「仮面ライダーアマゾン」第9話「ゆけアマゾン!カニ獣人の島へ!」感想

2024年4月13日土曜日

仮面ライダーアマゾン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

次々に起こる謎の少女蒸発事件。
ロープを手にし、ゲドンを追ってビルの谷間に舞うアマゾン。
しかし、カニ獣人の鋭い歯が今にもロープを切ろうとし、アマゾンは窮地に陥る。
そして、アマゾンの弱点を探ろうとしたカニ獣人はモグラ獣人を尋問し…。

守るべき者のために、空を駆け、海を征く。我は友の守護者なり。

今週のゲドン獣人はカニ獣人。十面鬼いわく、人さらいに最適だというカニ獣人は、十面鬼が求める若い娘の生き血を手に入れるため、娘を攫ってくる任務を命じられる。
さらに、自分の実力に自信があるのか、命じられてもいないのにアマゾンが持つギギの腕輪を奪ってくる任務までも自分で引き受ける前向きな姿勢を見せるが、異様に失敗に厳しい十面鬼に自分から仕事を請け負っては、失敗した時のリスクが大きすぎる判断だ。

アマゾンは世界の平和を乱すゲドンを探し、昼夜問わずに必死に街中を駆け回っていた。
その頃ゲドンは、拉致した人間から生き血を抽出して十面鬼に捧げ、人面岩の人面を赤く染めていた。だが十面鬼は、近ごろの人間の血は不味いと赤ジューシャを怒鳴りつける。
さらに9つの人面岩も、もっと濃い血を、若い娘の血を飲ませろと騒ぎ始めた。
十面鬼ゴルゴスは若い娘を攫わせるために人さらいに最適な獣人という、カニ獣人を呼び出す。
呼び出されたカニ獣人は、人さらいだけでなくアマゾンを始末しギギの腕輪を奪ってくるとまで大言を吐き、十面鬼の機嫌を取る。カニ獣人の言葉に乗せられ、まんまとご機嫌になった十面鬼は、アマゾンを始末すればカニ獣人を獣人で最高の位につけると約束するのだった。
カニ獣人は無数の人食いカニを操り、人間を溶かす泡を吹く能力を持っていた。

下校していたまさひこはアマゾンと出会うと、アマゾンにラジオを手渡す。
ラジオを手渡されたアマゾンはスイッチを操作してしまい、聞こえてきた騒音に恐怖する。
だが、そんなアマゾンにまさひこは優しくラジオの使い方を教え、ラジオのチャンネルを回す。
すると、ラジオから世間を騒がせる少女蒸発事件を伝えるニュースが流れてきた。
まさひこはこの事件がゲドンの仕業ではないかと疑う。

その頃、街では赤ジューシャたちが若い少女を捕まえようとしていた。
襲われた少女の悲鳴を聞いたアマゾンは、ゲドンの影を察知し悲鳴の元に向かう。
一人残されたまさひこの前に、モグラ獣人が現れた。
すっかりモグラ獣人にも慣れたまさひこに、モグラ獣人はラジオを貸すように頼む。
モグラ獣人はゲドンを離れて生きていくために社会勉強をしようとしていた。
まさひこはアマゾンがどこに行ったのか心配していたが、モグラ獣人から赤ジューシャに攫われた娘を助けに行ったと聞かされ、これがゲドンの罠ではないかとアマゾンを心配するのだった。

異形の姿のまま組織を離れながらも、なんとか人間社会に馴染もうと努力を見せるモグラ獣人。
アマゾンと同じく、現代社会から隔絶した存在でありながら、少しでも馴染もうと努力を見せ、徐々に受け入れられていく様子は、「社会からの孤独」を味わうヒーローをテーマに掲げた「仮面ライダーアマゾン」においてはもう一人の主人公とも言える描写になっている。
当初は自分を襲った存在だと思っていたまさひこも、「モグラ」と呼び捨てにしてややぞんざいに扱うようになり、気を許したからこその接し方を見せるようになっている。

娘を攫った赤ジューシャたちが乗った車を追うアマゾン。
赤ジューシャはビルの屋上に登り、アマゾンを誘き寄せるかのようにその姿を晒す。
アマゾンは万能ベルト・コンドラーからロープを取り出すと、ロッククライミングの要領でビルの壁面を登っていき、赤ジューシャを追跡。だが赤ジューシャはビルからビルへ逃亡を続け、追うアマゾンもビルの間にロープを張り、懸命に赤ジューシャを追う。
だが、赤ジューシャの逃亡はアマゾンを誘き寄せるカニ獣人の罠だった。
アマゾンはロープをハサミで切断され落下するが、なんとか着地に成功。着地点の近くにいた赤ジューシャたちから娘を奪回するものの、その前にカニ獣人が現れた。
娘を逃がそうとしたアマゾンは、カニ獣人の鋏で流血する傷を負いながらも反撃し、なんとかカニ獣人を怯ませて逃亡に成功するのだった。

モグラ獣人はラジオから流れる音楽を聞き、少しでも人間社会に慣れようとしていた。
だがそこに、カニ獣人が現れる。
カニ獣人の鋏に捕まったモグラ獣人は、ゲドンの獣人の精神は忘れていないと命乞いをする。
カニ獣人は十面鬼に執り成してやる代わりに、アマゾンの弱点を教えろとモグラ獣人を脅迫。
モグラ獣人は命惜しさに、まさひこがアマゾンの弱点だと話してしまう。
だが、カニ獣人は子供には興味がなくそれを信じない。仕方なくモグラ獣人は、まさひこの姉であるりつ子が弱点ではないかと話してしまい、それを聞いたカニ獣人は、娘を攫う任務とアマゾン抹殺の2つの任務を一挙に果たせると考え、りつ子を攫う計画を立てる。
情報を聞き出したカニ獣人は約束を破り、モグラ獣人の首を切断して殺そうとするが、モグラ獣人はアマゾンが現れたと嘘をついてカニ獣人の注意をそらした隙に地中に逃亡。
カニ獣人が離れた後、モグラ獣人は命惜しさに大変なことを教えてしまったことを後悔し、そこに現れたまさひこに、りつ子が襲われそうな情報を教えてしまったことを謝罪する。
そこに娘を助け出したアマゾンが現れた。アマゾンはまさひこからりつ子が襲われそうなことを教えられると、自分の行いを反省したモグラ獣人の頼みもあり、りつ子を守ることを誓った。

人間社会に馴染もうと思っている一方で、もともと臆病な性格の上に、組織を離れて後ろ盾もない以上、命惜しさに情報を話してしまうモグラ獣人の人間的な弱さは、組織を裏切った怪人というキャラクターの性格描写に厚みを加えている。
そんな彼が、この先も待ち受けるゲドンやガランダー帝国の脅威に恐怖しながらも、勇気を振り絞りアマゾンの助けになろうとするまでの成長描写もこの先のシリーズの縦軸となる要素だ。

友人のフサ代と出かけていたりつ子の前に、アマゾンが姿を見せた。
フサ代は当然ながら不審な格好のアマゾンを恐れ、りつ子も冷たい態度を取る。
ゲドンがりつ子を狙うかもしれないことをを必死に伝えるアマゾンだが、りつ子はゲドンが日本に来たのはアマゾンが日本に来たせいであり、アマゾンがアマゾンに帰ればゲドンもいなくなるので、早く日本を去れと冷たい言葉を投げかけ、アマゾンは悲しむのだった。

このところアマゾンに好意的な態度を見せていたりつ子だったが、それはあくまでまさひこを介してのものだった。まさひこがアマゾンに亡き父の代わりとなる父性を見出していたことを理解していたからこそ、まさひこがアマゾンのところに行くことを無理に止めようとはしないし、まさひこ一人で出かけていってゲドンに襲われては大変だからと一緒に行動していた。
とはいえ、りつ子自身はアマゾンに好意的になっておらず、未だゲドンの出現はアマゾンのせいであると誤解したままだった。まさひこやおやじさんが仲介せずに、アマゾンがりつ子と直接接したことで、この誤解からくる嫌悪感が表面化してしまったことになる。

りつ子たちは、カニ獣人の命を受けた赤ジューシャたちに尾行されていた。
気配を察したりつ子たちは逃亡する途中で、車のパンク修理をしていたおやじさんに遭遇。
おやじさんはりつ子たちを送っていこうとするが、そこにカニ獣人が現れた。
りつ子を狙うカニ獣人はおやじさんを倒し、りつ子と友人をまとめて攫ってしまう。
そこに駆けつけたアマゾンはおやじさんからりつ子が攫われたことを聞き、りつ子から嫌われていることを悲しみながらも、ゲドンからりつ子を救うために決意を固める。

ジャングラーで赤ジューシャたちを追ったアマゾンだが、赤ジューシャたちはボートに乗って海をわたり、人食いカニ島に逃亡してしまった。
報告を受けた十面鬼は、カニ獣人の島である人食いカニ島ならアマゾンに勝てることを確信。
娘も蓄え、ギギの腕輪と娘の新鮮な血を手に入れたも同然と勝ち誇る十面鬼は、カニ獣人を獣人で最高の位にすると称えるのだった。取らぬ狸の皮算用で喜ぶあたりは例によって短慮な様子。

海を泳ぎ、人食いカニ島に上陸、りつ子を探すアマゾンの前に、カニ獣人が現れた。
りつ子と友人は縛り上げられ、その足元にはカニ獣人が操る人食い蟹が群がっていた。
カニ獣人は動けばりつ子たちの命はないとアマゾンを脅し、ギギの腕輪を奪うためにアマゾンを痛めつける。カニ獣人の鋏に足を取られ、ついには首をも挟まれたアマゾンは、手を出せばりつ子たちが人食い蟹に襲われ死ぬことと、ギギの腕輪を渡してはならない使命の狭間で葛藤しながら、りつ子たちを救い、ギギの腕輪をも守る決意で咆哮し、アマゾンライダーに変身する。
このエピソードで、昭和ライダー定番となる「〇〇アクション」の系譜となる楽曲、「アマゾンライダーアクション」が初使用。戦闘シーンをよりアクティブに盛り上げることになる。

人食い蟹がりつ子たちを襲う前に、カニ獣人の息の根を止めなくてはならない。
アマゾンライダーには、カニ獣人の吹く溶解泡すら通じなかった。
アマゾンライダーは腕ヒレでカニ獣人の顔を切り裂き、傷口から夥しい血が噴出する。
あまりの出血で恐慌状態に陥り、もはや人食い蟹にりつ子たちを襲わせることすらも忘れたカニ獣人を、アマゾンライダーは大切断で袈裟斬りにして倒した。
アマゾンは無事にりつ子たちを救出。自分たちのために命をかけて戦ったアマゾンに、フサ代はアマゾンに対する誤解を解き、りつ子もアマゾンに感謝する。
自分だけでなく、大切な友を狙う卑劣なゲドンに、アマゾンは怒りの雄叫びを上げるのだった。

夕日を眺めていたアマゾンに、まさひことりつ子、おやじさんが声を掛ける。
りつ子は、日本の冬は寒いと、手作りの上着を贈る。
それは、りつ子がアマゾンの無垢なる魂に秘められた優しさを知り、友となった証だった。
その様子を見ていたモグラ獣人は、アマゾンばかりが何故モテるのかとボヤく。
友情の服を身に着けたアマゾンは、喜びを顕にし、ゲドンと戦う決意を固めるのだった。

シリーズ冒頭より描かれていたりつ子とアマゾンのすれ違いのドラマが、大団円として決着するエピソード。アマゾンに懐いたまさひこの心情を察し、まさひこの前ではアマゾンを悪く言うことを控え、他者の前でアマゾンを弁護したこともあるりつ子だが、自身はアマゾンのせいでゲドンが日本に現れたと誤解したままで、ゲドンによって、つまりゲドンを日本に招いたアマゾンのせいで高坂教授や多くの犠牲者が出ていることへの懸念や嫌悪感を消しきれていなかった。

しかし、例えゲドンがアマゾンを狙っていても、アマゾン自身に罪があるわけではない。
そしてアマゾンも、そんなゲドンによって多くの被害が出ていることに心を痛めているからこそ、昼夜問わずにゲドンを探し続け、その陰謀を阻止し、被害者を救うために命をかけている。
アマゾンを拒絶してしまった自分を救うために命をかけてゲドンと戦ったアマゾンの姿が、りつ子にアマゾンの懸命な戦いと、友を守るために命をかける、無垢なる魂の高潔さを理解させ、ついにりつ子はアマゾンのことを友として受け入れる。

その証として日本の冬は寒いという理由で上着を差し入れたのは、アマゾンがいるから日本にゲドンが現れたという誤解から日本を去れと言ったことと対比になっている。
冬の寒さを凌ぐための上着は、りつ子が誤解を改め、アマゾンがゲドンから日本を守ってくれているということを理解し、冬になっても日本にいてほしいという思いが込められている。
日本を去れとまでと言った相手に、日本の冬を凌ぐための上着を贈ることで、アマゾンが日本で生きることを受け入れた証としているのが、秀逸な描写だ。

こうして、無垢なる魂は新たなる友を得た。アマゾンの、友の守護者としての戦いは続く。

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