あらすじ
多くの人間を恨む少年・井川卓郎。エゴスはそんな彼に呪いの藁人形を与える。
卓郎が藁人形に釘を打つと、ノロイ怪人が誕生。
卓郎はノロイ怪人と共に、ユキとトモコをはじめ、さまざまな人々に呪いをかける。
愛を知らない少年の、世界を呪う哀しい叫び
バトルフィーバー隊連絡員のトモコ隊員の妹、ユキに好意を抱きながら、自分の考えを上手く伝えることが出来ず付き纏って不快感を抱かせてしまい、冷たい態度を取られたことで逆恨み、紙人形に釘を打ち込んでユキとトモコ隊員を呪っていた孤独な少年、井川卓郎。
もう少し年を取っていればユキのストーカーになっていたであろう卓郎の、好意を寄せた相手に受け入れられない孤独と自分を受け入れない世界を呪う精神性に目をつけたエゴスが、その怨念を力にして誕生させたのが今回のエゴス怪人であるノロイ怪人だ。
サタンエゴスが怪人製造機から生んだ藁人形に、卓郎が五寸釘を打ち込んで誕生したノロイ怪人は、自分の体を痛めつけることで卓郎が呪おうとした相手にその痛みを転嫁する呪いをかける能力を持ち、卓郎が恨むユキとトモコ隊員、学校の先生や母親、そしてケニアに呪いをかける。
人の心の暗部を利用して力とするという点では、最もエゴスらしいエゴス怪人だ。
サタンエゴスは怪人製造機から藁人形を生み出した。
その藁人形は呪いの釘を打ち込まれた時、怪人となって世界に呪いをもたらすのだという。
その頃、一人の少年が紙人形に呪いを込めながら釘を打ち込んでいた。
そこに、サロメが現れ、サタンエゴスが生み出した藁人形を手渡す。
少年が異様な怨念を込め藁人形に五寸釘を打ち込むと、それによりノロイ怪人が誕生した。
ノロイ怪人は、少年が呪いたい相手に呪いをかけてやることを請け負うと、少年はバトルフィーバー隊連絡員のトモコ隊員と、その妹のユキに呪いをかけるように頼んできた。
ノロイ怪人は、自分の胸に打ち込まれている釘を、さらに自分の体内に深く打ち込むことで、その痛みを呪いたい相手に転嫁する呪いをかけることが可能だった。
ノロイ怪人によって呪いをかけられたトモコ隊員とユキは苦しみ、ノロイ怪人はヘッダー指揮官にも釘を打ち込ませ、トモコ隊員とユキに呪いをかけ続けるのだった。
仕事を休んだトモコ隊員を心配して、マリアとケイコ隊員がトモコ隊員の家を訪ねた。
ノロイ怪人の呪いと、無言電話の恐怖でトモコ隊員とユキはノイローゼになっていた。
するとそこに電話がかかってきて、トモコ隊員とユキは怯えて布団に潜り込む。
だが、それはビッグベイザーへの出勤を命ずるロボット九官鳥の電話だった。
マリアから電話で一連の事情を聞いたジャパンは、無言電話の主を突き止めるため一計を案じる。
ジャパンの発案で、逆探知装置をトモコ隊員の家の電話に取り付けたケニアは、かかってきた電話を逆探知して無言電話の主のもとに辿り着く。
公衆電話から無言電話をしてきたのは、ノロイ怪人を生み出したユキの同級生、井川卓郎だった。
無言電話でユキたちに嫌がらせをしていたことがバレた卓郎は先生や母親、ケニアに叱られる。
だが、卓郎は自分を叱った面々を午後3時に呪ってやると言い残し、どこかに消えてしまった。
そして午後3時、卓郎の依頼を受けたノロイ怪人が自分の体をロープでカットマンたちに締め上げさせ、ケニアに金縛りの呪いをかけ始める。身動きが取れないケニアが苦しむ中、白装束に身を包んだ井川が現れ、周囲の人々への呪詛を叫びながら街中を走り始めた。
そして、ノロイ怪人が自分の体を鞭で打たせれば、その痛みが呪いで母親や先生に通じる。
ケニアが金縛りにあったことを知ったジャパンは、卓郎の呪いの裏にエゴスの陰謀を察知する。
卓郎の呪いは小学校で評判になり、卓郎のもとには叱られた恨みを晴らそうと母親を呪おうとする少年、バレエで主役の座を奪われた妬みを晴らそうとする少女など、呪いの注文が殺到していた。
サタンエゴスはこうして人々の呪いを浮き彫りにさせ、社会を混乱させようとしていたのだ。
卓郎は呪いをやめさせようとする母親や先生を、さらなる呪いをかけることをちらつかせて脅す。するとそこにユキが声をかけ、卓郎はバツが悪そうに走り去ってしまう。
卓郎はユキのことが好きだったようで、以前、ユキを一方的に付け回していた。
その時、ユキに冷たい態度を取られたことで、卓郎が歪んだのではないかとユキは心配していた。
卓郎は集めてきた呪いの依頼をサロメに手渡すが、そこにバトルフィーバーが現れた。
エゴスの陰謀を看破したバトルフィーバーの前に、ノロイ怪人たちが現れる。
カットマンたちと戦うバトルフィーバーにノロイ怪人は呪いをかけ、ノロイ怪人のノロイが引き起こす頭痛に苦しむバトルフィーバーはまともにエゴスと戦えない。
そしてサロメは3日後にバトルフィーバーが死ぬと死の宣告を行った。
ノロイ怪人は、バトルフィーバーに三日殺しの呪いをかけたのだ。
ノロイ怪人がバトルフィーバーに呪いをかけた現場を目撃した卓郎は、バトルフィーバーが3日後に死ぬと叫んで街中を走り回り、自分の呪いの恐ろしさを触れ回る。
だが、卓郎がバトルフィーバーを呪い殺すと思った子供たちは、卓郎を追い回して責め立てる。
卓郎はみんなさっきまで自分が憎い相手を呪ってほしいと頼んでいたくせにと悪態をつくが、卓郎がみんなの憧れのバトルフィーバーを呪い殺そうとしていると思った子供たちは卓郎を許さない。
だがそこにバトルフィーバーが現れ、卓郎にはそんな呪いをかける力はないのだと卓郎を弁護し、自分たちはそんな呪いやエゴスには絶対負けないと勝利を誓って子供たちを励ます。
子供たちに強く生きてほしいと願いを託す歌詞の「明日の戦士たち」が流れるのが、場面と選曲がベストマッチしていて素晴らしい演出だ。
そして、孤独や、ユキの愛を得られなかったことで歪んだ卓郎の心を救うために、卓郎と友達になってほしいと頼む。だが、呪いの恐ろしさを触れ回り、人を呪うことでしか他人とコミュニケーションがとれない卓郎と友達になろうとするものはいなかった。
すると卓郎はどうせ自分は嫌われ者だと拗ね始め、自分の考えを上手く話せないせいで嫌われ、好きで嫌われ者になったわけではない、本当は友達が欲しいとようやく本心を話す。
卓郎が呪いの恐ろしさを触れ回るのも他人から注目を浴びるため、他人の呪いを請け負ったのも、そうでもしなければ他人と会話する機会もないがゆえの行動だった。
卓郎の行いはもちろん褒められたことではないのだが、過激なことを言って周囲の注目を集めなくては他人とコミュニケーションを取れない人間など、令和の時代のSNSには山ほどいる。
上手くコミュニケーションが取れないことで悩む卓郎の苦悩は、極めて現代的なテーマだ。
そこにユキが現れ、初めて友達が欲しいと本心を話した卓郎を許し、友人になるのだった。
卓郎はようやく改心し、これからはいじけたり他人を逆恨みで呪わないと約束する。
現代的な目線で見ると、以前はつけ回され、逆恨みまでされていた卓郎を許すユキが、ストーカー被害を許して大丈夫か?ともなるが、まあ卓郎もまだ小学生なので更生の余地があるから…。
こうして卓郎の心は救われたが、教師たちがノロイ怪人の呪いで苦しみ始めた。
バトルフィーバーは呪いの源を絶つためにノロイ怪人を見つけ、決戦が始まる。
しかし、ノロイ怪人が胸の五寸釘を打ち込むと、呪いによってその痛みがバトルフィーバーに転嫁。頭痛を引き起こされたバトルフィーバーはまともに戦えないままいたぶられる。
だが、起死回生のケニアの投げ縄がノロイ怪人の胸五寸釘を捉え、そのロープを掴んだバトルフィーバーによって五寸釘を引き抜かれたノロイ怪人は呪いを無効化され、ペンタフォースで敗れる。
しかし、その呪いを受け継ぐようにノロイロボットが雷鳴とともに現れた。
バトルシャークが発進し、バトルフィーバーロボが地上に降り立つ。
巨大な釘と木槌で攻めるノロイロボットは、周囲を闇に包みバトルフィーバーロボを幻惑、その隙に木槌の一撃を叩き込むが、バトルフィーバーロボの反撃で釘を奪われると、逆に釘を投げつけられ致命傷を負った。そこに電光剣唐竹割りが炸裂。バトルフィーバーの勝利だ。
卓郎とユキは時間も忘れて遊ぶほどに打ち解けた。
バトルフィーバーの活躍で、恐怖のノロイ怪人は滅び、一人の孤独な少年の心は救われた。
だが、エゴスは人間を呪い続けるだろう。戦え!バトルフィーバー!
今回、効果的に使われた楽曲の「明日の戦士たち」に、「人の心を汚す悪魔」というフレーズがあるが、今回のエゴスはまさにそれを地で行く策謀を企てた。
自分の考えを上手く伝えられないもどかしさを、他人や世界を呪うことにつなげてしまった少年に、その呪いを具現化する術を与えて世界を呪う心を増幅し、さらにそれが他の子供達にも広がっていき、憎い相手を呪う心を社会に蔓延させることがサタンエゴスの狙い。
自分が好きな相手に好かれないもどかしさ、悔しさを逆恨みに変え、好きだったはずの相手を呪い始めた卓郎の姿は、そうでもしなければ好きな相手に向き合ってもらえない悲哀を感じさせる。
そんな卓郎の呪いが生んだノロイ怪人により、バトルフィーバーに呪いがかけられたことで、子供たちはノロイ怪人の呪いの根源である卓郎を恨むが、バトルフィーバーは大人として未来ある子供の卓郎が更生することを信じ、卓郎を弁護し、さらに卓郎を受け入れて友達になってあげてほしいと願う大人としての姿勢が印象的なエピソードでもある。
「子供の心が純粋だと思うのは人間だけ」であり、子供が必ず善良な心を持っているわけでもないが、しかし子供には未来があり、自分の過ちを認め改心する余地が無限にある。
そんな子供たちの無限の未来を守るために、バトルフィーバーは戦うのだ。