あらすじ
謎のRS装置の設計図を巡り、キングダークと仮面ライダーXのしのぎを削る争奪戦が展開されていた。そんな中、GODは若いバレリーナのペンダントに隠された設計図を狙い、GOD悪人軍団の怪人・カメレオンファントマを送り込む。
変幻自在の怪盗怪人 狙われたバレリーナを守れ
「仮面ライダー」後半のショッカーライダー回以来のにせライダー回。
とはいえ、カメレオンファントマが変化したにせXライダーがXライダーに化けて悪事を働いたり、おやじさんたちを騙したりはせずに、最終決戦の見せ場として「Xライダー対Xライダー」が演出されているという程度の要素にとどまっている。
この回の時点ではRS装置の効果については「世界中の物質のエネルギーを消す」装置との説明。キングダークはRS装置の設計図の欠片を手に入れるため、悪人軍団のカメレオンファントマを呼び出す。フランスに出没した怪盗・ファントマの化身であるカメレオンファントマ。
変幻自在の怪盗であるファントマと、保護色で姿を消し擬態、千変万化の変化を見せる形容詞にもなっているカメレオンを組み合わせているのは、悪人と生物の両方のモチーフの性質が合致した、GOD悪人軍団の中でもモチーフの選択と合成が秀逸な怪人だ。
それにしても、わかりやすい悪事ということもあってかGOD悪人軍団のモチーフに選ばれている人物はやたらと泥棒稼業が多い。ガマゴエモン、カブト虫ルパンに続く3人目だ。
RS装置の設計図を奪う、という任務を任せる上で、密かに潜入しお宝を盗み出す泥棒稼業を生業としていた人間の性質を持った怪人が任務に適合していた、とも取れる。
キングダークの命を受け出撃したカメレオンファントマは、エレベーターで移動していたAB通信社東京支局長の安藤を襲い、その姿に化けると安藤を抹殺、成り代わることに成功する。
脱出不能の密室であるエレベーターに閉じ込められ、死地へと案内されてしまうのは、文明の利器に頼っている現代人としては迫真性のある恐怖描写と言える。
一方、立花コーヒーショップCOLに神敬介が来店する。マーキュリー回路の影響か、風見志郎の血のせいか、神敬介は髪にパーマを当ててイメチェンしていた。
チコとマコが言うには、しばらくCOLに姿を見せていなかったらしい神敬介。その間にイメチェンしたのかな、などと思っていると、どうやらあるバレリーナを捜索していたようだ。
一方、安藤に化けたカメレオンファントマは、取材を装いキクチバレエ教室を訪れ、生徒を指導していた、西ドイツから日本に帰国したばかりのバレリーナ、菊池明子の元を訪れていた。
安藤に化けたカメレオンファントマは、明子に神敬介が訪ねてきていないか、と問いただす。
会ったこともない神敬介のことなど知る由もない明子はその質問の意図を訝しむが、鏡に写った安藤の背中がカメレオンの怪物であることを目撃してしまう。
鏡に写った安藤の背中がカメレオンファントマなのは、人間に化けた怪物が偽物であると露見する展開として定番ながらもインパクトがあり効果的な描写だ。
カメレオンファントマは、神敬介が何故明子を探しているのか、理由を探っていた。
明子が何かの秘密を握っていると判断したカメレオンファントマは明子を襲う。割れた鏡の散らばった破片に、明子を襲うカメレオンファントマが映り込む演出が印象的なシーンだ。
そこに間一髪、神敬介が明子を助けに現れた。風見志郎の血の影響か、パーマを当てて心機一転した効果か、神敬介の言動もどこかドスが効いた、頼もしさのあるものになっている。
カメレオンファントマの伸縮自在の舌の攻撃もものともせず、Xライダーに大変身。
カメレオンファントマは素手での戦闘スタイルに一新されたXライダーのパワーに圧倒されるが、変幻自在のカメレオンファントマは致命傷を負う瞬間にGOD戦闘員と入れ替わることで攻撃を回避し、決定打を与えられないままXライダーはカメレオンファントマを逃してしまう。
出撃しておいて何の成果も上げられないまま帰還したカメレオンファントマは、キングダークに叱られていた。しかし妙に自信満々のままのカメレオンファントマに、キングダークはXライダーのパワーアップした力を警戒するように忠告する。
カメレオンファントマに襲われたが幸いにもおやじさんに病院に運び込まれていた明子は目を覚ます。病院に着いた神敬介は、明子に西ドイツのミュンヘンでラビックという科学者に会って、何か渡されていないかと質問する。そう、RS装置設計図を9つに分けて仲間の科学者に不幸の手紙を送った南原博士は遠く西ドイツにもRS装置の設計図の欠片を送っており、ラビック博士から連絡を受けた神敬介はラビック博士が明子に託した設計図の欠片を探していたのだ。
特に記憶にないと話していた明子だが、楽屋でプレゼントとしてペンダントを渡されていたことを思い出す。神敬介がペンダントを確認しようとした時、おやじさんがそのペンダントを奪った。なんとおやじさんはカメレオンファントマの変装だったのだ。
まんまと設計図の欠片が隠されたペンダントを奪い、カメレオンファントマは早々に撤退。
まず目以外の全身が消え、光る眼だけが一瞬残ったと思った矢先に完全に姿を消すカメレオンファントマの撤退描写が印象に残るシーン。
得意満面で設計図の欠片を手に入れたと誇るカメレオンファントマにキングダークが激怒。
なんと、本物のおやじさんが神敬介が来る前に事前に明子に話を通しておき、ペンダントから設計図の欠片を取り出しておいたのだ。裏をかき、GODやカメレオンファントマを完全に出し抜いたおやじさんのファインプレー。伊達にショッカーやデストロンと戦ってきたわけではない、歴戦の勇士としての立ち回りは、カメレオンファントマでは相手にならない。
無事にRS装置設計図の欠片を確保した神敬介たちはCOLで祝杯を上げる。
キクチバレエ教室のバレエ公演が開かれることになり、COLの面々もバレエ鑑賞に向かう。
楽屋で準備をしていた明子の前に、カメレオンファントマが襲来。
明子を捕らえると、神敬介にRS装置の設計図全てと交換で開放してやると言い残し、交渉の場所に指定した地獄谷まで逃亡した。「地獄谷」という地名はよく悪の組織が人質交換の場所として指定しているイメージがあるが、実際にはどのくらいの頻度で使われているのだろうか…。
明子を救出するため、神敬介は一路地獄谷へ向かう。
大変身し、クルーザージャンプで地獄谷へ到着したXライダー。設計図の欠片を渡し、明子の救出に成功する。カメレオンファントマとしてはこのまま設計図を持って逃げ延びれば勝利ではあるので、人質の明子に興味がなかったのだと思われるが、設計図と人質の交換の約束をちゃんと守るあたり、妙に律儀というか、詰めが甘い。
キングダークの忠告も響いていなかったようなので、自信過剰ゆえの慢心だろうか。
明子をクルーザーに載せ、自動操縦でバレエ公演の会場まで逃したXライダーは、設計図を堂々と取り返してみせるとカメレオンファントマとの戦闘を開始。
戦闘員にこの場を任せ、姿を消し撤退しようとするカメレオンファントマだが、Xライダーのレッドアイザーの効果で姿を補足され、強烈な一撃を受けてしまう。
自信過剰ゆえの慢心と詰めの甘さで追い込まれ、頭部が赤く染まるダメージを負ったカメレオンファントマは、逆転の秘策としてXライダーの姿に化ける。
しかし、カメレオンファントマとしての舌を使った攻撃も出来なくなってしまった上に、同じ姿になったとはいえ改造人間としての性能が完全に負けていたにせXライダーは、単純な殴り合いではXライダーに勝ち目がなく、吹き飛ばされてにせXライダーへの変身も解除。そこにXライダーがマーキュリーパワーを発動させ、真空地獄車でカメレオンファントマを葬るのだった。
こうしてXライダーが所有するRS装置設計図の欠片は5枚になった。
平和の象徴としてバレエ公演を行う明子の姿に、神敬介は平和を守る決意を新たにする。
自信過剰で慢心に溺れたカメレオンファントマの詰めの甘さに救われたか、本物の設計図の欠片を渡すというピンチに追い込まれながらも力づくで取り返すことに成功したXライダー。
とは言え、次回の話を思うにカメレオンファントマに渡した設計図も、特殊インクで内容が消える偽物を万が一に備えて渡していた可能性も考えられる。
先手を打って行動しGODを出し抜いたおやじさんの凄腕ぶりが印象に残る回でもあった。