「超人機メタルダー」第11話「勇者の追撃!天空にそそりたつ巨人!!」感想

2024年3月26日火曜日

感想 超人機メタルダー

t f B! P L

あらすじ

ネロス帝国に伝説の巨人としてその名を轟かせた歴戦の勇士、ビッグウェイン。
戦いに疲れ、ゴーストバンクから逃亡した彼は、自らの逃亡を幇助した罪で処刑を言い渡されたゴチャックを救うため、メタルダー抹殺というラストチャンスに全てを懸ける。

老兵の挽歌 戦いに疲れた伝説の巨人の最期

「超人機メタルダー」という作品の最大の特色は、第1話から多数の敵キャラクターを揃え、「軍団」としての敵組織を描き、主人公のメタルダーだけでなく、敵のネロス帝国軍団員もまた濃密なドラマ展開を見せた作風にこそある。
この第11話はその「超人機メタルダー」の特色が最大限に出たエピソードで、本来、番組の主人公であるメタルダーの出番は最小限に抑えられ、剣流星としての出番すらない、ネロス帝国内部でのインサイドストーリーを描いたエピソード。
戦闘ロボット軍団の豪将として幾多の戦果を挙げながら、未来ある若者の命を奪い続ける戦いという行為に疲れ、修理ロボットとして生きる道を選んだ男、ビッグウェインが、自らのために処刑を言い渡されたゴチャックを救うために挑んだ最期の戦いを描いたエピソードとなっている。

こうした敵側の視点にフォーカスしたエピソードが成立した背景は、「超人機メタルダー」という番組の商品展開が主人公のメタルダーだけでなく、敵のネロス帝国軍団員のフィギュアも展開した「ゴーストバンクシリーズ」が主軸の商品展開だったため。
敵キャラクターの描写も主人公のメタルダーの描写と同じく商品の販促シーンであるという、主人公と敵キャラクターを同列に置く商品展開を行った、ヒーロー作品としては異例ずくめの作品である「超人機メタルダー」だからこそ成立したエピソードになっている。

ネロス帝国は、唯一その脅威となるメタルダーを抹殺するため、次々に刺客を送りこんでいた。
その中には、功名にかられ、自分を主張しようとする若い軍団員もいた。
その中のひとりである、戦闘ロボット軍団の軽闘士・ブルキッドは、持ち前の俊敏な動きでメタルダーを攻め立てるが、その攻撃は通用せずメタルダーに敗れてしまう。
ブルキッドが高所からメタルダーに蹴り飛ばされ、砂山を転がり落ちるシーンは地味に危険なスタントシーンで、アクションの見ごたえがある戦闘シーン。

メタルダーを倒して一人前になり、ネロス帝国で成り上がろうとしたブルキッドは、もっと強くなってメタルダーを倒す復讐の念を燃やしていた。
そんなブルキッドは、ゴーストバンクの修理工場で、戦闘ロボット軍団の元・豪将であり、現在は修理ロボットとして働くビッグウェインに修理を受ける。
修理屋に戦闘ロボットの気持ちはわからないと意気がるブルキッドだったが、頭に血が上ったブルキッドをあしらうビッグウェインは、どんなに修理してもすぐ戦いに向かい、破壊されていく戦闘ロボットの修理を行う日々に嫌気がさしていた。

修理を終え、ゴーストバンクにブルキッドを連れて行ったビッグウェインは、そこでモンスター軍団員に絡まれる。軍団の中で地位もない修理ロボットとして、モンスター軍団員に挑発され、殴られても反撃もしないビッグウェインだったが、そこにゴチャックが駆けつけた。
ゴチャックを通して、自分を修理した修理ロボットが、かつてネロス帝国で伝説の巨人と謳われた、戦闘ロボット軍団の元・豪将、ビッグウェインだったことを知るブルキッド。
今は階級がない修理ロボットであり、戦いを忘れた老いぼれだとビッグウェインに侮蔑的な態度を取るモンスター軍団員に、かつて自分を鍛えた師を侮辱されて怒るゴチャックだが、ビッグウェインは今の自分はただの修理屋でしかないとゴチャックを諌める。
ゴチャックの中では、戦闘ロボットでなくなってもビッグウェインは偉大なる師であった。
ブルキッドは、自分を鍛えて強くしてくれるのはビッグウェインしかいないと確信する。

修理工場に戻ったビッグウェインは、戦いに嫌気が差して戦闘ロボットを引退した自分はネロス帝国のどこにも居場所がないのだと語りかける、自らの心に従う決意を固めていた。
ビッグウェインはゴーストバンクから脱走し、その報告を受けたバルスキーは自らの軍団から出た脱走者の始末をつけるために、ゴッドネロスに戦闘ロボット軍団による捜索を進言する。
身勝手な引退の次は逃亡か、というバルスキーの言葉からは、偉大な戦士でありながら、自ら戦いを捨てたビッグウェインのことを認めていない感情が伺える。
多大な戦果を挙げた功績を認め、豪将に取り立てたビッグウェインが自分から戦いを引退したことに、どこか裏切られた気持ちを持っていたのかもしれない。
ゴッドネロスは裏切り者に死の償いをさせるべく、バルスキーに機甲軍団とも協力してビッグウェインを捜索、抹殺するように命じるのだった。

戦闘ロボット軍団と機甲軍団によるビッグウェイン捜索が始まった。
ビッグウェインは空と陸から自分を追跡する軍団員から身を隠すために、かつてよく立ち寄っていた洞窟を訪れるが、そこにゴチャックが現れた。
ゴチャックは自分に戦闘の何たるかを叩き込んだ師であり、敬愛するビッグウェインへ恩を返すべく、無事に追手から逃がすために逃亡の手助けをするために現れたのだった。
ゴチャックの身を思い、早く軍団のもとに戻るように告げるビッグウェインだが、ゴチャックは谷伝いにチェックポイントの狭間にある川を通って逃亡するようにビッグウェインを案内する。
しかし、その様子は戦闘ロボット軍団の雄闘・ジャースに目撃されていた。

ビッグウェインを逃がしたゴチャックはバルスキーに嘘の報告をするが、ジャースの密告によってその嘘は見抜かれてしまい、逃亡幇助の罪で銃殺を言い渡され、重機に鎖で繋がれてしまう。
そこに、ブルキッドが声をかけてきた。ビッグウェインに会って教えを請い、強くなるためにビッグウェインの行方を尋ねるブルキッドに口を閉ざすゴチャックだが、足についていた泥を確認されてしまい、ビッグウェインが通った場所をブルキッドに知られてしまう。
ブルキッドはビッグウェインの行先に先回りし、ついにビッグウェインと対面する。
自分を捕まえることで初手柄を挙げられると自嘲するビッグウェインに、ブルキッドは捕らえる気はなく、メタルダーを倒すために自分を鍛えてほしいのだと請うのだった。

ブルキッドはビッグウェインの伝説をいくつも知っていた。
軍規を破った者を一瞬で倒し、放った矢がいくつもの国の運命を書き換えた。
輝かしい戦歴を挙げ、伝説の巨人と謳われたビッグウェインのようになるために自分を鍛えてほしいと請うブルキッドにビッグウェインは昔の自分は死んだと告げ、その場を去ろうとする。
そんなビッグウェインにブルキッドは攻撃を仕掛けた。自分の眠った戦士としての本能が目覚めてしまうことを恐れ、ブルキッドを諌めるビッグウェインだが、ブルキッドはそうして本気で戦ってくれることが自分の本望だと告げ、攻撃を続ける。
しかし、ビッグウェインの右腕から放たれた反撃の矢は、ブルキッドの回路を正確に居抜いた。
伝説の巨人と謳われたビッグウェインに相手をしてもらえたことを幸せだと笑い、力尽きて倒れるブルキッドを目の当たりにしたビッグウェインは、戦意も枯れたはずの自分が、血塗られた右腕でまた未来ある若者の命を奪ったことに絶望する。

もうブルキッドのように、無謀にも自分に挑んで命を散らす若者を見たくないがために戦いを引退し、戦士であることを捨てたが、幾多の命を葬った血塗られた右腕がある限り、自分に挑んでくる者が現れ続けるという、逃れられない戦士の宿命がビッグウェインを苦しめていた。
ブルキッドから最期に、ゴチャックがビッグウェインの逃亡幇助で銃殺を言い渡されたことを告げられたビッグウェインは、追手に討たれることへの未練はないが、自分などを助けたがために、未来ある若者であるゴチャックが死なねばならなくなった悲劇を阻止すべく、ゴチャックを救うためにゴチャックのもとへ向かうのだった。

戦闘ロボット軍団はビッグウェインを見つけられずにいたが、バルスキーはビッグウェインがチェックポイントの狭間を通って脱出したことを悟り、軍団員を向かわせる。
ゴチャックに、日の暮れまでには片がつくと笑うバルスキー。
かつて自分の責任のもとに助命し、ゴッドネロスの命にも逆らって修理を行ったゴチャックが、軍規を破り、ビッグウェインの逃亡幇助というゴッドネロスへの反逆を行ったけじめとして、自らの責任においてゴチャックを罰する軍団長としての覚悟が伺える態度だ。

そこに、ビッグウェインが現れた。ビッグウェインはゴチャックの助命を乞うが、バルスキーはメタルダーを倒せばゴチャックの処刑を撤回し、助命を認めるとビッグウェインに宣告する。
バルスキーは、この処分がかつて豪将を務めたビッグウェインへの特別の計らいであり、例えメタルダーに敗れても身分剥奪で済ませると告げる。
逃亡の罪を犯したビッグウェインの処刑をゴッドネロスに命じられておきながら、自分を助けたゴチャックの助命のためにあえて姿を現したビッグウェインの覚悟を認め、軍団長としての責任で最大限の配慮を見せている姿は、軍規に逆らった以上直接ビッグウェインやゴチャックの罪を許す事はできないが、なんとか温情をかけようとしている心情が伺える。

ビッグウェインは尾行や手助けは無用と条件をつけ、バルスキーも軍団長の名にかけ承諾した。ビッグウェインはゴチャックに手枷を外してやると告げると、メタルダーの元に向かう。
シルバーカークス付近に辿り着いたビッグウェインがメタルダーを呼ぶと、それに応えるように稲妻が走り、メタルダーが姿を現した。
初手で放った右腕の矢をかわされたビッグウェインは、メタルダーに名乗りを上げ襲いかかる。
銀の矢を放つビッグウェインだが、戦闘経験を積んできたメタルダーは矢を次々に払い除ける。
ビッグウェインはメタルダーの急所を的確に分析し、そこを矢で狙うのだった。

自分のせいでビッグウェインが死地に送り込まれたことに自責の念を感じるゴチャックだが、ふと枷が外れていることに気づく。ビッグウェインが密かに枷を外していたのだ。
ゴチャックはビッグウェインを助けるために、ビッグウェインの後を追う。
その頃、レーザーアームを発動したメタルダーは、ビッグウェインの矢を次々に切り裂く。
だがビッグウェインは俊敏な動きでメタルダーを困惑させ、足に矢を命中させ動きを封じた。
本意ではないがゴチャックのためにメタルダーにとどめを刺そうとするビッグウェインに対し、メタルダーはサイドファントムを呼ぶ。

ビッグウェインの矢をものともせず突進するサイドファントムに飛び乗ったメタルダーを、ビッグウェインは腹部からミサイルを放ち迎撃。メタルダーはミサイルの爆煙に紛れてサイドファントムから飛び降りることでビッグウェインの注意を引き、そこにサイドファントムを突撃させるが、ビッグウェインはサイドファントムを真正面から受け止め、持ち上げて投げ飛ばす。
だが、メタルダーのGキックがビッグウェインの右腕に命中し、矢を封じた。
最大の武器をやられたビッグウェインは左腕からスパイクを出し、なおも反撃するものの、ついにメタルダー必殺のレーザーアームがビッグウェインに命中した。
回路を切り裂かれたビッグウェインだが、それでもゴチャックの助命のために執念で立ち上がり、右腕から矢を放ったが、破損した右腕で放つ矢はメタルダーに通用しなかった。
そしてビッグウェインは、今度こそ事切れて倒れると、人生の最期に出会った最強の敵であるメタルダーを称え、自らの長き戦いの日々に別れを告げて爆発する。
それは、ようやく戦場に到着したゴチャックの目の前の出来事だった。

ゴチャックは一輪の花の前に、ビッグウェインの矢が落ちているのを見つける。
現役を退こうが、階級が剥奪されようが、ビッグウェインこそが真の勇士であると、その戦歴を称えるゴチャックは、ビッグウェインの戦いの日々を忘れないことを誓う。
そしてバルスキーも、逃亡者としてではなく、戦闘ロボットとして散ったビッグウェインを称え、自分の責任で、命をかけてでも彼の願いであるゴチャックの助命を叶えると誓った。
一方、またしても強大な敵と出会ったメタルダーは、ネロス帝国の戦力に戦慄するとともに、ゴッドネロスを倒す闘志を燃やすのだった。

幾多の若き命を奪ったことで戦いに疲れ果て、ネロス帝国に居場所を失った老兵・ビッグウェインが、自らを慕った2人の若者と出会い、彼らの命に報いるために最期の戦いに挑む姿を描いたエピソード。本来の物語の主人公であるメタルダーすら、このエピソードでは軍団にとって倒すべき敵であり、抹殺に成功すれば多大な戦果を挙げられるという舞台装置に過ぎないという作劇が、ヒーロー作品のエピソードとしてはあまりにも異例であり、圧巻の作りになっている。

軍規に逆らったゴチャックやビッグウェインの、自らの信念に生きる誇り高き姿を評価しているからこそ、表面上は軍機を破ったゴチャックに冷たい態度を取りながら戦闘ロボット軍団長としての責任で最大限の温情をかけるバルスキーの姿が印象的だ。
命令に忠実に、ゴチャックの逃亡幇助を密告したジャースには特に言葉をかけていないあたりにも、命令に従うよりも己の信念に生きる者の方を評価しているフシがある。トップガンダーに目をかけていたのも、そういった信念に生きる姿を高く評価していたからなのだろう。

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