「バトルフィーバーJ」第36話「爆破された結婚式」感想

2024年4月3日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

マリアの幼馴染みにして、いとこの美子が結婚することになった。
そこでマリアは結婚式で贈るプレゼントを探し、オルゴールを選び出す。
だがその様子は、マリアへの復讐の念を燃やすサロメに監視されていた。
そして結婚式当日、美子にオルゴールを贈ったマリア。
だが、そのオルゴールはエゴスによって爆弾とすり替えられてしまう。
結婚式場で起こった爆発事件の犯人として、刑事に追われるマリアは苦悩する。

社会からの誤解と偏見が、戦士の心を傷つける 

二代目ミスアメリカとなったマリアは、その加入時からサロメとの因縁が描かれてきた。
第24話でダイアンを狙ったサロメの策略がマリアの加入と二代目ミスアメリカの誕生によって瓦解したことをきっかけにサロメはアメリカの抹殺に執着。
第26話でエゴスがバトルフィーバーの正体を割り出そうとした時には真っ先にアメリカ=マリアが狙われ、第29話ではオカルト話を好むマリアを狙い撃ちして口裂け怪人と作戦を行うなど、サロメにとってマリアは不倶戴天の敵であり、幾度となく死闘を繰り広げてきた。
そして今回、ヘッダー指揮官の謹慎によって作戦指揮を任されたサロメは、サタンエゴスのアドバイスもあり、またしてもマリアの抹殺を画策。
だが今回は、マリアを社会的に孤立させ、社会的に抹殺しようとすることでマリアの心を傷つけようとする作戦を立案し、マリアを精神的に追い詰めていく。

サタンエゴスはバトルフィーバーに連戦連敗している現状に苛立っていた。
その原因がヘッダー指揮官の立案する作戦の詰めの甘さと判断し、ヘッダー指揮官を謹慎させたサタンエゴスは、サロメに当分の間、作戦の指揮を任せることにした。
サタンエゴスはサロメに、マリアを狙うように指示を出すと、用心棒としてバクダン怪人を生み出そうとするが、バクダン怪人はなかなか怪人製造機から出てこない。
カットマンが怪人製造機をさすり、機器を操作した結果、バクダン怪人はかなりの難産だがなんとか五体満足に生まれ、マリア抹殺に意欲を燃やすのだった。
産みの苦しみを味わうサタンエゴスの、エゴス怪人の親としての姿が描かれるのがコミカルだ。

テニスを楽しむマリアを密かに尾行していたサロメは、その帰り道にマリアがオルゴールを購入する様子を目撃し、同じオルゴールを購入する。
マリアはいとこの美子の結婚式に送るプレゼントとしてオルゴールを購入していたのだった。
同じく美子のいとこである久美と一緒に結婚式に参列し、美子の幸せを祝福するマリアは、祝福のメッセージをオルゴールに刻んでいた。久美は美しい音色を奏でるオルゴールを羨む。

美子の夫であり、マリアにとっても知人である秋山五郎を演じたのは、JACの一期生として入団しアクロバティックな殺陣でファンを魅了、特撮ファンには「大戦隊ゴーグルファイブ」「科学戦隊ダイナマン」で2年連続でブラック戦士を演じ、スーパー戦隊シリーズにブラックという色の戦士の存在を確立させた他、「巨獣特捜ジャスピオン」での宿敵マッドギャランで鮮烈な印象を残し、他にも様々なキャラクターを演じた春田純一氏。
今回は残念ながら激しいアクションを見せる役柄ではないが、その存在感は抜群だ。

密かに結婚式場に潜入していたサロメは、マリアが美子夫妻に贈ったオルゴールを爆弾入りの偽物とすり替えようとしていたが、本物のオルゴールはどこかに消えてしまっていた。
サロメが仕方なく偽物のオルゴールをその場に置くと、本物のオルゴールがその場にないことを知るよしもない結婚式場の支配人は、偽物のオルゴールを美子たちの元へ運んでしまう。
オルゴールの音色を気に入った美子。
しかし、マリアはその音色に混ざる異音を感じ取り、それが時限爆弾の作動音だと察知。
間一髪オルゴールを投げ捨て美子たちを守ったマリアだが、美子たちはマリアが結婚式をめちゃくちゃにするつもりで爆弾入りオルゴールを贈ったのだと誤解する。
潔白を信じてもらえず苦悩するマリアの横で、久美は何かが入った箱を抱えていた。

鉄山将軍の元に、マリアがオルゴール爆弾事件の犯人の容疑がかかっていると連絡が入った。
鉄山将軍は警察庁長官にマリアの釈放を要求し、バトルフィーバー隊にマリアの保護を命じる。
オルゴール爆弾が爆発した現場では、さえない風貌の鬼塚刑事がマリアを尋問していた。
嫉妬から美子の結婚をめちゃくちゃにするつもりだったが、寸前で良心が目覚めバクダンを投げ捨てたのだと的外れな推理をする鬼塚刑事。美子たちもマリアを疑い、目を背ける。
マリアに手錠をかけ連行しようとした鬼塚刑事の前に、バトルフィーバーたちが立ちはだかる。
長官命令で釈放を要求するバトルフィーバー隊に、鬼塚刑事は上層部から現場に圧力をかけて爆弾魔を釈放させようとしているのか反発。20年の刑事のキャリアのプライドでマリアを疑い続ける鬼塚刑事だが、長官命令には逆らえずマリアは釈放される。

マリアを爆弾魔と思い込み、執拗に追い続ける鬼塚刑事を演じたのは、特撮ファンには「帰ってきたウルトラマン」のウルトラマンのスーツアクターとして知られているきくち英一氏。
エゴスの陰謀にまんまと載せられ、誤解と偏見でマリアを疑い続けて追い詰める胸糞悪い役柄ではあるが、どこか憎めない愛嬌を感じさせるのは氏が演じているからこそと言えよう。
キャスティング次第で本当に憎むべきキャラになる、ギリギリのバランスで成立している。

鉄山将軍はこの事件の裏に、オルゴールを爆弾入りの偽物とすり替え、マリアを陥れようとする何者かの陰謀があることを見抜いていた。
バトルフィーバー隊はマリアの汚名を晴らすために、結婚式出席者の身元を洗い始める。
だが、調査を進めるバトルフィーバーは、マリアが爆弾魔であると喧伝する張り紙を発見。
それは鬼塚刑事が、自分の貯金をすべてはたいて大量に印刷、長官命令に背いた独自捜査で警察をクビになる覚悟でもマリアを捕まえようとする執念の手配書だった。
この執念が正しい方向に行けば上層部の圧力にも負けない熱意のある刑事なのだろうが、エゴスの陰謀にまんまと載せられてしまっているためにその熱意が無実の人間を追い詰める方向に作用してしまっている。20年のキャリアを誇る現場主義なのも災いした形だ。
鬼塚刑事がそこら中に張り回った張り紙を見た子供たちはマリアを爆弾魔と誤解し、マリアを弁護するマサルの言うことも信じてもらえない。
ケイコ隊員とトモコ隊員もあまりの事態に怒りを隠せずにいた。

鬼塚刑事の方向を誤った熱意が無実のマリアをとことんまでに追い詰め、社会的に孤立どころか抹殺されようとするところまで追い込まれるのは、警察の行き過ぎた捜査やマスコミの行き過ぎた取材が個人の尊厳を踏み躙り、社会的な名誉を毀損する問題をカリカチュアライズした描写。
令和の現代では、SNSの普及でSNS上で影響力のあるインフルエンサーが炎上した人間に私刑を下すように社会的に抹殺しようと行き過ぎた誹謗中傷を行うことも多々あり、このような問題は個人も自発的な情報発信が容易になった現代だからこそより深刻になっている。
そんな社会問題を予見したような、鬼塚刑事と鬼塚刑事の張り紙に影響される人々の描写は、社会問題を取り入れた作劇を得意とした上原正三氏ならではのリアリティを持って描かれている。

マリアの信用を毀損し、社会的に抹殺しようとするサロメ。バクダン怪人は潔白を晴らす証拠である本物のオルゴールを消し去ることで、マリアを完全に社会的に抹殺しようとする。
鬼塚刑事が作った手配書を見て、社会的に抹殺されようとしている悲しみに涙を流すマリア。
鉄山将軍は、爆発した偽物のオルゴールにはマリアが刻んだ美子へのメッセージがないと伝え、潔白を晴らすためには本物のオルゴールを見つけるしかないと告げる。

サロメとバクダン怪人は、結婚式場の支配人を尋問して本物のオルゴールを探していた。
何も知らない支配人に、バクダン怪人は爆弾を飲み込ませようとする。
支配人は久美がオルゴールを羨んでいたことを思い出し、それを話してしまうのだった。
エゴスから開放され、逃亡する支配人。
マリアもオルゴールの行方を探るために支配人に接触しようとしたが、マリアの目の前で支配人が乗った車が爆発炎上してしまう。さらにそれを、鬼塚刑事が目撃して写真に収めていた。
支配人の車の爆発炎上もマリアの犯行だと誤解した鬼塚刑事は、自分が撮った写真を証拠にいよいよマリアを逮捕しようとするが、そこにコサックが駆けつけマリアを救った。
コサックはマリアに、久美が狙われていると伝え、久美の家に向かう。
久美の家では、久美の母がエゴスに襲われ、部屋が荒らされていた。

サロメは久美を捕まえ、母の命と引換えにオルゴールの在り処を尋問。
久美を探すマリアの前に、鬼塚刑事が異様な執念で立ちはだかる。
本当に、この執念が正しい方向に向かえば犯罪者が恐れる有能な刑事なのだろう。
それだけに、自分のキャリアに基づいた勘でマリアを疑いきっているのが残念極まりない。
マリアは仕方なく鬼塚刑事を気絶させ、先を急ぐ。

久美が持っていた箱から本物のオルゴールを手に入れたサロメは、久美を殺そうとするが、そこにマリアが到着し、オルゴールを奪回し久美を救出した。
本物のオルゴールは美子が持つオルゴールを羨んだ久美が密かに持ち出していたのだ。
本物のオルゴールを持っていながら、怖くて言い出せなかったことをマリアに謝る久美。
カットマンが追いすがる中、コサックが駆けつけてマリアと久美を逃がす。
さらに執念で追いかけてきた鬼塚刑事に、マリアは本物のオルゴールを見せて自分が爆弾魔でないことを証明した。真実を知った鬼塚刑事にマリアは久美を託し、エゴスとの戦いに向かう。

何度気絶してもすぐに起き上がりマリアを追い続ける鬼塚刑事は、ちょっとしたホラー映画のクリーチャー並みの耐久度。本当に、正しい方向に行けば有能な刑事なのだろうことは伝わる。
証拠を見せられマリアの無実を理解するあたりでもその有能さは伺えるのだが、給料全部を注ぎ込んでまでマリアの名誉を毀損したことはさすがにフォローしきれない…。

戦闘服を着たアメリカはコサックと合流。さらにジャパンたちも駆けつけ、ペンタフォースに使うコマンドバットを変形させたヌンチャクを駆使して戦う。
ヌンチャク型コマンドバットの殺陣が新鮮な印象だ。
バクダン怪人に呼び出され、爆弾をめちゃくちゃに投げてくるバクダンロボット。
その脅威に、バトルフィーバーはバトルシャークを呼ぶ。
バトルシャークを阻むべくエゴスの戦闘機が出撃するが、バトルシャークは後部や主翼からミサイルを放ち、爆雷を投下するなど武装をフルに使って戦闘機を次々撃破。
迎撃ミサイルをもものともせず、逆に大型ミサイルで迎撃ミサイル基地を破壊する。
手榴弾を投げつけるバクダン怪人の猛威に対しても、一瞬の隙を突いたバトルフィーバーの連続ジャンプキックが炸裂。さらに追撃のペンタフォースが決まってバクダン怪人を倒す。
バトルフィーバーロボも到着、電光剣唐竹割りでバクダンロボットに勝利する。

今回はバトルシャークを阻むエゴスの戦闘機が出撃。久々にバトルシャークがその豊富な武装を活用して戦うシーンが描かれ、玩具でも再現されたギミックを駆使して戦うシーンは非情に魅力的に描かれている。反面、バトルフィーバーロボの戦闘シーンは短めだった。

店でウェディングドレスを見るマリアと久美。美子は新婚旅行で海外に旅立ったようだ。
久美はマリアにオルゴールを買ってもらうために買い物に来たのだという。ウェディングドレスに思いを馳せるマリアに声をかけ、バトルフィーバーは戻った平和を謳歌するのだった。

恐らくは演者のスケジュールの都合もあるのだろうか、度重なる失敗でヘッダー指揮官が謹慎させられたこともあり、陣頭指揮を取ることになったサロメ。
もはやマリアをただ抹殺するのではなく、社会的に孤立させその心を傷つけるという手段でより苦しめなければ気がすまないという、サロメの恨みの深さを感じさせる作戦でマリアの心をへし折る寸前に至らしめている。特に今回は、前回のパニック作戦と違い人間が勝手にマリアを追い詰めてくれていたのでスムーズに事態が運んでいたのだろう。
しかしマリアも執念で食い下がり、自らの潔白を証明して見事にサロメの策略を打ち破った。
二人の女戦士の因縁の対決は、まだ続く。

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