「バトルフィーバーJ」第22話「女スパイ団の逆襲」感想

2024年2月14日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

エゴスに宝を奪われてしまったと思いきや、彼らが持ち出した宝は偽物だった。
サロメは2人の女スパイへ、宝を隠したと思われる正夫を捕虜として連れてくるように命じる。
女スパイたちは正夫へと近づき…。

宝を巡る人間模様 二転三転大逆転

バトルフィーバー隊から、宝をエゴスに奪われた報告を受けた鉄山将軍。
鉄山将軍はエゴスが軍資金を得る事態を防ぐため、何としても宝を奪回するように指示する。
一方、宝が入った宝箱を手に入れた恐竜怪人は、エゴスの勝利を誇る。
ギザ歯怪人にはタメ口だったサロメだが、恐竜怪人はサタンエゴスの御子として敬うようになった。ヘッダー指揮官に組織の上下関係を教えられたのだろう。
サロメが宝箱を開くと、なんと宝は山のような石ころにすり替えられていた。
御子の前で恥をかかされ怒り心頭のサロメは、このような事態を招いたゼロワンに怒りをぶつけ、宝をすり替えたのはバトルフィーバー隊であると判断すると、ゼロワンにジャパンを捕虜として連れてくるように命令する。ゼロワンはバトルフィーバー隊最強の男であるジャパンを捕らえることに難色を示しながらも幹部であるサロメには逆らえない。追い詰められたゼロワンとゼロツーは命令を忠実に実行するスパイの誇りにかけて、ジャパンの捕獲に向かうのだった。
前回、陽動作戦でエゴスが宝を手に入れ勝利を収めた展開から一転、宝が石ころにすり替えられていたというどんでん返し。サロメは状況から判断し、バトルフィーバー隊がまた一計を案じて偽物の宝を掴ませたのだと判断するが、一方でバトルフィーバー隊はそのようなことを知る由もない。謎が謎を呼ぶ、緊張感ある展開だ。

バトルフィーバー隊は宝を手に入れたエゴスが陸送でアジトに宝を届けると踏んで、検問をかけて能登半島を出ようとする車の調査をしていた。そんな中、ジャパンは能登ロイヤルホテルから女性が面会に訪れたとの知らせを受け、ホテルへと戻る。
ホテルでジャパンを迎えた女性はゼロワンだった。ゼロワンは、ホテルのゴルフ場を歩く千造としのぶの背後を尾行するゼロツーの存在と、ゼロツーがこの一帯を吹き飛ばすほどの威力を秘めたゴルフボール爆弾を持っていることを明かす。親子の命を人質にされたジャパンは、ゼロワンの言うままに連れ出されてしまう。
ケニアとダイアンは、記憶を失ったままの父親の境遇を悲しむしのぶを励ましていた。
そこに、検問を終え戻ってきたコサックとフランスが合流。
陸路で発見できない以上、エゴスは海路を使い宝を運び出したのではないかと疑う一同。
姿を見せないジャパンの行方を訝しんだコサックに、ダイアンはホテルのボーイから、ジャパンが女性と一緒に出ていったと聞いたと、やや呆れた様子で話す。
前回、龍の頭の捜索そっちのけで海水浴を楽しんでいたのを棚に上げる言動ではあるが、既にエゴスに宝を奪われていることを思えばやむなしか。
フランスはその様子に、普段は真面目なジャパンがねえ、とニヤついた表情を見せていたが、そんなジャパンがこの状況でそのような行動をするはずがない、と異変を察知する。
前回、ジャパンだけは一貫して真面目に暗号の龍の頭を捜索していた描写があったことで、そんなジャパンがこの状況で気晴らしに出かけるわけもない、姿を見せないのはなにかがあったはずだと仲間たちが判断する展開にも説得力がある。

載せられた車中で、催眠ガスの効果で気を失ったジャパンは、縛られたままボートで海上にいた。サロメは身動きの取れないジャパンを海に入れ、海女に変装したゼロワンとゼロツーによって沈められる水責めを受ける。宝をすり替えたのがバトルフィーバー隊だと思っているサロメは水責めでジャパンの口を割らせようとするが、そもそも宝がすり替えられていたことすら知らなかったジャパンは何のことかもわからぬまま水責めを受け続ける。
ジャパンを捜索していたバトルフィーバー隊は、砂浜で沖に浮かぶ不審なボートを発見。
海女の船にしては、あんな場所でアワビ漁が出来るわけもない。
双眼鏡で様子を確認し、ボートの上にサロメがいることを発見する。
過酷な水責めでも一向に口を割らない、そもそも口を割りようもないジャパンに業を煮やしたサロメは、ボートで水中を引きずり回してジャパンを抹殺せんとするが、水中から密かに近づいたコサックとフランスによってジャパンは無事に救出されるのだった。

能登ロイヤルホテルに戻ったバトルフィーバー隊は、ゴルフをしつつ状況を整理していた。
能登ロイヤルホテルの広大なゴルフ場をアピールする、タイアップ回ならではの独特な雰囲気が楽しい。サロメの口から、エゴスが手に入れた宝は偽物にすり替えられており、自分たちでも、エゴスでもない何者かが宝をすり替えらえていたことを知ったジャパンは、自分たちの前に宝の部屋の隠し扉を開けた存在がいて、それが短剣の持ち主であり、龍の頭の捜索中、一度姿を眩ませた千造こそがその犯人である、と推理する。
ジャパンは千造としのぶを部屋に呼ぶと、千造が記憶喪失のふりをしており、バトルフィーバー隊に保護してもらうことで、バトルフィーバー隊をエゴスの襲撃からのガードマンに仕立て上げ、宝探しをしようとしていたと指摘。千造はバレたら仕方ないと観念し、宝を自分がすり替えたことを告白、宝は元々自分のものである、と開き直る。
自分が宝を手に入れるという欲のためにエゴスを手玉に取り、バトルフィーバー隊を利用してジャパンの命を危険に晒した千造を問い詰めるケニア。
千造は、漁師でありながら遭難して命を失うような苦労をした体験を話し、自宅から代々伝わる短剣を見つけたことで自分こそが能登で一番の大金持ちになるんだ、と話す。大金に目が眩み、自分の欲望のために他人を利用するような人間になってしまった父親を見損なったと話すしのぶ。貧しくても、漁師として一生懸命働く父が好きだったしのぶは、あれだけ一生懸命に打ち込んでいた漁師の仕事を馬鹿にして、一攫千金に狂う父親を軽蔑。しかし千造も、娘の嫁入り姿を見るために一生懸命大金を手にしようとしていた、と弁解するが、結局は娘の想いに折れ、バトルフィーバー隊をすり替えた宝を隠した場所へ案内することになった。
大金によって経済面は豊かになれど、他人を利用してうまい汁を吸おうとするような人間に成り下がる、心の貧しい在り方を否定する素朴さの勝利、というテーマは、後に「宇宙刑事シリーズ」、特に「宇宙刑事シャイダー」で、フーマの陰謀で目先の快楽や豊かさに溺れ、ヒューマニズムを喪失していく人間の姿を何度も描いた上原正三氏の脚本ならではのメッセージ性だ。

千造の案内で、ついに本物の宝を発見したバトルフィーバー隊。
そこにエゴスが襲撃を開始し、バトルフィーバー隊も全員集合して立ち向かう。
エゴス戦闘員たちを次々に撃退するバトルフィーバー隊の前に、多数の爆弾を身につけ、人間爆弾と化したゼロワンとゼロツーが姿を現した。
非情のサロメは、失敗を重ねたゼロワンとゼロツーを文字通りの捨て駒としようとしたのだ。
バトルフィーバー隊に飛びかかるゼロツーが爆発し、命を散らす。
さらにゼロワンがジャパンに迫る。断崖の死闘の果て、跳躍したジャパンとそれを追ったゼロワンが激突して崖下に落下、大爆発が起きる。
ジャパンは何とか生き延びたものの、大ダメージを負ってしまう。

戦いの様子を見ていた千造としのぶは、姿を現した恐竜怪人に襲われる。
恐竜怪人は宝を奪うと、弟の恐竜ロボットを呼び出し、その口に宝を投げ込んだ。
バトルフィーバー隊はバトルシャークの発信を要請、飛び立ったバトルシャークに、ヘッダー指揮官はエゴス戦闘機隊を発進させる。巨大戦艦と戦闘機のバトルシーンは、後の「宇宙刑事シリーズ」で大きな見せ場となる戦艦と戦闘機のバトルシーンの萌芽とも言える描写。多彩な武器を駆使し戦闘機隊を撃退したバトルシャークは現場に到着。
それを確認したバトルフィーバーはペンタフォースで恐竜怪人を倒し、バトルフィーバーロボに乗り込んで恐竜ロボットとの決戦を開始する。
バトルシールドやフィーバーアックスを駆使し、クロスフィーバーからの電光剣唐竹割りで恐竜ロボットを倒すバトルフィーバーロボ。恐竜ロボットごと、宝もこの世から消えるのだった。

こうして様々な思惑と人間の欲望が絡み合う、能登半島を舞台にした財宝争奪戦は幕を閉じた。
しのぶに見送られ、出発しようとするバトルフィーバー隊の前に、千造が姿を現す。
なんでも今度は源義経の財宝や、加賀百万石の財宝を探す地図を見つけたのだという。
娘の思いに打たれて改心したかと思えば、一攫千金を諦めきれない千造の姿に笑みをこぼしながら、バトルフィーバー隊は基地に帰還する。宝探しへの協力を求める千造に見送られながら…。
これが初使用となる「明日の戦士たち」をバックに帰還するバトルフィーバー隊の姿が爽やかな感動を巻き起こす名シーン。「明日の戦士たち」は、当初エンディングテーマとして楽曲が制作されながら、ややソフトすぎるという判断でエンディングテーマに採用されず、硬質な世界観を強調した「勇者が行く」が新たに制作されたという経緯がある。
いつの時代も悪が存在するという現実を説きつつ、もし大人になって悪と出会った時には、かつてバトルフィーバーの勇者たちが見せた勇気を思い出して、悪に負けずに戦ってほしいと「明日の戦士」である視聴者に願いを託す「明日の戦士たち」は、「バトルフィーバーJ」やスーパー戦隊シリーズの枠を超えて、ヒーロー作品全体のテーマソングとも言える深いメッセージ性を持つ楽曲として完成しており、エンディングテーマとしては採用されなかったものの、こうして本編の終幕を彩る楽曲として使用されているのが嬉しい。
これほどの名曲であり、作中でも使用されながら本放送時は音源を収録したレコードが発売されていなかった、というのは大変惜しい話だ。

宝を巡り、バトルフィーバー隊、エゴス、千造の三つ巴がそれぞれの思惑で騙し騙されの争奪戦を展開する、地方ロケの雄大なロケーションを舞台に描かれた攻防戦が非常に見ごたえのある前後編。ジャパンへの拷問や、失敗したゼロワンとゼロツーを人間爆弾として使い捨てるサロメ、ひいてはエゴス全体の恐ろしさも十全に演出された傑作エピソードだった。

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