「バトルフィーバーJ」第26話「包帯男の仮面報告」感想

2024年2月28日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

バトルフィーバー隊のデータを集めようと、エゴスのホウタイ怪人が動いていた。
ホウタイ怪人は採取した足跡や指紋、髪の毛をエゴスの基地へと持ち帰る。
そして、バトルフィーバー隊5人の素顔を暴く。

暴かれた正体 忌まわしき過去を乗り越えろ

24話でダイアンがミスアメリカの正体を暴かれた結果、肉親が危機に陥り戦いから退くことを余儀なくされたように、エゴスとの戦いで正体が露見してしまえば周囲に危険が及ぶ。
しかし、この回でついにバトルフィーバー全員の身元がエゴスに暴かれてしまう。
半年に渡り展開してきたバトルフィーバーとエゴスとの戦いは新たな段階に突入するのだった。

かつて、バトルフィーバーとエゴスとの死闘が展開された荒野。
そこでは包帯に身を包んだ不審な男が、足跡や指紋、髪の毛を採取していた。
一方、基地で待機していたバトルフィーバー隊は、思い思いの時間を過ごす。
武器を持って訓練?をしているフランスとコサック、ロボット九官鳥の前で焼き鳥に興じるケニアとそれを眺めるマリア。そこにジャパンがやってきた。
ジャパンの話では、バトルフィーバーがエゴスと戦った地点や、壊滅させたエゴスの基地をうろついている不審な男が目撃されているのだという。目的は判然としないが、執拗に痕跡を嗅ぎ回る様子を見せているという不審な男に懸念を示す一同。
ケニアは重い雰囲気を見かねてか、バトルフィーバーの取材をしたい記者がうろついているんじゃないかと軽口を飛ばすが、マリアに週刊誌の読み過ぎと咎められる。
結局一同は不審な男の目的をはっきりさせるために調査を開始するのだった。

共に戦ってきたダイアンが、正体が露見したことで身内を危険に晒すことになり自らの命の危機に陥ったことが記憶に新しい以上、バトルフィーバー隊もエゴスに正体を暴かれる危険性は承知の上だった。少しでも正体が露見する可能性を消すために先手を打って調査を開始するバトルフィーバー隊のプロ意識が感じられる。

マリアはかつてバトルフィーバーが壊滅させ、現在は国防省が管理しているエゴスの基地を訪れる。そこには、何者かがケニアの足跡を取った痕跡である石膏が落ちていた。
まだ新しい石膏の様子から、ケニアの足跡を取った者が近くにいる可能性に至ったマリアは周辺の調査を開始するが、そこで「お姉ちゃん」と自分を呼ぶような少年の声を聞く。
マリアを呼ぶ少年はマリアを見て道路に飛び出すが、そこに車が迫ってきた。マリアはとっさに飛び出し少年を助ける。少年を轢こうとした車に乗っていたのは、バトルフィーバーが追う不審な男、冒頭でバトルフィーバーの痕跡を採取していたホウタイ怪人だった。

少年は病院に搬送される。看護師が言うには、マリアが助けた少年、明は姉を探して度々病院を抜け出していたのだが、彼の姉は既にこの世にいなかった。
明はかつて溺れて死にかけた際に彼の姉に助けられたが、明を助け力尽きた彼の姉は明の目の前で沈んでいき、溺れ死んだのだという。自分を助けたせいで最愛の姉が自分の目の前で死んだことを現実だと受け止めることが出来ず、姉を探して病院を抜け出していた時に、姉の面影があったマリアを姉と呼んだのだという。マリアは姉を求める明の姿に、なにか複雑な感情を見せる。

一方、エゴスのアジトでは、ホウタイ怪人が戦場から集めた痕跡を元にバトルフィーバーの正体を探る鑑定を行っていた。足跡だけでその足跡を残した者の身体的特徴を割り出すほどにプロファイリング能力に長けたホウタイ怪人は、既にバトルフィーバー隊全員の体格を割り出すことに成功しており、残すは顔の鑑定を残すだけになっていた。
ケニアが将来的に禿げることまで鑑定済みのホウタイ怪人。ケニアを演じる大葉健二氏が、後に「宇宙刑事シャイダー」最終回でギャバン=一条寺烈として出演した際、別の映画の役作りとの兼ね合いで頭髪をツルツルに剃り上げていたことを予言しているようで、今見ると面白い。

サロメはそこまで手間を掛けても顔を割り出せていないホウタイ怪人を煽るが、一方ホウタイ怪人は割り出したミスアメリカの変身者の身体的特徴を分析し、自分が轢こうとした子供を助けた女がミスアメリカであることを突き止めると、ミスアメリカの変身者が子供の見舞いに姿を現すであろうことを予見し、病院で待ち伏せして素顔を突き止めることを計画する。

明には失明の恐れがあった。マリアが車から明を助けた際、打ちどころが悪かったのだ。
目が見えなくなるかもしれない恐怖に怯える明は姉を、マリアを呼び続けているのだという。
バトルフィーバー隊の仲間たちは、エゴスが自分たちの正体を突き止めようとしている以上、不用意な行動に出てはいけないとマリアを制止するが、マリアは自分に助けを求める明の声が聞こえ続けていると訴えると、過去に人を見殺しにしてしまったことがあると告白する。
だからこそ、明をこのまま見捨てることが出来ないマリアは病院へ向かうのだった。

バトルフィーバーの懸念通り、病院にはエゴスの一味が待ち伏せをしていた。
しかし、明の病室を盗聴するホウタイ怪人は明とマリアが会話をしている、つまりマリアが待ち伏せを突破したことを知る。マリアは看護師に変装して病院に侵入していたのだ。
マリアは目が見えない明に自分の顔を触らせ存在を知らせると、明を励ます。
ホウタイ怪人はサロメにミスアメリカをおびき出させ、明を攫う作戦に出た。
サロメは戦闘員カットマンを人間梯子にして病室に向かおうとするが、そこにバトルフィーバーが姿を現し、ミスアメリカも駆けつける。正体を暴かれる前に先手を打つことを選択したバトルフィーバーだったが、サロメと戦っている間にホウタイ怪人が明を攫ってしまった。

先手を打って正体を暴かれまいとしたバトルフィーバーだったが、その判断が焦りを生んだのかホウタイ怪人に一杯食わされてしまう。やはりダイアンの戦線離脱がショックだったのか、正体を暴かれかねない危機には過敏になりすぎてしまったようだ。
このあたりのバトルフィーバーとエゴスの駆け引きも緊迫感をもって演出されている。

明をアジトに連れてきたホウタイ怪人は、明にマリアの顔の模型を作らせる。
ホウタイ怪人の不思議な力を込められた粘土は明の記憶を正確にトレースするように形作られていき、ついにマリアの顔の模型が完成してしまった。
それを見たサロメは、かつてダイアンを戦線離脱に追い込んだ戦いでダイアンを助けていたFBI捜査官が現在のミスアメリカであることを確信するのだった。

明を捜索するマリアは精神的に追い詰められ、自らを呼ぶ声に導かれるように池に入っていく。あわや入水自殺の危機に、ジャパンが助けに入った。しかし、かつて人を見殺しにしてしまい、今また自分に助けを求めた明を助けられなかったマリアはトラウマに苦しむ。
マリアはかつて、仲のいい少年が溺れ死ぬのを見捨てて逃げてしまった過去があった。
姉を失った明のことを放っておけなかったのは、自分が過去に助けられなかった少年と似た境遇がゆえだったのだ。自分を呼ぶ明の声の幻聴にトラウマを刺激され苦しむマリアを、過去を乗り越えるように諭すジャパンだったが、マリアは冷静さを失い姿を消してしまう。

マリアを探すバトルフィーバー隊4人。その姿をエゴスがカメラに収めていた。
サロメは、マリアを探す4人がこれまでに一度は遭遇したことのある顔であることを確認すると、彼らがバトルフィーバーの正体であることを確信する。
マリアを探す4人が集まったところに、エゴスはマリアの顔の模型を転がす。
それを見たバトルフィーバー隊が素顔が割れたことを悟った刹那、模型が爆発。
バトルフィーバー隊4人は爆炎の中へ消えてしまう。

バトルフィーバー隊をほぼ全滅に追い込み祝杯を上げるエゴス。
ヘッダー指揮官はひとり残ったマリアをいたぶって始末しようと意気込む。
ひとり彷徨っていたマリアだったが、明を囮にされエゴスの砲撃を受けてしまう。
それでも明の元にたどり着いたマリアだったが、爆音に怯えた明が一人目も見えないまま逃亡してしまい、池に落下してしまった。マリアはかつて助けを求める声を見殺しにしたトラウマを振り切るように池に飛び込み、明を助けるがそこにエゴスの銃がつきつけられる。
ホウタイ怪人が攻撃の号令を出そうとした瞬間、バトルフィーバー隊の4人が姿を現した。
確かに爆発に巻き込み始末したはずの4人が生きていたことに驚くエゴス。
ケニアが抜群の嗅覚で模型に仕込まれた火薬の匂いを察知し、脱出していたのだ。
足跡からでは判別できなかったデータに足元を掬われたホウタイ怪人。

もはやバトルフィーバー隊の正体が完全に露見した以上、隠れ回る必要もない。
色男が揃ってびっくりだろ?と軽口を飛ばすフランスの戦士としての余裕が頼もしい。
バトルフィーバー隊はエゴスの前で堂々と変身、名乗りを上げる。
フィーバー!と叫んで回転する変身シーンをエゴスの前で披露するシーンは、これまで正体を隠してきた展開を積み重ねてきてからの満を持しての展開としてのカタルシスがある。

明を恐怖に陥れたホウタイ怪人にミスアメリカの怒りが爆発し、怒涛の攻撃が炸裂。
追い込まれたホウタイ怪人はホウタイロボットを呼び出した。
バトルフィーバーもバトルシャークを呼びつつ、ペンタフォースでホウタイ怪人を倒す。
稲光が走る中、バトルフィーバーロボとホウタイロボットの死闘が展開される。
「バトルフィーバー大出撃」が流れる中、雷光と共に様々な武器を使って戦うバトルフィーバーロボは、クロスフィーバーからの電光剣唐竹割りで勝利するのだった。

病院に戻った明は、無事に視力が回復する。しかし、明は初めてマリアの顔を眼前で見て、マリアが自分の姉ではなかったことに落胆し、涙する。
この時、明は初めて自分の姉がもうこの世にいないのだという現実を受け止めたのだった。
悲しみに暮れる明を、マリアは自分がもう一人の姉だと励まし、明もその優しさを受け止めてマリアを姉と呼ぶ。こうして、マリアもまた自身のトラウマを乗り越えたのだった。
こうして、再び一時の平和が訪れた。しかし、エゴスにバトルフィーバー隊の正体が露見した以上、彼らにはもう一瞬の油断も許されない。果てしなき死闘の荒野に、勇者は行く。

マリアが抱えたトラウマと、バトルフィーバーの正体を掴まんとするエゴスの執念が印象に残る回。自分を姉と呼ぶ明の姿に、かつて自分に助けを求めながら溺れ死んだ少年の姿を感じトラウマを刺激されるマリアの悲痛な叫びと、明を無事にエゴスから助けたことでトラウマを乗り越え戦士として成長を遂げるドラマが重厚な展開だ。
エゴスの前でバトルフィーバー隊が堂々と変身するシーンはヒーローとしてのカタルシスを演出しつつも、エゴスの計略によってそのような状況に追い込まれているという危機感も募らせるシーン。バトルフィーバーとエゴスの戦いは、新たな局面を迎えることになる。

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