「バトルフィーバーJ」第34話「地獄で笑う闇将軍」感想

2024年3月27日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

警察官が何者かに射殺される事件が起こった。
バトルフィーバー隊は警視庁の依頼で、犯行に使われた闇のピストル・キラーXを追う。
その事件の裏で手を引いているのは、エゴスのセミキラー怪人だった。
怪人に弟を殺された過去を持つ神誠=二代目バトルコサックは、たった1人でエゴスへ挑む。
弟の復讐か、バトルフィーバーとの団結か。コサックはどちらを選ぶのだろうか…。

友と弟に捧ぐ復讐の銃弾 正義と復讐の天秤が揺れる

前回、二代目バトルコサックとしてバトルフィーバー隊に加わった神誠。
不言実行タイプ、行動力があるが単独行動を好み、多くを語らず真意を掴ませない彼は、これまでチームワークで戦い抜いてきたバトルフィーバー隊にはいなかったタイプの人間だ。
演じる伴直弥氏によって、年長であるために他のメンバーと距離を置いているという解釈の役作りもあり、ハードボイルドなキャラクター性が追求されている。
今回は、友の謙作の仇討ちでバトルフィーバー隊に加わった神誠が、弟の仇討ちという個人の復讐に仲間を巻き込まないためにバトルフィーバー隊からあえて距離を置き、単独で弟の仇であるセミキラー怪人を追うドラマが展開され、多くを語らない彼の信念が伺い知れるエピソードだ。

車と接触事故を起こしたトラックに乗っていた男が、事故の相手である車に乗っていた男や、トラックの逃亡を止めようとした警察官を射殺する事件が起こった。
警視庁は警察官殺人事件の際に発見された、殺害に使用された拳銃・キラーXの密輸ルートの調査をバトルフィーバー隊に依頼し、鉄山将軍とジャパンはキラーXの調査をしていた。

ここのところ、バンクフィルムによるバトルシャーク発進シーンしか出番がなかった鉄山将軍が久しぶりに顔を見せ、ドラマに絡む活躍を見せているのもこのエピソードの特徴。
バトルフィーバー隊を退こうとするコサックの真意をジャパンに伝え、新生バトルフィーバー隊の結束を固めるなど、指揮官として燻銀の活躍を見せている。

ビッグベイザーでは、ケニアが猫と一緒に飯を食べてフランスやマリアに呆れられていた。
そんな騒ぎに我関せずといった様子で警察官殺人事件の新聞記事を読んでいたコサックは、鉄山将軍から現場に残されたピストルがキラーXに間違いないという鑑定結果を聞く。
キラーXとは、2年前に暗躍した「闇将軍」率いるグループが密造した改造ピストルである。
闇将軍たちは2年前に警官隊と戦争さながらの銃撃戦を起こした後、日本から撤退してシンガポールにシンジゲートを移していた。しかし、彼らが密造するキラーXが日本で発見されたということは、闇将軍のグループが日本に戻ってきたということになる。
それを聞いたコサックは、仲間に目的も告げずにビッグベイザーを出ていった。
周囲に馴染もうともしないコサックに、仲間たちはやりにくさを感じていた。

コサックは街に出て、闇将軍の行方を調査していた。
闇将軍の名を聞いた人々は怯え、コサックに命が惜しければ深入りしないように告げる。
一方、バトルフィーバー隊も闇将軍の密造ルートを潰すために調査を開始していた。
ジャパンとマリアは調査に入った倉庫で怪しげな木箱を発見し、その中に隠されていたキラーXを発見するが、そこに秘密を知った者を始末せんとする声が響き、銃弾の雨がジャパンとアメリカを襲った。フランスとケニアも駆けつけ、銃撃の主であるカットマンと戦闘を開始。
倉庫から脱出したバトルフィーバーを、エゴスのセミキラー怪人が襲う。
セミキラー怪人のウルトラマシンガンの威力は絶大だった。
その猛威の前に、バトルフィーバーも一時撤退を余儀なくされる。

インベーダーハウスにいたコサックは、闇将軍グループの手先に港へ連れ出される。
コサックは南米から来たバイヤーを装い、多額の現金をちらつかせることで闇将軍グループの密造工場へと案内させる。目隠しをされ、車で密造工場まで連行されるコサックは、聞こえてくる踏切や電車の音に耳を澄ませ、闇将軍の密造工場への道を把握しようとしていた。
密造工場へ案内され、目隠しを取られたコサックは、そこで闇将軍と対面する。
コサックは隠し持っていた銃を撃つが、闇将軍の身体に銃弾は通用しなかった。
部下に捕えられたコサックは、車ごと崖から海に落とされるが、なんとか生還。
ジャパンとマリアに助けられ、ビッグベイザーで治療を受ける。

鉄山将軍は倉庫の武器を押収しても問題が解決しないことから、密造工場を潰す計画を立案。
2年前にも闇将軍のアジトがあった浜浦に工場があると判断する。
傷が癒えたコサックは迷惑をかけたことを謝罪すると、鉄山将軍にバトルフィーバー隊からの脱退の意志を伝える。一度はコサックの戦闘服を着てバトルフィーバー隊として戦いながら、一人勝手に脱退しようとするコサック=神誠を責めるフランスとケニア。
だが鉄山将軍は彼らを諌め、神誠の脱退を許可するのだった。

一人テントを張り、銃撃訓練を行っていた神誠の元を、ジャパンが尋ねた。
神誠は弾薬を自ら調合し、マグナム弾を上回る威力の弾薬を開発しようと調合を重ねる。
あくまで一人で闇将軍に立ち向かおうとする神誠に、ジャパンはバトルフィーバー隊も密造工場の摘発に向かうことと、仲間としていつでも助太刀することを告げ、その場を去っていった。

一人で闇将軍グループやエゴスに立ち向かおうとする神誠を気にかけるジャパン。
後の展開を思えば鉄山将軍に既に事情を聞かされていたというのもあるだろうが、同時にジャパンは、ミミズ怪人によってただ一人死の淵まで追い込まれた際に、仲間の助けで救われた経験を踏まえ、一人きりで出来ることの限界を知っている。
だからこそ、単独行動する神誠に助太刀することを約束する気配りを行ったのだと思える。
「一人ひとりは小さいけれど 一つになれば ごらん無敵だ」という、グループヒーローの在り方を最短距離で歌うフレーズを体現する振る舞いは、さすがバトルフィーバーのリーダーだ。

神誠には、2年前に闇将軍を追い詰めながらも銃撃されその命を落とした弟がいた。
警察官銃撃事件に闇将軍が密造するキラーXが関わっていることを知った神誠は、弟の復讐のため、そして闇将軍に関わるエゴスを倒すために、ただ一人で闇将軍を追っていたのだ。
弾丸の調合が完成し、強力な威力の銃を完成させた神誠は、復讐への決意を固める。

闇将軍の一味による兵器密造は、エゴスの資金源となっていた。
ヘッダー指揮官はその資金源をバトルフィーバーから守るために防衛網を厚くする。
神誠は、再びインベーダーハウスを訪れていた。それを尾行するケイコ隊員とトモコ隊員。
インベーダーハウスにいた闇将軍グループの手先を港ヘ連行、尋問した神誠は、その正体がカットマンであったことを知る。彼を銃撃する男の正体もカットマンだった。
バトルフィーバー隊も浜浦の港を捜索するが、なかなか手がかりを掴めない。
ケイコ隊員から、神誠も密造工場を探しあぐねていると報告を受けたジャパンは、神誠との合流を決意し、トモコ隊員に目を離さないように連絡する。
だが、神誠はトモコ隊員の尾行に気づき、それを振り切ってしまった。
タクシーに乗った神誠は、密造工場に目隠しをされて連行されていた時に聞いた踏切や電車の音を思い出すことで密造工場の場所を割り出し、ついに密造工場がある港へ到着する。
工場へ入るトラックの荷台に潜り込んで検問を突破、敷地内に潜入した神誠は、さらに通気口から密造工場内部に潜入する。

密造工場内部でキラーX密造の現場を目撃した神誠だが、通気口に仕掛けられていた催涙ガスの罠に嵌り、捕まってしまった。だが闇将軍はあえて神誠と対面。
神誠は、自家製の弾丸でついに闇将軍を撃ち抜くが、弾丸が身体を貫通しても闇将軍は死なない。人間なら復讐を果たせていただろうが、自分は人間ではないと笑う闇将軍。
闇将軍の正体はセミキラー怪人で、命を狙う神誠を絶望させるべく、あえて神誠と対面し、自らを銃撃させたのだった。改めて捕まった神誠は、サロメによるキラーXの試し打ちの標的にされてしまうが、そこに間一髪、バトルフィーバー隊が駆けつけた。
アメリカからコサックの強化服を投げ渡された神誠は、再びバトルコサックへ変身する。
バトルフィーバーとセミキラー怪人の決戦が始まった。
カットマンの銃を奪って銃撃を加えても通用しない、セミキラー怪人の規格外のタフネスに苦戦するバトルフィーバー。さらにセミキラー怪人はセミキラーロボットを呼び出した。
バトルフィーバーも対抗し、バトルシャークを呼ぶ。

セミキラー怪人は、ウルトラマシンガンによる火力と、カットマンの銃による銃撃だけでなく、神誠が調合した弾薬すら効かない規格外のタフネスを備えた怪人。
セミにそこまで強いイメージがないので、モチーフからは想像もできない強さに意外性があって魅力的なエゴス怪人だ。

ウルトラマシンガンの火力に苦戦しながら、バトルフィーバーはペンタフォースでセミキラー怪人を打ち破る。兄の復讐に燃えるセミキラーロボットはビッグマシンガンでバトルフィーバー隊を攻め立てるが、そこにバトルフィーバーロボが到着。
5人揃ってバトルフィーバーロボに乗り込み、久しぶりに放つクロスフィーバーから、電光剣唐竹割りの連携技を決めてセミキラーロボットを打ち破った。

戦いが終わり、一人何処かへ去ろうとするコサックの後を追うバトルフィーバー隊。
コサックは、弟の墓に闇将軍を倒し、復讐を果たしたことを報告していた。
鉄山将軍からコサックが抱えていた事情を聞かされていたジャパンは、コサックが一度バトルフィーバー隊を辞めようとしたのも、個人の復讐に仲間を巻き込まないためだったと説明する。
事情を知り、正義のために戦うバトルフィーバーとしての使命と個人の復讐を分けるコサックの信念を理解した仲間たち。バトルフィーバー隊は結束を深めるのだった。

闇将軍グループの壊滅や、エゴスとの戦いは悪との戦いである以上、バトルフィーバー隊が受け持つべき仕事であり、コサックもその一員として仲間と協力するのが自然な姿だろう。
しかし、コサック=神誠にとって、闇将軍グループとの戦いは弟の復讐という、個人的な動機によるものだった。そんな個人の復讐のために、正義を成すための力であるバトルフィーバーの力を使ったり、バトルフィーバーの仲間を個人の復讐のために利用するような形になることは、彼の信念が許さなかったのだろう。

結果的にはバトルフィーバーに合流して復讐を果たしたとはいえ、バトルフィーバーの仲間の正義の信念を認めているからこそ、彼らを復讐のために利用してはいけないと一線を引いた神誠の、バトルフィーバーが振るう正義の力に対する考え方と信念が伺える。
恐らくは、バトルフィーバーの力をあくまでも正義のために振るい、傷ついた心に寄り添うためにはその力すらも暴力として手放し、命を落とした白石謙作への想いもあったからこそ、バトルフィーバーの力を自分自身の復讐のために使ってはいけないと考えたのではないだろうか…。

その真意を仲間に伝えれば、仲間たちが自分の復讐に協力を申し出ることがわかっていたからこそ、真意を伝えることなく、自分の信念で復讐を行おうとした神誠。
ヒーローの力を個人の復讐のために使おうとせず、あくまで正義を成すための力であると理解している彼もまた、間違いなくバトルフィーバーに相応しいヒーローだ。

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