバルスキーは、今回だけはトップガンダーの好きにさせてほしいと頭を下げる。部下の戦闘ロボット軍団員のためなら頭を下げることも辞さないバルスキーの姿は、ゴチャックの修理に自分が責任を持つとした描写と合わせ、いわゆる「理想の上司」とも言うべき人格者としての描写だ。
クールギンもバルスキーの気概に感じ入ったのか、トップガンダーの処分を保留にする。
だが、恥をかかされっぱなしのゲルドリングは、モンスター軍団の敵であるメタルダー抹殺のためには手段を選ばない意気込みを燃やす。

雨の中でもなお、集中力を切らさずにメタルダーを待ち続けるトップガンダー。
強敵であるメタルダーとの戦闘をシミュレートし、直接対決への準備を整える。
緊迫した空気の中、剣流星もトップガンダーの重圧に耐え続けるが、自らを誘い出さんとするトップガンダーの銃声に応え、ついにシルバーカークスを出ることを決意する。
しかし、剣流星は戦うのではなく、話し合う道を選ぼうとしていた。
一方、スプリンガーは戦いはしびれを切らしたほうが負けだと忠告する。
このスプリンガーの忠告からも、トップガンダーの強さは目的を果たすまで重圧に耐え続けることが出来る忍耐力であることが強調されている。

接近する剣流星を、トップガンダーは一時は照準に捉えながらも狙撃を中断。
トップガンダーは剣流星の前に姿を現し、ついに両者は直接対面を果たす。
メタルダーを獲物として狙うトップガンダーに、自分は戦いを好まないと告げる剣流星。
だが、自分たちはあくまでも戦う宿命にあるのだと剣流星の非戦の意志を聞き入れないトップガンダーは、対等な勝負を行うべく自分の武器が狙撃銃であると手の内を明かし、メタルダーにも同じように武器は何なのか、その手の内を問う。
その気になれば超遠距離からの狙撃で剣流星を破壊する事が出来たにも関わらず、自らの手の内を明かした上での正々堂々とした勝負を望むトップガンダーの戦いの美学が伺えるシーンだ。
争いを好まない自分に武器はないと答えた剣流星に、トップガンダーはバンコーラに挑んだ、かつての相棒との対決の構図の再現である「自分の狙撃銃を離れた場所に置き、先に手にした者が生殺与奪の権利を得る」というルールでの決闘を申し込む。
意を決した剣流星もついに決闘に臨む覚悟を決め、剣流星とトップガンダーの決闘が始まった。
一瞬の静寂の後、しびれを切らして先に動いたのは剣流星だった。
その隙をつき、トップガンダーが狙撃銃を手にする。銃声一閃。
死を覚悟した剣流星だったが、トップガンダーが狙ったのは、周囲に隠れ、メタルダー抹殺の機会を懲りずに狙っていたモンスター軍団員だった。興を削がれたトップガンダーは勝負を預けると、明日の夜明けに再度決着を着けると言い残し去っていく。
トップガンダーの実力を知った剣流星はシルバーカークスで戦慄する。
ふと目に留まった古賀竜夫の短剣を手にした剣流星は、トップガンダーに勝利するにはそれ以上のスピードで動き、隙をつくしかないと決意を固める。
一方で、トップガンダーも不吉な予感に襲われていた。かつて感じたことのない一抹の不安。
同じ成長する機械として、互角の実力を持つメタルダーとトップガンダーは、戦いの中でお互いを急速に理解し、相手の実力を恐れ、相手を乗り越えようと思索を重ねていた。

朝が来た。サイドファントムを駆り、決戦の場所へ向かうメタルダー。
トップガンダーもバイクを駆り、マシン同士の熾烈な戦いが展開される。
お互いがお互いの隙をつこうとする中、しびれを切らし先に動いたのはトップガンダーだった。狙撃銃にメタルダーを捉え、発砲するが、巻き起こる砂煙が晴れた時、サイドファントムのシートにメタルダーの姿はなかった。トップガンダーの動揺の隙をつき、サイドファントムが突進。
メタルダーはトップガンダーの放つプレッシャーにギリギリまで耐え、トップガンダーの発砲を誘うと車体の影に姿を隠し、トップガンダーの隙を作ったのだ。サイドファントムの体当たりで跳ね飛ばされたトップガンダーに、すかさずメタルダーは古賀竜夫の短剣を投げつけた。
短剣が命中し、右腕の機能を破壊されたトップガンダーは狙撃銃を手放してしまう。
これまで忍耐力で勝利を掴み取ってきたトップガンダーが、これまで出会ったことのないほどの強敵であるメタルダー相手に焦り、先にしびれを切らして敗北してしまうという、タイトル通りに「耐える」ことが勝敗を分ける要素となる展開だ。

狙撃銃を拾ったメタルダーに、トップガンダーは軍機違反を犯した以上、もはや自分はゴーストバンクに戻っても処刑を待つのみであることを告げると、狙撃銃で頭部を撃ち抜いて自分に誇り高き戦士としての死を与えてほしいと頼む。
しかしメタルダーは、死を望むトップガンダーに早く傷を直すように告げ、再び戦おうと思うならいつでも相手になると狙撃銃を置き、その場を立ち去った。
お互いの信念をぶつけ合った決闘の中で、トップガンダーの正々堂々とした戦士としての姿勢やフェアプレーの信念に共感したメタルダーは、トップガンダーを赦したのだ。
情けをかけられたトップガンダーは、メタルダーを恨むと叫んでメタルダーの背中に狙撃銃の銃口を向けるが、メタルダーを撃つことはついに出来なかった。だが、軍機違反を犯し、ゴッドネロスの期待を裏切ったトップガンダーの行く末は風前の灯だった。

メタルダーは正々堂々とした戦いを望むトップガンダーに誇り高き戦士の生きる道を学び、共感を覚えた。そしてトップガンダーは、敵をも赦すメタルダーの大いなる愛に未だ言語化出来ないなれど何かを感じ取り、戦士として堂々と死ぬことを栄誉と捉えないようになっていく。
トップガンダーが所属していたネロス帝国は、前回、特攻して死んだアグミスを戦士の栄誉として称える、誇りのために死ぬことを肯とする組織であり、トップガンダーもその生き方を選ぼうとしていた。しかし、メタルダーの大いなる愛に触れ、戦士としては死に損なったトップガンダーはこの後、ネロス帝国の在り方を否定する生き方を選ぶことになる。
メタルダーはマミーとの出会いで自覚したように、戦争の落し子として戦うために作られた機械である。しかし、古賀博士の願いで自省回路を搭載したことで、戦うために作られた機械でありながら、自ら考え自らの行いを省みることで良く生きようと願う愛を手にするに至った。古賀博士からメタルダーに託された平和への願いと愛こそが、他者に戦いを強制するネロス帝国の在り方を否定し、ネロス帝国を瓦解させていくことになる。
敵をも赦す大いなる愛こそが戦いを終わらせる道であるというテーマは、「超人機メタルダー」序盤に通底したメッセージ性として重厚なドラマを展開していくのだった。

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