あらすじ
スナックケニアの草野球チームのピッチャー・堀内豊が、時速200kmの球を投げるようになった。
バトルフィーバー隊はその真相を確かめることになる。
それはエゴスのヒダリテ怪人による計画の一つだった。
偽りの超能力を粉砕する、人間の精神力が成す真の力
今回のエゴス怪人は、左手そのものがモチーフであるヒダリテ怪人。
さすがに「超人バロム・1」のドルゲ人体魔人、ウデゲルゲの左手がそのまま上半身に配置されたようなグロテスクさは控えめで、大きな目で愛嬌を出そうとしている感じはあるが、それでも4本の指が怪人の身体を握りしめているようなデザインはなかなかの生理的嫌悪感だ。
その4本の指の爪が全てマニキュアを塗っていて赤いのも面白い。
また、マリアの手の柔らかさに狼狽するなど、手の化身だけあって女性の手が好きなようだ。
そんなヒダリテ怪人の狙いは、世界平和会議に出席する平和活動運動家を抹殺するために、世界平和会議記念で開催されるスポーツ大会に参加する左利きの選手に超能力を与え、同時にマインドコントロールして意のままに動く「左手族」へと変貌させる。
そして、左手族が超能力によって獲得した、世界記録を遥かに超える遠投力によって槍投げの槍や砲丸投げの砲丸、野球のボールなどを観客席に向けて投げさせ、スポーツ大会を観戦する平和活動運動家に直撃させることで事故に見せかけて抹殺し、平和活動運動家を一掃することである。
しかし今回の話の本質は、ヒダリテ怪人によって左手族にされた若者が、本来の実力を逸脱した能力を得て増長し、虚栄心に支配され、スポーツを愛し努力する心を失ってしまうことにある。
今回のエピソードのメインゲストであるスナックケニアの草野球チームのピッチャー、堀内豊は、球速が遅くいまひとつ頼りにならないピッチャーだったが、愛する野球を楽しむ心を持っていた。
しかし、ヒダリテ怪人によって左手族にされたことで、時速200kmの剛速球を投げる超能力を得てしまい、周囲からもその能力を称賛された結果、自身の努力ではない力によって称賛されることに溺れ、周囲からの承認欲求を満たすために野球をする人間となってしまう。
その能力がエゴスによって与えられた偽りの力であっても、手に入れた栄光を手放せない豊の目を覚ますため、マリアが奮闘。自身の力で豊の剛速球を打ち返し、自分の努力で身につけたわけではない力に溺れる愚かさを説こうとするのが今回の主軸となる流れである。
スナックケニアの草野球チームのピッチャー、堀内豊が、突然剛速球を連発するようになった。
時速200kmの剛速球に、キャッチャーを務めていたケニアも驚愕。
ケイコ隊員やフランス、マリアも豊の剛速球を絶賛し、豊の弟妹も兄の力に笑顔を見せる。
だが、豊は何故そんな剛速球が投げられるようになったか、自分でもわからなかった。
豊は日中働いていて練習する時間もない以上、秘めた実力が開花したのだと増長する。
ビッグベイザーに戻ったケニアやフランス、マリアは、ジャパンとコサックに豊が投げる豪速球の凄さを話していた。そこに、鉄山将軍が久々に姿を見せた。
以前ロボット九官鳥が話していた通り、各地での会議の出席で忙しいようだ。
鉄山将軍によれば、世界各地で、様々な競技に参加する若者が、世界記録を遥かに超える遠投記録を叩き出すという異常事態が続出しているのだという。
豊も含めた、異常記録を叩き出した若者に共通した特徴は、みんな左利きということだった。
コサックはこの異常事態にエゴスの影を感じ、バトルフィーバーは調査を開始するのだった。
マリアは豊に剛速球を投げられるようになった秘密を聞き出そうとするが、豊は豪速球を投げることが出来る自分の才能が嘘だと疑われてカッとなり、マリアの頬を叩いてしまう。
我に返った豊が左の掌を見ると、そこにはエゴスのシンボルである赤い×印が浮かんでいた。
豊の弟妹は、兄の非礼をマリアに謝る。マリアが豊の異変の理由を弟妹に聞くと、妹は豊にゲームセンターに連れて行ってもらった際、左利き用の腕相撲マシンで遊んだことを思い出すのだった。
ゲームセンターに案内されたマリアは、豊が遊んだ左利き用の腕相撲マシンを調べ始めた。
案の定、その腕相撲マシンはエゴスが作ったものだった。
隠しカメラで密かに腕相撲マシンを監視していたヘッダー指揮官は、マリア=ミスアメリカに秘密を勘付かれたかと警戒するが、サロメは逆にマリアを「左手族」にするチャンスと判断。
腕相撲マシンの中には、エゴス怪人のヒダリテ怪人が入っており、腕相撲マシンで遊んだ者はヒダリテ怪人に左手を握られ「左手族」に変えられ、驚異的な遠投力を得ていたのだ。
マリアが腕相撲マシンの腕=ヒダリテ怪人の腕を握ると、ヒダリテ怪人はその感触の柔らかさに惑わされ、あっさりと腕相撲で敗北する。
豊の弟妹も不審に思う中、慌てたエゴスの手先が腕相撲マシンを撤収してしまった。
撤収するトラックの中で、さっきの醜態をサロメに問いただされたヒダリテ怪人は、マリアの手の柔らかさにスケベ心を出したことを白状して呆れられる。
一方、タクシーでトラックを追ったマリアは、腕相撲マシンが荒野のど真ん中で無造作に横倒しにされているのを発見、接近するが、突然腕相撲マシンが爆発する。ヒダリテ怪人はミスアメリカを始末したと喜ぶが、マリアは罠と察知しており、強化服を纏って無事だった。
ミスアメリカ抹殺に失敗したヒダリテ怪人はカットマンを呼び出した。
ミスアメリカがカットマンと戦っている間に、ヒダリテ怪人は先端に拳が付いた杖を地面に打ち立て、局地的な地震を起こす。揺れによって態勢を崩したミスアメリカに、カットマンたちの襲撃が次々に炸裂し、危機に陥るミスアメリカ。
だが、間一髪バトルフィーバーたちが助けに現れ、不利を悟ったヒダリテ怪人たちは撤退する。
バトルフィーバーの調査で、驚異的な遠投記録を叩き出した人々は、みんな豊と同じく左利き用の腕相撲マシンで遊んでおり、ヒダリテ怪人によって左手族にされていたことが判明した。
だが、エゴスが若者たちを左手族にしたその目的は、未だ不明である。
深夜、エゴスのアジトでは、ヒダリテ怪人が機械を操作し左手族の人々に信号を送っていた。
左手族にされた若者たちは、みんな平和会議開催記念スポーツ大会に出場することが決まっていた。その一人である豊の元にも信号が送られ、左手に刻まれた赤い×の刻印が光りだし、ヒダリテ怪人からの「明日集合」というメッセージが受診された。
そのメッセージを目撃した豊の弟妹から情報を得たマリアを通して、バトルフィーバーはエゴスの狙いが世界平和会議記念スポーツ大会であることを掴む。
鉄山将軍は超能力スポーツマンに変わった若者たちを尾行し、その目的を掴むように命ずる。
槍投げの練習に励む若者の驚異的な遠投力を見ていたコサックは、その槍が観客席に向けられて投げられる可能性に気づく。すると、本当に槍がコサックめがけて飛んできた。
間一髪、コサックは槍を躱すが、槍投げの選手に撒かれてしまう。
同じ頃、砲丸投げの選手を監視していたコサックも、遠投された砲丸を投げつけられる。
こうして、バトルフィーバーはみんな尾行に失敗してしまった。
一方、豊を尾行していたマリアは、ケニアと合流。
ケニアは世界平和会議に出席する平和活動運動家を狙うことがエゴスの目的と推理し、豊を追う。
こうして、左手族にされた各界のスポーツ選手がプールに集められ、ヒダリテ怪人にターゲットとなる平和活動運動家の指示を受けていた。ヘッダー指揮官からその報告を受けたサタンエゴスは、平和活動運動家を一掃して世界征服を容易にする目的を語る。
一方、ヒダリテ怪人の元へ向かう豊を、弟妹が引き止めた。
見かねたマリアも、豊の左手の超能力はエゴスが与えたものなのだと説得する。
それでも自身の剛速球を誇り、世間に認められようとする豊だが、弟妹は昔の兄に戻ってほしいと懇願する。今の豊は、降って湧いた超能力に溺れ、虚栄心を満たすことしか頭になかった。
自身の剛速球を盲信する豊の目を覚ますために、マリアは剛速球を打ってみせると宣言。
エゴスに与えられた偽りの力を、実力で粉砕することで豊の目を覚まさせようとしたのだ。
そして、自分が豊と勝負することで、エゴスを引きずり出すこともマリアの目的だった。
それでも、時速200kmもの剛速球を打つのは無理だと忠告する仲間たちに、マリアは「精神一到何事か成らざらん」と、念じることで成し遂げる決意を語る。
そこに現れた鉄山将軍はマリアの心意気を認め、将軍自ら訓練を開始する。
バッティングの道は剣に通じると語る鉄山将軍は、極意を伝授すべく、自ら電光剣唐竹割りを見せる。その太刀筋に、マリアは極意を掴むのだった。
豊とマリアの勝負が始まった。その様子は密かにヒダリテ怪人に監視されていた。
剛速球でミスアメリカを血祭りに上げようとするヒダリテ怪人。
豊は投球姿勢に入る前に、自身の掌にエゴスの赤い×印が浮かんでいることに気づく。
だが、もはや勝負は止められない。
渾身の力を込めた豊の剛速球を、マリアは電光剣唐竹割りの極意で打ち返した。
自身の力が偽りの力に過ぎず、精神力が成す本当の力には通じないことを悟り、落ち込む豊。
そこに、マリアが打ち返したボールが頭部に直撃したヒダリテ怪人が怒りのまま現れた。
ケニアとマリアは豊を逃がし、バトルフィーバーも集合。一大決戦が幕を開けた。
ヒダリテ怪人が杖を地面に突き立てることで起きる地震に苦戦しながらも、バトルフィーバーは素早い連携攻撃で取り囲み、ヒダリテ怪人を追い詰める。
窮地に陥ったヒダリテ怪人はヒダリテロボットを呼び出すが、バトルフィーバーはまずペンタフォースでヒダリテ怪人を排除。そしてバトルシャークが発進。
バトルフィーバーロボが出撃し、大地を揺らし暴れるヒダリテロボットの前に立ちはだかった。
バトルフィーバーロボとヒダリテロボットは武器で激しく打ち合い、バトルフィーバーロボは倒れたヒダリテロボットのつま先を踏み、起き上がり小法師のように何度も起き上がらせ一方的に攻撃を叩き込む。そして、電光剣唐竹割りの一撃で勝利した。
エゴス怪人が滅び、左手族にされた人々の超能力は消え、再びスポーツ好きの若者に戻った。
下手の横好きレベルの腕前に戻った豊だが、その表情は活き活きとしていた。
たとえ下手でも、スポーツを愛して楽しみ、自分の実力で懸命に励むことが大切なのだ。
人々に安易な超能力を与え、努力する心を失わせ、スポーツを愛する心を汚そうとしただけでなく、愛するスポーツで人を殺めさせようとしたエゴスの陰謀は、こうして粉砕されたのである。
エゴスの作戦は、人の弱い心に付け込むものが多い。
今回の作戦は、スポーツをする者なら誰もが思ってしまう、自分には天性の才能が秘められていて、ある日突然それが開花しスーパースターになってしまうという甘い夢を叶えるものだった。
だが、世の中に、そんなに上手い話はない。
天性の才能を持つ者も、影では血の滲むような努力を重ねて、自分の才能を引き出している。
そんな努力もなしに、世界記録を遥かに超える実力を手に入れてしまえば、そんな力が悪魔にもたらされたものと知っても、手放すことは無理というものだ。
ヒダリテ怪人は、スポーツを愛する若者たちの、好きなスポーツを上達させたいという努力へ向かう一途な心を汚す非道を行った。「人の心を汚す悪魔」の上手い話によって、人々を自分たちと同じ悪魔に変えようとするエゴスの魔手を、我々は許してはいけない。