あらすじ
ゲドンはまさひこの友達であるひろ美を利用して、アマゾンを捕らえようとした。
ひろみの家に案内され、罠に嵌ったアマゾン。
その前に、人食い大蛇のヘビ獣人が立ちはだかる!
無垢なる魂を襲う文明社会 それでも戦士は友のために駆ける
今回のゲドン獣人は、巨大な人食い大蛇の化身であるヘビ獣人。
十面鬼いわく、ゲドンで最も悪知恵を持つらしいヘビ獣人は、巨大な蛇の胴体から二本の足が生えた異形の姿をしており、巨大なヘビの頭部を持つ姿を大ボリュームで造形しており、獣がヒトガタになった存在という獣人のコンセプトを体現した姿を見事に表現している。
さらに、蛇らしい巻き付き攻撃を行うべく、その尾が長く伸びる人食い大蛇としての本性を顕にするシーンも描かれ、知性を持った獣としての存在感を見事に表現した秀逸な獣人だ。
大都会では多くの人間が平和に暮らしている。
アマゾンはこの平和を守るために、ゲドンと戦う決意を固めていた。
一方、モグラ獣人はアマゾンと友になり、ゲドンを裏切ったことに苦悩し、いっそのことアマゾンを裏切り、ギギの腕輪を奪ってゲドンに許しを請おうか悩んでいた。
だが、あくまでも純粋に友として接してくれるアマゾンに毒気を抜かれると、生きるべきか死ぬべきか、と「ハムレット」の一節を引用して悩みながら地中に隠れる。
シェイクスピアを引用するモグラ獣人の意外な教養が明かされるこのシーンは、悪の組織を自ら裏切りライダーに協力する怪人という、シリーズ初のポジションとなるモグラ獣人の立ち位置を最大限に活かしたシーン。アマゾンへの恩義と友情で組織を裏切ったが、同時にゲドンという組織の恐ろしさを身を以て知るからこそ、組織を裏切る決断が正しかったか悩む。
人間らしい苦悩を抱えたモグラ獣人の心情を感じさせると同時に、そんな苦悩を感じながら、純粋に自らを友と思うアマゾンと共に戦うことを選ぶ彼の人の良さが好感を生むシーンだ。
ただ、ギギの腕輪を奪って十面鬼に許しを乞うたところで、あの狭量な十面鬼がモグラ獣人を許すわけもなく、腕輪を奪われて処刑されていただけであろうことを思えば、十面鬼ではなくアマゾンを信じようと思った彼の選択は限りなく正解だ。
そこにまさひこが、友人であるひろ美を連れて現れた。
ひろ美はまさひこの友達で、アマゾンのファンだという。アマゾンも、ひろ美をまさひこの友達なのだと理解し、彼らはトモダチのハンドサインで心を通わせる。
だがその様子を、ゲドンの赤ジューシャが見ていた。
アジトに戻った赤ジューシャの報告を受けた十面鬼は、ひろ美の父親が生物学者であることを知り、人間の手でアマゾンを捕えて始末する作戦を思いつく。
十面鬼はその作戦のために、ゲドンで最も悪知恵を持つ獣人であるヘビ獣人を呼び起こす。
眠りを覚まされたことに怒りを見せるヘビ獣人だが、十面鬼がゲドンの名の元に人間を利用してアマゾンを捕えて殺す作戦を命じると、それに従うのだった。
十面鬼は「オン・ゴールド」と呪文を唱えヘビ獣人出撃の儀式を行う。
アマゾンと会えてご機嫌のひろ美は自宅である有馬生物研究所に帰宅した。
それと入れ替わりに研究所を出てきた、研究所の職員である井崎は、なんだか憂鬱な様子で帰宅の途を急いでいたが、その道中、不気味な生臭い匂いを感じる。
目に赤い光を滾らせたヘビ獣人に襲われた井崎は、ヘビ獣人に丸呑みにされてしまうのだった。
自室で研究をしていたひろ美の父である有馬精一郎は、部屋に生臭い匂いを感じ取る。
すると、そこには顔面蒼白の不気味な様相を見せる井崎がいた。
井崎は精一郎に、赤ん坊のように言葉も文明も知らない男が存在すると話し始める。
精一郎はそれがもし実在すれば、人類生物学として大変な実験材料だと興味を示してしまう。
井崎はその男が東京に実在し、その所在を娘のひろ美が知っていると話すのだった。
有馬精一郎は今回、野生の無垢なる魂であるアマゾンを襲う文明社会の象徴となるキャラ。
自身の研究分野である人類生物学のためにアマゾンを実験材料としようとするその姿は、現代文明の発展のために自然を犠牲にしてきた文明社会そのもののメタファーともいえる存在だ。
まさひことりつ子は、アマゾンのために食事を作ってアマゾンの元を訪ねていた。
珍しくアマゾンに優しい素振りを見せるりつ子は、アマゾンに父性を見ているまさひこの心情を理解し、りつ子なりに歩み寄りを見せようとしているようだ。
だが、そこにモグラ獣人が現れアマゾンの食事を受け取ってしまった。
まさひこはそれを咎めるが、モグラ獣人はならばアマゾンがどこに行ったかを教えないと拗ねてしまう。意地を張るりつ子を宥めたまさひこは、モグラ獣人にアマゾンの行先を尋ねる。
モグラ獣人はひろ美がアマゾンのもとを訪ねてどこかに行ってしまったと話し、食事を持っていってしまうのだった。まさひこはアマゾンはひろ美のことを信じてついて行ったと、自分の友達であるアマゾンとひろ美が心を通わせたことを喜ぶ。
まさひこの嬉しそうな様子を見たりつ子も、アマゾンに一人でも友達が増えることは良いことだと、孤独に生きてきたアマゾンが徐々に受け入れられつつあることを喜ぶのだった。
まさひこやおやじさんを通して、アマゾンがいるからゲドンが来るのだという誤解を払拭したりつ子が、自分なりにアマゾンと歩み寄りを見せようとしているのが嬉しい描写。
アマゾンの無垢なる優しさ、友のために命をかける姿勢が少しずつ理解者を増やしている。
アマゾンの頑張りが少しずつ報われ始めているのが感動を呼ぶ。
その頃、ひろ美はアマゾンを有馬生物研究所に連れてきた。
精一郎はアマゾンが、井崎の言うように言葉も文明も知らない存在なのだと確信。
アマゾンに水を飲ませてあげようと思ったひろ美に水を汲みに行かせると、その隙に井崎に隠しスイッチを押させて天井から檻を降ろし、アマゾンを檻の中に捕らえてしまった。
アマゾンはひろ美をトモダチと信じながら裏切られたことに、激しく激昂する。
アマゾンを檻に捕えた父の姿を目撃したひろ美は、アマゾンを実験材料としか見ていない父や、裏切られてひろ美を友達でないと叫ぶアマゾンに激しくショックを受けてしまう。
だが突然、井崎の肉体が溶解した。そして、ヘビ獣人が姿を現す。
井崎はヘビ獣人の操り人形として、ヘビ人間として死体を利用されていたのだった。
そこに、まさひことおやじさんがアマゾンを追って有馬生物研究所を訪ね、呼び鈴を鳴らした。
ヘビ獣人は精一郎を人質に取り、誰もいないように話せとひろ美を脅迫する。
初めから自分の存在を異物として拒絶する存在には迫害を受けてきたアマゾンだが、ひろ美自身にはその気がなくても、「トモダチ」だと認識した相手から裏切られたのはこれが初。
孤独に苦しみながら、自分を「トモダチ」と呼ぶ存在には心を許していいのだと信じてきたアマゾンが裏切られ、ひろ美をトモダチじゃないと叫ぶ姿はあまりにも哀しい。
精一郎はほんの少しの辛抱だとアマゾンをなだめようとしていたが、実験材料と考えている時点で何をされるかもわかったものではなく、学会でその研究成果が発表でもされれば、アマゾンはますます周囲の好奇の目に晒され、傷つき続けるだろう。
自分の研究のためにアマゾンを捕まえ、同じ人間でありながら実験材料としか見なしていない精一郎は、文明の発展のために大自然を踏み躙ってきた文明社会の移し鏡とも言える。
というか、たとえ言葉も文明も知らなくても、人間が同じ人間を実験動物にすると言って憚らないあたり、結構ヤバめの学者な気もする…。
まさひことおやじさんに、ひろ美はアマゾンはもう帰宅したと告げる。
だが、まさひこはよそよそしいひろ美の様子に不信感を抱き、ひろ美との間で暗号として用いていたハンドサインで「嘘をついてごめん」というメッセージをひろ美から受け取っていた。
何かが起きていることを察知したおやじさんは、まさひことともに有馬生物研究所に踏み込む。
檻に囚われたアマゾンをヘビ獣人が襲うが、窓から侵入したおやじさんがヘビ獣人の注意を引き、その隙にまさひこが部屋のスイッチを操作してアマゾンを檻から解き放った。
ヘビ獣人と戦うアマゾンは、鋭い牙に傷つきながら立ち向かう。その様子を心配そうに見ていたまさひことひろ美は、背後から接近してきた赤ジューシャに捕まってしまった。
木の棒を使って殴打し、ヘビ獣人を追い払ったアマゾン。
その勝利を喜んでいたおやじさんも、まさひことひろ美が攫われたことに気づく。
精一郎は全ては自分が悪かったことを謝罪し、娘を助けてほしいとアマゾンに懇願する。
おやじさんの頼みもあり、その願いを引き受けたアマゾン。
まさひことひろ美、二人のトモダチを助けるため、アマゾンはゲドンを追った。
人っ子一人いない遊園地・東急ハイランドに迷い込んだアマゾンは、アトラクションの作動に巻き込まれる。ヘビ獣人は初めて見る機械によってアマゾンを混乱させる戦術を練っていたのだ。
赤ジューシャが姿を見せては消え、アマゾンはジェットコースターのレールに誘き寄せられる。
そこにジェットコースターが猛スピードで突っ込んできた。
実際にレール上で撮影されたシーンは迫力満点かつ、かなりの危険な撮影でヒヤヒヤする。
ジェットコースターからなんとか逃れたアマゾンだが、今度はお化け屋敷に迷い込んでしまい、自分を脅かす仕掛けによって恐怖と動揺に苦しめられるアマゾン。
だがまさひことひろ美を捕えたまま逃走する赤ジューシャを懸命に追うアマゾンは、立ちはだかるヘビ獣人の前でアマゾンライダーに変身する。
アマゾンライダーとヘビ獣人は様々なアトラクション上を飛び回り、死闘を展開。
コンクリートジャングルである遊園地をジャングルのように自在に駆け巡るアマゾンライダーに、ヘビ獣人は尻尾を伸ばした人食い大蛇としての本性を顕にする。
尻尾を巻き付けアマゾンライダーを丸呑みにしようとするヘビ獣人だが、連続チョップに怯んでアマゾンライダーを開放してしまい、そのまま回し蹴りからの大切断を受けて顔面を真っ二つに裂かれ、赤い鮮血をほとばしらせながら息絶えるのだった。
戦いは終わった。
まさひことひろ美はゲドンに攫われた恐怖も忘れ、アマゾンへの信頼感に浸っていた。
その中に真の友情を見出したアマゾンは喜びを覚える。
そして、トモダチを危険に晒すゲドンへの怒りを燃やすのだった。
理解なき人々からの迫害や好奇の目に怯えてきたアマゾンが、今度は友と信じた存在に裏切られたと誤解し苦しむ姿が哀しいエピソード。一方で、そんなアマゾンを助けようと手を差し伸べるまさひこやりつ子、おやじさんにモグラ獣人に支えられ、裏切られたと思っていたひろ美を改めてトモダチと信じて命をかけるアマゾンの無垢なる思いに心打たれるエピソードでもある。
文明の利器である遊園地のアトラクションと戦うシーンにも見られるように、今回は文明社会とアマゾンの対決がテーマになっていて、自身の研究の発展のためにアマゾンを実験動物にしようとした有馬精一郎の姿はまさに大自然を踏み躙ってきた文明社会そのもの。
それでもなお、精一郎を許し、その娘のひろみの救出に命をかけるアマゾンからは、大自然が持つ人への優しさ、素朴の勝利というテーマ性も伺え、大自然で育った野生児を主人公に据えた「仮面ライダーアマゾン」ならではのテーマ性を見出すことが出来る。