あらすじ
エゴスからの挑戦状が叩きつけられ、バトルフィーバー隊は指定された場所へと向かう。
そこに現れたのはゴースト怪人。
その罠に嵌められたバトルフィーバー隊は敗北。過去の戦いを思い出し、再び怪人に挑む。
慢心が招いた敗北 戦いの軌跡を胸に刻み闘志を取り戻せ
前回の次回予告でサブタイトルを聞いた時には所謂再生怪人回かと思ったが、怪人が総登場するのはこれまでの戦いの軌跡を振り返るビデオ内のことであるという、総集編的な要素を持つ回。
街のインベーダーハウスでは、バトルフィーバー隊が全員揃って「スペースインベーダー」に熱中していた。タイトーのアーケードゲーム「スペースインベーダー」が1978年に稼働開始し、1年半足らずの間に純正・コピー品合わせて50万台が出回った空前のブームを巻き起こしていた時代背景を反映したシーン。時系列的には、この回の放送(1979年7月7日)直前の1979年6月2日に全日本遊園協会があまりに熱狂するインベーダーブームが社会問題化したのを受けて「自粛宣言」を発表し、インベーダーブームの沈静化の兆しが見え始めたということらしいが、とはいえ撮影時にはまだまだブームが加熱中であったことを感じさせる。
普段から任務の途中で息抜きを見せることもあるフランスとダイアンに、パチンコが趣味なコサックが熱狂するのはわからなくもないが、真面目な印象があったジャパンすらハイスコアを目指して熱狂しているので、当時のインベーダーブームが大人すら巻き込んだ社会現象だったことを感じずにいられない。そこに、鉄山将軍からの連絡が入る。なんでも国防省を通してエゴスがバトルフィーバー隊に挑戦状を叩きつけたらしい。よほどインベーダーを中断するのが嫌なのか、鉄山将軍からの通信に悪態をつくジャパンの姿が印象的だ。
常勝無敗の戦い振りを見せていたバトルフィーバー隊の心には驕りが見えていた。
戦えば絶対に勝つエゴスからの挑戦のせいで楽しいインベーダーゲームを中断するなんてバカバカしいと、彼らの戦意は最低だった。とはいえ、エゴスと戦うのが彼らの仕事。
バトルフィーバー隊は面倒くさそうに、エゴスに指定された地点に向かうことになる。
待ち構えていたサロメに、インベーダーゲームを中断させられて気が立っているバトルフィーバー隊は悪態を吐き挑発を繰り返すが、サロメは動じず手鏡で攻撃。
バトルフィーバーを待機していたゴースト怪人の元へ誘導するとサロメは撤退する。
完全に驕りを見せるバトルフィーバーは、エゴスの怪人が自分たちに勝った試しはないと調子に乗るが、その挑発を受けて帰ろうとしたゴースト怪人を無警戒に追ったコサックとケニアが罠にハマり宙吊りにされてしまった。怒ったバトルフィーバーはコサックとケニアを助け出すと、早々にペンタフォースで決着をつけようとするが、分身するゴースト怪人の本体を見破れず、攻撃しても姿を消すゴースト怪人に完全に手玉に取られてしまう。
さらに、次々に姿を見せるゴースト怪人の分身におびき出され、一人ずつ分断されていくバトルフィーバー。怪しんだジャパンの静止も時すでに遅く、分身を追ったコサック・フランス・ケニアは仕掛けられていた地雷でダメージを負う。
まんまとバトルフィーバーを罠に嵌めたゴースト怪人は勝ち誇り、撤退していった。
エゴス怪人へ常勝を重ねた結果、油断が生まれてしまいまんまと罠にかかるバトルフィーバー隊。相手を舐めてかかったことで少しずつ分断されていき敗北する展開は、5人が揃って力を合わせることの素晴らしさを描いたグループ・ヒーローのピンチ演出として秀逸だ。
敗北したバトルフィーバー隊は、鉄山将軍とロボット九官鳥に叱られていた。
調子に乗って悪態を繰り返すロボット九官鳥にとうとうキレたコサックは、ロボット九官鳥を真っ二つに破壊してしまう。しかし、なかなか素直に反省しないバトルフィーバー隊を、ロボット九官鳥に八つ当たりしても問題は解決しないと一喝した鉄山将軍は、遊びに夢中になって相手を舐めてかかった心の油断や、戦いが長引いたがゆえの馴れ合いが敗北を呼んだのだと諭すと、バトルフィーバー隊にかつての戦意を取り戻させるために、これまでの戦いの軌跡を収めたビデオを鑑賞することに決める。自然な総集編展開への導入だ。
ゲームに夢中になるあまりに本業をおろそかにし、油断して失敗したバトルフィーバー隊を叱る鉄山将軍は、どこか子供を叱る親のような姿だ。
子供たちからしたら、楽しいインベーダーゲームに夢中になり、いつも上手くいっていることに慢心するバトルフィーバー隊の様子に感情移入してしまいそうではある。
「バトルフィーバー大出撃」から「バトルフィーバー讃歌」に乗せて、バトルフィーバー隊とエゴスが繰り広げてきた数々の戦いの映像が映し出される。
バトルフィーバーロボの活躍や、個々のメンバーの戦いに、バトルフィーバー隊は初心を取り戻していく。男性メンバー4人はそれぞれの主役回の回想が入るが、ここに至るまで目立った主役回がなかったダイアンは、1話で父をエゴスに殺されたことを回想している。ダイアンは次回の第24話で退場するが、目立った活躍がそこまで見られなかったのはやや残念だ。
戦いの軌跡を胸に刻み、心の油断を自覚して反省したバトルフィーバー隊は戦意を取り戻す。
鉄山将軍は敗北を恐れずに挑戦し、失敗を乗り越えてこそ新しい力を手にすることが出来るとバトルフィーバー隊を諭し、自分たちはエゴスと戦うために選ばれた勇者であるという自信をもって戦うように彼らを励ますのだった。
叱るべきところは叱り、選ばれた勇者であると褒めるところは褒めて、戦士の自覚を改めて持たせる鉄山将軍の指導は、上司としてのカリスマ性すら感じさせる見事なものだ。
戦意を取り戻したバトルフィーバー隊はゴースト怪人討伐に出発。その様子をアジトから見ていたサタンエゴスは、バトルフィーバー隊が先程の戦闘と異なり殺意をみなぎらせていることと、油断をついて勝利したゴースト怪人が今度は勝利の美酒に溺れ慢心していることを指摘する。
ゴースト怪人は再び分身してバトルフィーバーを翻弄しようとするが、バトルフィーバーは鉄山将軍からの教えで身につけた武士道精神に徹して精神統一することで本物を見破る。
ジャパンが投擲した槍がゴースト怪人の武器を弾き飛ばし、追い込まれたゴースト怪人はゴーストロボを呼び出すが、分身を見破った今、ゴースト怪人は戦意を取り戻したバトルフィーバーの敵ではない。ペンタフォースでゴースト怪人を倒し、バトルフィーバーロボが出撃。
「バトルフィーバー讃歌」をバックに、ゴーストロボとの死闘が展開される。
戦いの果てにクロスフィーバーからの電光剣唐竹割りが炸裂、ゴーストロボも爆散する。
こうして、バトルフィーバー隊の油断を狙ったエゴスの作戦は失敗。サタンエゴスは戦意を取り戻し、より一層強くなったバトルフィーバー隊に危機感を覚えるのだった。
こうして勇気を取り戻したバトルフィーバー隊だったが、エゴスに油断はできない。
勇気を持って走れ!バトルフィーバー!!
総集編的な要素を備えつつ、分身を駆使するゴースト怪人との戦闘シーンも見どころな回。
戦いが長引くと同時に、常に勝利を収めてきた油断で敗北したバトルフィーバーが、過去の戦いを回想して初心を取り戻すという作劇で、過去の総集編となる映像を自然に挿入しているのが見事な展開だ。一時の勝利に慢心していては、勝てる相手にも勝てない。
エゴスを滅ぼし真の平和を取り戻すその日まで、バトルフィーバーに休息は許されないのだ。
慢心によって敗北したバトルフィーバーの勇者としての本当の実力を信じているからこそ、初心を思い出させ、改めて勇者の自覚を取り戻させた鉄山将軍の指導力の高さも印象的である。