「バトルフィーバーJ」第31話「激走トラック兄妹」感想

2024年3月20日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

バトルフィーバー隊は、国防省から金塊の秘密輸送の任務を受ける。
コサックは、友人である幸子の兄・鉄男に金塊の輸送を頼む。
しかし、輸送中にトラックがエゴスのゼニゲバ怪人に襲われ、コサックは負傷してしまう。

友の再起を願う想い 妹のために、兄は「責任」と向き合う

今週のエゴス怪人は、自らをエゴスの集金人と自称するゼニゲバ怪人。
がま口の開いた財布を模したマスクは、まさに金の亡者を連想させる見事なビジュアルだが、同時に金塊を手に入れると金塊を使って金のネックレスを作り、サロメに贈ろうとするなど金を使って色欲も思いのままにせんとする、人の欲望そのものの化身として描かれている。

コサックの古い友人であるトラック野郎・岩田鉄男は、普段から喧嘩に明け暮れ、妹である幸子を悲しませていた。数年ぶりに岩田兄妹に出会ったコサックは幸子の相談に乗る。
幸子の話によれば、鉄男は運送の仕事そっちのけで改造トラックレースに明け暮れては喧嘩を起こし、気分屋な性格で仕事を放り出すなど無責任な行動を繰り返しており、どこに行っても嫌われ、とうとう誰からも仕事をもらえなくなってしまったのだという。
コサックによれば、昔から良く言えば無邪気、悪く言えば無責任な男だった鉄男だが、幸子はそんな彼が仕事をもらえなくなってますます荒んでいくことを悲しんでいた。
幸子はコサックに、兄をちゃんとした人間にしてほしいと頼みこむ。

今週のドラマの軸になるのは、コサックの旧友であるトラック野郎・鉄男が、仕事を満足に果たせない、責任を負うことから逃れようとする性格を克服するまでの流れだ。
改造トラックレースや喧嘩に明け暮れ、その場の気分で仕事を投げ出してしまう無責任さで仕事をもらえなくなり、ますます荒んでいく鉄男を立ち直らせるために、コサックは自分が仕事を依頼し、それを最後までやり遂げさせることで責任を果たす意義を見出してもらおうとする。
鉄男が自ら責任を果たす意義を見出すように配慮するコサックの姿勢は、一人の大人として鉄男を尊重すると同時に、旧友としてその更生を信じているからこそ頭ごなしに説教するのではなく仕事を与えてやり遂げさせる、という方法を選択させている。

そんな折、国防省からバトルフィーバー隊に、時価500億円の金塊の秘密輸送任務の依頼が舞い込んできた。既に国防省にもエゴスのスパイが入り込んでおり、組織内部で輸送を行うリスクがあることを踏まえ、バトルフィーバー隊に金塊輸送任務の白羽の矢が立てられたのだった。
だが、それほどの量の金塊は、運送に長けた人間でないと運ぶのは難しい。
そこでコサックは、鉄男を立ち直らせる良い機会として、鉄男に輸送を依頼することにした。
鉄男は、自分はやりがいのある仕事を待っていたのだと調子よく依頼を引き受ける。
こうして鉄男は、バトルフィーバー隊とともに金塊輸送を開始した。

輸送は順調に進んでいたかに見えたが、進路上にバリケードが設置されており、バトルフィーバー隊の行く手を阻んだ。そして、エゴスのゼニゲバ怪人が襲撃を開始する。
エゴスの集金人を自称するゼニゲバ怪人は、金塊の強奪を目論んでいた。
恐らくは国防省に入り込んでいるというスパイから金塊輸送の情報を手に入れたのだろう。
「バトルフィーバー大出撃」をバックに戦闘を開始するバトルフィーバー隊。
カットマンに襲われる鉄男を助けたコサックは、鉄男のトラックを先に向かわせようとするが、ゼニゲバ怪人が投げつける銭型爆弾の威力に怯えた鉄男は、輸送ルートを外れ逃走。
コサックもその後を追うが、鉄男はゼニゲバ怪人とカットマンに銃撃され、助けに入ったコサックも銭型爆弾の直撃で負傷し、ゼニゲバ怪人に金塊を積んだトラックが奪われてしまった。

負傷したコサックは、鉄男に金塊の入ったコンテナの扉を開ける鍵を託し、仲間の元へ運んでもらおうとするが、カットマンに怯えた哲夫は鍵を持って逃亡してしまう。
一人残されたコサックにとどめを刺そうとしたゼニゲバ怪人だが、そこに間一髪、バトルフィーバーが駆けつけ、金塊を奪う使命を果たしたゼニゲバ怪人は不利を悟り撤退した。

ゼニゲバ怪人は、サタンエゴスとヘッダーに内緒で、金塊から取り出した金を使ってネックレスを作り、贈ってやるとサロメを口説き始める。急に身の丈に合わない大金を手にした男が色欲に狂ってしまうのは人間もエゴス怪人も変わらないようだ。
だが、冷静なサロメは金塊を積んだコンテナの中に爆弾が仕掛けられており、無理にコンテナの扉を開ければ金塊が吹き飛ぶことを指摘。ゼニゲバ怪人は、鉄男がコサックから鍵を託されていたことを思い出すと、トラックのもとに戻った鉄男を襲撃する。

逃亡した鉄男をカットマンからガードするジャパンは、マリアに鉄男の後を追わせる。
マリアもカットマンに足止めされてしまう中、執拗なカットマンたちの追跡からなんとか逃亡した鉄男が家に戻ると、そこにはフランスとケニアが待機していた。
鍵を渡そうとする鉄男だが、そこにカットマンが追いつき、鍵を奪おうとする。
必死に逃げる鉄男は川を渡ろうとするが、足を滑らせびしょ濡れになる。
這々の体の哲夫は、鍵があるからこんなひどい目に遭うのだと、鍵を川に捨ててしまった。

バトルフィーバー隊の基地で目を覚ましたコサックは、幸子との約束を思い出した。
仕事が終われば鉄男と3人で食事をする約束をしていたのだ。
コサックは鉄男と共に金塊輸送任務を成功させ、幸子と食事をする場で鉄男が立派に仕事をやり遂げたことを幸子に伝え、幸子を安心させようとしたのだろう。鉄男の更生のために尽力するだけでなく、傷ついた幸子の心にも寄り添った配慮が立派だ。
だが、店の前でコサックと鉄男を待っていた幸子は、カットマンに拉致されてしまう。
店に電話したコサックは、幸子が攫われたことを知ると、怪我を押して起き上がった。

一方、家に戻った鉄男は、幸子を攫ったエゴスのメッセージが壁に刻まれていることに気づく。
鍵を持ってこなければ幸子の命はない。だが、問題の鍵は鉄男が自分で川に捨ててしまった。
鉄男の家に到着したバトルフィーバー隊は、追われる辛さに自分の責任を投げ出し、我が身可愛さに鍵を捨ててしまった鉄男に、コサックと幸子の思いやりを説く。
兄の身を心配する幸子の優しさと、そんな幸子の頼みを受け、鉄男を立ち直らせるために仕事を依頼し、責任を果たすことを信じて鍵を託したコサックの思いやりを説かれた鉄男は反省し、バトルフィーバー隊を鍵を捨てた川に案内する。

総出で川を捜索したバトルフィーバー隊は、そこで自分たちを呼ぶコサックの声を聞く。
コサックも傷ついた身で鍵を探しており、見事に川の中から鍵を見つけ出したのだ。
コサックは改めて哲夫に鍵を託し、幸子を救うために鉄男を送り出す。
自分の責任から逃れようとしてきた鉄男も、ついに覚悟を決めるのだった。

鉄男に鍵を託した責任を果たすために、傷ついた身体で鍵を探すコサックの姿を通して、鍵をバトルフィーバーの仲間に届けるという責任から我が身可愛さに逃げてしまった鉄男が自らの行いを見つめ直し、妹を救う責任を果たすために腹を括るドラマは、一人の人間の更生のドラマとして非常に見応えのある流れ。
コサックの思いやりと責任を果たす姿勢が鉄男に影響を与える姿は感動を呼ぶ。

エゴスとの取引現場で、鉄男は鍵と交換に幸子を救い出したが、カットマンは鉄男を突き飛ばして再び幸子を捕える。だが鉄男は、幸子の手に発信機入りのブローチを持たせていた。
エゴスが約束を守るとも思えなかったバトルフィーバー隊が、万が一のために発信機入りのブローチを持たせていたのだ。コンテナの鍵を手に入れたゼニゲバ怪人は、またしても金のネックレスを作ろうとサロメを口説くが、そこに発信機の信号を追ったバトルフィーバー隊が、鉄男が運転するトラックの上に乗って現れた。段ボールの壁を突破するトラックが迫力ある映像だ。

カットマンにファイトマネーを払うとうそぶき士気を高めたゼニゲバ怪人と、バトルフィーバー隊の決戦が始まり、勇気を奮い起こした鉄男も、幸子を救うために果敢に突入する。
ケニアのムチと、ジャパンのヤリの連携攻撃に追い詰められるゼニゲバ怪人。
幸子を連れ去ろうとしたサロメの前に、コサックが立ちはだかった。傷ついた身で果敢にサロメに挑んだコサックは見事に幸子を救い出すと、鉄男と合流させてその場から逃がす。
反撃を開始したサロメの剛力に苦戦するコサックだが、鉄男の運転するトラックがコサックを救った。仲間と合流したコサックはペンタフォースでゼニゲバ怪人を打ち破る。
弟であるゼニゲバロボットに、俺の遺産を相続してくれと言うゼニゲバ怪人の断末魔が面白い。
最期の最期まで金に執着し続ける姿は、まさに銭ゲバだ。

岩田兄妹が乗るトラックを、ゼニゲバロボットが阻んだ。
しかし、幸子とともに勇気を奮い起こした鉄男は強行突破にかかる。
金塊よりも重いもの、すなわち、コサックや幸子からの信頼と、一度引き受けた仕事を最後まで遂行する責任、そしてトラック野郎の誇りを乗せ、鉄男はトラックを走らせる。
バトルフィーバーはバトルシャークを呼び、バトルフィーバーロボが出撃。
バトルフィーバーロボがゼニゲバロボットと戦う中、鉄男のトラックは危険地帯の突破に成功する。電光剣唐竹割りが炸裂し、バトルフィーバーロボは勝利した。

こうして、鉄男は、仕事を最後まで果たす責任を持って進む、自分の道を取り戻した。
この道の行く手に平和な明日があるように、バトルフィーバーは世界を守らなければならない。

バトルフィーバー隊の一員として責任を果たしてきたコサックが、責任から逃げ続けてきた男に自らが責任を果たす姿を見せ、責任を果たして仕事をやり遂げる意義を自覚させるドラマが一貫している名作エピソード。
一方で、金だけでなく色欲にも動くゼニゲバ怪人の見境のなさ、泡銭を手にした者が陥りがちな色欲に溺れる姿は、兄の更生を願う幸子の純粋な思いやりと対応しており、己の欲望のまま他者を傷つける存在が、他者を思いやる優しさの前に粉砕される素朴の勝利を通して、人の欲望の汚さとその行き着く先の破滅を描いているのも見逃せない。

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