「バトルフィーバーJ」第20話「危険な幽霊狩り」感想

2024年2月7日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

女子大の寮に幽霊が出現するという噂が流れていた。
そんななか、四郎は学生から幽霊を捕まえてほしいと頼まれる。そこに謙作も加わった。
しかし、女子寮には男は入れないということで2人は女装し...。

バトルフィーバー隊・女子寮潜入大作戦

深夜の城南大学女子寮に、不気味な足音が響いた。女子大生たちは足音に怯え、幽霊でないかと恐怖に怯える。しかしそれは、見回りの先生の足音だった…。
という、古今東西の怪談物の前フリとしてお約束の肩透かし、幽霊の正体見たり枯れ尾花展開からこの回の物語は幕を開ける。夜が明け、ケイコの友人である女子大生たちは、ケイコの紹介を受けたケニアに女子寮を騒がす幽霊騒ぎの相談をしていた。
幽霊なんているわけない、と妙にリアリストな一面を見せるケニアに、女子大生たちは3日前に恵美という女子大生が寮で飛び降り自殺をして以来、夜中の寮に人の足音が響き、誰かが部屋を荒らし回っていることを伝える。3日前に自分たちが住んでいる寮でそんなショッキングな事件が起こった割には、なんだか落ち着いている部類の女子大生たちだが、さすがに幽霊に家探しされたのでは黙っていられなかったようだ。
それでも幽霊を信じておらず、女子大生に興味ない?となんだか危ない提案をされても乗り気でなかったケニアと女子大生の会話に、いつから話を聞いていたのやら、女子大生に興味津々のコサックが割り込んできた。女子大生に一口のってくれるか頼まれたコサックは、ニヤけた顔を引き締めて、女子寮の幽霊騒ぎの調査に繰り出す決心をする。

一方その頃、噂の女子寮ではどう見ても厳つい男性が女装をしたような不審な人物が、掃除をするフリをしながら部屋の机を勝手に開けていた。それを見つけた先生は、ここのところの部屋荒らしの犯人として彼…彼女を寮から追い出す。果たしてそんな不審な掃除婦は、エゴス怪人のギザ歯怪人だった。サロメはそんな姿にしか化けられないなら仕方がないと、今度は自分が女子寮に潜入することを目論む。
ヘッダー指揮官がサタンエゴスの子であるエゴス怪人を御子として奉るのとは対象的に、そんなエゴス本部と関わりがなく、サタンエゴスもその存在を知らなかったアメリカ支部から来たサロメはそんな上下関係など知ったことかと、エゴス怪人に対しても当たりがキツイ。
今回のエゴス怪人はギザ歯怪人。明確にこの生物がモチーフ、というわけではなく、「ギザ歯」という概念のカリカチュアライズという特異なモチーフが絶大なインパクトを残す怪人だ。
完全に余談だが、ギザ歯といえば令和の今となってはアニメや漫画のキャラクターのチャームポイントの一つとして完全に定着し、ギザ歯キャラに萌える人々も多い概念であるだけに、この「バトルフィーバーJ」制作時にはどっちかというとマイナスイメージのある単語として、怪人のモチーフにされていることがどことなく可笑しみがある。

閑話休題。
幽霊騒ぎの調査のために、ケニアは女装して女子大生とともに女子寮に潜入しようと目論むが、あっけなく先生に看破されて失敗。しかしその隙に、同じく女装したコサックが女子寮への潜入に成功する。しかし、このような状況ならば、同性であり、FBI秘密捜査官として潜入任務にも長けていそうなアメリカに潜入を依頼したほうが良い気もするのだが、かえってアメリカ人の容姿では目立ちすぎる、との判断だろうか。
潜入に成功したコサックだったが、ギザ歯怪人が変装した掃除婦を首にした先生からプールの掃除を依頼されてしまい、まさか水着を着ることも出来ずに女装がバレ、やはり潜入に失敗する。その一方で、記者に変装したサロメは取材と称してまんまと潜入に成功するのだった。

頼りのコサックもあっけなく変装がバレてしまい、困り果てていた女子大生のもとに、棺桶のような荷物が届く。その棺桶の中にはケニアが入っていた。荷物になってしまえば先生も中を確かめられない。ケニアは誰が本当に頼りになる男かわかった?と得意げに話すが、調子良く飛びついてきた女子大生にはちょっと白々しいね…と白い目を向けるのだった。
すると部屋の明かりが点滅を始める。怯える女子大生を抑え、ケニアは自殺した恵美の部屋へと向かい、ドアを開けようとするが、突然隣の部屋のドアが開き、少女が飛び出してきた。
ケニアは隣の部屋の窓が開いていることに気づくと同時に、何者かが逃亡していくのを目撃する。それは潜入していたサロメだった。少女は自殺した恵美の妹で、姉が一番大事にしていたペンダントが紛失していたことに気づき、恵美の部屋に探しに来たが鍵が開かず、隣の部屋で様子を探っていたところ、サロメと出くわしたのだという。少女は何者かが姉を自殺に見せかけて殺し、ペンダントを奪ったのではないかと疑っていた。ケニアは真相を掴むことを少女に誓う。

恵美のペンダントの写真を見た鉄山将軍は、このペンダントの石が地球のものではないことを告げ、幽霊騒ぎや恵美の死にエゴスが関わっていると判断。ペンダントの中には宇宙の未知なる生物の遺伝子が含まれており、エゴスはその遺伝子で強力な御子を生み出そうとして、ペンダントを狙い、ギザ歯怪人やサロメを女子寮に向かわせていたのだ。
様々な事件が一本に繋がりをみせる中、バトルフィーバー隊はエゴスが未だにペンダントを見つけていない以上、女子寮の内部の人間がペンダントを盗んだと判断。しかし、一筋縄ではいかない先生の目を誤魔化し、再度女子寮に侵入するのは困難だ。
そこで、未だ先生に面の割れていないジャパンが、自分とフランスなら真面目な学生に見えるはず、と一計を案じる。ケイコたちを引き連れ、柔道着に身を包んだジャパンとフランスは、城南大学柔道部との合同稽古に来たのだと偽り、ついに女子寮に潜入する。
エゴスとの死闘に明け暮れ、騙し騙されの丁々発止の遣り取りに命をかけるバトルフィーバー隊が、ここまで侵入に苦労し、様々な策を弄さねばならない相手が女子寮を管理する先生である、というところにこのエピソードの面白みがあることは間違いないだろう。
女装で突破しようとしたケニアとコサック、荷物に紛れて潜入したケニア、真面目な学生のフリをしたジャパンとフランス…彼らは皆、真面目に幽霊騒ぎに困る女子大生たちを助け、ペンダントを狙うエゴスの野望を阻止するために動いているのだが、真面目にやっているがゆえに可笑しみがある、という展開が見ていて楽しい。

ケイコたちは隙を見て恵美の部屋に入ろうとするが、先生に見つかる。ジャパンとフランスも駆けつける中、先生はヒステリックに何故皆寮の中に入ってこようとするのか、と怒りをぶつける。そんな先生に、ジャパンはペンダントを盗んだのは先生ではないか、と疑問をぶつけるのだった。

恵美の部屋に入った一同は、部屋が荒らされている事を知る。
先生も誰が部屋を荒らしたかわからず困惑しているところに、ジャパンは部屋を荒らしたのはエゴスであり、ペンダントを持っている限り今度は先生がエゴスに狙われる…と指摘。
恐怖にかられた先生はついに、自分が夫のサラ金からの借金に苦しみ、ペンダントをお金に変えるために盗んだことを告白。ペンダントは未だ銀行の貸金庫に預けられていることを告げるのだった。
一方、いつまでもペンダントを発見できずに業を煮やしたエゴスは、寮に潜入し手当たり次第に女子大生を拉致。ギザ歯怪人は廃工場に女子大生を集めペンダントを盗んだ犯人を言わねば恵美のようになると脅した。そう、恵美の自殺の真相は、ペンダントを狙ったエゴスの犯行だったのだ。
それでも口を割らない、というよりペンダントの行方など知らない女子大生に怒りギザ歯怪人が襲いかかろうとしたその時、バトルフィーバー隊が現場に到着。サロメも姿を表し、ここにエゴスとバトルフィーバー隊の一大決戦が幕を開けた。

サロメは相変わらずデタラメ気味に強い。
飛びかかるコサックやケニアを投げ飛ばし、それでもなお足払いを仕掛けるコサックの攻撃も通用せずに蹴り返して吹っ飛ばすほどの強さをみせる。それでも一瞬の隙を突いたケニアのムチがサロメの足に引っかかり転倒させることに成功するが、ギザ歯怪人の妨害でとどめを刺すには至らず、バトルフィーバー隊は千載一遇の好機を逃すことになる。

そこにギザ歯ロボットも現れ、乱戦の様相を呈してきた戦場。
バトルフィーバー隊はペンタフォースでギザ歯怪人を倒し、ギザ歯ロボットもバトルフィーバーロボのクロスフィーバーからの電光剣唐竹割りで粉砕する。
今回のバトルフィーバーロボはフィーバーアックスを使用。また、クロスフィーバーは初登場時の廃墟をバックにした初期版のバンクフィルムが使用されていた。クロスフィーバーも電光剣唐竹割りも光学合成が非常に美しく、この2つの技の連続技はあまりにもカッコいい。

かくして、女子寮に平和が戻った。
恵美の妹は新幹線で故郷に帰り、今後もエゴスに狙われる可能性のあるペンダントはバトルフィーバー隊を通して国防省が預かることになった。ペンダントは調査の結果、本当に宇宙の未知の生物の遺伝子が閉じ込められているのが判明し、もし本当にエゴスの手に渡っていればその後の戦いの苦戦は免れなかっただろう。
バトルフィーバー隊は平和を守る使命の重さをひしひしと感じるのだった。

自殺した女子大生の死の真相、その女子大生が持っていたペンダントの行方、女子寮に潜入し暗躍するエゴスの陰謀と、様々な事件が複雑に絡み合ったドラマ展開が非常に見事なエピソード。一方で、バトルフィーバー隊のあの手この手の女子寮潜入大作戦がドラマにユニークさを付与しており、気楽に見ていて楽しめる名作エピソードだ。

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