「バトルフィーバーJ」第49話「2年5組の反乱軍」感想

2024年5月22日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

バトルフィーバー隊によって、壊滅の危機に陥っているエゴス。
そこで彼らはハエジゴク怪人を生み出し、マサルが通う小学校に食虫植物として潜り込む。
そして、子供たちに悪の教育をしようとする。

エゴス教育が子供たちの良心を壊す 未来を担う子供たちの心を救え

毎回、バトルフィーバー隊に敗北を喫しているエゴスは、いつの間にやらエゴスの教義を布教する黒ミサの現場をも抑えられて、組織として風前の灯にまで追い込まれていた。
裏切り者までが続出するこの危機に、サタンエゴスは原点に帰り、子供たちの心にエゴスの思想を刻み込み、未来を担う子供たちをエゴスの信奉者に変えることで社会の掌握を目論む。

最終決戦も近づく中で、悪の組織が徐々にその勢いを失い、瓦解し始めているというのは、ドラマの構成として毎回敗北を喫する以上、その勢力が衰えるのが当然ではあるが、一方で最終決戦に向けて悪の組織に超強力な敵が加わり、ヒーローが危機に追い込まれる展開に慣れていると、エゴスの勢力が衰退し順当にバトルフィーバーが勝利を収めつつあるのがかえって新鮮な印象だ。

今回のエゴス怪人は食虫植物ハエジゴクの化身であるハエジゴク怪人。
食虫植物そのものに化ける能力を持つこの怪人は、食虫植物となってケイコ隊員の弟であるマサルの通う小学校に潜入し、マサルを始めとする2年5組の生徒からハエジゴク催眠で自我を奪い、そこにエゴスの思想を植え付けるエゴス教育を実行。
自分のやりたいことをしよう、平気でドンドン嘘をつこう、社会のルールを破ろうという、エゴス教育三か条を骨の髄まで叩き込まれたマサルたちは、連れたって非行行為に及び、注意されればその場しのぎの嘘で反省したフリをして大人を騙す、反社会的な行為を楽しむようになってしまう。

未来を担う子供たちから社会性を奪うエゴス教育の恐ろしさは、かつてエゴスのカラクリ怪人が怪人であると知っても友情を貫いたマサルの純粋さをも喪失させ、保護者である姉のケイコ隊員を平気で騙し、心中で嘲笑する醜い心の持ち主へと変貌させてしまうのだった。

バトルフィーバーに次々に怪人を打ち破られ、エゴスの教義を布教する黒ミサ会場をも破壊されたエゴスは勢力が大きく衰退しており、内部にも裏切り者が多く出ている風前の灯だった。
このままではエゴスの教義を布教する活動も困難になる一方であることを憂いたサタンエゴスは原点に帰り、子供にエゴス教育を骨の髄まで叩き込む活動を再開するように命ずる。
怪人製造機からハエジゴク怪人を誕生させたサタンエゴスは、ハエジゴク作戦を開始させる。
食虫植物ハエジゴクの姿に縮小したハエジゴク怪人は、マサルが通う小学校に潜入した。

サボテンの観察日記の当番が来たマサルは、サボテンの傍に見慣れぬハエジゴクを発見する。
ハエを捕食するハエジゴクに興味を示した子供たちは、先生から食虫植物の存在を教えられる。
匂いを出して虫を誘うハエジゴクの生態を教わった子供たちは、ハエジゴクの観察を開始。
ハエ取り粘着シートでハエを集め、ハエジゴクに与えてハエを捕食する様子を観察しようとしたその時、ハエジゴクから特殊な催眠波が放たれ、周囲にいた子供たちは自我を奪われた。
ハエジゴクはハエジゴク怪人に戻ると、ハエジゴク催眠で自我を奪われた子供たちに、エゴス教育を受けさせ、エゴスの教義を骨の髄まで叩き込もうとする。

自分のやりたいことをしよう、平気でドンドン嘘をつこう、社会のルールを破ろう。
反社会的なエゴスの教育を叩き込まれたマサルたちは、自転車で道路を暴走する。
パトロール中、信号無視をして自転車で暴走するマサルたちを見つけたケニアとフランスは注意するが、マサルたちは生意気な口を叩き反発。あまりの様子にケニアたちも言葉を失う。
教室に戻ったマサルたちは先生の授業を無視し、大声で歌い出すなど社会のルールを破壊する。

エゴス教育が成果を上げつつあることを確認していたハエジゴク怪人は、夜中に街を徘徊しているところをバトルフィーバー隊に発見され、パトロール中のケニアとフランスと交戦を開始する。
だが、ハエジゴク怪人はハエジゴクの姿に戻って逃亡し、学校に隠れる。
学校はエゴス教育を子供たちに植え付け、かつバトルフィーバーから隠れる絶好の隠れ家だった。

このところ様子がおかしく、授業を無視するわ、信号無視をするわと非行を働くマサル。
ケイコ隊員はそんなマサルを叱るが、マサルは言い訳ばかり重ねて聞く耳を持たない。
明らかに様子がおかしいマサルを心配するケイコ隊員だが、突然マサルは塾に行ってたくさん勉強し、将来姉への恩を返すので、もう少しだけ面倒を見てほしいと言い出した。
姉を思う弟の言葉にケイコ隊員は感動するが、もちろんそれは、エゴスの教育で嘘を重ねるようになったマサルの嘘だった。まんまと騙される姉を、マサルは心中で嘲笑する。
エゴス教育は、マサルを人を騙して嘲笑う醜い心の持ち主へと変えてしまったのだ。

マサルたちはバス停にバスが停まらないと嘘の張り紙をしてバスに乗ろうとする乗客を帰らせ、自分たちはバスに乗り込んで車内で暴れ始める。さらに、大人たちに嘘をついてせしめたお金で、学校にも行かずに買い食いをし、ゲームセンターでゲームをすると非行を重ねる。
だが、保護者無しでゲームセンターに立ち入ったことで、店主に通報されてしまった。

通報を受け、マサルの保護者としてゲームセンターに駆けつけたコサックとマリアに、マサルはその場しのぎの涙を流しながら土下座し、姉には非行を話さないように懇願する。
ひとまずはその場を収めたコサックは、寄り道せずに帰宅するように促した。
だが、マサルの懇願は所詮その場しのぎの嘘に過ぎず、子供たちはその後も帰宅せずに非行を重ねており、その様子を見かねたコサックとマリアは、マサルの非行をケイコ隊員に伝える。
話を聞いたジャパンは、マサルがそんな性格ではなかったことを訝しんでいた。
あまりに度を越した非行を重ねるマサルの行いを知ったケイコ隊員は、保護者である自分がバトルフィーバー隊の仕事で家を留守にすることが多いせいでマサルが歪んだのだと悲しむ。

ジャパンの勧めでしばらくの間マサルの様子を見張ることにしたケイコ隊員だが、マサルは姉の尾行を見越して、仲間たちと共に街の掃除や下級生の世話などの善行を行うフリをして取り繕う。
そして、大人が見ていないところでは下級生をいじめるという非行を重ねていた。
その様子を監視していたエゴスの手先は、ハエジゴク怪人によって子供たちの心にエゴスの教育が骨の髄まで叩き込まれたことに満足するのだった。

ハエジゴク怪人は、マサルたちに時限爆弾を作らせて街中を爆破する作戦を目論んでいた。
エゴス教育によって子供たちの心を歪ませただけでなく、爆弾犯人として使い捨て、未来を担う子供たちを罪人に変えて未来を奪おうとする邪悪な計画が進行しようとしていたのだ。
教室にマサルたちの姿がないことを不審に思った先生は、ケイコ隊員たちに連絡し、マサルたちを探し始める。学校を捜索したケイコ隊員たちは、ついにマサルたちによって時限爆弾が作られている現場を目撃するが、ドアの陰に隠れていたハエジゴク怪人に捕まってしまった。
ケイコ隊員は密かに通信機のスイッチを押すが、ハエジゴク怪人に見つかり通信機を奪われる。
エゴス教育を叩き込まれたマサルは、危機に陥る姉には目もくれず爆弾を作り続けるのだった。

一瞬だけ発信されたケイコ隊員の通信機の反応を追い小学校に急行したケニアとフランスは、行方が知れないマサルの自転車が小学校の駐輪場に停めてあったことに気づく。
その頃、ついにマサルたちによって時限爆弾が完成してしまった。
ハエジゴク怪人の指示で、マサルはケイコ隊員たちが縛られた柱に爆弾を仕掛けてしまう。
姉をマサルの手で殺させようとする、まさに外道としか言いようがない振る舞いだ。

ハエジゴク怪人は、子供たちを率いて街中に爆弾を仕掛けようとする。だがその前に、フランスたちからの連絡を受けて小学校付近を捜索していたバトルフィーバーが現れた。
バトルフィーバーはハエジゴク怪人を取り囲み攻めるが、アメリカが反撃でダメージを負う。
そこで、ジャパンたちは負傷したアメリカにケイコ隊員たちやマサルたちの捜索を託し、なおも街中を爆破しようと逃亡するハエジゴク怪人を追跡する。

刻一刻と時限爆弾の爆発が迫る。
アメリカは懸命にマサルたちやケイコ隊員たちを探すが、なかなか見つからない。
一方、ハエジゴク怪人はトゲ爆弾を飛ばしてバトルフィーバーに反撃。さらに、ハエジゴクに縮小することでバトルフィーバーの攻撃を躱し、バトルフィーバーを苦戦させていた。
だが、アメリカはなんとかケイコ隊員たちを発見して時限爆弾を解除することに成功。
マサルたちがなおも行方を眩ませる中、アメリカが合流し5人揃ったバトルフィーバーは先にハエジゴク怪人を始末するべく、ペンタフォースを炸裂させて怪人を撃破する。
だが、間髪入れずにハエジゴクロボットが現れ、鉄山将軍の操作でバトルシャークが発進。
バトルシャークから現れたバトルフィーバーロボは、バトルシールドでハエジゴクロボットの攻撃を凌ぎ、反撃の電光剣唐竹割りでハエジゴクロボットを一刀両断する。
そして、エゴスの教育を受けたマサルたちもハエジゴク催眠が解け、正気を取り戻すのだった。

時限爆弾を作っただけでなく、姉を殺しかけたマサルだが、エゴスに操られている間の記憶はなかった。ジャパンはあえてマサルたちにその真実を伝えず、エゴスに利用され、姉や周囲の大人たちを傷つけたマサルたちの心に罪悪感を残さないように配慮するのだった。
こうして、危機一髪、エゴス教育を叩き込まれ悪に染まろうとしていたマサルたちは救われた。
自分の快楽のため周囲を傷つけることを由とする、エゴスの甘い言葉に惑わされてはいけない。

エゴス教育によって社会性を損なわれた子供たちの描写は非常にリアリティがあり、自分たちが過ちを犯しても保護される子供であることを自覚し、非行を重ねて大人に叱責されればその場しのぎの嘘で反省したフリをし、涙すら流してみせる描写は胸が痛む。
子供が子供であることを積極的に利用して社会の治安を乱す行為を楽しみ、叱責する大人を騙して心中で嘲笑する醜悪さの描写の解像度が高く、別作品だが「ウルトラマンA」第3話「燃えろ!超獣地獄」の「子供の心が純真だと思うのは人間だけだ」という台詞を思い出してしまう。
子供は大人が思うより遥かに大人で、大人の顔色を窺って立ち回り、保身のための嘘が通じる相手には平然と嘘をつき、その場を取り繕って生きる。
だからこそ、大人は子供の将来を思うならば本気で子供を叱らなくてはならない。
保身のための嘘は、本当に大人になって社会に出た時に、到底通じるものではないのだから。

だが、エゴス教育によって心を歪ませられたマサルは、本気でマサルを心配して叱るケイコ隊員に平然と嘘をつかせ、心中で嘲笑するまでに醜悪な心を植え付けられた。
そうしてエゴス教育で社会性を奪われた子供たちが成長し、社会に出た時、それは人が自分の保身のために嘘をつき、騙された相手を嘲笑する地獄のような社会が成立することでもある。
バトルフィーバーの活躍でそんな未来は粉砕され、マサルたちも正気に戻った。
あえてエゴス教育で非行を重ねたことを隠し、子供たちの心に罪悪感を残さないように配慮したジャパンの優しさが、いつか子供たちにも受け継がれ、優しい未来を作ることを願いたい。

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