「仮面ライダーアマゾン」第5話「地底からきた変なヤツ!!」感想

2024年3月29日金曜日

仮面ライダーアマゾン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

アマゾンが警察に逮捕された。心配して駆けつける立花藤兵衛。
そしてアマゾンに、暗い土の底から不気味なゲドンの挨拶が送られる。
その名はモグラ獣人!

社会からの拒絶に苦しみ、それでも戦士は友のために駆ける

今週では、現代社会の人間たちがアマゾンに偏見を向け、その偏見と迫害に苦しむアマゾンが人間を嫌悪し、アマゾンへの帰郷の念を抱くという、「社会からの孤独」という「仮面ライダー」の原点となる要素を描いたハードなドラマが展開。
一方、そんなアマゾンの救いであり、戦う理由となる「トモダチ」の絆に命を懸けるアマゾンの無垢なる魂の高潔さと、アマゾンと新たに絆を結ぶことになる存在の初登場も描かれている。

何処かの森に潜んでいたアマゾンは、太平洋を超えて自分を追ってきたゲドンが、執念深く自分を襲う理由を考えていた。アマゾンは苦悩と怒りの叫びを上げる。

第3話で赤くなった十面鬼の9つの人面は、再びエネルギー源である人間の血液が不足し、肌色に戻っていた。十面鬼ゴルゴスは赤ジューシャに命じて自らに人間の血を捧げさせる。
第3話で唐突に人面が赤く染まった理由を改めて映像として明言しておく、丁寧な展開だ。
血液を吸い取り9つの人面が赤く染まった十面鬼はモグラ獣人を呼び出すと、アマゾンを地の底に引きずり込んで殺し、ギギの腕輪を奪うことを命令する。
ゴルゴスに続いて9つの人面も、ギギの腕輪を奪いガガの腕輪と一つにすることで世界を征服する野望を語る。9つの人面それぞれ個別に意思はあるが、世界制覇の野望で大同団結している。

苦悩していたアマゾンは突然響いた銃声を聞きつけ、急ぎ銃声が聞こえた現場に向かう。
そこには、銃で撃たれ、無惨に命を奪われた鳥がいた。
か弱き命が死に至らしめられたことに怒るアマゾン。そこに、銃を持った男が現れた。
アマゾンは罪もない鳥を殺した男を悪と判断し、怒りをぶつける。
だが男は悪びれずに小鳥の死体を奪おうとしてアマゾンに発砲する、
アマゾンは反撃し、男から銃を奪うと銃をへし曲げてしまう。男は怯え、森の外へ逃亡。
罪もない鳥が無惨に殺されたことを悲しむアマゾンは、鳥を埋葬しようとする。
だがそこに、先程逃走した男が助けを求める悲鳴が聞こえてきた。

無垢なる命の守護者であるアマゾンにとっては、罪もない鳥の命を無惨に奪う男もゲドンと同じ悪である。一方で男にとっては、逃亡生活の食料として鳥を撃ち、捕獲しようとしたとところを襲撃、人間離れした力を見せるアマゾンもゲドンと同じ怪物だ。
この価値観の断絶が、アマゾンを苦しめることになる。

アマゾンが悲鳴のもとに向かうと、赤ジューシャとモグラ獣人が男を襲っていた。
アマゾンは助けに入り、モグラ獣人と戦う。赤ジューシャたちは十面鬼の指示でアマゾンがこの森に潜んでいると踏み、アマゾンを誘き寄せようと無差別に人を襲っていたのだ。
モグラ獣人はアマゾンの足を掴み、地底へと引きずり込もうとする。
それを見た男はアマゾンにやられた恨みを晴らそうと、モグラ獣人に足を掴まれ、動けないアマゾンを一方的に角材で殴打、流血させただけでなく、手を踏みつけて痛めつける。

目先の恨みに囚われ、助けてくれたアマゾンを痛めつける男の醜さは、アマゾンにとっては自分と心を通わせようとしない現代社会そのものの象徴だ。
同時に次回、アマゾンが敵対していたモグラ獣人に情けをかける描写との対比でもある描写で、敵対していたとしても無惨に命を奪われようとする命には手を差し伸べる、アマゾンの無垢なる優しさを強調するものになっている。

アマゾンを殴るだけ殴って逃亡した男は、警官隊に見つかる。
男は4人を殺して逃亡した凶悪犯で、殺人強盗の罪で警官隊に追われていたのだった。
モグラ獣人は人間に見つかることを恐れてアマゾンの足を放してしまい、地底に撤退する。
警官隊から逃げようとした男は危機を脱したアマゾンに威嚇され、警官隊に逮捕された。
警官はアマゾンに名前や住所を聞き出そうとするが、もちろんアマゾンは何も話せない。
半裸で森に潜むアマゾンを怪しんだ警官は、抵抗するアマゾンを逮捕して連行してしまった。

文明社会に馴染めず、言葉も話せないアマゾンは、現代社会にとって異物でしかないことも確かな事実である。しかしタイミングが悪いことに、先程アマゾンは人間の醜さをありありと目撃し、傷まで負ってしまった。人間の醜さを見せつけた男がいなければ、自分に話を聞こうとする警官隊に必要以上の拒絶をせず穏便に済んでいた可能性はある。
しかしそれは、文明社会に馴染めない以上、アマゾンがいつかは経験する苦しさではあった。

アジトに戻ったモグラ獣人は、警官に見つかることを恐れ撤退した報告をするが、部下の失敗に異常なまでに狭量な十面鬼がそれを許すわけがない。9つの人面は次々にモグラ獣人を臆病者と責め立て、処刑しようとする。ただでさえ小規模な組織なのに一度の失敗で構成員を処刑しようとする考えのない行動が、結果的に十面鬼の首を絞めることになる。
だが、現場にいた赤ジューシャの弁護もあり、モグラ獣人は最後のチャンスを得た。
どうやら赤ジューシャの方が獣人よりも立場が上のようだ。
十面鬼は、今度失敗すれば苦しみ抜いて死ぬことになると最後通告をする。

投獄されたアマゾンの身元引受人として、おやじさんが到着した。
だが、人間の醜さを思い知ったアマゾンはおやじさんすら拒絶する様子を見せる。
さらに、興味本位で取材に来た取材陣のカメラのフラッシュが、アマゾンを怯えさせた。
「フランケンシュタイン対地底怪獣」のフランケンシュタインがテレビ局のスタッフに照明を浴びせられて怯え、暴れ出したことを思わせる描写だ。
フランケンシュタインもアマゾンも、社会から拒絶される異物であり、マスコミは彼らを興味本位で傷つける意図なき悪意として描かれている。
マスコミが興味本位で個人の秘密を暴き立て、好奇の目に晒そうとする事態は令和の今になっても変わらず、文明社会に生きる人間の業を感じずにはいられない描写だ。
フラッシュに怯えたアマゾンは逃亡し、人間への嫌悪を叫びながら夜の街を疾走する。
アマゾンは人間たちと心が通じない怒りを、大都会に叩きつけるのだった。

新聞のアマゾンの記事を見て喜ぶまさひこだが、りつ子はアマゾンが英雄気取りでいるのではないかと誤解し、アマゾンを拒絶するが、まさひこはあくまでもアマゾンの味方をする。
だが、そこにモグラ獣人が現れた。アマゾンの居場所を尋問するモグラ獣人は、アマゾンの友達だと言っていたまさひこを拉致し、人質にしてしまうのだった。

連絡を受けたおやじさんは、りつ子とともにアマゾンのもとへ向かう。
海岸にいたアマゾンは、この日本に故郷のような懐かしさを感じながら、そこに住まう人とは心が通い会えない哀しさと寂しさを感じ、熱帯のジャングルを思い出していた。
好奇の目に晒され、拒絶され続ける哀しみに、アマゾンは帰郷の念を見せる。
だが、おやじさんからまさひこがさらわれたことを聞き、弟を思うりつ子の涙を見たアマゾンは、りつ子の涙を拭い、トモダチであるまさひこを救う決意を固め、再起する。

人々からの拒絶を受け、好奇の目に晒される耐え難い苦しみを味わいながら、友と呼んでくれる存在のためにその苦しみを乗り越えようとするアマゾンの姿が大きな感動を呼ぶシーン。
誰か一人でも自分を信じ、自分の助けを求めている限りは戦えるアマゾン。
その姿は、戦いに疲れ絶望しながら、誰か一人でも助けを求めている限りは死ねないと辛くても戦い続ける道を選び、ウルトラマンキングにウルトラの命を授かり再生したウルトラマンレオの姿を連想させる。そこでは、助けを求める声がある限り不滅の存在でなくてはならないヒーローの宿命の辛さと、その辛さに耐え守るべきもののために戦い続ける心の強さが描かれていた。
アマゾンもまた、ただ一人の友の助けを求める声のために、辛くても戦い続ける道を選んだ。
その姿はまさに、高潔なる魂を持ったヒーローだ。

そこに現れたゲドンのオートバイ部隊を追ってジャングラーを飛ばすアマゾンは、捕まったまさひこの元へ駆け寄る。だがその道すがらには、モグラ獣人が潜んでいた。
モグラ獣人の爪に身体を引き裂かれながら、まさひこの元へ向かおうとするアマゾン。
モグラ獣人はギギの腕輪を要求し、アマゾンはゲドンの狙いが自分の腕のギギの腕輪にあることを知る。だが、ギギの腕輪を外せばアマゾンの命もない。
まさひこを救出しようとするアマゾンは、怒りの叫びとともに変身した。

飛び蹴りでモグラ獣人を吹き飛ばし、まさひこを救出したアマゾンライダーは、噛みつき攻撃でモグラ獣人を痛めつけ、モグラ獣人の身体から黄色い血を流させる。
モグラ獣人は残像が出るほどのスピードで撹乱するが、アマゾンライダーにはそのスピードも通用せずに捕えられてしまい、両腕の骨を砕かれてしまった。
アマゾンライダーは回し蹴りからの大切断で、モグラ獣人の身体を切り裂く。
大切断によってつけられた傷から獣人の血しぶきが派手に飛び散る描写はこの回から。
前回まではいつの間にか大切断が決まっていた印象もあったが、大切断が決まると血しぶきが派手に飛び散るようになったことで戦いの決め手となった一撃がより明確になり、大切断の威力をより印象付けることにも成功している。

重症を負ったモグラ獣人は地底へと逃げていく。
社会からの拒絶に苦しみながら、まさひことの友情に命をかけたアマゾンは、ゲドンの狙いがギギの腕輪であることを知り、ゲドンの謎を追ってさらなる闘志を燃やすのだった。

「社会からの孤独」という、「仮面ライダーアマゾン」が原点回帰として掲げた要素を強く打ち出したこの回は、社会から拒絶される苦しみを味わいながら、信じてくれる友一人のために命をかけて戦うことが出来るアマゾンの純粋さと高潔さを描くことに成功している。
そしてドラマ的にも、アマゾンがモグラ獣人の発言をきっかけに、ゲドンがギギの腕輪を狙っていることを知るという進展を見せ、アマゾンはまた一つゲドンの謎に迫っていくのだった。

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