「バトルフィーバーJ」第42話「電気人間愛の火花」感想

2024年4月24日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

t f B! P L

あらすじ

エゴスが生み出したデンキ怪人は、電気人間を作ろうとたくらんでいた。
電気人間をきっかけに、人間たちの関係性を崩壊させようとする。
そんなデンキ怪人によって、あろうことかフランスが電気人間にされてしまう。

人の絆を裂く稲光 電気人間の恐怖が社会を分断する

今回のエゴス怪人はデンキ怪人。
発電機をイメージしたようなユーモラスな外見とは裏腹に、強烈なエゴス電気を放つことで人間を電気人間に変え、エゴス電気に耐えられない人間が命を落としても悪びれない狂気の存在である。
その目的は触れた人間の体内にエゴス電気を加えることで電気人間に変えること。
電気人間に変えられたものは体に強烈な電気を帯びることで他の人間と接することも出来なくなり、結果として社会には電気人間を恐れる恐怖心や、隣人や家族が電気人間でないかという猜疑心が蔓延し、デンキ怪人の被害者であるはずの電気人間たちが普通の人間たちから恐れられ、まるで加害者であるかのように爪弾きにされるという地獄絵図が展開されてしまう。
デンキ怪人に一方的に襲われた被害者でありながら、体に電気を帯びたというだけで周囲に害をもたらす加害者と見なされ、恐怖によって社会から排除されていき社会が混乱していく地獄は、まさに人の心を汚すエゴスの恐ろしさを如実に表している。

エゴスの基地では、高圧線から盗電した高圧電流が怪人製造機に注ぎ込まれていた。
サタンエゴスは高圧電流を蓄えた怪人製造機から、電気の化身であるデンキ怪人が生みだす。
デンキ怪人の使命は、人間をことごとく電気人間に変えることにあるのだという。
デンキ怪人はランニングに励んでいた青年、関根功を襲った。
しかし、功はデンキ怪人の放つエゴス電気の高圧電流に耐えきれずに絶命する。
デンキ怪人は無駄に人の命を奪ったことを何ら悪びれず、電気人間を作り出すためのエゴス電気の適切な出力を解明するために人体実験を続けるのだった。

その頃、フランスはオートバイを飛ばしてパトロールに励んでいた。その途中、オクラホマ・ミキサーを流しフォークダンスを踊る青年たちを見かけたフランスは、若き日の思い出に浸る。
だが、フランスはその青年たちにサロメが接近しているのを目撃し、表情を引き締める。
フォークダンスに混ざっていたサロメに、同じくフォークダンスに紛れたフランスが迫った。
フォークダンスが好きだととぼけるサロメをフォークダンスの輪から弾き出し臨戦態勢に入ったフランスが、同じくフォークダンスに紛れていたデンキ怪人に背後から襲われる。
感電したフランスは気を失い、そのまま川に蹴落とされてしまった。

夕方になり、デンキ怪人によって感電死させられた功の妹である洋子と、弟の広の姉弟が、功の冥福を祈り、彼が命を失った川に花を供えていた。だが、川からフランスが這い上がってきたのを目撃して驚いた弘が転倒して、頭を強く打ってしまう。
助けようとしたフランスの手から、激しい放電が迸り、弘は気絶してしまった。
洋子はフランスが弘を感電死させたと誤解し、兄の功を感電死させたのもフランスだと誤解する。
フランスは自分の体に何が起こったかもわからぬまま、兄弟殺しの汚名を着せられてしまった。

エゴス基地では、フランスが電気人間になったとの報告が上がっていた。
サタンエゴスは電気人間誕生の成功に喜び、ヘッダー指揮官もフランスを電気人間にした大手柄を上げたデンキ怪人を称える。デンキ怪人は人間を次々電気人間にしようと意気込むのだった。

ビッグベイザーに戻ったフランスは、コサックによって体の電気を放出する処置を受けようとしていた。エゴス電気によって、生き物の体に流れる僅かな電気を強くされた以上、必ず体から電気を抜き取れるはずだという考えで放電処置が行われるが、フランスの体から電気は抜けない。
ケニアがフランスの体に触れようとすると、激しい放電が迸った。
だがケニアは電気人間にならない。デンキ怪人の電気を浴びた者だけが、電気人間になるのだ。
フランスは、もはや他人と触れ合うことも出来なくなり、絶対の孤独に追い込まれてしまう。

弘の病室に付き添っていた洋子は、病室を訪ねてきたフランスを追い返そうとする。
すると、弘が目を覚ました。だが、弘は頭を打ったショックで絶対安静が必要だった。
兄の功が生きていればどんなに心強いかと悲しむ洋子に、フランスは功を殺したのは自分ではないと弁解するが、洋子は受け入れない。弟妹を養うために、働きながらフェンシングの大会に向けトレーニングに励んでいた功を失った洋子の悲しみは深かった。
最後に頼れる兄の功を失った悲しみに暮れる洋子に、フランスは言葉をかけることが出来ない。
そこに、デンキ怪人が街に現れた連絡が入った。

デンキ怪人に追われる少年を救ったバトルフィーバーは、カットマンとの死闘を繰り広げる。
だが、デンキ怪人に触れられれば、バトルフィーバーも電気人間にされてしまう。
直接攻撃することが出来ないバトルフィーバーが苦戦していると、フランスが駆けつけた。
電気人間となったフランスがデンキ怪人に触れると、放電が逆流してデンキ怪人にダメージを与えることに成功する。電気人間にされた怒りを込めたフランスの反撃に、デンキ怪人は撤退した。

デンキ怪人の暗躍で、少しずつ電気人間の不安が社会に広がり始めた。
人間たちはうっかり触ると感電する恐怖から、電気人間にされた者を恐れ、差別を始めていた。
電気人間にされた人間は病院に送られ、世間から爪弾きにされていく。
親子、兄弟、恋人といえど互いに電気人間でないかと警戒し、手を握り合うことすら恐れる社会。
サタンエゴスの目的は、電気人間を増やし、電気人間が普通の人間に憎まれるようにすることで、人間社会に断絶を生じさせることにあったのだ。

怪人が人間を殺戮するという局所的な攻撃ではなく、誰が電気人間にされたかわからない不安と恐怖から生じる混乱を社会に発生させ、人間たちの間の信頼や連帯を破壊し、社会機能を麻痺させようとする今回のエゴスの作戦は、ひどくリアリティのある作戦だ。
電気人間になった恐れがある人間は病院に隔離され、社会から排除される。
まるで新型ウイルスに罹患した人が療養期間中は外出を自粛することを促されていた近年の社会情勢を想起せずにはいられない。事実、令和の現代ですら、新型ウイルスに罹患した人間に対する差別的な言動や社会的な排除、自己責任論を是とする誹謗中傷が飛び交い、社会に断絶が生じた。
今回のデンキ怪人は、人間をランダムに電気人間に変えることでそのような社会情勢を人為的に作り出し、人間社会に恐怖心や猜疑心を蔓延させ、社会機能を麻痺させた。
今回のエピソードでは語られなかったものの、電気人間にされたことを隠そうとする者、電気人間にされた者を密告しようとする者が現れていても不思議ではない。
未知の感染症が蔓延した社会の在り方を予見したかのような重厚な展開が素晴らしい。

フランスが弘の病室を尋ねると、弘の容態が悪化し、脳外科の病院に転院が進められていた。
フランスは弘の励みになるようにとプレゼントを渡そうとするが、洋子は拒む。
そこに医師が現れ、電気人間の恐怖と危険な電気人間の排除が必要だと叫び始めた。
それに扇動された市民たちが、フランスに石を投げ始める。
バトルフィーバーたちはフランスを庇う中で、市民を扇動した医師がカットマンの変装だったことを突き止めるが、既に恐怖を煽られた市民の電気人間への敵意は最高潮に達しようとしていた。

救急車の中で、兄の名を呼ぶ弘。一方、エゴスの策謀を察知したフランスは救急車を追っていた。
そこにエゴスの銃撃の雨が降り、デンキ怪人たちが現れた。
弘を病院まで行かせてほしいと懇願する洋子に、デンキ怪人が容赦をかけることはない。
助けようとしたフランスはカットマンに動きを封じられ、その隙に洋子はデンキ怪人に感電させられ、電気人間にされてしまった。苦しむ弟に触れることも出来なくさせたデンキ怪人は、自分たちエゴスの目的は人を苦しめ、互いに憎しみ合わせることだと叫ぶと、フランスこそが洋子たちが事件に巻き込まれた諸悪の根源としてフランスへの憎悪を煽る。
その間にも、反撃できないフランスはカットマンたちに蹂躙され、傷だらけになる。
ついにカットマンのトドメの一撃がフランスに叩き込まれる瞬間、フランスを洋子が庇う。
その瞬間、激しい放電現象が起こり、稲光がスパークした。
フランスと洋子、電気人間同士が接触したことで、体内の電気が空中に放電されたのだ。
普通の人間に戻った洋子を弘の元へ行かせ、病院に向かわせたフランスは、怒りの反撃を見せる。
そこにバトルフィーバーの仲間たちも駆けつけ、一大決戦が始まった。

接触すれば電気人間にされてしまう強敵、デンキ怪人。
バトルフィーバーは直接触れずに、鞭を四肢に結びつけ動きを封じる戦法で反撃。
ダメージを与えたところにペンタフォースを炸裂させ、デンキ怪人を打ち破った。
だが、そこに激しい稲光とともにデンキロボットが現れる。
ジャパンの要請に応え、バトルシャークが発進。バトルフィーバーロボがその勇姿を現した。
座席に座るバトルフィーバーがシートベルトを締める描写があり、搭乗シーンを盛り上げている。
デンキロボットの放電攻撃によって機器が異常を見せ、バトルフィーバーロボが操縦不能になる危機に陥ったバトルフィーバー。だが、フランスがバトルフィーバーロボの持つ電光剣が持つ、電気を吸い取りその威力を増す性質を利用することを思いつく。
電光剣を構えたバトルフィーバーロボはエゴス電気を吸収し、激しい稲光が連続する強化版の電光剣唐竹割りでデンキロボットにとどめを刺した。

戦いは終わり、弘の体調も回復した。フランスは、渡せなかったプレゼントを渡す。
それは、自身もフェンシングを嗜んでいたフランスが愛用していたフルーレと、功が目指していたフェンシングの大会のトロフィーだった。フランスは自分が2年前に獲得したトロフィーを渡すことで、兄が目標としていた大会を目指して頑張るように弘を励ます。
兄のようになりたいという弘に、フランスはフェンシングの手ほどきをするのだった。
そして、デンキ怪人に電気人間にされた者たちも、フランスたちのように手を繋ぎ合うことで体内の電気を空中に放電し、助かることが出来た。
その電気人間たちの間には、小さな愛が芽生えた者もいるという。

エゴス怪人が起こすテロ攻撃だけでは、いくら怪人が強くても局地的な攻撃に過ぎない。
エゴスの目的が社会に混乱を巻き起こし、現代文明を破壊することなら、その社会を構成する人間たちの間に混乱を巻き起こせば良い。
デンキ怪人一人で世界中を攻撃するのは無理でも、人間たちをランダムに襲い、電気人間を社会に紛れ込ませれば、電気人間を恐れる人間たちの間に恐怖心や猜疑心が蔓延し、社会は分断される。
令和の現代、新型ウイルスによって社会に恐怖心や猜疑心が蔓延し、分断が巻き起こったのをリアルタイムで体感してしまった我々にとって、今回のエピソードは非常に迫真性のあるものになっており、あの社会不安を人為的に巻き起こそうとしたエゴスの恐ろしさを実感せずにいられない。
そんな人の心を汚し不安を蔓延させるエゴスの陰謀を粉砕するのは、人の心の繋がりであるという構図も美しく、ヒーロー作品のエピソードとしての完成度も非常に高い傑作エピソードだ。

ヒーローが怪人によって電気人間にされてしまい、その結果周囲に混乱を巻き起こし迫害されるという展開は、このエピソードを執筆した曽田博久氏自身の手で後年「超獣戦隊ライブマン」の第14話「ナベ男勇介の叫び」としてセルフリメイクされている。
こちらのエピソードは、主演の嶋大輔氏に「本当の意味でのヒーローを演じてほしい」という鈴木武幸プロデューサーの意向で、エレキヅノーの手で電気人間にされた天宮勇介=レッドファルコンが迫害を受け、自分の今までの戦いの意味を見失いながら、仲間の支えで報われなくても正義のために戦う姿を描いたものになっており、ヒーローの戦う意義を問う名作エピソードになっている。

QooQ