「バトルフィーバーJ」第32話「ふるさと殺人村」感想

2024年3月20日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

故郷にいる幼馴染みから手紙が届き、ジャパンは故郷へと帰省することに。
しかし、それはエゴスが仕掛けた罠だった。
故郷はミミズ怪人によって占領され、村人は人質に。
ジャパンは拷問を受ける羽目になってしまう。

怨念が産んだ強敵怪人 歪められた奇祭の罠

今回のエゴス怪人は、サタンエゴスがこれまでバトルフィーバーに敗れてきたカットマンたちの怨念と怒りを集め生み出したミミズ怪人。ミミズの集合体のような胸部の造形が生理的嫌悪感を感じさせる中、頭部の造形はどことなく同じミミズモチーフである「仮面ライダー」のミミズ男を思わせる。ミミズの節をマスクに落とし込むと似てくるのだろう。
吉川進プロデューサーはミミズが苦手らしく、バトルフィーバーについて話題にした際、ミミズ怪人のことは愛せないと語ったというエピソードで知られている。

この第32話はサブタイトルが強烈なインパクトを残す回でもある。
どことなく田舎の村を舞台にしたスラッシャー映画のサブタイトルとして採用されていてもおかしくない雰囲気だが、実際の内容も、故郷の奇祭を通して命を奪われそうになるジャパンの姿がホラーチックで、因習村を舞台にしたホラー作品としてリメイクすることすら可能な気もする。
このあたりのどことなくおどろおどろしい雰囲気も、カットマンの怨念の結晶であるミミズ怪人が登場することを踏まえた上の演出だろう。

サタンエゴスは、これまでバトルフィーバーに敗れたカットマンたちの恨みと怒りを凝縮することで、新たなる御子・ミミズ怪人を生み出した。ミミズが蠢く描写は普通に気持ち悪い。
流石のヘッダー指揮官やサロメすら恐れおののくほどの怨念が渦巻く中、ミミズ怪人は自らを生んだ死して迷える幾千のカットマンの恨みと怒りを晴らすべく、怨念を身体に集めていく。

パトロール中のジャパンが運転する車の前に飛び出してきた子供は、トンボ取りに夢中だった。
ジャパンはその様子に、故郷で過ごした懐かしい子供時代を思い出す。
その頃、バトルフィーバー基地ではケニアがミミズを焼いて食べようとし、他の隊員からドン引かれていた。そこに戻ってきたジャパンは、ケイコ隊員から手紙を受け取る。
それは、ジャパンの故郷に住む幼馴染・村野義雄からの、十年ぶりに水汲み祭が開催させるという知らせだった。水汲み祭は、神人に選ばれた男が十年間の村人の健康を祈って三日三晩泉の水を汲み続ける奇祭であり、かつてはジャパンの父も神人として水汲みをやり遂げたのだという。
故郷を懐かしんだジャパンは仲間たちからも快く送り出され、久しぶりに帰郷するのだった。

義雄や村長との再会を果たしたジャパン。村野義雄を演じたのは若き日の遠藤憲一氏。
東映特撮ヒーロー作品史としては後にエクシードラフトやジャンパーソン、カクレンジャーへの出演も印象深いが、この回の出演は本当にキャリアの初期も初期の頃のようだ。
村長も義雄もジャパンがバトルフィーバー隊の一員であることを知っており、エゴスへの正体露見後、彼らの正体はもはや公然の事実となっているようだ。

村長たちに勧められ、祭太鼓を叩いたジャパンが、夜になって疲れて眠っていると、村人たちは邪悪な顔で会合をしていた。村長はミミズ怪人の、ジャパンを迎えた女性・山中美代はサロメの変装であり、カットマンたちの恨みを晴らすべく、ジャパンを存分に苦しめて殺そうと目論見、ジャパンの故郷の奇祭・水汲み祭を利用しようとしていたのである。
エゴスはジャパンを神人にし、三日三晩水汲みをさせて苦しめるだけ苦しめることを目論んでいた。村長はミミズ怪人の正体を、美代はサロメの正体を現してジャパンに襲いかかる。
ジャパンは抵抗しようとするが、エゴスは既に本物の村長や村人を捕らえていた。

人質を取られたジャパンは、エゴスに逆らえず、バトルフィーバー隊への連絡を取らされる。
神人に選ばれたので三日三晩帰れないと連絡したジャパンは、通信を受けたコサックに危機を訴えようとするが、銃を突きつけられ阻止される。それでも、一瞬の隙を突いて逃亡を図ったジャパンだが、罠に嵌って捕まり、喉が痺れて話せなくなる毒を飲まされてしまう。
その頃、ジャパンが危機に陥っていると知る由もないバトルフィーバー基地では、神秘的な祭りの話を聞いてケニアやフランス、ケイコ隊員たちがはしゃいでいた。
しかし、ここではしゃいでいた一行が盛り上がって水汲み祭に行ってみようと思っていなければ、ジャパンが苦しんだ果てに戦闘服を後任に移譲出来ないまま命を奪われ、ジャパンを失ったバトルフィーバーがペンタフォースを使えなくなり、怪人への対抗策を失っていたことは確実。
それを思えば、フランスとケニアの悪ふざけが役に立ったことになる。

神人として水汲みを強制させられるジャパンを、何も知らない村人が応援する。
何も知らない村人たちは、この水汲み祭にエゴスの陰謀が渦巻いていることを知る由もない。
村全体を人質に取られたジャパンは、サロメたちに水汲みを妨害されては痛めつけられ、水を運ぶ途中に足を引っ掛けられたと思えば水を溢した罰として責め苦を受け続ける。地獄の罠に落とし込まれ、何も知らない村人が激励する中で、口も利けなくされたジャパンは苦しみ続ける。
村の因習や奇祭によって地獄のような体験をするという状況だけを取れば、もはや一大ジャンルと化した因習村に迷い込んだ若者が恐怖の体験をするホラー・スリラー作品に匹敵するほどの恐怖のシチュエーションが展開されている圧巻の展開だ。
その恐怖体験の原因がエゴスであり、その変装ではない村人は普通なのが救いだが、それでも三日三晩水汲みを強制する水汲み祭りは立派な奇祭ではある。

一瞬監視が緩んだ隙に脱出を図ったジャパンだが、車の通信機は既に取り外されていた。
もはやエゴスによる地獄から逃れようがない状況に追い込まれ、絶望するジャパン。
一方、フランスやケニア、ケイコ隊員とトモコ隊員は、ジャパンが神人を務める水汲み祭を楽しみに、村へやってきていた。そこで水汲みを行うジャパンと遭遇したフランスは、ジャパンが目で行うモールス信号・アイモールスで、エゴスによって村人が人質にされていることを知る。
火の上を裸足で歩かされるジャパンの様子に、水汲み祭が思った以上に残酷な祭りであることに絶句するケイコ隊員。周囲の村人も特に何も言わないあたり、この辺の残酷さ自体は元からそういう祭りのようだ。田舎の奇祭の描写のディテールがむやみに精細である。

火の上を歩かされても声を上げないジャパンが、エゴスによって口も利けなくされたことを悟ったフランスは、自分たちを監視する美代の様子に不審なものを感じ取ると、あえて祭りに参加し、馬鹿騒ぎをするふりをしてエゴスを誘い出そうと考えた。
そんな思惑に気づいていないヘッダー指揮官は、バトルフィーバー隊が仲間が死にそうなのに馬鹿騒ぎをしていると嘲笑う。フランスの方が一枚上手だ。
バトルフィーバー隊は村人に出された酒を飲んで眠ったふりをしてサロメを誘い出すことに成功してサロメを捕らえると、村人の元へ案内させる。しかし、洞窟の中に設置された村人を捕える檻はケニアでも破壊できなかった。さらに、サロメは隙をついてバトルフィーバー隊を檻の中に入れ、時限爆弾を起動させて洞窟を爆破しようとする。
通常の通信では電波が届かず救助が呼べない洞窟で爆破の時間が迫る中、ケニアは最後の手段で通信機・バトルシーバーから発信機を発射して電波が届く場所へと落とし、SOS信号を発信。バトルフィーバー基地で信号を受けたコサックとマリアは村へ急行する。
コサックとアメリカはオートバイで現地へ向かっていたが、さすがにそれだと間に合わないのでバトルシャークで途中まで接近し、オートバイで山の中に入ったのだと思いたい。

時限爆弾の爆発寸前に到着したアメリカによって時限爆弾のスイッチは切られ、バトルフィーバー隊と村人は救出されたが、度重なる責め苦にジャパンの肉体はもう限界だった。
ミミズ怪人がとどめを刺そうとしたその時、バトルフィーバー隊が間一髪到着。
ジャパンも強化服を身にまとい、肉体強化で喉の機能を回復。想い出の故郷を汚す虫けらに、正義の怒りを燃やすジャパン。ミミズ怪人とバトルフィーバー隊の決戦が始まった。

ケニアが倒したカットマンがムカデ人間のように連結、ケニアは気持ち悪がりながらも次々に踏みつけカットマンを倒していく。ミミズを思わせる動きが確かに気持ち悪い。
ミミズ怪人はさらにミミズロボットを呼び出した。
ミミズロボットの猛威に山が崩れ、まともにミミズ怪人と戦うことも出来ない。
バトルシャークが出動し、バトルフィーバーロボにはジャパン一人が乗り込んでミミズロボットを食い止め、仲間たちをミミズ怪人との戦いに集中させる。
グループ・ヒーローならではの分業体制での戦闘シーンがなかなか新鮮だ。
ミミズ怪人は幾千のカットマンの恨みと怒りを込めた念力でバトルフィーバーを苦戦させる。
カットマンの怨霊に首を絞められ苦戦するバトルフィーバーだが、コクピット内のジャパンと連携してペンタフォースを繰り出し、ミミズ怪人を撃破。
ジャパンが操縦するバトルフィーバーロボも、ミミズロボットを電光剣唐竹割りで撃破する。

こうして、ジャパンの故郷に平和が戻った。
村長は、改めて村の救世主であるジャパンを神人として水汲み祭りを行おうとするが、奇祭によって散々に痛めつけられたジャパンは、たまらず逃げ出すのだった。

カットマンの怨念を力にするミミズ怪人が、ジャパンの故郷の奇祭を利用してジャパンの心身をこれ以上なく追い詰める、因習村ホラー作品並みの恐怖描写が満載のエピソード。
ケニアとフランス、ケイコ隊員たちがジャパンの故郷の祭に興味を抱かなければ、外部に連絡を取れないジャパンが絶望の中で殺されていたことは想像に難くなく、閉鎖空間と化した村で外部に連絡も取れず追い詰められる状況はまさにホラー作品で描かれるシチュエーション。
故郷を懐かしむ思いで帰郷してこんな目に遭うジャパンが率直に可愛そうでもあり、正体が露見してしまったがゆえに故郷をエゴスに利用されたのだと思えば、やはりバトルフィーバー隊の正体がエゴスに露見した26話が戦いのターニング・ポイントだったのだなと感じる。

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