あらすじ
「アマゾン、貴様を殺す!」とゲドン一味の血のメッセージが響く。
ゲドンの先兵、吸血コウモリ獣人が暗い闇のなかから襲いかかる。
そしてついに罪のない人々までもが犠牲となった。アマゾンは怒り、そして叫ぶ!
優しさの連鎖が繋ぐ命 友を守る無垢なる怒りが悪を裂く
今回の獣人は吸血コウモリ獣人。
「怪奇蜘蛛男」のオマージュだったクモ獣人に続き、「恐怖蝙蝠男」のオマージュを捧げたモチーフのチョイスからも、「仮面ライダーアマゾン」の原点回帰志向が感じられる。
今回からOP映像も正式なものが採用される。森でゲドンを探るアマゾンライダーを影から見張るゲドンの赤ジューシャの姿が垣間見える演出は、野生の中で命のやり取りをし、先に隙を見せれば命はない過酷な状況を想起させ、独特な緊張感を演出している。
十面鬼ゴルゴスは、アマゾンがどこに逃げようとも逃さず殺す決意を固めていた。
さらに、人面岩に埋め込まれた男たちの顔が次々にアマゾンへの呪詛を叫ぶ。
十面鬼は、人面岩の上に上半身を出すゴルゴスと、人面岩に埋め込まれた9人の悪人の石をそれぞれ持つ、ゴルゴスと9人の悪人をあわせた10の顔を持つ鬼神の如き怪物。
巨大な人面石の威圧感を実際に巨大な造形物で演出するのは、「仮面ライダーX」の頬杖をついたキングダークの巨大な造形物が絶大なインパクトを演出したのを継承している感じも受ける。
アマゾンは、23年前、南米の奥地で起きた飛行機事故の唯一の生き残りだった。
自身が日本人であることすら知らずに、アマゾンでたくましく野生児として育ったアマゾン。
そんな彼にとって、言葉も通じず見知った者もいない、文明社会の日本は見たこともない景色に囲まれたまさにコンクリート・ジャングルであり、緊張と恐怖の連続だった。
線路上を彷徨っていたアマゾンは、接近した列車の出す轟音に怯え、列車を避けようとして怪我を負ってしまう。そんな彼を、犬の散歩をしていた一人の女性・正子が助けた。
まさひこ・りつ子姉弟の知人だった正子は、傷を負った青年が、まさひこが話していたアマゾンであると確信。人間に怯えるアマゾンに一度は拒絶されながらも懸命に傷の手当を行うと、アマゾンを心配していたまさひこを電話で呼びだした。
孤独の中で、優しさを見せてくれた正子が手当した傷を眺め、一時の安らぎを得るアマゾン。
しかし、まさひこが到着すると、アマゾンはゲドンの吸血コウモリ獣人に襲われていた。噛みつき攻撃で吸血コウモリ獣人を攻めるアマゾンは、怒りを滾らせアマゾンライダーに変身。
アマゾンライダーと吸血コウモリ獣人の死闘を、ゲドンの赤ジューシャが監視していた。
ゲドンの戦闘員にあたる存在の赤ジューシャだが、獣人と一緒になって戦うというよりは、獣人が活動する現場に赴き、十面鬼の目となってその行動を監視・報告する立場にある。
赤ジューシャは設定では現場で動く獣人よりも上の立場で、名前の通り十面鬼の従者として動き、十面鬼の代理で獣人に指令を出すこともあることから、獣人からは疎まれている。
また、これまでの組織にも女性戦闘員は主に女性怪人の配下として少数存在していたが、赤ジューシャは全員が女性であることも特徴的だ。
血みどろの死闘のさなか、正子が連れていた犬・ドリーが吸血コウモリ獣人に怯え、噛みつこうとした。アマゾンライダーはドリーを助けるように割って入り、吸血コウモリ獣人を投げ飛ばすが、吸血コウモリ獣人が投げ飛ばされた先には運悪く隠れて様子を見ていた正子がいた。
正子は吸血コウモリ獣人に噛みつかれてしまい、傷を負ってしまう。
だが、アマゾンライダーへの不利を悟った吸血コウモリ獣人も撤退した。
アジトに戻った吸血コウモリ獣人は、アマゾン抹殺任務の失敗を十面鬼に責められていた。
十面鬼ゴルゴスは、我が身を捨てても敵を殺すゲドンの掟を破った吸血コウモリ獣人を命惜しさの腰抜けと罵倒し、言い訳を許さずに生き恥を晒せまいと恫喝、処刑しようとする。
目先の怒りで貴重な戦力である獣人を軽んじ、失敗すれば処刑するその狭量さが強調されているのは、やはり後の展開で獣人に裏切られたことで組織が壊滅する展開の伏線だろう。
「仮面ライダーアマゾン」は企画段階で当初の敵であるゲドンが1クール・13話で退場することが前提になっており、視聴者の興味を引く番組作りのために、敵組織をクール毎に新しくしてうねりのあるシリーズ構成を行うというフォーマットが当初から決められていた。
早々にゲドンと十面鬼が退場することが決まっていたからこそ、そこからの逆算で十面鬼が獣人を軽んじて人望がない描写を挿入し伏線とすることで、来るべき退場回で軽んじてきた獣人に裏切られ寝首をかかれる流れを自然なものにしたのだろう。
だが、人面岩に埋め込まれた9つの顔は、詰めは甘いが、アマゾンを追い詰めた吸血コウモリ獣人の能力を評価し、もう一度だけ挽回のチャンスを与えた。
9つの顔のほうが主となるゴルゴスよりよっぽど寛大なのが面白い。
十面鬼ゴルゴスは、ゲドンの目的を話し、吸血コウモリ獣人の士気を高める。
十面鬼は、ゲドンによる全世界の征服のために、古代インカの科学が秘密裏に開発した超エネルギーを求めていた。そのエネルギーが眠る扉を開くには、十面鬼が持つガガの腕輪とアマゾンが移植されたギギの腕輪が必要なのだという。2つの腕輪が揃えば、超エネルギーが眠る扉が開き、インカの秘宝である超エネルギーを手にすることが出来る。
十面鬼はギギの腕輪を奪うためにバゴーに反乱を起こし、アマゾンを殺そうとしていたのだ。
さらにゲドンは、一般市民を無作為に襲い、獣人のエネルギー源である人間の血を抜き取ることで食料人間として保存するべく、次々に人々を拉致していた。
食料人間というフレーズがあまりにも強烈なインパクトで、このあたりのカニバリズムを感じさせる要素が、後に「仮面ライダーアマゾンズ」の食人描写に繋がることになる。
吸血コウモリ怪人に噛みつかれた正子は、吸血コウモリ獣人が持つビールスに侵され、現代医学では手の打ちようがない奇病に苦しんでいた。医者も匙を投げ、娘に何もしてやれない正子の母が絶望する中、病室の外からは正子を心配するアマゾンがその様子を心配そうに眺めていた。
だが、アマゾンのせいで正子がゲドンに襲われ、命の危険に侵されていると考えたりつ子はアマゾンを罵倒し、追い払ってしまう。アマゾンを庇うまさひこの声もりつ子には届かない。
まさひこはアマゾンを探すが、アマゾンは森に姿を眩ませてしまった。
しかし、アマゾンは何かを思いつき、植物を集め始める。
病院に見放され、娘が苦しむさまをただ見ていることしか出来ない正子の母の哀しみを見て、何の罪もなく平和に暮らしていた自分たちが苦しむのは、ゲドンを日本に連れてきたアマゾンのせいだと誤解したりつ子は、アマゾンへの憎悪を燃やす。
その頃、アマゾンは集めた植物を調合し、正子の奇病を治すための薬を作っていた。
アマゾンを追ってゲドンが日本にやってきた、という誤解からアマゾンへの憎悪を燃やすりつ子の描写は、「仮面ライダー」初期の本郷ライダー編で、緑川ルリ子が父を本郷猛に殺されたと誤解し、憎悪を燃やした展開を思われるものだ。
ルリ子の本郷猛への誤解は比較的早く解消されたが、りつ子のアマゾンへの憎悪は、アマゾンが満足に言葉を話せないという事情もあり、しばらく尾を引くことになる。
逆を言えば、本郷猛と緑川ルリ子の間の誤解はドラマの縦軸にはならなかったが、りつ子がアマゾンの存在を受け入れるまでは、序盤の山場として丁寧に描写され、都会という異世界で、誤解を受けながら一人戦うアマゾンの孤独をより鮮明に浮かび上がらせることになる。
また、ヒーローのせいで敵が来ると誤解され、ヒーローが非難されるという展開は、奇しくも同時期に放送されていた「ウルトラマンレオ」の「恐怖の円盤生物シリーズ!」後半で展開された、「レオが来るから円盤生物が来る」と守るべき人から誤解されたことで、レオが戦いに疲れブニョによる解体に抵抗する気力もなく敗れてしまう展開にも繋がるものがある。
「仮面ライダーアマゾン」や「ウルトラマンレオ」で描かれたこれらの展開では、守るべき人からも誤解を受けながら、それでもなお、誰か一人が助けを求めている限りは辛くても戦わなければならない、ヒーローの使命の重さと悲哀が描かれており、ヒーロー作品がシリーズを重ねてきたからこそ、ヒーローの使命の哀しさを問い直そうとする制作陣の意識が感じられる。
ただ強くてカッコいいヒーローの痛快な活躍を描くだけでなく、暴力の連鎖であり、周囲をも危険に巻き込んでしまうヒーローの戦いの悲哀をも描こうとした制作陣の真摯な姿勢は、これらの作品で今なお見ごたえのあるドラマを成立させている。
その頃、ゲドンのアジトでは、赤ジューシャに捕まった男が、ゲドンの食料人間として貯蔵されるために血液を抜き取られようとしていた。血液を抜き取られ、動かなくなった男の身体に齧り付き、貪り食う吸血コウモリ獣人。人を喰らい、血にその口を染めた吸血コウモリ獣人は、アマゾン抹殺に出撃。さらに赤ジューシャはアマゾンをおびき寄せようとする。
吸血コウモリ獣人が食料人間を貪るシーンでは吸血コウモリ獣人が齧り付いた箇所の傷口も表現されており、痛々しく生理的嫌悪感を掻き立てる演出がされている。
このあたりにも獣人の怪奇性を打ち出そうとする意図が伺える。
まさひこを通して、アマゾンは正子へ薬を届けた。
アマゾンは自分を助けた正子を苦しめるゲドンへの怒りを燃やし、ゲドンを探し始める。
これまで、ゲドンに追われるまま、自分の身を守るために戦ってきたアマゾンだが、自分だけでなくまさひこや高坂教授、正子といった、自分に優しさを見せてくれた「友」を襲うゲドンに対し、怒りを燃やして戦う意志を確立させようとしていた。
赤ジューシャに遭遇したアマゾンはそれを尾行するが、それは罠だった。赤ジューシャは姿を消し、アマゾンは吸血コウモリ獣人が待ち伏せする洞窟へおびき寄せられる。
まさひこが持ってきたアマゾンの薬を、捨てようとするりつ子。
しかし、正子が苦しみながらも目を覚まし、アマゾンの作った薬を飲ませてほしいと頼む。
自分を化け物から救ったアマゾンの優しさを信じた正子は、薬を飲み干した。
まさひこはアマゾンを信じ、正子の回復を祈り続ける。
洞窟で、小型の吸血コウモリや、吸血コウモリ獣人に襲われるアマゾン。
吸血コウモリ獣人の身軽な動きに苦戦しながらも、アマゾンは怒りを燃やしてアマゾンライダーに変身すると、噛みつき攻撃・ジャガーショックでダメージを与えていく。
その頃、アマゾンが作った薬が効果を表し始め、正子の顔の痣が消え始めた。
執拗に噛みつき攻撃を加え、吸血コウモリ獣人を抑え込んだアマゾンは、腕のヒレで吸血コウモリ獣人の胸を切り裂く「大切断」を決め、吸血コウモリ獣人の戦意を喪失させた。
おびただしい出血で大ダメージを負った吸血コウモリ獣人はアジトに戻るが、十面鬼が二度も作戦に失敗し自分の顔に泥を塗った吸血コウモリ獣人を許すわけもなく、死刑を宣告する。
十面鬼は命乞いをする吸血コウモリ獣人に小型吸血コウモリをけしかけ、処刑するのだった。
正子は無事に回復した。
アマゾンは今もなお、自分がゲドンに狙われる理由を知らない。
しかし、自分に優しくしてくれた人間をも襲うゲドンへ、彼の怒りは燃える。
自分の命だけでなく、「友」と呼ぶべき人々のために、アマゾンは戦おうとしていた。
第1話でも、自分を襲うゲドンに対し、アマゾンが怒りを滾らせアマゾンライダーとなったのは、自分だけでなくまさひこを守るためや、高坂教授を殺したクモ獣人への怒りという、他者を守るという優しさに基づいた怒りによるものだった。
そして今回では、それまでのわけもわからず襲ってくるゲドンから自分や他者を守る受動的な戦う姿勢ではなく、自分に優しくしてくれた正子を苦しめるゲドンへの怒りを込めた、能動的に戦う姿勢を見せている。他者のために怒りを燃やせる優しさを持っていたアマゾンは、「友」の守護者として、友を守るために戦う、第6の仮面ライダーの使命を見出そうとしている。
アマゾンライダーの本当の戦いが、ここから始まる。