「バトルフィーバーJ」第27話「初恋泥棒にご用心」感想

2024年3月6日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

バトルフィーバー隊の面々は、海水浴にやってきていた。
そんな彼らの様子を、黒仮面怪人とサロメが監視。
エゴスはトモコ隊員の妹・ユキに狙いを定め、エゴスの少年を使って基地に爆弾を運ばせる。

初恋を踏み躙る策略 人の心を汚す悪魔を許すな

前回でバトルフィーバー隊の正体を掴んだエゴスは、その周辺の人物にも探りを入れ、バトルフィーバー基地・ビッグべイザーの破壊を目論んでいた。
今回はビッグべイザーでオペレーターを務めるバトルフィーバー隊の連絡員、上野トモコ隊員の妹であるユキが標的にされ、その心をエゴスの陰謀によって蹂躙されてしまう。
すでにバトルフィーバー隊の正体が露見してしまった以上、もはや周囲の人々が戦いに巻き込まれることは避けられない状況になっていた。

バトルフィーバー隊のフランスとケニア、ケイコ隊員とトモコ隊員、そしてトモコ隊員の妹のユキは海水浴に来ていた。フランスとケニアは特にユキを可愛がり、貝殻を拾ってユキに手渡す。
そんな平和な日常を、サロメとサタンエゴスの御子、黒仮面怪人が監視していた。
いくらなんでも隙だらけのバトルフィーバー隊に呆れを見せる黒仮面怪人。
黒仮面怪人は敵の油断をつく兵法の基本を説き自ら出撃しようとするが、特務部隊の使命、すなわち今回遂行するべき作戦をサロメに指摘されると考えを改め、ユキに標的を定める。

黒仮面怪人の身体の胸部には機械回路が造形されており、その様子ははどことなく「スター・ウォーズ」シリーズのアイコンである暗黒卿ダース・ベイダーを思わせる。
マスクのデザインも、ダース・ベイダーをベースに角をつけたようなフォルムだ。
「スター・ウォーズ」の1作め、所謂「エピソード4/新たなる希望」の日本公開は1978年、日本公開時にはすでに大作としてSFファンの話題をさらっていただけに、日本公開翌年の1979年時点で怪人のモチーフとしてダース・ベイダーのイメージを反映しているのが流石、時代性を反映してきた東映特撮ヒーロー作品ならではの凄みである。

黒仮面怪人はマネキンに特殊な装置を使って機械仕掛けの命を搭載、人造人間として少年を作り出す。タケシと名付けられた少年は、海で貝殻を拾っていたユキに接近する。
貝殻で出来た笛を吹き、笛の音でユキの興味を惹いたタケシ。タケシが首から下げていた貝殻のペンダントに興味を抱いたユキに、タケシはペンダントを贈る。急激に仲良くなる2人。
ペンダントをもらい喜ぶユキが、先程拾っていた貝を海に落とすと、タケシはすかさず海に飛び込んで貝を拾い、人間と思えない動きで浮上してそれをユキに渡す。常人と思えぬ身のこなしに面食らうユキだが、それでもタケシの優しさに惹かれていくのだった。

海から帰ってきたユキは、ケイコ隊員の弟であるマサルと虫取りに来ていた。
すると、ユキの耳にまたしてもタケシの吹く笛の音が聞こえてきた。
ユキは笛の音に導かれ、タケシと再会を果たす。
ユキはタケシに贈られたペンダントを首から下げており、タケシもそれを喜ぶ様子を見せる。
ペンダントを宝物として大事にしていたユキを、タケシはスケッチし始める。
そこにマサルが割り込んできたが、タケシに夢中のユキにはもうマサルの声など耳に入らない。
セミが採れないと煩いマサルが邪魔だったのか、ユキはタケシを家に招くのだった。

ユキの家に招かれたタケシは家探しを始めていたが、メロンを切っているユキはそれに気づかない。トモコ隊員の口紅を見つけたタケシは、口紅の内部に何かを仕込む。
秘密の逢瀬を経て、ユキはすっかりタケシに夢中だった。
タケシがスケッチしてくれた自画像を夢中になって見つめ、タケシとの思い出に浸るユキ。
トモコ隊員は思い出に浸ってぼんやりしてばかりのユキを心配するが、逆にユキに口紅を忘れて外出していたことを指摘されやり込められてしまう。
バツが悪いトモコ隊員は、タケシが何かを仕込んだ口紅を持って出かける。
トモコ隊員はケイコ隊員が住む部屋の隣の部屋に住んでおり、二人は連れたってバトルフィーバー隊基地・ビッグべイザーへ向かうが、その様子をサロメとタケシが監視していた。
タケシはトモコ隊員の口紅に発信機を仕掛けていたのだ。

夏のレジャーで出かけた先で出会った優しい少年、しかも家に帰ってから再び再会を果たすというシチュエーションは、ユキの心を初恋の高鳴りで支配するのに十分な状況だった。
比較対象が蝉取りに夢中でセミの小便がどうのこうのと煩いマサルだったら余計にそうだろう。

エゴスはユキの初恋という大切な想い出を利用して接近し、バトルフィーバー隊連絡員のトモコ隊員の家に潜入するという手段を取った。後の展開でトモコ隊員はバトルフィーバー隊員として防犯上容易に他人を家に上げないようにしていることが言及されているので、ユキの存在がバトルフィーバー隊員の家に潜入する手段として格好の存在だったことは明白だ。
人の情愛を利用して目的を果たそうとするエゴスの悪辣さが強調されると同時に、バトルフィーバーの正体がエゴスに露見してしまったことが、やはり周囲を危険に晒すことに繋がってしまった展開はやりきれないものがある。

ケイコ隊員とトモコ隊員はビッグべイザーへの秘密通路があるスナックケニヤに到着。
そこで発信機の反応が途絶えたことを確認したサロメは、スナックケニヤがバトルフィーバーの基地・ビッグべイザーへの秘密の出入り口であると確信。
サロメからついにバトルフィーバー隊の基地を突き止めた報告を受けたヘッダー指揮官とサタンエゴスは、殺されたエゴス怪人の敵を取るべくスナックケニヤへ黒仮面怪人を出撃させる。
黒仮面怪人たちの襲撃を受けるスナックケニヤ。ついにビッグべイザーへの秘密通路をも発見した黒仮面怪人たちはビッグべイザー内部に突入してしまう。
コーヒーを淹れて和んでいたバトルフィーバー隊もそれを知り、ビッグべイザーの自動迎撃システムを作動させるが、エゴスは防備を次々に突破していく。
自動迎撃システムの働きで行く手を阻むシャッターを次々に突破していくエゴスの侵攻シーンは、否応なしに緊迫感を煽るシーンだ。

ケニアはついに自らエゴスの迎撃に出ようとするが、それを抑えたジャパンは冷静にスイッチを操作して壁を動かすことで、エゴスを誤った順路へ誘い込む。
まんまと罠に嵌ったエゴスは基地の通路から洞窟を抜けて海に出てしまい、引き返して再度基地に侵入しようとするが、そこに落石の罠が発動してエゴスの進路を阻んだ。
バトルフィーバーも変身してエゴスの迎撃に出撃。海岸でバトルフィーバーとエゴスの戦いが始まる。フランスの連続チョップが黒仮面怪人に叩き込まれ、そこにカットマンを蹴散らした4人も駆けつけた。不利を悟った黒仮面怪人は撤退する。
なんとか基地陥落の窮地を脱したバトルフィーバー隊は、調査の結果トモコ隊員の口紅に発信機が仕掛けられていたことを発見するのだった。

バトルフィーバー基地陥落を巡るエゴスとバトルフィーバー隊の退治は緊迫感ある演出。
バトルフィーバー隊が次々に自動迎撃システムでシャッターを閉じ進路を阻めば、エゴスはバズーカ砲でシャッターを破壊し強行突破。バトルフィーバー隊がギリギリまで追い込まれながら、順路を操作するという逆転の一手で見事にエゴスを追い払ったジャパンの冷静な判断が見事だ。

バトルフィーバー基地陥落作戦に失敗したサロメを叱るヘッダー指揮官だったが、サロメは次の作戦として爆弾を使ったバトルフィーバー基地爆破作戦を目論んでいた。
一方その頃、トモコ隊員はユキに誰か家に来ていなかったのかを問い詰めるが、ユキは誰も来ていないと言い張る。しかし、ユキとタケシの逢瀬に置いていかれたマサルが証人としてタケシを家に上げたことを証言していた。ユキはそれでもタケシはそんなことはしないと庇う。
バトルフィーバー隊はタケシからユキに贈られたペンダントを調べるが、そこにメカ反応はなかった。タケシの無実を信じるユキだったが、状況から見てタケシがエゴスに通じていると判断したバトルフィーバー隊はユキにタケシと遊ばないように告げる。
タケシとの思い出に浸り、窓からタケシが近くに来ていないかと外を眺め続けるユキは、おそらくは監視役として家に待機していたマリアに何故遊んではいけないのかと問い、あくまでもタケシを庇う。恋い焦がれる気持ちに夢中になったユキには、バトルフィーバーの説得も届かない。
そんなユキの耳に、またしてもタケシの吹く笛の音が聞こえてきた。窓から外を見ると、そこにはタケシが待っていた。タケシに誘われ出かけたユキを、バトルフィーバー隊は尾行する。

純粋に初恋の相手であるタケシを信じ続けるユキを、恋は盲目と言ってしまうのは容易い。
だが、それでも自分に優しさを見せたタケシを好きになったユキの純真な気持ちを一笑に付すことなど誰にもできないはずだ。だからこそバトルフィーバーも、タケシを庇い続けるユキを強引にタケシに会わせまいとするのではなく、なんとかしてタケシがエゴスであることを納得してもらおうと真摯にユキの心に向き合おうとしていたのである。
少女の心を傷つけまいと真摯に向き合うバトルフィーバー隊の大人としての姿勢が見事だ。

ペンダントを通し気持ちを確かめ合うタケシとユキだが、サロメがその様子を監視していた。
ユキに追いついたバトルフィーバー隊はついにタケシとユキの前に現れタケシを問い質すが、ユキはあくまでもタケシを庇う。だが、タケシはついにエゴスとしての本性を現すと、ユキを人質に取り、バトルフィーバー隊にバトルフィーバーの基地の地図を要求してきた。
しかし、そこに隠れて待機していたフランスが割って入ると、タケシの内臓メカを破壊。
メカを破壊されたタケシはマネキンに戻り、粉々になった。
それを見たユキはショックのあまり気絶してしまう。ユキはバトルフィーバー基地に保護され目を覚ましたものの、恋した少年がエゴスであったことへの絶望に心を閉ざし、エゴスであったことを納得させようとするバトルフィーバー隊に口を利かない。
フランスは、初恋を踏み躙られたユキの心に向き合うべく、あえて憎まれ役としてタケシがエゴスであった現実を突きつけ、タケシを信じたユキを目覚めさせるために言葉を尽くす。
一人の大人として、悪魔に心を蹂躙された少女の心を救うため辛い現実と向き合わせ、乗り越えさせようとするフランス。その姿には明日の戦士たちである子供たちを見守る大人の責任を果たさんとする使命感と、人の心を汚す悪魔・エゴスへの怒りが込められていた。

だが、ユキがバトルフィーバー基地に保護されることもエゴスの計画のうちだった。
タケシはユキとの逢瀬の間に、ペンダントに爆弾を仕込んでいたのだ。
このままでは、6時間以内にバトルフィーバー基地は爆発してしまう。
ロボット九官鳥が火薬の匂いを察知して騒ぐが、普段の言動のせいで全く信用されない。
しかし、ユキが眠る保健室から匂いを察知したと言うロボット九官鳥の発言に、一同は深刻な事態を察知。眠っていたユキのペンダントをダストシュートに放り込み、かろうじて難を逃れる。

ダストシュート内で爆発した爆弾の音を聞きつけ、黒仮面怪人が成果を確認しにやってきた。
だが、爆煙の中から黒仮面怪人めがけてバトルフィーバーの必殺武器・ペンタフォースが飛んできた。フランスは純真な少女の心を傷つけたエゴスの虫けらを地獄に落とすべく、怒りを込めたペンタフォースを炸裂させ、黒仮面怪人を撃ち倒すのだった。
全てが終わった後、ユキは海を見ていた。フランスはユキに貝殻のペンダントを渡す。
ようやく笑顔を見せたユキ。初恋が、少女の心をよぎって消えた。
だがそれは、誰にでも訪れる、気まぐれな夏のそよ風のようなものであった。

ユキの初恋の繊細な心のドラマの描写に尺が割かれた分、今回は怪物ロボットの襲撃はなし。
黒仮面ロボットが登場していれば、「巨獣特捜ジャスピオン」のサタンゴースに先駆ける、巨大なダース・ベイダーオマージュデザインキャラクターになっていただろう。

のこのこと現れた黒仮面怪人にすぐさまペンタフォースが飛来して黒仮面怪人を撃破する描写は、人の心を汚すエゴスの虫けらへのバトルフィーバーの怒りの現れだろう。
もはや問答無用とばかりに必殺のペンタフォースを接敵して即座に放つ必殺の構えが、バトルフィーバー、特にユキをかわいがっていたフランスの激しい怒りを感じさせる。
普段がペンタフォースを放つとエゴス怪人を撃滅できるだけに、即座にペンタフォースを放つ流れにすることでバトルフィーバーの怒りの激しさを表現しているのが見事な演出だ。

フランスはユキの心を蹂躙したエゴスへの怒りを爆発させる。
未来ある子供たちの、二度とない初恋の思い出を汚して心を傷つけた罪を許さない、子供たちに寄り添ったヒーロー像が頼もしい。戦い終わった後、ユキに貝殻のペンダントを渡し、タケシとの思い出に決別して未来へ向かってほしいと願いを託すシーンも、キャスト陣の繊細な演技でフランスの大いなる優しさを十全に演出した名シーンとなっている。
普段からプレイボーイ的なキャラクターだったフランスだが、その心に大いなる優しさと愛を秘めていることを見事に語った、情感あふれるドラマに定評のある上原正三氏脚本ならではの名作エピソードだった。

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