「仮面ライダーX」第35話「さらばXライダー」感想

2024年3月8日金曜日

仮面ライダーX 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

GODの攻撃が激しさを増すなか、ついに大巨人・キングダークが立ち上がった。
仮面ライダーXは命に代えてもキングダークの大破壊を阻止するため立ち向かう。

動き出した鉄巨人との死闘 神敬介、七つの海への旅立ち

いよいよ「仮面ライダーX」も最終回。
父の仇を討つためにGODと戦ってきた神敬介の前に立ちはだかる最後の怪人は、父のサソリジェロニモの仇を討つために神敬介に怒りを燃やすサソリジェロニモJr.。
神敬介と同じ怒りを燃やす怪人が最後に立ちはだかるという構図は因果なものを感じさせる。

RS装置完成を阻止され、怒りのままに活動を始めたキングダーク。神敬介はキングダークの全東京攻撃を阻止するため、おやじさんたちと手分けしてGODのアジトを捜索していた。
この正念場に、一文字隼人と風見志郎がどこに行ったのかとぼやくおやじさん。
3人揃っていよいよ決戦、という時にいなくなってしまっているので、当然の疑問ではある。
というか、この台詞が入っているのに結局最後まで助けに来ないまま終わるのも珍しい。
神敬介は先輩もそれぞれ活動しているのだから、あてにしてはいけないと捜索を続ける。
流石、戦い始めた当初にあてにしようとしていた神ステーションを大爆破される荒療治を受けて否応なしに自立を促されただけはある立派な心意気だ。

GODのアジトを捜索するおやじさんのジムニーを、老人が身を挺して止めた。
老人は孫が急病のため病院まで運んでほしいと必死に訴える。同情したマコの訴えで老人の家に向かうことになったおやじさんだが、老人が案内した家は、とっくの昔に廃墟になっている様子だった。さらにいつの間にか老人は姿を消してしまい、訝しむおやじさん。
すると、巨大なサソリがチコとマコを襲う。巨大なサソリはGOD悪人軍団のサソリジェロニモJr.の使いだった。姿を現したサソリジェロニモJr.はおやじさんたちを捕らえてしまう。

COLに戻っていた神敬介は、何時まで経っても戻ってこないおやじさんたちを心配していた。
そこに、主が不在のジムニーが戻ってきたが、ジムニーはサソリジェロニモJr.が操る巨大なサソリに操縦されていた。サソリを通じて連絡してきたサソリジェロニモJr.は、神敬介が持つRS装置の設計図の欠片の最後の1枚とおやじさんたち3人の人質交換を要求。
おやじさんたちを見捨ててはおけない神敬介は、設計図最後の1枚を持って取引現場に向かう。

最終回登場怪人なのに実質的な再生怪人であるサソリジェロニモJr.。
とはいえ、再生怪人ながら父のサソリジェロニモの仇を討とうとする独自のパーソナリティーを持ち、オートバイの扱いに長けXライダーと互角のテクニックを持つとキャラも立っている。
胸に大きく「JR」と書くあたりの自己アピールの強さも面白い。
神敬介が持つ設計図の最後の1枚は、前回、一文字隼人がすり替えたRS装置中枢部の設計図。
中枢部の製法がわからない以上、GODもRS装置を完成させることは出来ない。
XライダーとGODの、最後の設計図を巡る攻防戦が始まろうとしていた。

神敬介が取引現場に到着すると、おやじさんたちは逆さ吊りにされていた。
登場してから驚き役、絶叫クイーンとしての役回りを担ってきたチコとマコだが、最終回ではついに逆さ吊りにされて捕らえられると最後にして最大級にひどい目に遭っている。
サソリジェロニモJr.はオートバイを操り取引現場に到着。死んだはずのサソリジェロニモが生きていたことに驚愕する神敬介に、自分はその息子のJr.であると告げるサソリジェロニモJr.。

おやじさんは自分の命はどうなってもいいので、世界を守るため設計図を渡さないように叫ぶ。
しかし、おやじさんを黙らせ、残酷にも戦闘工作員にチコとマコの顔の皮をナイフで剥ぎ取らせようとする凶悪なサソリジェロニモJr.の暴虐に、神敬介はついに設計図を渡す。
俺はGODと違って約束を守るので、人質を開放するように言う神敬介。これまでさんざん偽の設計図を渡したり、設計図を渡した後に力づくの手段に訴えてきたことは考えてはいけない。

もちろん人質を開放する約束を守る気はないサソリジェロニモJr.は、父の仇である神敬介の身体を複数のロープで捕らえると、戦闘工作員が操るオートバイでロープを引っ張り、四方八方に身体を引き裂く牛裂きの刑で処刑しようとする。
チコとマコの顔の皮を剥ごうとするのもだが、やたらとやろうとすることが残虐だ。
しかし、神敬介の鋼の身体はオートバイのパワー程度では引き裂けなかった。
神敬介はXライダーに大変身。父の仇を取るべくGODと戦ったXライダーと、父の仇を取るべくXライダーを倒そうとするサソリジェロニモJr.の、互いに父の仇を討つための死闘が始まった。

Xライダーはクルーザーを操り、GOD戦闘工作員のオートバイ部隊を撃破。
そこにサソリジェロニモJr.がXライダーにオートバイでの1対1の勝負を挑んできた。
まるで馬に乗るようにマシンを自在に使うサソリジェロニモJr.の凄腕のテクニックに圧倒されたおやじさんは、サソリジェロニモJr.にはインディアンの血が流れていることを確信する。
お互いにジャンプしての交錯で、サソリジェロニモJr.の吹き矢を腕に受けてしまったXライダーはクルーザーをコントロールできず地上に落下し、爆炎の中に消えてしまう。
Xライダーがパワーアップしたように、サソリジェロニモJr.もパワーアップしていたのだ。

サソリジェロニモJr.は再びおやじさんたちを捕らえ、地球の最後を見せつけんとする。
Xライダーが死に、もはやGODに立ち向かう手段がない絶望的な状況を嘆くおやじさん。
しかしそこに、生きていた神敬介が駆けつけた。
神敬介は死んだと見せかけて姿を消し、サソリジェロニモJr.の後を密かに追うことで、いくら捜索しても見つからなかったキングダークのアジトを突き止めようと一計を案じたのだ。
おやじさんたちを救出した神敬介はついにキングダークのアジトに突入するが、既にアジトはもぬけの殻だった。閉じ込められた神敬介は、アジトの崩壊に巻き込まれる。
そしてついに、キングダークが地上に姿を現した。

キングダークはその巨体で大地を揺らし、神敬介のいる地下のアジトを崩壊させていく。
神敬介はXライダーに大変身して地上に脱出し、キングダークに戦いを挑む。だが、キングダークはちっぽけな身体で自分に立ち向かう愚かさを嘲笑いながら、破壊光線やロケット弾の強力な火力でXライダーを責め立てる。その猛攻に、Xライダーは手も足も出ない。
キングダークがおやじさんたちを始末しようと巨大な腕を振りかざしたその時を狙い、クルーザージャンプでキングダークに突撃するXライダーだったが、幾多の強敵を粉砕したクルーザーアタックすら、不死身のキングダークには全く通用しない。

おやじさんを潰そうとするキングダークの巨大な腕は実際に造形物を使って表現され、圧倒的な巨体で迫りくるキングダークの脅威を見事に表現している。
多くの強敵に切り札として使われてきた白い弾丸・クルーザーアタックすらキングダークには全く通用しないシーンは、絶望感を否応なしに駆り立てる演出だ。

キングダークの口から放たれる毒ガス攻撃を受けながら、頑強な装甲を誇るキングダークを倒すには口から体内に入り中枢を破壊する一寸法師戦法しかないと決断したXライダーは、意を決して再度クルーザージャンプを決行し、キングダークの口に飛び込んだ。
しかしキングダークは余裕の構えを崩さず、口に飛び込んだXライダーを噛み砕かんとする。
クルーザーが破壊されてしまったが、なんとかキングダークの体内に侵入したXライダー。
しかし、サソリジェロニモJr.の配下の戦闘工作員がキングダークの体内に待機しており、Xライダーを食い止めんと襲いかかる。そして、キングダークは全東京を破壊すべく再び動き始めた。

防護シャッターや毒ガス発生装置、壁から飛び出す杭。
数々の防護装置を突破したXライダーは、ついにキングダークのコントロール室に突入する。
そこにいたのは、脳髄が膨れ上がったような姿をした、異形の人物だった。
白い異形は自らの正体を神敬介の父の親友、呪博士だと明かす。
神敬介も、かつて父から悪魔の天才・呪博士の名を聞いていた。
呪博士は自らがGODであり、キングダークは自分の体の一部分であると明かす。
呪博士を止め、キングダークを停止させるべく殴りかかろうとしたXライダーだったが、そこにサソリジェロニモJr.が現れ、槍でXライダーの身体を背後から串刺しにしてしまった。

自らがGODそのものであるという衝撃の真実を明かした呪博士。
「仮面ライダーX」当初のGOD機関は世界の3大大国が密約を交わし日本を壊滅させようとした組織であり、頂点に立つGOD総司令が神話怪人に指令を下すというシーンが印象的だったが、呪博士の自分がGODそのもの、という発言はこれらの設定とは相反している。
一方で、キングダーク登場後のGODはキングダークを頂点に戴くワンマン組織であったため、キングダークが呪博士の体の一部分、ということも踏まえれば、キングダーク登場以後のGODにおいては呪博士がGODそのもの、という発言は正しい。
「仮面ライダーX」についての記述に熱量の高さを見せる新潮ムック「仮面ライダー熱闘伝」では、このGODの描写・設定の変更についてツッコミを入れつつも、アポロガイストが倒されたことで大国が密約を交わしたGODは解散もしくは消滅し、自分の手勢を率いていた呪博士が組織の軍勢と野望を引き継いだのでは、と解釈していた。
個人的にも、この解釈が一番番組内描写と整合性が取れていると感じている。

東京へ迫るキングダーク。勝ち誇る呪博士とサソリジェロニモJr.だが、Xライダーは自らを貫く槍をへし折り、最後の反撃を開始した。怒りのライドルを引き抜いたXライダーに、呪博士は自らを殺せばキングダークが爆発しXライダーも死ぬと宣告。
だが、GODの犠牲になった父や涼子、霧子姉妹に、私情を捨て皆のXライダーになることを誓ったXライダーは、自らを犠牲にしてでも世界を守る覚悟を決めていた。
Xライダーはライドルホイップで呪博士とサソリジェロニモJr.を貫く。
今一歩のところで野望を阻まれた呪博士は、Xライダーを道連れにする呪詛とともに果てた。
そして、中枢である呪博士を失ったキングダークは爆発する。Xライダーもろとも…。

キングダークの破壊とともにGODは壊滅し、世界に平和が戻った。
だが、神敬介を失い悲嘆に暮れる立花コーヒーショップ一同。
COLに戻ったおやじさんたちは、生きていた神敬介からの手紙を発見する。
神敬介は、世界中に散った4人の先輩ライダーと同じように、新しい戦いのために世界に旅立つことを決意していた。神敬介は、おやじさんたちにXライダーの名を辱めない活躍をすることと、いつの日か必ず戻ってくることを約束し、七つの海を巡る悪との戦いの旅に向かう。
平和な明日を作れと願いを託した、父の叫びの如き波の音を聞きながら。

こうして、XライダーとGODの戦いは終わった。
振り返れば、「仮面ライダーX」は常に試行錯誤を続けた番組だった。
涼子・霧子編の、謎が謎を呼ぶ連続ドラマ展開の導入。
生物モチーフから離れ、神話を題材にしたファンタジックな怪人たち。
アポロガイストという、ライダーにも負けず劣らずの流麗なビジュアルを持ったライバルキャラクターの登場と、アポロガイストとの対決が主軸になるアポロガイスト編。
ロボットアニメ・ブームを敏感に取り入れ、巨大な造形物で圧倒的な迫力を演出した大巨人キングダークの圧倒的な存在感と、世界を揺るがす発明・RS装置を巡る設計図争奪戦を縦軸に展開するドラマの魅力で視聴者の興味を惹いたキングダーク編。
その試行錯誤の全てが上手く機能したわけではなく、消化不良に終わった設定も数多い。
しかし、「変身ブーム」を牽引した「仮面ライダーシリーズ」の第3作として、「仮面ライダー」「仮面ライダーV3」のドラマ展開をただ踏襲・焼き直しで新作を作っていく守りの姿勢ではなく、先に挙げた様々な新機軸を貪欲に取り入れ、シリーズに新風を吹かせようとした姿勢は、後に平成の時代、平成ライダーと呼ばれる作品たちが「仮面ライダー」という作品の枠を広げるために作品ごとに新機軸を果敢に取り入れていった姿勢の先駆けになるものだ。
「変身ブーム」のトップランナーとして、かつて「仮面ライダー」が時代遅れとされていた「仮面モノ」を再興させ等身大変身ヒーロー路線を確立させたように、常に新境地を切り開く姿勢こそが「仮面ライダー」に求められていた。新境地を切り開こうとした「仮面ライダーX」の試行錯誤、藻掻きはシリーズの枠を確実に広げた、意義あるものだったはずだ。

こうして新境地を切り開こうとした「仮面ライダーX」終了後、「原点回帰」を掲げた新たなる仮面ライダーが誕生する。しかしそれは、仮面ライダーの原点を「異形」と「社会からの孤独」であると捉え、それを換骨奪胎して全く新しいヒーローとした異形の仮面ライダーだった。
ただ原点に戻って焼き直しをするのではない、あくまで勘所を踏まえた上で新たな作品へと昇華させる制作陣の姿勢が、現代に至るまで異色作と呼ばれる「仮面ライダーアマゾン」を生む。
それも、「仮面ライダーX」が「仮面ライダー」の枠組みを広げることに成功したがゆえであることは、間違いない。さらば、Xライダー!

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