あらすじ
ヨロイ軍団・雄闘バーロック。古賀博士の足跡を追うメタルダーがその果てに見たものは…。
裏切り、怒り、死の制裁。
烈風吹きすさぶ荒野に、メタルダーとバーロックの息もつかせぬ戦闘が展開する。
自らの卑劣さへの悔恨 戦士は堂々たる最期を選ぶ
今回はヨロイ軍団の雄闘バーロックがメタルダーに挑戦する。
正々堂々とした戦いを望む彼の過去を掘り下げ、卑劣な手段を使ってライバルを死に追いやってしまった負け犬の人生を脱しようと藻掻くバーロックの姿が見どころだ。
メタルダー抹殺を目論むゴッドネロスは、ゴチャックやガマドーンといった、かつてメタルダーに破れた軍団員を再生させると、それらの戦力を加えた4軍団合同の大規模演習を行い、さらに精強なる軍団作りを目指していた。
数多くのキャラクターが登場しているからこそ、悪の軍団の訓練風景というシーンを映像となって演出することに成功した「超人機メタルダー」ならではのシーンで、ネロス帝国4軍団の軍隊としてのイメージを鮮明に演出することに成功しているシーンだ。
再生を遂げたガマドーンやゴチャックを激励する剴聖たち。ネロス帝国が包囲陣形からの集中砲火で標的を狙い撃つ演習が行っていることも、後半の伏線として挿入されている描写だ。
一方、ゴーストバンクでは、演習に参加できない下級の軍団員たちが、暇つぶしとして賭け事に興じていた。モンスター軍団の中でも最下級に属する軽闘士ヘドグロスは、自身との腕相撲に掛け金をかけるギャンブルを開いており、そこにヨロイ軍団の中闘士ムキムキマンとフーフーチュウがやってきた。ムキムキマンは腕相撲に勝利するが、負けたヘドグロスは掛け金を払おうとしない。ムキムキマンとフーフーチュウは二人がかりでヘドグロスを責め立てる。
ヘドグロスは、次回以降数話に渡って展開される「モンスター」三部作のキーマンとなるキャラクター。彼が演習に参加できず、つまらないギャンブルで金を巻き上げるような最下級の戦士である描写は、そんな彼が「夢」のため孤立無援の状況で命を懸ける次回への伏線となっている。
そんな下級軍団員を、演習から戻ってきたクールギンが咎めた。
ゲルドリングは、ヨロイ軍団のムキムキマンとフーフーチュウが自分の率いるモンスター軍団員に喧嘩を売ってきたとクールギンに因縁をつけるが、そこに鉄仮面の男が現れ、ヘドグロスが先に諍いを起こしたと進言する。鉄仮面の男はヨロイ軍団の雄闘バーロックだった。
恥をかかされたゲルドリングはどっちが悪いか勝負で決着をつけようとクールギンに迫る。
そこに姿を現したゴッドネロスもその勝負を見てみたいと興味を示し、バーロックとヘドグロスの戦いが始まった。バーロックは鎖鎌でヘドグロスを痛めつけ、ヘドグロスがスライムとなって逃げ出そうとしたところに鎖鎌から放電、電気ショックで実体化させ勝負をつけた。
ゴッドネロスはその戦いぶりを評価し、メタルダー抹殺任務をバーロックに与える。
ゴッドネロスは、メタルダーが古賀博士の足跡を辿ろうとすれば、電子工学研究所の太田博士の元を尋ねるであろうことを予期し、そこで待ち伏せるように命じた。
ここのところ恥をかかされっぱなしのゲルドリングは怒り心頭で、バーロックを出し抜きモンスター軍団が手柄を立てるようにヘドグロスに命じる。
剣流星は舞と待ち合わせをしていた。舞は古賀博士が電子工学研究所に寄稿した論文を見つけ、電子工学研究所の太田博士が古賀博士の助手として親交があったことを剣流星に教えると、古賀博士の足跡を辿るために太田博士の元を尋ねることを勧める。
こうして電子工学研究所の太田博士を尋ねた剣流星。
太田博士は、古賀博士が超人機開発を始めた初期に助手として研究に関わったが、戦争に動員されたことでその完成までは携われなかったのだという。
剣流星は、古賀博士がゴッドネロスについて話していなかったか尋ねるが、ネロスという言葉については太田博士も聞いたことはなかった。その代わりに、所有している資料に当時の超人機開発の記録と、携わった研究員の写真を見せてもらえることになる。
電子工学研究所に現れたヘドグロスはスライム化し、研究所内部に潜入。
資料を探していた太田博士を捕らえ拉致してしまう。異変を察知した剣流星も一足遅く、太田博士はゴーストバンクに連れ去られてしまった。ヘドグロスはドライガンで逃走、剣流星もメタルチャージャーで追跡するが、待ち伏せしていたモンスター軍団員に奇襲を受けてしまう。
メタルダーへ瞬転したが3対1の不利な戦いに苦戦する中、バーロックが姿を現した。
バーロックは汚い手を使うモンスター軍団員の姿勢を唾棄し、ヘドグロスたちを蹴散らす。
ヘドグロスたちは軍団長への告げ口を宣言しながら撤退する。
バーロックは太田博士の身柄を引き渡す代わりに、互角の条件での勝負をメタルダーに申し込むと、メタルダーに傷を直す時間を与えるため、勝負を3日後に預け撤退する。メタルダーはモンスター軍団員を一瞬で蹴散らしたバーロックの凄まじい実力を感じ取っていた。
「口八丁、手八丁、卑怯未練恥知らず」がスローガンのモンスター軍団員らしく、囮で誘き寄せてからの奇襲、そして3対1の有利な条件で戦うヘドグロスたちは、正々堂々とした勝負に拘るバーロックの戦士としての姿勢と対象的に描かれ、バーロックの性格をより印象づける効果を上げている。そして、そんな卑怯な手段を厭わないヘドグロスが、卑怯な手段を厭わずに手柄を上げ出世を願う理由が描かれる次回へ向けた伏線だ。
バーロックがヘドグロスの手から太田博士を奪回していた頃、剣流星はシルバーカークスに戻りスプリンガーに修理を受けていた。修理した腕が前より調子が悪くなったみたいだと感じる剣流星に、スプリンガーはそんなわけがない、もっと思い切り動かせとアドバイス。
それを真に受けた剣流星が全力で腕を伸ばすと、勢い余ってスプリンガーにパンチがヒットしてしまう。犬をいじめてはいけない。早とちりな剣流星を諫めるスプリンガー。
あまりに不甲斐ない部下ばかりで、恥をかかされ続けるゲルドリングは、なんとしてもバーロックがメタルダーを倒す前に手柄を奪い取れとヘドグロスたちに命令。
3日後、メタルダーは約束の場所でバーロックを待っていた。メタルダーの直感はバーロックの恐るべきパワーを見抜いていた。凄まじい戦いの時が、刻一刻と近づく。
約束の場所に到着したバーロックは、眠っている太田博士を引き渡す。バーロックが信頼に足る戦士であると理解したメタルダーは、決着をつける覚悟を決め、バーロックとの決闘に臨む。
岩をも粉砕するバーロックの鎖鎌の威力。回避に徹さざるを得ないメタルダーは、隙を突かれて鎖鎌に絡め取られてしまい、電気ショック攻撃を受ける。
バーロックが決着をつけようとしたその時、モンスター軍団員が現れ砲撃を開始した。
メタルダーはとっさにバーロックを庇い、集中砲火から脱出する。
太田博士を奪還したモンスター軍団員。ゲルドリングはバーロックがネロス帝国を裏切り、メタルダーと共に脱出したとゴッドネロスに報告する。バーロックの人となりを知るクールギンはバーロックのネロス帝国への忠誠心を訴えるが、堂々とした勝負に拘るバーロックが太田博士をメタルダーに引き渡そうとするはずと考えたゲルドリングは太田博士を餌にした罠を仕掛けることを提案。ゴッドネロスもそれを承諾する。
砲撃から脱出した剣流星とバーロック。二人の戦士は焚き火を囲み一時の休息を取る。
メタルダーを倒すためなら仲間が何人犠牲になっても構わないネロス帝国の流儀を唾棄しながら、そのネロス帝国に従うバーロックの真意を問う剣流星。
バーロックは自分を負け犬と卑下すると、忌まわしき過去を剣流星に明かす。
バーロックはかつて、十種競技の選手としてオリンピックを目指していたアスリートだった。オリンピック出場をかけた大会で、どうしても勝てないライバルにドーピングの濡れ衣をかけ失格に追い込みオリンピック選手の座を勝ち取ったものの、その後失格者として追放されたライバルは、自ら命を絶ったのだ。実力で勝てず、卑劣な手段に走っただけでなく、将来あるライバルの命をも奪った自分の卑劣さを恥じ、自分を蔑む生活を送る中で裏社会へと消え、そこでネロス帝国に拾われたバーロックは、自分の腕こそネロス帝国に売ったが、もう二度と卑劣な手段を使うことなく、正々堂々とした手段で宿敵に勝利することを心情として生きてきた。
自責の念と、卑劣な自分への怒りを抱えた戦士は、裏社会で生きていくしかなかったのだ。
メタルダーという宿敵と今度こそ正々堂々とした手段を全うして戦うことだけが、今のバーロックにとって生きる意味。バーロックは太田博士をネロス帝国から奪回し、メタルダーと互角の条件で堂々とした勝負を行う約束を果たすためにゴーストバンクへの侵入を決意する。
正々堂々とした信条を持つ戦士が卑劣な悪の軍団に与する理由付けとして描かれた、過去に卑劣な行いを行った自分を恥じ、表社会で生きることを肯としなかったというバーロックの過去は非常に納得感があるものだ。かつてオリンピック選手に選出されるほどの実力者という設定も、メタルダーと互角に戦う信頼能力の持ち主として説得力のある設定。
バーロックは太田博士を奪回するが、それはゲルドリングの罠だった。
バーロックの裏切りが真実と判断したゴッドネロスは、バーロックの粛清を決定。
もはやクールギンの弁解も届くことなく、ヨロイ軍団を除く3軍団による包囲を命ずる。
冒頭で行われていた包囲陣形からの集中砲火の演習はこの展開の伏線だったというわけだ。
嘲笑うゲルドリングの罵声を背中で聞きながら、自身の信念の元に堂々たる最期を選ぼうとしたバーロックを喪わざるを得ないことを惜しむクールギン。
メタルダーは、ひたすらにバーロックを信じ、待ち続けた。
途方もない時間が過ぎた後、太田博士を奪回しゴーストバンクを脱出したバーロックがやってくる。今度こそ、互角の条件での堂々たる勝負。
メタルダーは再びバーロックの鎖鎌に捕らえられ、電気ショックに苦しみながらも、落ちていた鎖をバーロックに投げ、電気ショックをバーロックに逆流させる。
どちらが先に電気ショックに耐えられず倒れるか、我慢の勝負。勝ったのはメタルダーだった。
バーロックの背負った発電装置が電気ショックに耐えられず破壊された隙を付き、メタルダーはGキックからレーザーアームを発動し、バーロックの鉄仮面を真っ二つにする。
バーロックは、メタルダーがレーザーアームを途中で止め、卑劣な過去を恥じ素顔を隠して生きるために被った鉄仮面のみを破壊して、自分を過去の呪縛から開放してくれたのだと悟る。
メタルダーという宿敵と堂々たる勝負を出来たことを本望と語るバーロック。
そこに、ネロス帝国の包囲網が迫ってきた。
バーロックは自分がネロス帝国を引き付けると、メタルダーと太田博士を脱出させる。
ネロス帝国の砲撃が、バーロックに直撃した。バーロックは、メタルダーとの堂々たる勝負を成し遂げた自分は生まれ変わった、もう負け犬ではないと叫び、その命を散らせる。
脱出したメタルダーは、自らに堂々と挑んだ宿敵に別れを告げる。「さらば、バーロック」。
バーロックの鉄仮面は、卑劣な自分の過去を恥じ素顔を晒すことを忌避する、過去の呪縛の象徴だった。メタルダーがレーザーアームを手加減し鉄仮面のみを断ち割ったのは、堂々たる勝負に臨んだバーロックを戦士として認め、過去の呪縛から解き放つ行為にほかならない。
だからこそバーロックは最期に自分はもう負け犬ではないと叫び、堂々と散ったのだ。
トップガンダーとの戦いで「戦士の美学」を知ったメタルダーは、あくまでも堂々と自らに挑むバーロックにもまた「戦士の美学」を感じ、過去の卑劣な行いの呪縛に苦しむバーロックの魂を開放したのである。本望を遂げ、自らを倒し正々堂々とした戦士と認めた相手を救うために命を散らしたバーロックの姿に、メタルダーは誇り高き戦士の生き様を胸に刻むのだった。