「仮面ライダーX」第31話「立て!キングダーク!!」感想

2024年2月22日木曜日

仮面ライダーX 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

残されたRS装置の設計図を奪おうと、トカゲバイキングは那須高原の牧場に住む幼い少女を狙っていた。そして、その前に敢然と立ちふさがる仮面ライダーX。
那須高原でGODとライダーXの設計図の争奪戦が始まる。

広大な大自然を戦場に、少女を狙う魔手を切り裂け

「世界中の物質のエネルギーを消す」RS装置の設計図の欠片も、残すは3枚。
31話・32話では那須高原を舞台に設計図争奪戦が繰り広げられる。

平和な那須高原。那須高原りんどう湖ファミリー牧場では、牧場の管理事務所で管理人をしている両親と共に暮らす少女・ユキが不審なオルゴールの音色を聞いていた。
その音色とともに、湖底から人形が浮かんできた。その人形をやたらと気に入ったユキは、人形を自宅に持ち帰り、枕元に置いて一緒に眠っていた。
しかし、真夜中になって突然人形の目が発光し、ひとりでに動き始める。異変に気づいた母親が怯える中、ユキは全く動じずに人形を捕まえ頭を叩くと大人しく眠っていないことを叱る。
子供は不可思議な現象を素直に受け入れるということなのかもしれないが、ひとりでに人形が動くという超常現象を目の当たりにしたわりに全く動じておらず、異様に肝が据わっている。

一方、その様子を壁面から巨大なトカゲが監視していた。
巨大なトカゲはGOD悪人軍団の一人、トカゲバイキングの正体を現すと、ユキに人形を渡すように要求した。子供をナメているのか、柔らかい口調を使って馴れ馴れしく接してくる不気味なトカゲバイキングに、ユキは人形は自分の赤ちゃんだから渡さないと拒絶。
拾ったばかりのひとりでに動く不気味な人形にそこまでの愛着を見せているのが凄い。
トカゲバイキングはなおも大人の余裕でユキに接し、抱っこしてあげようと迫る。
子供に迫るその姿は完全に変質者のそれだ。ユキの両親は勇敢にも娘を変質者トカゲバイキングから守るべく立ち塞がるが、トカゲバイキングの放つ毒液によってトカゲ人間にされてしまう。
ユキは恐怖しながらも人形を持ったまま逃亡。本当に肝が座っている。

トカゲバイキングは北欧の海で暴れた海賊、バイキングを名乗る改造人間。
特定個人を指すモチーフではないあたりに、GOD悪人軍団の「歴史上の悪人の化身」というコンセプトがモチーフ選定が難しいコンセプトだったことを感じずにいられない。

立花コーヒーショップCOLも夏季休暇で臨時休業し、一行は那須高原に旅行に来ていた。
チコとマコは那須高原りんどう湖ファミリー牧場に遊びに来ていたが、来て早々に倒れていたユキを発見し、おやじさんと神敬介が滞在する那須ビューホテルへ連れて帰り保護する。
ユキの口から、トカゲの化け物が人形を狙ってユキの家に現れ、ユキの両親を襲ったことを知った神敬介とおやじさんは、それがGODの仕業ではないかと推測するものの、何故GODがその人形を欲しがっているのかわからなかった。
頑なに人形を手放さないユキに、何とか断りを入れ人形を調べた神敬介が不意に人形を落とした拍子に、人形に内蔵されていた音声データが再生された。人形の元の持ち主はRS装置の開発者である南原博士の知人である科学者夫婦であり、設計図を求めたGODに襲われた際にRS装置の設計図の欠片を人形に隠したのだという。だが神敬介たちが設計図を確認する前に、大事な人形を落とされて怒ったのか、ユキが素早く人形を拾い上げるとどこかに逃亡してしまった。このままではまたユキがGODに襲われると危惧した神敬介はその後を追う。
ユキが何をそこまで人形に執着しているのか、その理由はわからないが、ユキが人形に執着していなければこの回はここで神敬介が設計図を回収してトカゲバイキングを倒すだけで終わってしまうので仕方がない。

母親を探し草原を彷徨うユキの前に、変質者トカゲバイキングが姿を現す。
相変わらず抱っこしてあげようと迫る気持ち悪いトカゲバイキングの言動にユキも逃げ出すが、先回りしていたGOD戦闘工作員に囲まれてしまった。泣き叫ぶユキに迫るトカゲバイキング。しかしユキの後を追っていた神敬介も駆けつけた。
馬に騎乗して迫るGOD戦闘工作員を躱しながら、次々にGOD戦闘工作員を撃破する神敬介。
戦闘シーンにBGMが流れないので、なんとなく淡々とした雰囲気だが、このBGMがないのでどこか淡々とした雰囲気で進行するのは「5人ライダー対キングダーク」あたりから見られる特徴で、ややアクションシーンの勢いを欠いている印象だ。
さらにXライダーはGOD戦闘工作員から馬を奪うと、次々にGOD戦闘工作員を落馬させていく。しかしGOD戦闘工作員が神敬介を引き付けて時間を稼いでいる間に、トカゲバイキングはユキを捕まえ逃亡を開始していた。逃亡に気づいたXライダーはジャンプして先回りする。
ユキを人質に、動けば子供の命がないと脅すトカゲバイキングだが、Xライダーは構わずに接近し、有無を言わせぬ素早い動きでユキとトカゲバイキングを引き剥がすとトカゲバイキングに猛攻を開始した。マーキュリー回路の搭載でパワーアップし、以前より俊敏な動きが可能になったのだろうが、人質を取られても全く動じないどころか攻撃の手を止めないので凄い。
しかし、いつの間にかチコとマコがGODに捕まっており、鉄塔の上で捕縛されていた。さすがにXライダーも高所にいる2人を助けることが出来ず、攻撃を止めざるを得なくなってしまう。
卑怯なのが自分の良いところと勝ち誇るトカゲバイキングは人形を渡し、変身解除した上で降伏することを要求。Xライダーも要求を飲み、人形を渡して捕縛される。
子供に甘言で迫り、卑怯を誇るトカゲバイキングのキャラの濃い言動が印象深い。

上手く人形を奪い、神敬介を捕えた大金星を挙げたトカゲバイキングを、お前にしては上出来だと褒めるキングダーク。お前にしては~と枕詞をつけられているあたり、随分と過小評価されていたようだ。子供に対する気持ち悪い態度や卑怯を誇る性格のせいだろうか。
上機嫌のトカゲバイキングは、捕えた神敬介たちを嬲り殺してやろうと意気込む。
しかし、人形から設計図を取り出そうとしたトカゲバイキングは、人形の中身が空っぽであることに気づく。設計図はユキがいつの間にやら取り出していたのだ。
ぬか喜びさせたことに怒るキングダーク。
恥をかかされたトカゲバイキングはユキへの殺意をみなぎらせる。

逃亡したユキはおやじさんと合流し、神敬介やチコとマコが捕まったことを話す。
ユキの案内で助けに向かったおやじさんだが、運転していたジムニーのエンジンが突然不調に。
おやじさんがエンジンを調べると、エンジンに巨大なトカゲが群がり故障させていた。
さらにトカゲバイキングが姿を現し、ユキを再び攫う。
更に現れたGOD戦闘工作員に対して善戦するものの、おやじさんもついに捕まってしまった。
一方その頃、GODによって縛られ、足首を埋められ身動きが取れないチコとマコは、GOD戦闘工作員によって燃える石を投石機で投げつけられる拷問を受けていた。チコとマコはいつ石が命中するかわからない恐怖に怯えながら、神敬介の助けを信じて恐怖に耐える。
だが神敬介も、トカゲバイキングの指示で炎が揺らめく竈門の中に閉じ込められる処刑を待つのみになっていた。連行されてきたおやじさんの目前で、神敬介は竈門に入れられてしまう。
さらに今度はチコとマコの元にユキと共に連行されたおやじさんは、恐怖で震える2人を、きっと神敬介が助けに来てくれると気丈に励ますのだった。

竈門の中で高熱に苦しむ神敬介。一方、トカゲバイキングもおやじさんたちへの投石の準備を進める。あわや立花コーヒーショップ一行が全滅かと思われたその時、神敬介は炎の高熱で自らを縛る鎖を溶かすことを思いつく。見事に鎖を断ち切った神敬介は大変身。
炎の投石による処刑執行の直前、クルーザーでXライダーが駆けつけた。
人を嬲り者にして始末しようとしたトカゲバイキングに、Xライダーの怒りが爆発する。
投石機を逆用し、投石で向かってくるGOD戦闘工作員を蹴散らすXライダーは、逃亡を図ったトカゲバイキングを追跡。「突撃仮面ライダーX」が流れるが、歌詞の「抜くぞライドル」がライドルを抜かなくなった今、どこか寂しい。
クルーザーで追いつかれながらも逃走用の車を降り、とんでもない斜面を走って下っていき、全力で逃げを打つトカゲバイキングだが、転倒してついにXライダーに追いつかれてしまう。
広大なロケーションを活かしたトカゲバイキングの逃亡劇はある意味見応え抜群だ。
足場の悪い地形で蹴り飛ばされ続けるトカゲバイキングは、反撃もろくにできぬまま武器である斧と盾を取り落としてしまい、Xライダーに斧を投げつけられ片腕を切断された。
そこにマーキュリーパワーを発動したXライダーは「空中地獄車」を繰り出し、トカゲバイキングを倒す。ユキの両親も無事に元に戻り、那須高原りんどう湖ファミリー牧場に平和が戻った。
そしてRS装置の設計図の欠片も残り2枚になったが、未だGODが持つ設計図の欠片は1枚のみ。
あまりに不甲斐ないトカゲバイキングにとうとうキレたキングダークは、自分が動かねば何も出来ないのかと部下に怒りを見せ、ついに立ち上がるのだった。

キングダークが立ち上がり動き出すのにRS装置が必要という当初の設定は、RS装置が「全ての物質をエネルギーに変える」装置であり、全ての物質をエネルギーにすることでキングダークが動くエネルギーを賄う、という展開だったと思われるが、複数の脚本家が参加する中での伝達ミスか、あるいは意図的な変更だったのかは定かではないにしろ、「全ての物質のエネルギーを消す恐怖の装置」として多くの話数が展開されたことで、キングダークが立ち上がることそれ自体にはRS装置は関係がなく、あくまで全ての物質のエネルギーを消すことでキングダークによる大破壊を行うのが目的、ということになったようだ。

どうしても評価が分かれがちであるRS装置設計図争奪戦編だが、RS装置とキングダークの関係を明確かつ統一し、自らが最終兵器であるキングダークが動き出すためにRS装置完成を狙うGODと、キングダークによる大破壊を防ぐために奔走するXライダーの攻防戦を完遂していれば、複数話数をまたぐ縦軸を中心にした連続ドラマ的な作風としてシリーズに新たな魅力を加えた意欲作として完成することも可能だったとは思えるので、ただ惜しい。序盤の涼子・霧子姉妹の謎が縦軸として展開した連続ドラマ的作風が見事だっただけに余計にそう思う。

兎にも角にも、いよいよ終局へと向かいつつあるRS装置設計図争奪戦。
那須高原を舞台にした戦いは、次回へと続く。

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