「バトルフィーバーJ」第40話「美人先生危機一髪」感想

2024年4月18日木曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

エゴスが勉強が大好きなベンキョウ怪人を生み出した。
猛毒のガスを扱えるベンキョウ怪人だったが、怪人は勉強友達が欲しいという。
そして、ベンキョウ怪人は一緒に勉強をするために子供たちをさらう。

頭脳のみが発達した子供怪人 美人教師マリアの機転が光る

今回のエゴス怪人はベンキョウ怪人。
ガリ勉という概念そのものの怪人化であるベンキョウ怪人は、アメリカ映画「暗闇の悪魔 大頭人の襲来」に登場する大頭人もモデルであるという、頭脳のみが発達し膨れ上がった姿が特徴。
自らを悪魔のプリンス、天才と自称するプライドの高さや、友人となる学友を欲しがるが、自分と同レベルの頭脳でないと見なすと癇癪を起こし奴隷部屋に連行する、知能だけが発達して情緒の成長が追いついていない、子供の持つ残酷さをカリカチュアライズしたキャラクターになっている。

そんなベンキョウ怪人に学友と見込まれてしまい、エゴスに狙われる少年・北条達也を警護するためにマリアが家庭教師に変装するのが見どころとなる、スーパー戦隊シリーズの伝統とも言えるヒロインの変装が見どころとなるエピソードだ。

サタンエゴスは、またしても怪人製造機から怪人を生み出そうとしていた。
不気味に鳴動する怪人製造機から巨大な頭部を持つ悪魔の天才、ベンキョウ怪人が誕生した。
サタンエゴスいわく、知能指数500の天才中の天才であるというベンキョウ怪人は、勉強の出来ない子供をドロドロに溶かす猛毒ガスが仕込まれた巨大な万年筆を持っていた。
だが、ベンキョウ怪人はエゴスという組織やヘッダー指揮官、サロメのため、バトルフィーバーと戦う作戦を立てる気はなく、勉強して自分の知識欲を満たすことにしか興味がなかった。
勉強がしたいと吠えるベンキョウ怪人に呆れるサロメを、ヘッダー指揮官は天才とは気まぐれなものなのだと宥める。そんなヘッダー指揮官に、ベンキョウ怪人は共に学ぶ学友が欲しいと要求。
サタンエゴスはそんなベンキョウ怪人が自分の御子だけあって可愛くて仕方ないのか、ベンキョウ怪人の言う通りに優秀な学友を集めるようにヘッダー指揮官に命ずるのだった。

秀才少年が次々に拉致される事件が起きた。
身代金も要求されない目的不明の誘拐事件が多発し、社会は混乱に陥っていた。
バトルフィーバー隊はこの事件の調査を開始。
マリアは、エゴスが秀才少年を集め、エゴスの頭脳に養成しようとしていると推理する。
その話を聞いたケイコ隊員は、マサルの同級生に天才少年・北条達也がいたことを思い出す。
達也は北条財閥の御曹司にして、小学生ながら大学生の数式をも解く天才だった。
バトルフィーバーが今度は達也が狙われると判断し、達也の警護に向かおうとしたその時、達也の母親がマサルを連れてやってきた。達也の母親はマサルにバトルフィーバー隊のもとまで案内させると、バトルフィーバーに天才である達也を守ってくれと懇願。
熱心な教育ママである達也の母親の迫力に圧倒されたバトルフィーバーは、マリアを家庭教師に変装させて達也の警護を行うことになった。

家庭教師となって達也の部屋を訪ねたマリアだが、達也は家庭教師などいらないと冷淡。
しかし、母親の勧めで仕方なく家庭教師を受け入れることに。
母親に家庭教師と一緒にチェスをしたらどうかと勧められた達也だが、達也はチェスに興味がない様子を見せ、マリアはその様子から達也が勉強にストレスを感じていると悟る。
だが達也は、打ち解けようとするマリアにも反抗的な態度を取り、万年筆に仕込んだカラーインクを噴射し、マリアの顔面に浴びせるのだった。

その頃、エゴスのアジトではベンキョウ怪人が癇癪を起こしていた。
カットマンたちが集めてきた秀才少年の学力が足りず、自分に見合わないと怒るベンキョウ怪人は、子どもたちを奴隷部屋に連行させ、自分の相手は本物の天才しか務まらないと豪語。
ヘッダー指揮官とサロメに本物の天才を連れてくるように要求し、連れてこれなければヘッダー指揮官たちを毒ガスで溶かしてしまうと脅すのだった。

自ら勉学相手を探すこともせず、ヘッダー指揮官やカットマンたちに学友を集めさせて、その学力が自分に見合わないと癇癪を起こし、ワガママを言うベンキョウ怪人。
言うことを聞かなければ毒ガスで溶かしてしまうと脅すあたりにも、頭脳だけが発達して情緒が育っていない悪童ぶりが強調されており、秀逸な描写だ。

達也は勉強をするふりをして漫画を読んでいた。
マリアが部屋に入ってきたのを察知し漫画を隠した達也は、部屋の外からサーカスのピエロが騒ぐ音を聞きつけ、窓から外出してしまう。
天才とは思えぬ集中力の欠如を見せる達也の様子を訝しむマリア。
ピエロのパフォーマンスを楽しんでいた達也だったが、後を追ったマリアが駆けつけると、達也はまんまとピエロに変装していたカットマンに捕まっていた。
達也を人質に取られて抵抗することも出来ず、マリアも捕らえられてしまう。

ビッグベイザーで、ジャパンは達也が攫われた報告を受ける。
ロボット九官鳥も調子に乗ってバトルフィーバーの面目丸つぶれだと責め立てるのだった。
達也とマリアはベンキョウ怪人のアジトである洋館に連行されていた。
マリアはサロメを見て、一連の誘拐事件がやはりエゴスの仕業だったと確信する。
ベンキョウ怪人は一緒に勉強をするために達也をアジトの中に連れ込もうとするが、サロメに正体を見抜かれていたマリアはその場で銃殺刑にされそうになる。
しかし、機転を利かせた達也が、先生と一緒でなくては行かないとベンキョウ怪人に申し出た。
ベンキョウ怪人はせっかく見つけた学友の機嫌を損ねないためにと配慮を見せ、サロメの静止も聞かずにマリアも共にアジト内部へと案内するのだった。
サロメはマリアの手枷を外すが、このアジトから生きて返さないと恫喝。
しかしマリアも、御子の学友の家庭教師に失礼な言動は慎むようにと気丈に言い返すのだった。
マリアとサロメ、幾度となく対決してきた二人の女傑の火花散るやり取りが楽しい。

音楽の勉強をするベンキョウ怪人は、自身がピアノで弾く曲の名前や作曲者を達也に尋ねる。
問題に答える達也がまさしく自分と同じ天才だと満足したベンキョウ怪人は、自分より頭脳が劣る人間の末路として、奴隷部屋に捕まった少年たちがカットマンに乱暴される様子を見せる。
自分が出した大学入試レベルの問題を解けない秀才少年たちを見下し、天才同士である達也と一緒に勉強できることを喜ぶベンキョウ怪人は、次は宇宙の勉強をしようと部屋を出ていく。
すると、達也が俯き悩み始めた。実は達也は勉強が大嫌いで、天才だというのもみんな嘘。
大学レベルの問題を解いたのも、その問題だけを必死に暗記した結果だったのだ。
そこに、何も知らないベンキョウ怪人が宇宙の本を山ほど持って現れた。
マリアは機転を利かせ、次はダンスの勉強を行うと申し出る。
天才はダンスを踊れなければ天才と言えないとベンキョウ怪人を言いくるめたマリアは、ベンキョウ怪人の手を取って踊り始めた。マリアにリードされ、ダンスを楽しみ始めたベンキョウ怪人。
部屋に入ってきたサロメはそんなベンキョウ怪人をダンスは勉強ではないと咎める。
だが、ベンキョウ怪人はマリアのことが気に入り、マリアを学友にすると決めてしまう。

バトルフィーバーは行方不明になったマリアと達也の行方を探っていた。
一方、マリアとのダンスを楽しむベンキョウ怪人は達也への興味が失せてしまい、達也を奴隷部屋に連れて行くように命ずる。サロメはあまりにも気分屋なベンキョウ怪人に呆れつつ、達也の頭脳の測定をしてからでも遅くないと説得し、それを受けたベンキョウ怪人は達也に宇宙についての問題、光の速度に付いての問題を出し始めた。
当然、答えられない達也は苦しい様子を見せる。見かねたマリアはダンスの相手を達也に交代し、ベンキョウ怪人が出す問題の答えを達也に耳打ちして達也を助けるが、サロメにそれを見抜かれてしまう。これは明らかにカンニングだと責めるサロメがシュールで面白い。

ついに達也の嘘が発覚し、自分が天才だと騙した達也にベンキョウ怪人の怒りが爆発。
万年筆からの毒ガスで達也を殺そうとするが、間一髪マリアが助けに入った。
ダンスを一緒に楽しんだことでマリアを学友と呼び、学友は殺したくないと叫ぶベンキョウ怪人だが、マリアは達也を守るのが仕事であるとミスアメリカの強化服を纏い、ベンキョウ怪人に反撃。
だが、サロメが部屋のスイッチを操作すると床が抜け、アメリカと達也は奴隷部屋に落とされる。

マリアがバトルフィーバーの一員であろうと、ダンスの楽しさを教えてくれた学友として殺したくないと願うベンキョウ怪人は、確かに情緒の成長が追いついていないのだが、それゆえに無垢でもある。接し方次第ではマリアから優しさを学んで成長、改心する余地もありそうではある。

奴隷部屋に落ちたマリアを嘲笑うサロメは、ベンキョウ怪人の怒りを買ったことで1時間後に全員が銃殺刑に処されると死刑宣告を行う。だがマリアは、サロメが脱出の希望を絶つために口走った、奴隷部屋の天窓を通れるのは鳥だけだという言葉から何かを掴んでいた。
一方、ジャパンたちもエゴスのアジトの近くまで辿り着いていたが、正確な場所がわからない。
マリアは天窓を鳥なら通れるという言葉にヒントを得て、折り鶴を折り天窓へ向けて放り投げ、子どもたちに即席の扇で折り鶴を扇がせることで窓の外まで飛ばし、助けを呼ぶ作戦を立てた。
子どもたちの尽力で折り鶴は外へ飛んでいくが、そこにサロメが銃殺刑の時間を告げる。
だが、部屋の外に飛んでいったマリアの折り鶴も無事にトモコ隊員の元に届き、折り鶴に書かれたマリアからの連絡文によって、バトルフィーバーたちはエゴスのアジトを発見する。

十字架にかけられたマリアと達也。
マリアは懸命に未来ある達也は助けてほしいと乞うが、非情のサロメには届かない。
ついにカットマンが銃を構えた瞬間、バトルフィーバーが到着。
マリアと達也を救出し、マリアも強化服を纏って再びミスアメリカになった。

ベンキョウ怪人はベンキョウロボットを呼び出し、ついにバトルフィーバーとベンキョウ怪人の一大決戦が始まった。ジャパンがバトルシャークを呼び出し、バトルフィーバーロボが到着。
ジャパン一人がバトルフィーバーロボに乗り込み、ベンキョウロボットとの死闘を繰り広げる。
巨大な万年筆を振り回すベンキョウ怪人。万年筆を投げると、それがケニアを追尾し、万年筆を振り回すとバトルフィーバーたちもその勢いに巻き込まれる。
バトルフィーバーは苦戦しながらもペンタフォースを炸裂させ、ベンキョウ怪人は倒れた。
残るベンキョウロボットもバトルフィーバーロボの電光剣唐竹割りで粉砕。
こうして、秀才少年や達也たちに笑顔が戻った。
「明日の戦士たち」が流れる中、去っていくバトルフィーバーロボを見送る達也たち。
子供たちに未来を託す「明日の戦士たち」の歌詞が、子供たちを助け出したバトルフィーバーの勝利を称えるように流れ、歌と作中の展開のリンクが図られた演出が感動を呼ぶ。
日常に戻った達也は家庭教師にしごかれているが、遊ぶ時は全力で遊ぶようになったという。
フランスは、たまには勉強しないとベンキョウ怪人に殺されるとケニアをからかう。
エゴスの陰謀を粉砕し、戻った平和な日常がそこにはあった。

勉強だけに勤しみ、頭脳は天才的でも人間的な情緒を知らないベンキョウ怪人は、いわゆるガリ勉という概念をカリカチュアライズし、勉強だけに勤しんで知識は詰め込んでも実際に経験することに欠けている現代っ子や、子供に勉強だけさせようとする教育ママへのアンチテーゼ的な作劇だ。
ベンキョウ怪人が体を動かすダンスの楽しさを知り、マリアを学友と慕うようになる描写も、勉強だけでなく、体を動かして健康に育ってほしいという子供たちへの願いが込められた展開と言えるだろう。自然回帰的な作劇が複数のエピソードで見られるのも、「バトルフィーバーJ」の特徴だ。

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