あらすじ
撮影所で行われるミニカーレースに、マサルが出場することになった。
京介とマリア、ケイコが同行する。そんななか、ミニカーレースを邪魔しようとするエゴスが、映画のセットを使ってバトルフィーバー隊を襲う。
夢と現実が交差する、撮影所は怪奇魔境
現実と非現実が交錯する映画の撮影所を舞台に、変幻自在の怪奇魔境に迷い込んでしまうバトルフィーバー隊の戦いを描いたエピソード。
フランスを主役に、ケイコと前回よりメンバーに加わったマリアをメインに展開する。
映画撮影所の虚実が入り交じる空間というのは怪奇性を演出する舞台として格好の舞台ということもあり、今回のエピソードを執筆した上原正三氏は後に「宇宙刑事ギャバン」でも撮影所を舞台にしたエピソードである「恨みのロードショー 撮影所は魔空空間」を執筆している。
東城大泉映画撮影所では、全国青少年スポーツクラブ主催の少年ミニカーレースが開催されていた。優勝した子供にはミニスーパーカーが贈られるこの大会に、バトルフィーバー隊の連絡員、ケイコの妹のマサルも参加。フランスとマリアはケイコとともに撮影所に同行していた。
フランスはスタートを待つマサルにカーレースの極意を教えていたが、撮影所に姿を見せた人気女優、栗原小百合を見つけると、サインを貰いに行ってしまう。
栗原小百合を演じたのは、「秘密戦隊ゴレンジャー」でペギー松山=モモレンジャーを演じ、「バトルフィーバーJ」でもダイアン・マーチンの吹き替えや前半におけるミスアメリカのスーツアクターを担当していた小牧リサ氏。「バトルフィーバーJ」ではダイアンの退場に伴い、今回の栗原小百合としてのゲスト出演が最後の出演となっている。
Tシャツにサインをしてもらったフランスは幸せいっぱいの笑顔を見せ、笑顔を見せた小百合の神対応なファンサービスを受けて彼女は僕に一目惚れと有頂天。
そんなフランスに呆れるケイコ隊員。女性にめっぽう弱いフランスの性格がよく出たシーンだ。
一方、撮影所には少年ミニカーレースを主催した夢野会長が姿を見せる。
その様子を、エゴスの面々がモニターを通して見ていた。サタンエゴスは、少年ミニカーレースを通して子供たちの健康な肉体とルールを守る健全な心を育成しようとする夢野会長の権威を失墜させ、子供たちの健全な成長を妨げるために少年ミニカーレースを中止に追い込もうと計画し、サタンエゴスの御子である魔術怪人とサロメを撮影所へ向かわせる。
エゴスは金の卵作戦などにも見られるように、社会の未来を担う子供たちの心を堕落させることで人間社会の混乱を目論むのが基本戦略。
それゆえに、ミニカーレースを通して子供たちの健全な精神を養おうとする夢野会長の存在が目の上のたんこぶだったのだと思われる。
バトルフィーバー隊の基地では、ケニアがマムシの蒲焼を焼き、他の隊員に勧めては嫌がられていた。一時の平穏な時間が流れる中、撮影所ではミニカーレースがついにスタート。
サロメはスタートを確認するとカメラで子供たちの姿を写し、カットマンが変装した男に命じてコース進路の標識を逆方向に変えさせる。
レース1周目はフランスのアドバイスの甲斐もあってかマサルが一位通過したが、2周目に入った子供たちは逆方向に変わった標識に従ってしまい、間違ったコースに入ったまま何処かに姿を消してしまった。目的を果たしたサロメは標識を元に戻させ証拠を隠滅する。
いつまで経っても戻ってこない子供たちに会場はざわつく。子供たちの親は夢野会長を問い詰める。夢野会長も困り果ててしまい警察を呼ぼうとするが、子供たちが揃って姿を消した異常事態にエゴスの影を感じたフランスとマリアはバトルフィーバー隊の身分を明かし、騒ぎ立てればかえってまずいことになると自分たちが調査を請け負う。その様子を見ていたサロメは魔術怪人にバトルフィーバーが調査を開始したことを伝え、魔術怪人は子供たちだけでなくバトルフィーバーも怪奇魔境に引きずり込もうと画策し、栗原小百合に姿を変えた。
魔術怪人が使う「引きずり込む」というフレーズが、後の「宇宙刑事ギャバン」の「魔空空間に引きずり込め」というワードにつながるものを感じさせて楽しい。
撮影所を捜索していたフランスは、助けを求める栗原小百合の悲鳴を聞きつける。
小百合を追う男たちをコテンパンにしたフランスだが、それは映画の撮影だった。
監督に怒られたフランスを、今度は車が襲う。さらに車内から男が機関銃を構えてきた。
また映画の撮影かと余裕を見せたフランスを、機関銃の銃弾が襲う。穴だらけになったドラム缶にただ事でない事態を察知したフランスは変身して車を追うが、追いかけた先でまた映画の撮影の邪魔をしてしまう。魔術怪人が小百合に化けたことを知っている視聴者からすると、フランスが助けた小百合が魔術怪人の変装ではないかと気が気でない展開。虚実が入り交じる撮影所という舞台を活かし、撮影隊に化けてフランスたちを幻惑するエゴスの陰謀が巧みな回だ。
マリア、ケイコと合流したフランスは自分が襲われた場所へ戻るが、機関銃で穴だらけになったはずのドラム缶も元通りになっていた。狐につままれるフランスたちは、レースを続けている子供たちの姿を目撃し後を追う。誰かが入った後のように開いているドアに入り、撮影所の奥へ潜入していったフランスたちは、列車の車内を模したセットに辿り着く。
そこに突然明かりが灯ると、まるで本物の列車の車内のようにセットが動き出した。
窓から映る景色も外を走っているように見える。
混乱するフランスたちは列車の車内から脱出するが、外から見るとそれはセットのままだった。
セットが突然本物のように動き始める怪奇現象も撮影所という舞台を活かした秀逸なパニック描写。やはり後の「宇宙刑事ギャバン」の魔空空間のような不条理さすら感じさせる。
マリアたちからの連絡を受け、基地で待機していたジャパンたちも撮影所に向かった。
そこに、魔術怪人が化けた小百合が声をかけてくる。子供たちを助けるのに協力すると申し出てきた小百合に鼻の下を伸ばすフランスは、マリアとケイコを置いて2人で行ってしまった。
デレデレのフランスは、小百合の案内で長い間使われていないステージに作られていた「番町皿屋敷」用の廃墟のセットへ辿り着く。そこにあった井戸のセットの底から助けを求めるマサルの声を聞いたフランスは、正体を表した魔術怪人に背後から井戸の底へと突き落とされてしまう。
ジャパンたちと合流したマリアとケイコは、撮影を続ける本物の小百合にフランスの行方を尋ねるが、当然小百合は何も知らなかった。
何度も撮影を邪魔するバトルフィーバー隊に監督の怒りが爆発してしまう。
調査を進める中で、フランスの助けを求める声を聞きつけたケニアとマリア、ケイコは、フランスが姿を消した番町皿屋敷のセットに辿り着く。
お化けが怖くてバトルフィーバーが務まるかと勇敢な様子を見せるケニアだが、井戸から幽霊の人形が飛び出してきて大いにビビる。女の幽霊は苦手なんだ、と言い訳する姿がユニークだ。
しかし、井戸の中に幽霊の人形が隠れたかと思うと、入れ替わりに江戸の町民の扮装に着替えさせられたフランスが姿を現した。水をたらふく飲まされ気絶していたフランスだが、何とか息を吹き返す。すると今度は、幽霊姿の小百合が人魂とともに姿を現す。
次から次に起こる怪奇現象に翻弄されるバトルフィーバーだが、そこに駆けつけたジャパンとケニアが幽霊姿の小百合の正体はエゴスの魔術怪人であると看破。
エゴスだと見破られた魔術怪人は正体を現すと、魔術の力で番町皿屋敷のセットから城下町を模した異次元空間に移動。バトルフィーバーも変身し異次元空間に乗り込む。
魔術怪人はレースを続ける子供たちの姿を投影し、救出に向かったバトルフィーバーを城の中におびき寄せる。すると、城が炎に包まれた。炎上する城の奥へと進んでいく子供たちを助けようと後を追うフランスを、ジャパンが静止する。これはエゴスの罠であると看破したジャパンは、城の奥で映写機が回っていることを発見。
はっきりとした説明はないが、冒頭にサロメがレースを始めた子供たちをカメラで撮影した映像を使い、魔術怪人の魔術で強化した映写機で子供たちの姿を投影し各地で子供たちの姿を見せることでバトルフィーバーを幻惑させていたようだ。しかし、周囲を包む炎は本物。
窮地に陥ったバトルフィーバーは意を決したジェットオンで炎を強行突破して脱出に成功する。
いよいよ魔術怪人を追い詰めたかに見えたバトルフィーバーだったが、魔術怪人の念力で身体を操られてしまい、全く接近することが出来ない。しかし、一瞬の隙にジャパンが投げた槍が魔術怪人の杖を払い落とし、念力を封じたところにペンタフォースを炸裂させ、勝利を収める。
怪奇魔境と化した撮影所の異変に翻弄されるバトルフィーバーたちに尺が割かれた分、今回は悪魔ロボットとバトルフィーバーロボの巨大戦はなし。
魔術怪人の念力は強いが、杖があっての能力だったことがバトルフィーバーには幸いだった。
子供たちも無事に開放され、平和が戻る。
日を改めて少年ミニカーレースが再開催された。
子供たちの健全な成長を願う大人たちの願いを乗せ、レースが始まる。
そこに、本物の小百合が顔を見せ、子供たちの失踪事件を見事に解決したフランスのファンになったと、今度は逆にフランスのサインを貰いにやってきた。
しかし、偽物の小百合にひどい目にあわされたフランスは小百合のことがすっかりトラウマになり、レースに紛れて逃げ去ってしまうのだった。
女性に弱い伊達男であるフランスが、そこをつけこまれ災難にあう回。
撮影所のセットに入り込めばそこは別世界という、虚実が入り交じる舞台を活かした魔術怪人の怪奇魔境発生能力が映像的な見どころで、やはり後の魔空空間を思わせる。