「バトルフィーバーJ」第52話「英雄たちの交響曲(シンフォニー)」感想

2024年5月29日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ついに、エゴスの総攻撃が始まった。
対するバトルフィーバーも、最後の力を振り絞りエゴスに応戦する。
バトルフィーバーが勝つか、エゴスが天下を取るか。
死闘のさなか、サロメの裏切りによって、バトルフィーバー隊はエゴスの基地へと突入する。
しかし、それはエゴスが仕掛けた罠だった。
いよいよサタンエゴスと対面したバトルフィーバー隊は、怪人製造機に吸い込まれ…。

鉄の意志と団結のスクラムが呼ぶ最後の勝利 勝利の交響曲が鳴り響く

ついに、バトルフィーバーとエゴスの最終決戦の時が来た。
サタンエゴスの声に応え、これまでエゴス怪人を生み出す生体メカだと思われてきた怪人製造機(怪人製造カプセル)が、意思を持って話し、自在に動く最強最後の怪物であることが判明。
サタンエゴスは逆転の一手として、バトルフィーバーをあえてエゴスの本拠地に誘き寄せ、バトルフィーバーを怪人製造カプセルに吸収させることで、強靭な意志と肉体を併せ持つバトルフィーバーの染色体から最強の怪人、バトルフィーバー怪人を生み出すことを画策。
熱エネルギーを吸収することで、外部からの攻撃はたとえミサイルであっても通じない怪人製造カプセルと、ついにその正体を現したサタンエゴスとの死闘が繰り広げられることになる。

サタンエゴスはこのバトルフィーバー怪人製造という最後の作戦のため、バトルフィーバーをエゴス本拠地まで誘き寄せるためのブラフとして、大地震発生装置による関東沈没作戦を実行すると同時に、サロメにエゴスを裏切ったフリをさせ、エゴス本拠地の情報をリークさせている。
地震発生装置による小規模の地震を頻発させ、それに合わせてわざと正体が露見する変装をしたサロメがエゴスの本拠地と地震発生装置の情報をリークすることで、サロメが壊滅しつつあるエゴスを裏切り、保身のため地震発生装置の情報をもたらしたのだとバトルフィーバーに信じさせる。
サロメのもたらした情報によって、バトルフィーバーはついにエゴス本拠地へ誘き寄せられてしまい、そこでサタンエゴスや怪人製造カプセルと相対することになるのだった。

数々の御子やヘッダー指揮官をも倒されたサタンエゴスは、ついに最後の総攻撃を実行する。
サタンエゴスの声に応えるように怪人製造機が突然言葉を発し、最終決戦へ向けて武者震いする。
ついに、エゴスの総反撃が開始され、カットマンたちがマグニチュード8.5の地震を起こす装置を起動させる一方、サロメはカットマンが持ってきた何者かの写真を確認していた。

その頃、下校中のマサルたちは傷ついた鳩が地面に落ち、誰も乗っていない車が猛スピードで逆走し、坂を登っていく異常現象を目撃。そして、バトルフィーバーも日本各地で海底の隆起を観測しており、大噴火・大地震が起こる前兆ではないかと疑っていた。
そこに、先程の異常事態を伝えるマサルからの電話が入る。
無人の車が逆走するという異変に、鉄山将軍はフランスとケニアを調査に向かわせる。
そして、前日より105回目の地震が起こる。何かが日本に起ころうとしていた。

車が逆走した坂で、フランスはマサルの話を聞いていた。
その眼の前で、ケニアがまたがっていたバイクがひとりでに逆走を始めてしまう。
電柱にぶつかったケニアは、この異変も大地震の前兆ではないかと疑っていた。
そこに、探偵を名乗る女性、一乗寺綾子が声をかけてきた。
一乗寺綾子は、大事な要件があってバトルフィーバーの責任者に会いたいのだという。

ジャパンが一乗寺綾子と接触することになり、陰からフランスとケニアが密かにジャパンを護衛する中、待ち合わせ場所の公衆電話にかかってきた電話から指示を受け、次の待ち合わせ場所に向かったジャパンは一乗寺綾子と接触する。コサックは密かに一乗寺綾子の顔写真を撮影していた。
一乗寺綾子はエゴス本部や地震発生装置の写真を見せ、これらの情報を一億円で買うように要求。
何故一介の探偵がこのような情報を掴んでいるのか、不審に思ったジャパンは即答を控える。
だが、一乗寺綾子は現金と引換にエゴス本部の地図を渡すと言い残し、去っていった。

フランスとケニアは一乗寺綾子の乗った車の後を尾行する一方、ビッグベイザーではコサックが密かに撮影した一乗寺綾子の写真を照合し、一乗寺綾子の正体がサロメであることを掴む。
そして、鉄山将軍の調査で一乗寺綾子=サロメが残したエゴスの本部の写真は、紛れもなく本物であることが証明され、サロメがエゴス本拠地の情報を漏らしていることがわかった。
フランスたちの報告で、サロメが空港で南米への切符を購入したことを知ったジャパンたちは、サロメが壊滅しつつあるエゴスを裏切り、南米へ高跳びしようとしているのではないかと推測。
そこに200回目の地震が起こり、サロメの情報通りなら大地震発生の日も近いことに一同は戦慄。
バトルフィーバーはエゴスの地震発生装置の破壊のために、サロメとの取引を決断する。

ジャパンたちが取引場所に向かう中、サロメが運転する車がカットマンたちの銃撃を受けた。
尾行していたケニアとフランスは強化服を纏いカットマンを蹴散らすと、銃弾を受け気を失ったサロメの変装を暴き、一乗寺綾子がサロメの変装だったことを実証する。
病院に運び込まれたサロメは一命をとりとめたが、所持品からはエゴス本部の地図らしきものは発見できなかった。エゴス本拠地の情報はサロメの嘘だったのか?
意識を取り戻したサロメに、ジャパンは何故エゴスを裏切ったかを尋問する。

尋問に応じたサロメは、死にたくない一心で、保身のためエゴスを裏切ったと弁明し、エゴスがマグニチュード8.5の大地震によって関東一帯を海中に沈める計画を進めていることを話す。
サタンエゴスエネルギーで動く地震発生装置が起動すれば、関東は沈没する。
地震発生装置破壊のため、ジャパンはサロメに、南米までの身の安全を保証する代わりにエゴス本部の地図を渡すように取引を持ちかける。取引に応じたサロメは、自身の口腔からエゴス本部の地図が転写されたマイクロフィルムの入ったカプセルを取り出すのだった。

こうして、エゴス司令部の地図を得たバトルフィーバーはついにエゴス本部へ向かった。
警備にあたっていたカットマンを蹴散らし、エゴス本部へ繋がる洞窟内部へ突入したバトルフィーバーは、怪しげな装置の音を聞き、音のする方へ突入していく。
行き止まりの壁をコマンドバットで破壊し、エゴス本部へ通じる道を切り開いたバトルフィーバーは、ついにエゴス本部へ突入し、サタンエゴスと対面した。
だが、それは全てサタンエゴスの思惑通りだった。サタンエゴスはサロメを呼び出す。
サロメはサタンエゴスの命を受け、エゴスを裏切ったフリをしてバトルフィーバーにエゴス本部の場所をリークし、バトルフィーバーをエゴス本部に誘き寄せた。
サタンエゴスの目的は、怪人製造カプセルに本部まで誘き寄せたバトルフィーバーを取り込ませ、知能、体力の優れたバトルフィーバーの染色体を合成し、無敵のバトルフィーバー怪人を生み出し、最強の敵であるバトルフィーバーを最強のエゴス怪人に仕立て上げることだったのだ。

そして、怪人製造カプセルが動き始め、バトルフィーバーに襲いかかった。
怪しげに動く怪人製造カプセルに衝突され、バトルフィーバーは体力を奪われていく。
怪人製造カプセルの放つ爆発と閃光がバトルフィーバーを襲い、あらゆる熱エネルギーを吸収する怪人製造カプセルには、反撃のペンタフォースすら通用しない。
怪人製造カプセルは、ついにバトルフィーバーを内部へと吸い込んでしまった。

おぞましいヘドロが渦巻く怪人製造カプセル内部に、ミクロ化されて取り込まれてしまったバトルフィーバーは、各々の武器で脱出を試みるが通用せず、逆に溶解ガスが噴射される。
絶体絶命の危機の中、フランスは怪人製造カプセルの心臓部を発見。
バトルフィーバーは一瞬のチャンスに賭け、ペンタフォースを心臓に炸裂させる。
唯一の弱点を攻撃された怪人製造カプセルは破壊され、バトルフィーバーは脱出に成功する。
怒りのサタンエゴスは奥の手として、ついに自ら祭壇から飛び出し、エゴス本部は崩壊。
サタンエゴスに見捨てられたサロメは、エゴス本部の崩落に巻き込まれ姿を消すのだった。

地上に脱出したバトルフィーバーの前に、サタンエゴスがその巨大な威容を現した。
サタンエゴスは風を、嵐を巻き起こし、大地の怒りを爆発させて爆炎を発生させる。
バトルフィーバーはペンタフォースを放つが、サタンエゴスの巨体には通じない。
バトルシャークが出動し、バトルフィーバーロボが大地に降り立った。
ついに、バトルフィーバーロボとサタンエゴスの最終決戦の時が来たのだ。

クロスフィーバーすらも弾かれる中、バトルフィーバーロボは大気中の宇宙エネルギーを集めた電光剣をロケット噴射で投げつける、電光剣唐竹割りとクロスフィーバーの融合技である切り札、「電光剣ロケッター」を放つ。
正義の怒りを込めた電光剣がサタンエゴスの身体に突き刺さり、ついにサタンエゴスは絶命した。
そして、そのエネルギーを受けていたエゴスの会員たちも次々に絶命していく。
ついに、邪神サタンエゴスを信仰する悪の秘密結社エゴスは滅んだのだ。

戦いが終わり、巨悪を討った5人の勇者たちを、夕日が優しく照らしていた。
鉄の意志と団結のスクラムで、ついにエゴスを壊滅に追い込んだバトルフィーバー隊。
バトルジャパン・伝正夫。
バトルフランス・志田京介。
バトルコサック・神誠。
バトルケニア・曙四郎。
ミスアメリカ・汀マリア。
そして、今ここにはいない、共にエゴスと戦った二人の仲間。
今、彼らの耳に聞こえるのは、天使の歌声。それは、英雄たちの交響曲でもある。
さらば、バトルフィーバー隊。さらば、バトルフィーバーロボよ。

バトルフィーバーとエゴスの最終決戦は、頻発する地震による関東沈没の危機や、真意が読めないサロメの裏切り行為など最後までスリリングな展開が続出。
サロメの裏切りによるエゴス本拠地の情報を巡る情報戦が展開されるなど、最後までバトルフィーバー隊とエゴスの組織対組織という構図が一貫して描かれ、スパイ・アクションとしての騙し合い合戦が見ているこちらを最後まで楽しませてくれた。
「秘密戦隊ゴレンジャー」に端を発するグループ・ヒーロー作品として、組織に属する「戦隊」と悪の秘密結社の組織と組織の対決が描かれ、五大陸の勇者が世界中から集い戦うというスケールの大きな世界観が描かれ、その魅力を十全に描ききったと言える。

「秘密戦隊ゴレンジャー」「ジャッカー電撃隊」の後、この2作品が構築したグループ・ヒーロー作品の路線を、「スパイダーマン」で確立されたヒーローと巨大ロボが共存する作劇と融合させ、「スーパー戦隊シリーズ」として続いていく路線を確立させた「バトルフィーバーJ」。
「最初」であるがゆえに、演出面では幾多の試行錯誤が見られ、またグループ・ヒーロー構成メンバーも2名が交代するという今の目では異例とも言える展開を見せている一方、現代のシリーズ最新作にまで通底する、グループ・ヒーロー全員が対等の主人公であり、個々人が主役を務めるエピソードが持ち回りで展開していくシリーズ構成や、シリーズ中盤での新たな幹部の登場によるドラマのうねりなどが既に成立していることに驚かされた。
チームを組んでいる以上、まとめ役としてのリーダーは存在するが、彼らはグループ・ヒーローとして全員が対等の主人公であり、それゆえに個々人が主役を務めるエピソードが展開していく。
「秘密戦隊ゴレンジャー」が生んだグループ・ヒーローという概念を、「バトルフィーバーJ」は発展させ、個々人が主役という作劇手法を確立し、「スーパー戦隊シリーズ」がヒーロー番組の王道として定着、令和の今まで長く続いていく道筋を作ったのだ。

最初であるがゆえの試行錯誤の結果とも思える構成メンバーの交代劇を、組織対組織の抗争が展開されるスパイ・アクションとしてのハードな世界観を成立させる手法として劇的に演出したのも「バトルフィーバーJ」の美点だろう。
初代ミスアメリカ=ダイアン・マーチンは、正体がエゴスに露見したことで家族をエゴスに狙われ、家族を守って平和に暮らすためにバトルフィーバー脱退を選んだ。
初代バトルコサック=白石謙作は、眼の前で父を殺され、血で血を洗う戦いに身を置く自分を拒む少女の心を癒やすために、強化服を持ち歩くことを拒み、そこをエゴスに狙われて命を落とした。
組織と組織の血で血を洗う抗争が展開されているがゆえにこれらの悲劇が起こってしまうハードな世界観は、これらの構成メンバーの交代劇によって鮮烈に描かれ、「バトルフィーバーJ」のスパイ・アクションとしての作劇がより強調されることになった。
アクシデントにも等しいメンバーの交代という事案を、作品の世界観の強調という美点に繋げる手法は、かつて幾多のアクシデントを強みに変え続けお化け番組となった「仮面ライダー」にも通じるものがあり、結果的に「バトルフィーバーJ」を名作たらしめる要素になっていると思える。

こうして、五大陸から集った勇者たちは、人の心を汚す悪魔を倒し、去っていった。
明日の戦士たちに未来を託して。
彼らが守った世界の未来を守るべく、五色の戦士たちがその後を継ぎ、それぞれの戦いの道を歩んでいく。今ここに、「スーパー戦隊シリーズ」が幕を開けたのだ。

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