あらすじ
夢に憧れるメタルダー。一方、ネロス帝国にも出世を夢見る者がいた。
モンスター軍団・軽闘士ヘドグロス。メタルダーとヘドグロスの夢と夢との対決。
ヘドグロスの悪夢がメタルダーを追い詰めていく。
夢に憧れる者と夢を追う者 醒めない悪夢を断ち切る決意
前回登場した、ネロス帝国4軍団合同の軍事演習にも参加できず、つまらないギャンブルで他の軍団員から金を巻き上げていたモンスター軍団最下層の軽闘士、ヘドグロス。
今回から間隔をおいて3回に渡って展開する、藤井邦夫氏脚本の「モンスター」3部作は、彼と彼を愛したモンスター軍団の奴隷女、ウィズダムの愛と夢のドラマを中心に展開していく。
今回はその序章として、ヘドグロスが何故金に汚いのかという理由が描かれ、彼が抱く「夢」について掘り下げられていくことになる。
街に出た剣流星は、舞と待ち合わせをしていた。待ち合わせの時刻に30分遅刻したらしい舞は、子供の頃の楽しい思い出を夢に見て熟睡してしまい寝坊してしまったのだという。
人間が見る夢という概念に興味を抱いた剣流星。しかし、機械の身体の超人機である剣流星は夢を見ることは出来ない。自分があくまでも人間と違う存在であることを意識せざるを得なくなった剣流星は心ここにあらずだった。
舞のヨットレースの取材に付き添う剣流星を、桐原の美人秘書が監視していた。美人秘書の報告を受けた桐原は夜の闇に包まれゴッドネロスになり、ゴーストバンクに姿を現す。
ゴッドネロスはゲルドリングにモンスター軍団軽闘士、ヘドグロスを呼び出すように命じた。
夢に憧れるメタルダーを、ヘドグロスの能力をもって夢に溺れさせ抹殺しようというのだ。
ようやく自分の軍団からメタルダー抹殺任務を請け負う戦士が出たことを喜んだのか、意気揚々とヘドグロスを呼び出すゲルドリング。しかし、ヘドグロスはゴーストバンクに姿を現さない。
またしてもゴッドネロスの前で恥をかかされたゲルドリング。これまでは他の軍団員からその卑劣さを軽蔑されるように軽んじられていただけではあったが、自分の配下であるモンスター軍団員からも恥をかかされたことで彼の怒りも頂点に達する。
他の軍団員も、最下層の軽闘士であるヘドグロスがメタルダー抹殺任務を命じられたことことへの不服さを顕にし、力も技もないのにずる賢くて金に汚いヘドグロスの評判は最悪だった。
ゴッドネロスはあくまでもヘドグロスにメタルダーを夢に溺れさせ抹殺させようとする。
メタルダーが兄弟に興味を抱くと同じ兄弟であるタグ兄弟にメタルダー抹殺を命じたように、ゴッドネロスはただメタルダーを抹殺するのではなく、彼が興味を抱いたものにちなんだ戦士を向かわせ、メタルダーの心を揺さぶる戦略を取っている。
ただ戦うだけでは分が悪いが、メタルダーが興味を抱いたものを戦いの中で連想させることでメタルダーの心を動揺させる戦略のようだ。
あるいは、機械の領域を超え人間の様々な概念についての興味を抱き、人間に近づいていくメタルダーの成長を恐れたからこそ、メタルダーが興味を抱いたものをもってメタルダーを抹殺することで、メタルダーの成長こそが死を招くという構図を演出し、古賀博士が作り上げた超人機の成長する機械という概念を完全否定しようとする意図も感じられる。
機甲軍団のダーバーボとブルチェックが連れたって移動していると、どこからともなくヘドグロスの声が聞こえてきた。声の元を訪れた2人は、最下層の軽闘士に過ぎないヘドグロスが、自分を雄闘、暴魂、豪将、そして剴聖と名乗りを上げ、女性の前でポーズを決める様子を目撃する。
ヘドグロスはゴッドネロスが姿を見せても馳せ参じず、自分のねぐらで過ごしていたのだ。
最下層の軽闘士、それも力も技もないヘドグロスが分不相応な剴聖への出世の夢を見ていることを嘲笑うダーバーボとブルチェック。しかしヘドグロスは、いくら嘲笑われようとも己の夢を諦めるようなことはしない。力も技もないヘドグロスだが、彼の持つ夢への情熱は本物だった。
そんなヘドグロスに付き添う女性、ウィズダムはモンスター軍団の奴隷女だった。
ヘドグロスとウィズダムは恋人同士であり、ヘドグロスが金に汚かったのは、奴隷という身分であるウィズダムと2人で幸せに暮らすために金を蓄えていたためだったのである。
ヘドグロスを嘲笑うついでに、そんなヘドグロスに寄り添うウィズダムを侮辱するダーバーボとブルチェック。ヘドグロスは、愛するウィズダムを侮辱した2人に食って掛かるが、実力差は埋め難くまるで通用しない。こんなヘドグロスにメタルダー抹殺を命じようとしたゴッドネロスの真意を疑う二人の言葉から、ヘドグロスは自分がゴッドネロスに見込まれ呼び出されていたことを知り、ゴーストバンクの闘技場へと向かう。
卑劣で知られるモンスター軍団の最下層に属する、卑怯で金に汚いヘドグロス。
そんな彼が金に汚かったのは、愛する者との幸せな生活の夢を果たすためだったということが明かされるこの展開は、前回本格的に登場した際には軍事演習にも参加できない所謂ザコキャラ、賑やかしと思われていたヘドグロスに人間的な厚みを与えている。
自分はいくら馬鹿にされても怒らないが、愛するウィズダムを侮辱されれば実力上位の相手にも食って掛かる男気も見せ、彼が決して卑劣なだけの存在ではない、愛する者と幸せに暮らす夢を追って生きてきた男であるとキャラクターを立たせることに成功している。
一躍ゴッドネロスの元に訪れ、メタルダーに悪夢を見せ抹殺する任務に大抜擢されたヘドグロス。ゲルドリングに頭を下げ、モンスター軍団員の作戦への協力を請うヘドグロスだったが、ゴッドネロスの前で恥をかかされたゲルドリングは怒り心頭で協力を拒否、他の軍団員からも軽蔑されているヘドグロスは誰の助けも借りることが出来なかった。
罵られながらも頭を下げ続け、助力を請い続けるヘドグロスの姿が哀しい。
結局独りきりで出撃することになったヘドグロスだが、メタルダー抹殺任務はネロス帝国内でゴミ扱いされる惨めな生活から抜け出し、出世してウィズダムとの幸せな生活の夢を実現する千載一遇の機会。決死の覚悟で出撃へ決意を固めたヘドグロスは、ウィズダムにこれまで貯めた金を預かってもらうように頼む。物言わぬウィズダムは、ヘドグロスの無事を祈り宝石の付いたイヤリングを外して彼に託す。奴隷という身分を考えると、ヘドグロスが巻き上げた金を使って彼女のために贈ったものだろうか。こうして、夢を追う男は孤立無援の状況で死地へ向かった。
舞と向かった海で、剣流星は「夢」について思案し続けていた。
人間、命あるものだけが見ることが出来る、機械である自分には決して見れないもの。
考えれば考えるほど、否応なしに自分が人間ではないことを実感させられ苛立つ剣流星。
そんな彼を慮る舞は、取材終わりに2人でヨットに乗り海に出る。一時の安らぎの時。
帰路につき、舞を家まで送った剣流星だったが、その顔は浮かない様子。
メタルチャージャーで走り去っていく剣流星を、舞は心配する。
剣流星は、夢という言葉を忘れようとしても忘れられずにいる自分に苛立っていた。
シルバーカークスに向かうメタルチャージャーを、ヘドグロスはスライムを使って罠に掛ける。
とっさに脱出した剣流星にヘドグロスが襲いかかる。剣流星は素早くメタルダーに瞬転した。
ヘドグロスはメタルダーに夢を見せてやると吠え、武器であるヘドグロスシャワーを噴射。
木が一瞬にして溶解するヘドグロスシャワーを、メタルダーは一瞬その身に受けてしまう。
メタルダーの胸に付着したヘドグロスシャワーは、メタルダーの回路に0.00ミクロン単位の誤差を発生させた。みるみる動きが鈍くなり、普段なら回避できるはずのスピードしかないヘドグロスのパンチを躱せないメタルダーは、かろうじてヘドグロスをパンチで遠くに吹き飛ばすが、その時メタルダーの回路がショートして火花を吹いてしまう。
異常を引き起こした回路がメタルダーに夢を見せ始めた。美しい花畑の夢を見たメタルダーは、夢遊病のように前後不覚のまま彷徨い始める。夢に溺れ始めたメタルダーを見たヘドグロスは、メタルダーを倒すことで自分の夢を叶える決意を叫ぶ。
軍団最下層の軽闘士であり他の軍団員から軽蔑されているヘドグロスだが、機械で出来たメタルダーとヘドグロスシャワーが有効だったというのもあり、メタルダー相手にかなり善戦できている。軍団で軽蔑されているのはモンスター軍団として生まれた生来のずる賢さと金の汚さによるもので、持って生まれた能力や実力は無視されていたようだ。
最も、彼が本気で戦ったのも恐らくは今回の孤立無援の状況での一発逆転の機会であるこのメタルダー戦が初めてで、追い込まれたがゆえの底力なのだろう、という気もする。
ゴッドネロスは自分でモンスター軍団をバイオテクノロジーで作ったこともあり、ヘドグロスの持つ能力を正当に把握・評価して今回メタルダー抹殺に抜擢した、ということなのだろう。
前後不覚のまま、崖から転落したメタルダーは、落下した先で自分が夢を見ていることを自覚する。人間と同じように夢を見ることが出来た彼の胸には確かな喜びが生まれていた。
夢の中で、笑顔の舞と出会う「剣流星」は、いつまでもこの幸せな夢を見ていたいと願う。
しかし、「剣流星」が「メタルダー」へ瞬転した姿を目撃した舞は、悲鳴を上げメタルダーの前から消え去ってしまった。一瞬にして悪夢へと転じた剣流星の夢は、自分が決して人間にはなれない存在であるという事実を突きつけるものだった。
舞が去っていく夢に動揺したメタルダーに、とどめを刺さんとするヘドグロス。
しかしその時、機甲軍団のダーバーボとブルチェックがメタルダーとヘドグロスを砲撃した。
軍団最下層のヘドグロスに手柄など立てさせない。功名心に目が眩んだ2人の砲撃に吹き飛ばされるメタルダーとヘドグロス。傷ついたヘドグロスは、ウィズダムが託したイヤリングの宝石の中にウィズダムとの幸せな未来の夢を見る。出世してウィズダムを幸せにし、子供を作って楽しく暮らす。夢を叶えるための執念が、ヘドグロスの命を支えていた。
シルバーカークスに帰還したメタルダーのダメージは深刻だった。
一方、舞は夜景を見ながら、夢を見ることが出来ない自分、人間ではない自分に苛立つ剣流星に何もしてやれない自分の無力さに悩む。
修理を終えた剣流星はヘドグロスが舞を襲う夢を見て目覚めた。
スプリンガーは、回路に付着したヘドグロスシャワーのカビが回路に異常を起こして幻覚、つまり剣流星にとっての夢を見させていたのだと分析するが、迂闊にカビを除去すれば回路が丸ごと駄目になる危険性があるため除去できないことを告げる。
自分が憧れた夢を見ることが出来たが、それが悪夢だったことに悩む剣流星は舞に相談を受けていた。舞はそんなものは本当の夢ではないと言うと、本当の夢を見られる場所へ連れて行くと剣流星とともに出かける。その車に、スライムとなったヘドグロスが付着していた。
舞は、古賀竜夫が幼少期を過ごした村に剣流星を連れてきた。魂の兄弟である古賀竜夫が暮らしたこの村の景色は、剣流星が本当の夢を見つける手がかりになるかもしれない。
剣流星のために何か出来ないか悩んでいた舞は、シルバーカークスで剣流星が修理を受けている間に古賀竜夫の足跡を調査していたようだ。
そこに、ヘドグロスが決死の覚悟で挑戦を挑む。剣流星は舞を逃がすと、メタルダーに瞬転。
死闘のさなか、メタルダーの回路に付着したヘドグロスシャワーが回路の異常を引き起こし、メタルダーは金縛りになってしまった。満足に動くことも出来ないメタルダーはヘドグロスの動きをマトモに捉えることも出来ず一方的に攻撃を受けてしまう。
夢に執着し、夢を叶える執念で自分を追い詰めるヘドグロスに、これが自分が憧れた夢の末路かと死を覚悟するメタルダー。その時、メタルダーの記憶回路が作動した。
古賀竜夫の少年の頃の記憶が蘇り、これこそが自分の本当の夢と確信したメタルダー。
古賀竜夫が愛したこの美しい世界を守り抜き、未来へ繋ぐ。自分の夢を守り、その美しさと平和を未来へとつなぐ決意が、メタルダーを復活させた。
だが、ヘドグロスも自分の夢を掴むためなおも戦う。夢の守り人と、夢を追う男の死闘。
メタルダーはヘドグロスの内蔵を引きずり出してヘドグロスシャワーを封じると、レーザーアームを叩き込んだ。それでもなお、愛するウィズダムの名を叫び倒れないヘドグロスに、渾身のGキックが炸裂する。ウィズダムとの幸せな生活を実現した夢を見て、ウィズダムの名を叫びながら、ヘドグロスは爆死した。
全てが終わった後、ウィズダムはヘドグロスが散った地を訪れていた。
ウィズダムは落ちていたイヤリングを拾うと、その輝きにメタルダーへの復讐を誓う。
モンスターとしての姿を顕にし、愛に殉じようとする女の戦いが始まろうとしていた。
舞のおかげで本当の夢を見ることが出来たと感謝する剣流星。
舞は、夢は過去の思い出だけでなく、未来にもたくさんあるのだと教える。
剣流星はその言葉を受け、幸せな未来を掴むという夢のために堂々と自分に挑んだヘドグロスもまた、自分を倒した後の未来に夢を持っていたことを思い返すと、古賀竜夫の記憶という夢を、現代、そして未来へ繋いでいくために戦うことを決意するのだった。
どんなに蔑まれながらも、愛する者との幸せな未来という夢を諦めないヘドグロスのひたむきな生き方が大きな感動を呼び起こす回。策に溺れることなく、堂々と挑んだ彼の姿はメタルダーにも夢のために燃え尽きた男として記憶され、彼の真摯な姿がメタルダーの心に遺したものが、後に愛するウィズダムや息子を救うことになる。
また、夢は過去の思い出だけでなく、未来を築くための原動力になるものであることを学んだメタルダーが、古賀竜夫が持っていた過去の思い出という夢、美しい自然を愛していた思いを未来へと繋ぐために戦うことを決意する回でもある。
美しい自然を破壊しようとするゴッドネロスに漠然とした怒りを抱いていた剣流星だが、今回の経験で古賀竜夫の思い出にある美しい自然を未来へ繋ぐために、自然を破壊するゴッドネロスを倒さなくてはならない、という決意を固めることになるのだった。