あらすじ
野生児・アマゾンの目に映る光景は何もかも新しかった。
ものすごいスピードで走るオートバイ、それは恐怖であり、危険の象徴でもある。
だが、立花藤兵衛とまさひこの温かい友情でアマゾンの心は安らぎ…。
立花藤兵衛との運命の出会い 友への想いが恐怖を克服する
十面鬼は、人面岩より泡を吹き、カマキリ獣人を生み出していた。
この第3話からは、人面岩に埋め込まれた9つの人面もゴルゴスと同じく真紅に染まっており、これは人間の血液をエネルギーにしている十面鬼が十分なエネルギーを手に入れている、つまりエネルギーが不足すると人面が肌色になるという設定。
前回までは日本に来たばかりで十分なエネルギーがなかったが、赤ジューシャたちに食料人間を備蓄させ血液を得たことでエネルギーを補給できたということなのだろう。
容姿が変わった理由付け・辻褄合わせとして秀逸な設定だ。
十面鬼はアマゾンを殺し、ギギの腕輪を奪うために、カマキリ獣人に無差別に人間を襲わせ、アマゾンにそれを察知させることで誘い出そうとしていた。
ゲドンの目的はあくまでアマゾンを始末し、ギギの腕輪を手に入れること。
そのためなら手段を選ばず、無差別の殺戮をも平然と行う恐ろしさがゲドンの恐ろしさだ。
まさひこは、アマゾンを探しに出かけようとしていたところをりつ子に咎められていた。
りつ子アマゾンが日本に来て以来、おかしな事件が頻発していることに怯え、まさひこがアマゾンの近くにいることで事件に巻き込まれてしまうことを心配していた。
りつ子はまさひこに、アマゾンのところに行かないように言いつける。
だが、まさひこが亡き父の上着をアマゾンに渡そうとしていることや、その上着を通して父親とアマゾンを重ね合わせている様子を見て、まさひこが亡き父の面影をアマゾンに見ていることを感じ取ると、アマゾンのところへ行くことを黙認し、食料となるりんごを手渡すのだった。
まさひこがアマゾンの近くにいることで事件に巻き込まれることは心配だが、父がおらず、幼き頃に父を失ったことで父との想い出もないまさひこが、アマゾンに父性を求めている孤独な心情を慮る優しさが光る描写だ。ただアマゾンを拒絶するだけでなく、まさひこがアマゾンを慕うことに理解を示す優しさもあることが、後にアマゾンを受け入れる伏線とも言える。
川で魚を捕まえていたアマゾンは、近くで行われていたオートバイレースの爆音に恐怖する。
文明の利器であり、自然界にはない爆音を轟かせるオートバイは、野生児アマゾンにとって恐怖と危険の象徴だった。だが、オートバイレースに参加していたレーサーたちは、コースで待ち構えていたカマキリ獣人の吐き出す泡によって次々に殺されていく。
そして、カマキリ獣人が襲ったレーサーの中には、あの立花藤兵衛がいた。
歴代の仮面ライダーたちにオートレーサーの夢を託しては、世界を守る使命のために自分の元を去っていくライダーたちを見送ってきた結果、とうとう自分が現役レーサーとして復帰していたおやじさんは、カマキリ獣人の泡で足を麻痺させられながらも必死に逃亡する。
おやじさんの助けを求める声に、アマゾンが応え姿を現し、カマキリ獣人との死闘を開始した。
鋭い鎌によって傷を負いながらも、噛みつきで応戦するアマゾン。
だが、そこに現れた赤ジューシャがおやじさんを捕えたのを目の当たりにしたアマゾンは、無差別に殺戮を繰り返すゲドンに怒りの咆哮を上げアマゾンライダーに変身。
眼の前の若者の「変身」を目撃したおやじさんは、神敬介に続き、自分の預かり知らぬところで誕生していた新たな「仮面ライダー」と、またしても運命の出会いを果たした。
だが、赤ジューシャは滝壺におやじさんを突き落とす。
アマゾンライダーは間一髪それを助け、ともに滝壺に落下していくのだった。
その頃、アマゾンを探していたまさひこは、赤ジューシャがアマゾンの死体を確認するため滝壺を捜索しているところを目撃し、近くにアマゾンがいることを確信する。
赤ジューシャは結局アマゾンを見つけきれず、報告を受けた十面鬼。
アマゾンの生死について、死体が見つからないなら生きている、いや滝の底に沈んでいると人面岩の人面たちの間で意見が分かれる事態になり、10個も顔があると意見もまとまらない。
船頭多くして船山に登るの好例だ。
結局はゴルゴスが主体となって、アマゾンが生きていようが死んでいようが見つけ出してとどめを刺すというところに落ち着き、十面鬼はカマキリ獣人を再度出撃させる。
アマゾンに助け出されたおやじさんは、なぜ彼が変身できるのかを尋ねるが、言葉を話せず、全く要領を得ないアマゾンに面食らう。そこにまさひこが現れた。
おやじさんは高坂教授と面識があり、高坂教授を通してまさひこのことも知っていたが、まさひこは全く覚えていない。それどころか、アマゾンと馴れ馴れしくするなと釘を差されてしまう。
おやじさんが自分を元有名なレーサー、いや現役バリバリと主張する姿が面白い。
さらに高坂教授から、高坂教授がアマゾンで遭遇した野生児のことも聞かされていたおやじさんは、アマゾンがその青年であることと、変身してアマゾンライダーとして戦うことを知ると、新たな「仮面ライダー」との運命の出会いを喜ぶ。
アマゾンによって麻痺した足の治療を受けるおやじさんは、まさひこからアマゾンはまだあまり言葉が話せないことを聞かされ、通りで要領を得ないと得心する。
治療が一段落し、アマゾンはまさひこから手渡されたりんごを食べ、一時の安らぎが訪れた。
まさひこは父の上着をアマゾンに着せようとするが、ギギの腕輪が邪魔をして袖が通らない。
アマゾンが腕輪を外せないことを知ったまさひこは諦める。
そこに、カマキリ獣人が人を襲う声が聞こえた。
現場に急行したアマゾンだったが、既に犠牲となった釣り人は死んでいた。
カマキリ獣人への怒りを滾らせるアマゾンだが、そこに悲鳴を聞いて駆けつけた釣り人たちが現れ、アマゾンを殺人犯と誤解。弁解する術を持たないアマゾンは釣人に罵倒され、殴られる。
逃亡したアマゾンは、おやじさんの治療をしていた山小屋で怒りを爆発される。
誰も自分の無実を信じてくれない哀しみと怒りを叫ぶアマゾンを慰め、励ますおやじさんは、アマゾンを悪への怒りをぶつける「仮面ライダー」へ育て上げることを決意する。
おやじさんは、「仮面ライダー」として、悪の元へ駆けつけるためのオートバイをアマゾンにプレゼントする。しかし、爆音を轟かせるオートバイはアマゾンにとって恐怖の象徴だった。
無理矢理にでもアマゾンをオートバイに載せようとするおやじさんだが、アマゾンは断じて拒絶し、オートバイを持ち上げ海へと投げ飛ばしてしまう。
オートバイに適正があった今までのライダーとまるで違う野生児のアマゾンに面食らうおやじさんだが、こうなればなんとしてでもオートバイに載せようと意地を張って決意。
おやじさんも強かで、こんなこともあろうかと代わりのオートバイも既に用意していた。
おやじさんは簡単に操縦方法を教えると、アマゾンが自分で走るよりも速い、便利な道具であることを無理にでもわからせるために、爆音に怯えるアマゾンの前でオートバイを操ってみせた。
アマゾンは驚異的な総力でオートバイに並走するが、アクセルを全開にしたオートバイにはかなわない。だが、アマゾンの方を見ていたおやじさんは勢い余って高波に突っ込んでしまった。
まさひこも駆けつけ、焚き火で暖を取る一同。お互い裸になったアマゾンとおやじさんは、裸の付き合いをして笑い合い、心を通じ合わせる。
だが、薪を探していたまさひこが赤ジューシャに捕まってしまった。
アマゾンはまさひこを助けるために、あれほど恐れていたオートバイにとっさに乗り込むと、赤ジューシャに追いつく。友を守りたい想いが、オートバイへの恐怖を克服させたのだ。
まさひこを救出したアマゾンだが、その前にカマキリ獣人が現れた。傷を負いながらまさひこを庇うアマゾン。そこにおやじさんも駆けつけ、まさひこを逃がす。
裸の付き合いをし、心を通じ合わせたおやじさんに、何よりも守りたい「トモダチ」であるまさひこを任せるアマゾンの姿からは、自分を思いやってくれ、共に笑い合ったおやじさんを本能で信ずるにたる存在だと理解したことが伝わってくる。
アマゾンはアマゾンライダーに変身し、腕ヒレの一撃や噛みつきでカマキリ獣人を攻め立てる。
カマキリ獣人も噛みつきや鎌で反撃する、海岸で展開する血で血を洗う死闘の果て、腕ヒレで切り裂く大切断が決まり、カマキリ獣人はついに泡を吹いて息絶えた。
アマゾンライダーの勝利を称えるまさひことおやじさん。
ゲドンに狙われるアマゾンに安らぎの時はないが、また一人、彼の理解者が増えたのだった。
また一人、「仮面ライダー」と運命の出会いをしたおやじさんこそ立花藤兵衛。
これまでの、文明社会で生きてきて、バイクに適正のあった歴代ライダーたちとは全く違う野生児アマゾンに面食らいながらも、野生の本能で生きるアマゾンには、オートバイの利便性を本能で理解させるしかないと判断し、オートバイの速さを実感させるという最適な方法を選ぶあたりからは、歴代の仮面ライダーたちや、イカデビルすら鍛えてみせた名伯楽ぶりが伺える。
そして、そんな彼が自分のために何かをしてくれようとしていること、そして自分とともに笑ってくれる存在であることを感じ取ったアマゾンが、まさひこをおやじさんに託す、信頼を構築するまでのドラマが、この回の大きな見どころになっている。
アマゾンを殺し、ギギの腕輪を奪うためなら何人犠牲者が出ようと構わず、アマゾンを誘き寄せるためだけに無差別殺戮を行うカマキリ獣人やゲドンの非情さも鮮烈な印象を残す。
アマゾンを誘き寄せるためだけに殺戮を行う姿からは、りつ子が懸念する、アマゾンがいるから事件が起こるという危険性もまた一つの事実であることがわかる。
そして、アマゾンはそれを弁解する術も持たないのだ。社会からも徹底した孤独に追い込まれるアマゾンの姿を通して、偉業の存在が社会からの孤独を味わうという「仮面ライダー」の原点へ回帰したドラマ展開が圧巻であると同時に、それでもなお、アマゾンの善性を見抜き、父代わりに慕うまさひこや、理解者として手を差し伸べる立花藤兵衛の姿が、無垢なる魂にもたらされる救いをも予感させて、ドラマはさらにヒートアップしていくのだった。