「超人機メタルダー」第10話「超絶技!名曲ロボットのバイオリン攻撃」感想

2024年3月11日月曜日

感想 超人機メタルダー

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あらすじ

戦闘ロボット軍団・烈闘士ラプソディの弾くバイオリンの音色に戦意が薄れるメタルダー。
思い出のバイオリンにはとある秘密が隠されていた。
メタルダーは状況を打開すべくシルバーカークスのコンピューターにアクセス。
自身の強化策を探るが、コンピューターは強化不可能との結論を下す。
「君はロボットにしてロボットにあらず」という言葉に込められた古賀博士の真意とは…。

平和の願いを込めた旋律の記憶 人の心が超人機を成長させる

平和への願いをその胸に秘めながら、戦争によってその命を落とした古賀竜夫。
その記憶を古賀博士によってインプットされた剣流星は、古賀竜夫が望んだ平和な世界を守り抜くために、戦火をもたらそうとするゴッドネロスと戦う宿命を背負っている。しかし、古賀竜夫の記憶を受け継ぎ、人の心を持って生まれたことは、メタルダーにとって弱点でもあった。
古賀竜夫の人となりを知るゴッドネロスは、古賀竜夫が音楽をこよなく愛していたことに目をつけ、剣流星が古賀竜夫の音楽を愛する記憶をも受け継いでいると推測。
音楽を愛する心を利用してメタルダーを抹殺せんとする。

ゴーストバンクでは、ゴッドネロスがロボットの改造を行っていた。
ロボットに戦闘回路を埋め込んだゴッドネロスは、メタルダーの戦闘データを分析し、Gキックやレーザーアームといった必殺技を装甲だけで防ぐのではなく両腕と両肩にショックアブゾーバーを搭載することで受け止めるようにするなど、次々に強化改造を行っていく。
古賀博士の息子、古賀竜夫は子供の頃からバイオリンの名手だったことを知るゴッドネロスは、戦争がなければバイオリニストになっていたであろう古賀竜夫の音楽の才能を、古賀博士が古賀竜夫の記憶とともにメタルダーにインプットしているに違いないと推測。
メタルダーの戦意を、音楽を使って削ぐために、古賀竜夫と同じバイオリンの名手である音楽ロボットを改造して戦闘ロボット軍団烈闘士・ラプソディを完成させたのだ。

「兄弟」や「夢」への関心に続き、今回ゴッドネロスがメタルダーのウィークポイントとして狙ったのは古賀竜夫から受け継いだ音楽を愛する心。幾多の戦闘の中で、既にメタルダーが人間らしい心を備えた機械、超人機であることは否定できない事実となっていた。
ゴッドネロスはメタルダーが持つ人間らしい心は古賀竜夫がモデルになっていると推測し、彼が持っていた音楽を愛する心を受け継いだことがメタルダーの弱点であると分析したのだろう。

戦闘ロボットとして生まれ変わったラプソディに驚きを隠せないばかりか、バイオリン弾きのロボットがいきなり烈闘士に出世したことに不満を漏らすネロス帝国軍団員たち。
軽闘士より下級の存在である音楽ロボットがゴッドネロスに直々に改造され飛び級で烈闘士に出世したことに不満を漏らすクールギンは、タグ兄弟を呼び出してラプソディの相手をさせる。
タグ兄弟は戦闘用ではない音楽ロボットの相手として呼び出されたことに不満を漏らすが、ラプソディの不遜な態度に怒り、兄弟揃ってラプソディに襲いかかる。
しかし、ゴッドネロス直々に強化改造されたラプソディの実力の前に、タグ兄弟は武器を破壊されてしまった。どうにもメタルダーに敗北後調子が出ないタグ兄弟はクールギンに叱責される。
こうして軍団員に実力を認めさせたラプソディは、バイオリンの演奏を始めた。

シルバーカークスで訓練をする剣流星の横で、スプリンガーはまたアニメ「超電磁ロボ コン・バトラーV」を見ていたが、大将軍ガルーダが鳥の姿から人間の姿に戻るシーンで次回に続いてしまった。自分たちと同じロボットが活躍するコン・バトラーVがお気に入りのようだ。
コン・バトラーVの放送が終わったことを残念がるスプリンガーがチャンネルを変えていると、偶然にも音楽ロボットがバイオリンを演奏している様子がモニターに映る。
バイオリンの演奏を初めて聞いたはずの剣流星だったが、何故かその音色に聞き覚えがあった。
剣流星は何処かで聞いたような音色に誘われ、演奏ロボットが開く演奏会に出かける。

演奏会の会場で偶然にも舞と出会い、舞の口からストラディバリウスの名を聞いた剣流星。
何処かで聞いたような懐かしい響きに回路を刺激された剣流星は、音楽ロボットの演奏を真似し始めた。やはり、古賀博士は剣流星に古賀竜夫の音楽の記憶をインプットしていたのだ。
ゴッドネロスの思惑通りに事が運んでいる確認した美人秘書は、音楽ロボットに指示を出す。
音楽ロボットは偽装を解き、ラプソディの姿を現すと剣流星に襲いかかる。
子供を助けていた舞が避難を完了したのを確認すると、剣流星はメタルダーに瞬転。

しかし、バイオリンを演奏し始めたラプソディの姿を見たメタルダーは動けない。
古賀竜夫が憧れていたバイオリン・ストラディバリウスを攻撃することは出来なかった。
演奏を中断したところを攻めようとするメタルダーだが、メタルダーの能力を分析して改造されたラプソディの頑強さと、ラプソディのバイオリンの演奏によって音楽を愛する心を刺激され戦意を削がれ続けた結果、メタルダーの攻撃はラプソディに全く通用しない。
メタルダーはサイドファントムを呼び脱出したが、そこに機甲軍団の追跡が迫る。大軍団に待ち伏せされ、砲撃を受けながらもメタルダーはなんとかシルバーカークスまで帰還する。

Gキックとレーザーアームという、これまでネロス帝国軍団員を撃破してきた技の威力を分析、その衝撃を吸収するショックアブゾーバーをラプソディに搭載した上で、さらにメタルダーの戦意を音楽で削ぐことで全力を出させまいとするゴッドネロスの十重二十重のメタルダー対策が見事に功を奏し、メタルダーが追い詰められる展開。
単にメタルダーの性能を上回るだけのロボットでは、無限の可能性を秘めたメタルダーを完全に押さえ込むことは不可能と判断した上で、その「心」こそがウィークポイントであると分析をしているゴッドネロスも、敗北に甘んじているわけではなく最大の脅威であるメタルダーの強みと弱みを冷静に把握して、対策を立てている。

自分の能力を研究し尽くしたネロス帝国に対抗するべく、剣流星はシルバーカークスのコンピューターを調べ、パワーアップの手段を探っていた。
音楽を聞くと戦意が薄れることへの疑問を抱えながらも、自分はロボットなので部品を交換すれば強化できると考えた剣流星だが、コンピューターは強化不可能という結論を出す。
戦闘マニュアルコンピューターを搭載した電子頭脳の戦闘回路と、知識や感情、理性といった人間と変わらない能力を持つ人間回路の2つの能力を持つメタルダーは、一方だけを強化すればバランスが崩れてしまいその性能を発揮できないのだ。
コンピューターは、「君はロボットにしてロボットにあらず」とメッセージを出す。

メタルダーは「人造人間キカイダー」のキカイダーのオマージュ・現代風アップデートしたキャラクターであり、青と赤の二色に分かれたカラーリングはキカイダーを踏襲したものだ。
キカイダーは青と赤のハーフボディを「不完全な良心」の現れであり、プロフェッサー・ギルの笛で不完全な良心回路が狂ってしまえば悪の存在になる不完全さの象徴であるとした。主題歌の「ゴーゴー・キカイダー」の「正義と悪との青と赤」はそれを端的に説明している。
一方で、メタルダーの青と赤のハーフボディは、戦うための機械としての機能を持つ戦闘マニュアルコンピューターと、人間としての理性や感情を持つ自省回路を持つことの現れだ。
つまり、メタルダーのハーフボディは機械としての機能を司る青と人間としての感情を司る赤を双方備えた、機械を、人を超えた超人機という存在の象徴であり、それはキカイダーの不完全さの現れを踏襲したものではなく、戦うための機械ではなく、心を持つ人というだけでもない、機械と人を超えた完全なる超人機という存在を象徴するものである。
デザイン的にはキカイダーのオマージュを捧げながら、二色に分かれたボディに異なる意図を持たせることで「人造人間キカイダー」シリーズが描いた人の心を持った機械というテーマをより深化させようとした、現代風アップデート作品としての矜持を感じる設定だ。

「君はロボットにしてロボットにあらず」というシルバーカークスのコンピューターが出したメッセージは、古賀博士が超人機計画で生み出したロボットに託した願いの現れだろう。
息子の、古賀竜夫の平和を願った人の心を持って生まれた超人機に、戦うためだけの機械ではなく、人の心を持って成長する超人機として生きてほしいという願い。
戦争の道具として開発された超人機に人の心を持たせようとした古賀博士は、心ある存在を戦う道具にして、息子の命を奪った戦争を憎んでいたことが伺える。
だからこそ古賀博士が第1話でメタルダーをネロス帝国と戦うために目覚めさせようとした時に、息子の墓前に謝っていたのだろう。それは、かつて平和を願っていた息子を戦う道具として特攻させた戦争の悲劇を、今また平和を願う息子の心を受け継いだ超人機をネロス帝国と戦わせるために目覚めさせることで繰り返してしまうことへの悔恨の現れだったのだと思う。
戦うための道具にしないために息子の心を与えて生み出した超人機を、世界の平和を守るためとはいえネロス帝国と戦わせるために目覚めさせないといけない矛盾に、古賀博士の心が引き裂かれようとしていたことも想像に難くない。

一方ゴッドネロスは、古賀博士がメタルダーに人間的な要素を持たせすぎたことが弱点であると睨んでいた。バルスキーは幾多のシミュレーションを行い、その結果ラプソディの敗北はあり得ないと確信する。ゴッドネロスはラプソディを再び出撃させた。
再び音楽ロボットに偽装したラプソディは、バイオリンを弾きメタルダーを探し始める。

剣流星は舞に頼み、バイオリンを手にしていた。
ラプソディにやられた傷がもう治っていることを感心し、悪気なく流石は超人機と褒める舞。
だが、その言葉は人間に憧れる剣流星の心を傷つけるものだった。
やや気まずい空気が流れるが、剣流星は話題を変え、ラプソディの襲撃の際に子供をおんぶしてベビーカーを押し、二人の子供を一度に助け出した舞を称賛する。
無我夢中だったという舞は、それは少女を助けたい思いが産んだ力であり、精神力がなせる技であると話す。心を持つ人間には、危機に陥った時に自分を奮い立たせる力が隠されているのだ。

バイオリンを持つと、剣流星の回路の中に眠る古賀竜夫の音楽の記憶が呼び起こされた。
記憶に導かれた剣流星の演奏と、ラプソディの演奏がシンクロする。
古賀博士がインプットした古賀竜夫の記憶、想い出が溢れる感覚に包まれた剣流星は、戦死した古賀竜夫の音楽を愛する思いと、平和への願いを込め弾いたバイオリンの思い出を感じ取る。

そこに、ラプソディが現れた。剣流星は舞を逃がすとラプソディの元へ向かい、メタルダーに瞬転。だが、ラプソディは再びバイオリンを弾いてメタルダーの戦意を削ぐ。
戦意が高揚せずに実力を発揮できないメタルダーに、ラプソディはバラの花の爆弾やバイオリンの弓形の剣で攻撃を加える。戦意を削がれ続けるメタルダーは膝を付きながらも、舞が子供たちを助ける際に見せた精神力を思い出して戦意を奮い立たせる。
古賀博士によって古賀竜夫の平和への願い、音楽を愛する心を受け継いだ自分は、人間の精神をインプットされたロボット、機械と人を超えた超人機であることを認識したメタルダーは、それこそが自分の誇りであるとアイデンティティを確立した。

前回、古賀竜夫が子供時代を過ごした村を訪れ古賀竜夫の少年時代の思い出を認識し、今回はバイオリンの音色を通して古賀竜夫の音楽を愛する想いを知ったメタルダーは、自分がただのロボットではない、人の記憶と心を持ったロボット・超人機であることに誇りを抱くに至った。
古賀竜夫から受け継いだ心と愛が、メタルダーが自らの存在を確立する道標となった。
それが古賀博士が「君はロボットにしてロボットにあらず」という言葉に込めた願いの真意。
古賀竜夫の想い出を認識し、その思い出に宿った人の思いによって成長を遂げていくメタルダーはただ戦うために作られたロボットではなく、人の心を持ったロボット・超人機だからこそ到達できる、人の心を持ち、愛を宿した機械へと自らを成長させるに至ったのである。

誇りを持って冥土へ行けとさらなる攻撃を仕掛けようとしたラプソディに、メタルダーは戦意を高めていく。そして、メタルダーの人間回路から戦闘回路に精神波が送られ作用した。
左右の電子回路が共鳴し、パワーが上昇する。メタルダーは単なる部品の交換でパワーアップするロボットではなく、人の心を獲得していくことで自らの能力を成長させていく超人機なのだ。
これまで以上の威力を持ったレーザーアームの一撃がラプソディの装甲を切り裂いた。
さらにメタルダーはラプソディの戦闘回路を引きずり出し、ラプソディに勝利する。
完璧に強化したはずの自分の敗北に驚愕するラプソディ。

とどめを刺そうとしたメタルダーに、ラプソディは戦闘回路を破壊されてもう戦えないと告げ、せめて音楽ロボットだった頃から誇りとしてきた音楽回路は残してほしいと懇願する。
それを承諾したメタルダーにラプソディは自分の演奏を聞いてほしいと頼む。
ゴーストバンクで音楽ロボットとして音楽を奏でてきたラプソディだったが、ネロス帝国に音楽を解する者は一人もおらず、かつて音楽を解する素振りを見せていたゴッドネロスすら、音楽を戦いの道具に利用してラプソディの音楽を汚した。
だがメタルダーは、心を込めてラプソディの音楽を聞き、その心を動かされていた。
ラプソディは最後に、自分の演奏を解するメタルダーに演奏を聞いてほしいと願ったのだ。
それを承諾したメタルダーは、ラプソディの演奏に耳を傾ける。
バイオリンの旋律が響く中、機甲軍団のダーバーボが、メタルダー抹殺に失敗したラプソディの処刑に現れた。砲撃を受けながらも、バイオリンの演奏を止めないラプソディだったが、ついにダメージが限界を超え、爆発し動きを止める。
メタルダーは、ラプソディが命をかけて残した演奏を称賛するのだった。

ゴッドネロスは完璧に強化したはずのラプソディの敗北に不可解さを感じていた。
そして、密かにラプソディは音楽ロボットに戻り、ゴーストバンクで生き続けていた。
だがメタルダーは、ラプソディが生きていることを知らない。

ゴッドネロスは、メタルダーが人の心を持っていることを「弱点」と捉え、ラプソディにメタルダーを上回る能力を持たせた上で、その心を攻めて勝利を盤石のものにしようとした。
しかし、古賀博士はメタルダーに人の心を与えたことで、その心によって自らを成長していく、無限の可能性をメタルダーに持たせており、それが今回の戦いの決め手となった。
「心」を不安定な弱点と見るか、自らを成長させる原動力となるものであると肯定するか。
ゴッドネロスと古賀博士が「心」について相容れない信念を持っていたことが示唆された。

第7話でタグ兄弟の出陣にあたり自らバイオリンを弾き音楽を解する教養を見せたゴッドネロスだったが、その時もあくまで一流の音楽家の心は一流の存在だけが解することが出来る、と、音楽は自らが一流の存在であると誇るための道具に過ぎないと思っているような発言をしていた。
ラプソディがゴーストバンクには音楽を解する者は一人もいない、というのも、ゴッドネロスですら音楽を自らを大きく見せるための道具にしか思っていないことを悟っていたのだろう。
そして自らを強化改造しメタルダー抹殺の道具に音楽を利用しようとしたことで、表面上はゴッドネロスに従えど内心では失望していたようだ。

だが一方で、ゴッドネロスがたとえ自分を大きく見せるためとはいえバイオリンを解し、古賀竜夫のバイオリンの才能を知っていたことにも謎が残る。
作戦に失敗したラプソディを音楽ロボットに戻し助命しているのも、バイオリンの名手である彼に何か思うところがあるのかもしれない。
古賀竜夫とゴッドネロスの間の関係に謎を残しながら、この回は幕を下ろす。

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