「バトルフィーバーJ」第41話「爆破寸前の大逆転」感想

2024年4月24日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ある日、銀行強盗に巻き込まれたマサルは人質にされてしまう。
そんな折、彼はカラクリ人形によって救出される。
マサルはその一件をきっかけに、カラクリ人形と親交を深めていく。
だが、やがてカラクリ人形の正体が発覚する。

死ぬために作られた命が友の絆を知る時、その瞳に涙が光る

今回のエゴス怪人はカラクリ怪人。
からくり人形の姿をしたこのエゴス怪人の目的は、バトルフィーバー隊の基地であるビッグベイザー内部で自爆する、人間爆弾としての任務を果たすことだ。
他のエゴス怪人と異なり、バトルフィーバーを倒すために命を捨てる捨て駒として生み出され、その任務に何の疑問も抱いていなかったカラクリ怪人。
人形がモチーフなのも、作り手であるサタンエゴスの意思のままに命を捨てることをためらわない操り人形でしかない存在を象徴するものだろう。
だが、その任務を果たすため、バトルフィーバー隊に近い存在であるマサルの友人となり、マサルやバトルフィーバー隊の信用を得て堂々とビッグベイザーに潜り込むという手段を取ったことで、カラクリ怪人のエゴス怪人としての在り方は大きく変わることになった。

二人組の銀行強盗が銀行を襲った。警官隊と強盗の銃撃戦が行われる中、通報を受けバトルフィーバー隊も現場に急行し、そこにマサルを心配したケイコ隊員も駆けつける。
銀行強盗たちはたまたま銀行の前を通りかかったマサルを人質にしていたのだ。

包囲された強盗たちに投降を呼びかけるジャパンだが、強盗はマサルの開放と引き換えに逃亡用の飛行機を要求する。すると、背後から歯車が動くような音が聞こえてきた。
不審な音に怯える強盗は、小さなカラクリ人形が落ちているのを発見。
すると、カラクリ人形がひとりでに動き出し、人間大に巨大化すると、強盗に対してマサルを開放するように話し始めた。自らをアシガラ星から来た金太郎と話すカラクリ人形は、怯えて襲いかかってきた強盗の一人をものすごい力で鎮圧してしまう。
カラクリ人形はもう一人の強盗が撃った銃弾もものともせず、口から火を吹いて強盗を怯えさせ、そこに突入した警官隊が強盗を逮捕して事態は収束する。

マサルは強盗から自分を助けてくれたカラクリ人形と仲良くなり、ケニアやケイコ隊員、トモコ隊員はそれを微笑ましそうに見守るが、ジャパンたちは不審なカラクリ人形に疑惑の目を向ける。
コサックはジャパンに、カラクリ人形がエゴスかどうかを点検することを提案。
ビッグベイザーにカラクリ人形を連れてきたバトルフィーバーは、エゴスかどうかの点検を開始するが、点検の結果、エゴスとの関係は証明できなかった。
疑いを晴らしたカラクリ人形は疑惑を向けたバトルフィーバーを許し、再びマサルと遊び始めた。そんな二人を、ケニアはケイコ隊員とともに甲斐甲斐しく世話を焼く。
ケニアはカラクリ人形のためにコーヒーやたくさんのジュースを購入するが、カラクリ人形の口には合わず、カラクリ人形はガソリンを飲もうとするのだった。
マサルと仲良くするカラクリ人形にも優しくするケニアの、子供好きな一面が演出されている。

星空を見上げるカラクリ人形は、故郷へ帰る日を待っているのだという。
迎えの船がいつ来るかわからず不安なカラクリ人形に、マサルは自分の家で待てば良いと優しい言葉をかける。空に信号を送っているカラクリ人形を、信号が母星に届くといいなと気遣うケニア。
一方、ジャパンとコサックは離れた場所からカラクリ人形の様子を監視していた。
あまりにも不可思議な現象を起こしたカラクリ人形を、彼らは完全に信用していなかった。
二代目コサックの、冷静に事態を把握して情に流されない性分は、味方にすると頼もしい。

その頃、エゴスの基地では、作戦行動中のエゴス怪人からの信号が送られてきていた。
エゴス怪人はバトルフィーバーの懐に入ることに成功したのだという。
ヘッダー指揮官によれば、今度のエゴス怪人は、サタンエゴスが生み出した芸術の完成品。
カラクリアンドロイドとして生み出されたという今度のエゴス怪人は、いかなる手段でバトルフィーバーに近づいたのだろうか。

マサルとカラクリ人形は飛行機のラジコンを飛ばして遊んでいた。
その様子を見ていたバトルフィーバー隊も、マサルのラジコンの操縦テクに感心する。
マサルは、命の恩人であるカラクリ人形に、宝物であるラジコンをプレゼントした。
カラクリ人形がラジコンのプロポを手に取ると、カラクリ人形はプロポに自分の身体から取り出した回路を取り付け、ラジコンをバトルフィーバーに向けて飛ばし始めた。
マサルはラジコンを使ったいたずらはいけないと咎めた上で、カラクリ人形を庇って自分がラジコンを飛ばしたのだとし、ケニアやケイコ隊員に叱られる。
なぜ自分を庇ったのか尋ねるカラクリ人形に、マサルは友達を庇うのは当たり前だと答えると、カラクリ人形の回路が、「友達」という言葉を刻み込むように動き始めた。
すると、エゴス基地のコンピューターが異常を起こし始めた。
コンピューターに「友達」という言葉がインプットされたために混乱が起こったことに、ヘッダー指揮官は友達や友情などエゴス怪人に不要と憤る。
そう、新たなエゴス怪人とは、マサルの友達となったカラクリ人形だったのだ。

しばらくして、エゴス基地のコンピューターが再び正常に戻った。
カラクリ怪人は母星への航空標識と称し、マサルと一緒にマンホールに特殊な液体を塗り始めた。
その様子を監視していたジャパンとコサックは、カラクリ怪人が液体を塗って印をつけているマンホールが、全てバトルフィーバーの秘密通路であることに懸念を抱く。
しかし、その会話を聞き取っていたカラクリ怪人は、ジャパンとコサックが自分の正体に勘付き始めていることを察知。さらに、ジャパンとコサックがカラクリ怪人とマサルが仲良くなったきっかけである銀行強盗もエゴスの策略ではないかと疑い始めたことを感知する。
それを知ったヘッダー指揮官は警察で勾留されていた銀行強盗二人組を自爆させることを命令。
銀行強盗二人組の正体はカットマンであり、ジャパンとコサックが警察に到着した時には既に自爆しており、エゴスと銀行強盗の関係は証拠隠滅されていた。

すると、ジャパンのもとにエゴスが少女を誘拐しようとしている連絡が入る。
コサックは一人強盗に入られた銀行を調査し、ジャパンはケニアたちと合流してエゴスと戦う。
サロメは少女を人質にしてバトルフィーバーの動きを封じるが、そこにカラクリ怪人が現れた。
カラクリ怪人は子どもたちの友達を自称し、頭部を飛ばしてサロメから子供を奪回。
だがカラクリ怪人はサロメの銃撃で傷を負った。友を思うマサルと、そんなマサルを気遣うケニアの頼みで、ジャパンはカラクリ怪人をビッグベイザーで修理することを了承する。
しかし、この一連のエゴスの少女誘拐とカラクリ怪人の負傷は、カラクリ怪人をビッグベイザーに潜り込ませるための、エゴスの罠だった。

ケニアたちはカラクリ怪人の治療を行い、カラクリ怪人の容態を心配していたマサルもケイコ隊員から無事の連絡を受けて安堵する。一方、銀行を調査していたコサックは、地下にエゴス基地への隠し通路があることを発見。そこでカットマンたちの会話を聞いたコサックは、カラクリ怪人がビッグベイザーを破壊しようとしている情報を掴み、急ぎビッグベイザーへ戻る。
その道中、マサルたちにカラクリ怪人の正体を伝えたコサックだが、マサルはあまりに残酷な真実にそれを受け入れることが出来ない。一方ビッグベイザーでも、ロボット九官鳥が不審なものを感じてカラクリ怪人をビッグベイザーから追い出すように告げる。
ケニアがロボット九官鳥に反論していると、そこにカラクリ怪人の正体を告げるコサックの通信が届いた。正体が露見したカラクリ怪人は、先程までと声色を変え、エゴス怪人としての本性を現す。ユーモラスな「金太郎」としての声からエゴス怪人としての声色への変化が秀逸な演出だ。

バトルフィーバーとビッグベイザーもろとも自爆する人間爆弾として生み出されたカラクリ怪人。
ビッグベイザーから脱出する秘密通路も、カラクリ怪人がつけた印によって通路の場所を知ったカットマンたちに見張られており、バトルフィーバーにはもはや逃げ場がなかった。
人間爆弾として、死ぬために生まれてきた役割に疑問を持たないカラクリ怪人は、サタンエゴスのためにバトルフィーバーと共に地獄に落ちる覚悟をしていたのだ。爆発まで残り5分。
コサックは秘密通路で見張っていたカットマンを蹴散らし、急いでビッグベイザーに向かう。

爆発まで残り1分。そこにマサルが現れ、自分とカラクリ怪人は友達で、友達ならバトルフィーバーを殺すことはやめてくれとカラクリ怪人に訴え始めた。
死ぬために生まれてきた自分に、本来出来るはずがなかった「友達」であるマサルの、友としての言葉に動揺するカラクリ怪人。その動揺により、爆破装置が故障した。
マサルがカラクリ怪人を庇ったように、カラクリ怪人も自分の自爆から友達を、マサルを庇いたいという心が爆破回路に異常を生じさせた。二人の友情は本物だったのだ。
マサルの友を思う心が、邪悪の化身であるエゴス怪人の心すら動かしたのだ。

だが、爆破装置が壊れて自爆するという使命が果たせなくなっても、エゴス怪人である以上カラクリ怪人はバトルフィーバーと戦わなくてはならない。バトルフィーバーとの決着を望むカラクリ怪人は、ビッグベイザーから出てバトルフィーバーと戦う。
それは、マサルを戦いの被害から庇おうとした、友としての行動だったのかもしれない。
だが、マサルは「金太郎くん」とカラクリ怪人の偽りの名前を呼び、戦場へ走る。
その声を聞いたカラクリ怪人もマサルの名を呼ぶが、それでもエゴス怪人として戦う使命のために頭部を飛ばし、ジャパンを襲う。バトルフィーバーはペンタフォースでカラクリ怪人を倒す。
カラクリ怪人は最後に「さらば、友達」と友への別れを叫び、散っていくのだった。

友達という言葉が御子を狂わせたことに怒るヘッダー指揮官。
サタンエゴスも怒り、戦闘機を出撃させてバトルフィーバーを抹殺しようとする。
バトルシャークが出動し、ミサイル発射、爆雷投下。
豊富な武装で次々にエゴス戦闘機を粉砕した。

戦いは終わった。
マサルは、例えエゴスのカラクリ怪人だったとしても、自分にとっては友達であるアシガラ星の金太郎であり、いつまでも忘れないことをカラクリ怪人に誓う。
友情の絆が、奇跡を呼び、冷酷非情なエゴス怪人に友を思う心を与え、悪から目覚めさせた。
恐るべき敵であったが、哀しい友情に涙するバトルフィーバーでもあった。

カラクリ怪人が友情を知ったことで狂い、ビッグベイザーの破壊を成せなかったことに怒るヘッダー指揮官やサタンエゴスは、完全に今回のカラクリ怪人を「御子」として扱ってはいるものの自爆して敵を壊滅させるための捨て駒としか見ていない。
エゴスにとって、カラクリ怪人はその名の通り、バトルフィーバーを壊滅させるためのカラクリの一つにしか過ぎなかったのだ。そんな空虚な存在であるカラクリ怪人だったからこそ、偽りの友情だったとはいえ、「友」として接してくれたマサルの言葉が心に届いたのだろう。
人の心を汚すだけでなく、怪人ですら「御子」と崇めながら捨て駒に過ぎない扱いをする悪魔のエゴスの陰謀を粉砕し、爆破寸前の大逆転に導いたのは、マサルが見せた友を庇う友情、人の心の美しさだったという構図が大いなる感動を呼んだ、名作エピソードだ。

このあたりになると、ジャパンも二代目コサックとなった神誠の冷静な判断力や、独断専行を辞さない行動力を的確に理解すると同時に信頼し、リーダーとして彼の判断を採用し、単独で調査を任せることでカラクリ怪人を利用したエゴスの策略を見事に粉砕している。
バトルフィーバー隊のメンバーが個々の強みを活かしてエゴスの陰謀に立ち向かう、グループ・ヒーローとしての役割分担を活かした描写が、バトルフィーバーとエゴスの組織対組織のスパイ・アクション的作劇をより強調したものになっている。

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