「仮面ライダーアマゾン」第20話「モグラ獣人 最後の活躍!!」感想

2024年5月17日金曜日

仮面ライダーアマゾン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ガランダー帝国のキノコ獣人の猛毒が、アマゾンの味方・モグラ獣人の命を奪おうとしている。
瀕死のモグラ獣人を想うまさひこの悲痛な叫びが響き、アマゾンの怒りが爆発する。

友のために命をかけた優しき命 さらば、勇気の士モグラ獣人

今回のガランダー帝国の獣人はキノコ獣人。
青い身体の至る所に毒キノコが生え、毒々しい色の菌糸を纏ったその醜悪な姿は、「イナズマン」に登場したミュータンロボットのグロテスクな造形を思わせる生理的嫌悪感の塊。
浴びた者の体を溶かしてしまう人食いカビを体内で発生させ、噴出することで多くの人間を犠牲にしたこの獣人の魔手にかかり、モグラ獣人がその命を落とすことになってしまう。
黒ジューシャとともに人食いカビを大量に培養し、東京中に散布することで東京都民を全滅させる「東京カビ全滅作戦」を目論見、その実験台として多くの人間を殺害した邪悪だ。

ゲドン時代にその恐ろしさを耳にしていたことから、ガランダー帝国の支配者であるゼロ大帝の名を聞いただけで震え上がり、地中に隠れていたほどに臆病だったモグラ獣人。
だが、ガランダー帝国の非道によって人々が苦しむ様を目撃したことで、心の奥底に眠っていた一欠片の勇気を奮い起こし、ガランダー帝国と戦うアマゾンを助けるため、ガランダー帝国のアジトの捜索や、捕まった子供たちの救出など、アマゾン一人では手が回らないサポートを請け負い、獣人と戦うアマゾンを影から支える活躍を見せていた。
時には、力では敵わないことを承知でガランダー帝国の獣人の前に立ちはだかり、りつ子を逃がし、アマゾンライダーが到着するまでの時間稼ぎをしたこともある。
悪の獣人に生まれながら、臆病でも一生懸命善を成すべく努力し、アマゾンを助けたモグラ獣人。
だが、悪の獣人に生まれた宿命が彼を逃すことはなく、ついにその命を散らせることになる。
だがその最期は、多くの人々を救うため、善を成そうと奮戦した勇敢な最期だった。

山田養豚場の社員一同は、慰安旅行で訪れた東京見物のバスツアーを楽しんでいた。
だが、そんな平和な時間に黒ジューシャが迫る。
バスの屋根に飛び乗った黒ジューシャは、バスの内部に緑のカビが宿ったガスを噴射。
バスに乗った人々がカビを浴びると、たちまち苦痛にあえぎ、身体が溶け始めた。
運転手と乗客が全滅したバスが事故を起こして停車する現場を目撃した少女・リサは、目撃者を消そうとする黒ジューシャに追われる。そこに、モグラ獣人がリサを庇って立ちはだかった。
ガランダー獣人には及ばないものの、さすがに黒ジューシャよりは強いモグラ獣人は黒ジューシャを追い払い、リサを安心させようと声を掛けるが、獣人の姿を怖がられてしまう。
承知のことではあるとはいえ、善行を為しても外見で怖がられるのをぼやくモグラ獣人。
そこにアマゾンも駆けつけ、リサからバスに乗っていた人たちが溶ける現場を目撃したことを教えられた二人は、またしてもガランダー帝国が何かを目論んでいることを察知する。

その頃、黒ジューシャたちはゼロ大帝に「東京カビ全滅作戦」の実験成功の報告をしていた。
だが、ゼロ大帝は黒ジューシャが目撃者を消せなかったばかりか、それを報告せずに隠そうとしているのを把握しており、ガランダー帝国の血の掟を破った罰として黒ジューシャを死刑に処す。

主戦力の獣人をすぐに処刑しようとしていた十面鬼と比べると、補充が効きやすい(のであろう)黒ジューシャの処刑にとどめているゼロ大帝は獣人の戦力としての価値を理解しているようだ。
ガランダー獣人が作戦に失敗すれば死あるのみであると通告されながらも裏切り者が出ず、士気や忠誠心が高いのも獣人の身分は保証されているからというのはあるのだろう。
ゲドンの場合、どうも赤ジューシャの方が獣人より身分が上だったフシがあったので、赤ジューシャを贔屓する十面鬼に対する反発が獣人の間でもあったのだと思われる。

平和な朝の時間を過ごしていた一家が住む団地に、バスの乗客たちを全滅させた人食いカビが広がっていた。そこに姿を現したガランダー帝国のキノコ獣人はカビを拡散させる。
たちまち人食いカビの身体を侵された夫婦は、生まれたばかりの赤ん坊を庇おうとするが、何故かカビの被害を受けずに済んだ赤ん坊を残して息絶えてしまった。

ガランダーのアジトでは、キノコ獣人が作るキノコからカビを抽出する作業が続けられていた。
一方、アマゾンはまさひこから、団地に住む住人が皆蒸発した事件が起きたことを知らされる。
モグラ獣人は、この事件がバスの乗客の蒸発事件と関係があるのではないかと推測する。
団地で発見された唯一の生存者は、夫婦が庇ったあの赤ん坊だった。
人の蒸発事件がガランダー帝国の仕業なら、何故か無事だったその赤ん坊がガランダー帝国に狙われる可能性がある。アマゾンは赤ん坊を守るべく、赤ん坊を保護した病院に向かった。

アマゾンの推測通り、病院にキノコ獣人が現れた。キノコ獣人は看護師を襲い赤ん坊を攫う。
そこにアマゾンが駆けつけたものの、キノコ獣人は赤ん坊は捕まえて逃走。
アマゾンはなんとか獣人に追いついたものの、赤ん坊を人質にされて手も足も出せない。
アマゾンはアマゾンライダーに変身することでキノコ獣人の攻撃を凌ぎ、跳躍して逃げようとしたキノコ獣人の隙を突き、なんとか赤ん坊を奪い返すことに成功する。

医者の検査でも、赤ん坊にカビに耐えうるような肉体的な特徴は見られなかった。
だが、高速道路を通った人々が30人もカビだらけになって溶けてしまったという知らせが入る。
そのカビが手に入れば、赤ん坊が助かった理由も解明され、カビの解毒剤も出来る。
だが、カビは人体を溶かした後、すぐに消滅するためカビのサンプルを入手することは難しい。
アマゾンはガランダー帝国のアジトに潜入してカビを手に入れようとするが、そこに現れたモグラ獣人が、自分がガランダー帝国のアジトに潜入してカビを手に入れると志願した。
モグラ獣人は、次々に人食いカビによる多大な犠牲が出ており一刻の猶予もない中、自分なら地中を通ってガランダー帝国のアジトをすぐに見つけられると考えたのだ。
アマゾンやまさひこはモグラ獣人の身を案じて止めようとするが、頑張りを見せようとするモグラ獣人の心意気に打たれたおやじさんの勧めもあり、モグラ獣人にカビの入手を託す。
りつ子も、モグラ獣人の身を案じて励ましの言葉を送るのだった。

ガランダーのアジトを探していたモグラ獣人は、キノコ獣人に発見される。
モグラ獣人はガランダー帝国と戦うのをやめたと嘯き、恥も外聞も捨てて降伏すると言い出した。
ゲドン獣人の誇りを見せないモグラ獣人に怒りを見せるキノコ獣人だが、信用されているのを利用してアマゾンを始末するのに手を貸すというモグラ獣人の申し出を受ける。

もちろんそれは、モグラ獣人がガランダー帝国のアジトに侵入するための芝居だった。
アジト内のキノコからカビを抽出する部屋に通されたモグラ獣人は、数日中には東京中にカビを撒き散らす量が生産できるという戦慄の計画を耳にする。アマゾン抹殺の功績でゼロ大帝に取り入るフリをしたモグラ獣人は、キノコ獣人から首尾よくカビを手に入れた。
たまには世の中のためになることをしてみせようと意気込むモグラ獣人だが、その行く手には毒キノコとカビが蔓延していた。猜疑心の強いキノコ獣人は、モグラ獣人の芝居を見通していたのだ。

自分を騙そうとしてカビを手に入れようとしたモグラ獣人にとどめを刺そうと襲いかかるキノコ獣人に、モグラ獣人は死を覚悟しながら、ただでは死なない決意で決死の抵抗を見せる。
だが、モグラ獣人は物陰から現れた黒ジューシャたちに取り押さえてしまい、身動きの取れないまま、ゲドン獣人とは格の違うガランダー獣人のパワーで痛めつけられる。
致命傷を負ったモグラ獣人に、キノコ獣人は確実に息の根を止めるべく人食いカビを噴射。
なんとかモグラ獣人は地中に逃亡したが、人食いカビは既にモグラ獣人の身体を侵していた。

モグラ獣人はカビを届けんとする強い意志で病院に辿り着くが、もはや虫の息だった。
モグラ獣人はまさひこに問いかける。
「まさひこ、モグラを尊敬するかい?」
まさひこはそれに頷き、りつ子もモグラ獣人の命をかけた頑張りを称賛する。
「ありがとう。初めて、褒めてくれたね…」
獣人の外見に生まれたことで、人間社会に溶け込めずに影からまさひこたちを眺めていたモグラ獣人にとって、人間であるまさひことりつ子姉弟からの称賛が、最大の喜びだった。

モグラ獣人が命をかけて運んだカビが採取され、医者の奮闘で解毒剤の作成が進められる。
そして、ついに解毒剤が完成した。モグラ獣人に解毒剤を飲ませようとするアマゾンだが、モグラ獣人はもはや解毒剤を飲んでも無駄であることを悟っていた。
人々を救う解毒剤の完成を見届け、多くの人々を救う自らの使命を成し遂げたモグラ獣人は、最後に、突き止めたキノコ獣人のアジトの場所をアマゾンに伝える。
自らの死を悲しむまさひこやりつ子に感謝を告げながら、ガランダー帝国を倒すことをアマゾンに託し、モグラ獣人は息絶えた。友を失ったアマゾンは哀しみを噛み締める。
ガランダー帝国への怒りを込めた咆哮とともに、アマゾンはアマゾンライダーに変身。
モグラ獣人が言い残したキノコ獣人のアジトの場所へジャングラーを飛ばす。

アジトに突入し、黒ジューシャを蹴散らしたアマゾンライダー。
キノコ獣人は一人でも東京カビ全滅作戦を実行しようと悪足掻きを見せ、アマゾンライダーに人食いカビを噴射するが、アマゾンライダーには通じない。
実は、キノコ獣人のカビはヴィールスに弱く、ヴィールス性の病気に罹患している者には無力だった。助かった赤ん坊は、あの時風邪を引いてヴィールスを有していたために無事だったのだ。
そして、その研究の結果、人食いカビの解毒剤も完成し、もはやキノコ獣人のカビは無力だった。
最大にして唯一の武器を無力化されたキノコ獣人は、アマゾンライダーの敵ではない。
モグラ獣人に代わり、キノコ獣人を倒す。
怒りのアマゾンライダーはモグラ獣人の名を叫び、弔いの大切断でキノコ獣人を倒した。
アマゾンライダーは、命を散らした友が見守る天へ向かい、勝利の雄叫びを上げる。
その雄叫びは、普段のような勇壮なものではなく、喪失の哀しみを宿したものだった。

モグラ獣人の墓で、アマゾンたちは在りし日のモグラ獣人を想い、涙していた。
臆病でも、勇気を奮い起こして巨悪と戦った彼の墓標には、その勇気を称える「勇気の士」の言葉が刻まれていた。友を失ったアマゾンは、友の墓標にゼロ大帝を倒す決意を誓うのだった。

「記憶こそが時間を作る」。
「仮面ライダー電王」で世界観の根幹となったこのフレーズは、後に所謂「オールライダー」映画で引用され、仮面ライダーが時代を超えて活躍する不滅の存在であることを示す概念となった。
すなわち、「仮面ライダー」というヒーローは、仮面ライダーを愛する者たちの記憶によってその存在を時を超えて確立し、現役のキャラクターであり続ける。
仮面ライダーを愛する者たちが、仮面ライダーのことを記憶し、仮面ライダーのことを愛し続けている限り、彼らは時を超えて不滅のヒーローとして、悪と戦い続けるのだ。

そう、「仮面ライダー」は不滅である。

「仮面ライダーV3」で劇的な最期を遂げたライダーマン=結城丈二は「仮面ライダー4号」であるがゆえに、仮面ライダーを愛する者たちの声援に応え、「5人ライダー対キングダーク」において復活を遂げた。「死んだと思ったライダーマンも、どっこい生きていた」のだ。
後に続くライダーたちも、作中で非業の死を遂げようとも、細かい設定上の不整合はあれど「オールライダー」映画に代表される全員集合作品や、〇〇年越しの続編で手を変え品を変え、仮面ライダーを愛する者の声援に支えられて蘇り、現役のキャラクターとして活躍する姿を見せている。

だが、モグラ獣人は、「仮面ライダー」ではない。

悪に生まれながら、ほんの少し臆病で、それゆえに死を恐れてアマゾンライダーから逃げ延びたことで運命が変わり、友のために、善を成すべく生き抜いた彼は、「同族殺し」の宿命も背負い、人間社会に溶け込めない「異形の哀しみ」も背負ったが、「仮面ライダー」ではない。
それゆえに、仮面ライダーを愛する者たちの声援が「仮面ライダー」を支え、彼らが不滅の存在であろうとも、モグラ獣人は蘇ることはない。
この回のモグラ獣人の喪失がひどく哀しいのは、彼が(「仮面ライダーSPIRITS」において獣人としての器が蘇っているのは承知の上で)映像作品で蘇る可能性が、ほぼ存在しないからだろう。
同様のポジションである「仮面ライダーストロンガー」の「電波人間タックル」も、「仮面ライダー」ではないが同列のヒーローだったこともあり、「仮面ライダーディケイド」の展開中で一度スポットを浴びている。だが、一怪人に過ぎないモグラ獣人が蘇ることは、今後もきっとない。

だからこそ、十面鬼による処刑から助けてくれた「トモダチ」のために協力することを誓い、時にゲドン獣人の脅迫に屈し、時にガランダー帝国の脅威に怯えながら、友のために、人のために、臆病でも一欠片の勇気を振り絞ってガランダー帝国に立ち向かった彼の、異形の怪人であっても善を成そうと生きる事が出来るという希望を示した生き様は、儚くも鮮烈なものとして「仮面ライダーアマゾン」というシリーズの歴史に何時までも刻まれている。

そして、「異形の哀しみ」を抱えながら、異形であっても善を成そうとしたモグラ獣人というキャラクターは、「仮面ライダー」シリーズの勘所を表現しきった、「仮面ライダーアマゾン」の原点回帰志向の現れでもあり、「アマゾン」ならではの名キャラクターだったことは間違いない。

安らかに眠れ、「勇気の士 モグラ獣人」…。

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