「バトルフィーバーJ」第38話「怪奇!仮装行列」感想

2024年4月10日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

エゴスが生み出したドクロキノコ怪人が、血清科学研究所から世界中の毒を盗み出した。
ドクロキノコ怪人は、世界中の毒を集めてドクロ催眠ガスを作り出そうとしていた。
バトルフィーバー隊が、知らせを受けて出動する。
だが、怪人を追ううちにバトルフィーバー隊は濃霧に迷い込み…。

濃霧の仮装パーティーに秘められた罠 迫る催眠ガス

今回のエゴス怪人は、怪人製造機の中で苦しみの叫びを上げながら生まれたドクロキノコ怪人。
人を一瞬にして白骨に変えてしまう毒ガスを吐く能力を持つドクロキノコ怪人は、血清科学研究所に保管されていた世界中の毒を調合し、吸引すればサタンエゴスの言うことしか聞かなくなるというドクロ催眠ガスを作り出そうとしている。
さらに、ドクロキノコ怪人がドクロ催眠ガスを作り出そうとしているアジトは、濃霧の中の洋館。そこには仮装パーティーを楽しむ若者が集まり、狂乱の様相を見せていた。
そこで展開される狂乱の仮装パーティーは、毒キノコによる幻覚やせん妄の作用を想起させ、エゴスというサタンエゴスを信仰する邪教集団の怪しげなムードをより強調している。

エゴスの怪人製造機から、苦悶の声が響く。
怪人としては異様な、普通の人間のような風貌の怪人が怪人製造機から生まれた。
サロメと、謹慎が解けたヘッダー指揮官はその異様さに圧倒される。
サタンエゴスが言うには、生まれた怪人は毒に侵されているらしい。
サタンエゴスはヘッダー指揮官に怪人を病院に運ぶように命ずる。
だが、その毒は病院では解明できるものではなく、そうした患者は最後には世界中の毒を研究する血清科学研究所に運び込まれることになっている。
サタンエゴスは怪人がちょうど血清科学研究所に運び込まれる頃に、異形の姿のドクロキノコ怪人に覚醒するように遺伝子を調整していた。
それを聞いたヘッダー指揮官は、サタンエゴスの目論む作戦を察知する。
グロテスクな怪人製造機から、粘液がまとわりついた男が出てくる描写は生理的嫌悪感を想起させる描写になっており、タイトルにある通り、怪奇性を追求した演出が秀逸だ。

サタンエゴスの目論見通り、運び込まれた血清科学研究所でドクロキノコ怪人が目覚めた。
ドクロキノコ怪人は一瞬で人間たちを骨に変えてしまう猛毒を噴射して研究所を全滅させると、研究所に保管されていた世界中の毒を強奪する。
知らせを受けたバトルフィーバーは出動し、ドクロキノコ怪人が乗った車を追跡する。
ドクロキノコ怪人はバトルフィーバーの追跡によって高台の公園に追い込まれながら、身軽な動きを見せ、マンホールから地下道に逃亡する。
バトルフィーバーも諦めずに追跡を続けるが、地下道から出た先は濃霧に包まれた森だった。
さらに森の真ん中には洋館があり、ドクロキノコ怪人は洋館の主であると思われる女性によって、洋館の中に招き入れられていった。バトルフィーバーは洋館の周囲に散開して逃亡経路を探るが、どこにもドクロキノコ怪人が逃亡した形跡はなかった。
いったいこの濃霧に包まれた森がどこなのかもわからないバトルフィーバー隊だが、濃霧の中、仮装をした若者たちが連れたって洋館を訪ねようとしているところに遭遇する。
彼らは仮装パーティーのため、洋館の主であるミス・フジコを訪ねてここまで来たのだという。
ドクロキノコ怪人は、ミス・フジコに仮装と勘違いされて家に招き入れられたのだろうか?
コサックは、罠と理解っていてもやらなくてはならない時があると仲間を促すと、バトルフィーバー隊は自分たちも仮装をすることで洋館へ突入することを決意するのだった。

バトルフィーバー隊は仮装をして、ミス・フジコの洋館へ潜入することに成功する。各々が国の名前を名乗った戦士であるバトルフィーバーならではのそれぞれの国を思わせる仮装が楽しい。
しかし、ミス・フジコは彼らがバトルフィーバーであることを察知し、部屋の鍵を閉めた。
パーティーに溶け込むふりをしながら、ドクロキノコ怪人を探すバトルフィーバー。
その様子は、壁にかけられた絵画に開けられた覗き穴からサロメに筒抜けだった。
ドクロキノコ怪人は洋館の隠し部屋で毒を調合し、ドクロ催眠ガスを作り出そうとしていた。
ドクロ催眠ガスを吸えば、脳神経が侵されサタンエゴスの命令を聞くことしかできなくなる。
ドクロ催眠ガスによってバトルフィーバーを支配下に置くことがサタンエゴスの作戦のようだ。

ジャパンは壁の絵に覗き穴があることを察知すると、ケニアと一芝居売り、パーティーにはしゃぐふりをして絵にシャンパンを浴びせかけ、サロメの目を潰した。
ケニアはその隙に覗き穴を逆に覗き込み、洋館の隠し部屋にドクロキノコ怪人がいると掴む。
コサックも密かに洋館を調べ、屋敷中に鍵がかかっていることを突き止めた。
だがそこに、年老いた魔女の仮装をしたミス・フジコが近づき、ここに集まっているのは普通の若者であり、何か騒ぎを起こせば何が起こるかわからないとバトルフィーバーに脅しをかける。
さらに、パーティーを盛り上げるという体裁でのミス・フジコの指示を受けた若者たちが、バトルフィーバーの面々をダンスパートナーに誘い、バトルフィーバーは分断される。
そして、ドクロキノコ怪人はついに後一液でドクロ催眠ガスの完成までこぎつけ、サロメは絵の覗き穴にガスの噴射口をあてがい、バトルフィーバーを支配下に置こうとする。
濃霧の洋館の中で開かれる、仮装をした若者たちが踊り狂う狂乱の仮装パーティーも、日常から隔絶された空間で起こる異常な熱狂が、どこか不気味な印象を与えてくる。
じわじわと奇妙な不気味さが迫ってくる怪奇演出が見事だ。

ケニアは派手なダンスを踊り、振り付けに混ぜた手旗信号で仲間たちに指示を出す。
ケニアが隙を見て配電盤を操作し部屋の明かりを消すと、指示を受けていた仲間たちがミス・フジコから鍵を奪い、若者たちを部屋から逃がす。ミス・フジコの正体は女カットマンだった。
マリアはミス・フジコが纏っていた魔女の仮装を奪い取り、ミス・フジコに変装。
ケニアが配電盤を操作して明かりを点滅させ、ドクロキノコ怪人の毒ガス注入を阻止している間に、ミス・フジコに化けたマリアが明かりを持ってきたと騙し、ドクロキノコ怪人に接近。
マリアは正体が露見する前に自ら強化服を身に纏って先手を取り、ドクロキノコ怪人を攻撃。
ドクロキノコ怪人たちを洋館から追い出すことに成功する。

ドクロキノコ怪人を追い洋館から脱出したバトルフィーバー。
すると、さっきまでいた洋館が廃墟に変わっていることに気づく。バトルフィーバーは濃霧に包まれた時から、ドクロキノコ怪人によって幻覚を見せられていたのだ。
そして、仮装パーティーに参加者たちがカットマンに追われていたところを助けたバトルフィーバーは若者たちを逃がそうとするが、カットマンは若者たちに容赦のない銃弾の雨を降らせる。
あれだけの銃弾を受けながら、何故かまだ生きている若者たち。
だがそれでも、生きているからには若者たちを助けようとするバトルフィーバーは、満足に動けないままカットマンたちの攻撃を受けていく。
さらに、助けようとしていた若者たちまでもがバトルフィーバーに組み付き、ナイフを突きつけてきた。パーティーに参加していたのは全てエゴスの手先だったのだ。
完全に騙されたバトルフィーバーは怒りの猛反撃を見せる。

そこにドクロキノコロボットも現れ、バトルシャークが出動する。到着したバトルフィーバーロボにジャパンとアメリカが乗り込み、ドクロキノコロボットとの死闘が開始された。
コサックたちはドクロキノコ怪人の毒ガスを躱し続け、三方から囲んで混乱させたところにペンタフォースを炸裂させ、ドクロキノコ怪人を倒す。
さらにドクロキノコロボットが振るう斧に同じ斧であるフィーバーアックスで対抗したバトルフィーバーロボは、電光剣唐竹割りでドクロキノコロボットを倒す。

戦いは終わった。美肌パックをしているマリアを、仮装と勘違いして驚くケニア。
ミス・フジコの変装のために、年老いた魔女の仮装をしたことで肌を痛めたマリアをいたわる面々だが、ケニアはマリアが年を取ればああなるとからかい、怒りを買う。
不条理な世界から帰還した証である、平和な日常がそこにはあった。

濃霧に包まれて以降、バトルフィーバーが遭遇したもの全てがエゴスによる偽りで、全てはドクロキノコ怪人の罠だった。彼らが迷い込んだ狂乱の仮装パーティーが開かれる洋館は、毒キノコによる幻覚やせん妄を想起させる不条理さの塊とも言える空間だ。
普段の回とは違う、奇妙で不条理な雰囲気がじわじわと迫ってくる恐怖描写が見事。
毒キノコの幻覚をイメージした不条理な展開でキノコの怪人の恐ろしさを演出した独特な演出が独特な視聴感を生み、長期シリーズの中の変化球エピソードとして秀逸な回だ。

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