あらすじ
人類がいまだ知らぬ異次元の存在・ベーダー一族に地球は狙われていた。
その時、3000年の眠りからデンジ犬・アイシーが目覚める。
そして運命に導かれるかのように集結した5人の若者は、電子戦隊デンジマンとなる。
異次元からの魔手が地球に伸びる時、5人の戦士が運命に導かれ集う
「バトルフィーバーJ」の好評を受け、巨大ロボットなどのメカニックを駆使して戦うグループ・ヒーロー路線を確立させるべく成立した「電子戦隊デンジマン」。
グループ・ヒーロー作品の源流である「秘密戦隊ゴレンジャー」の「〇〇戦隊」という肩書きを継承した「電子戦隊デンジマン」は、5色のカラーをシンボルにし、タイトなスーツに身を包んだコスチュームという「ゴレンジャー」のスタイルを意識的に踏襲した。
そこに「電子戦隊」の名に相応しく、超常能力ではなく異星の高度な科学力で戦うことを示す電子メカを額に掲げ、精悍なイメージを持つ大きな黒いゴーグルを備えることで、勇ましい表情を持たせる、ソリッドでリアルなハイテク感覚を備えたヒーローデザインを創出。
卵型のヘルメットに、ゴーグルによる精悍な顔つきを備えたデンジマンのマスクデザインは、その後長く続くことになる「スーパー戦隊シリーズ」のヒーローデザインの新たな基礎となった。
石ノ森章太郎氏が「ゴレンジャー」で創出した5色の戦士というフォーマットは、この「デンジマン」において、ポピーのデザイナー・村上克司氏のテイストが加わったことで、「スーパー戦隊シリーズ」の基本として現代に至るまで踏襲される強固なものへと発展したのである。
「秘密戦隊ゴレンジャー」に端を発するグループ・ヒーローものは、「バトルフィーバーJ」に至るまで、「戦隊」という言葉から、国際的な防衛組織に所属するプロの戦士が集まり、団結のスクラムで巨悪に立ち向かう、組織と組織の戦いであるという作劇が行われていた。
このグループ・ヒーロー路線を確固たるものにするべく、さらなる発展を目指した「電子戦隊デンジマン」では、ヒーローへと変身する戦士たちが、「バトルフィーバーJ」までと異なり、戦士となる前は普通の生活をしていた一般人であるという導入となっている。
その結果、「電子戦隊デンジマン」では、普通の若者として生きていた5人が、古代からの因縁、運命に導かれて戦士に選ばれ、悪と戦う宿命に生きることになるというドラマチックな展開が描かれ、普通の若者であったがゆえに、自分自身の夢と使命を天秤にかけ苦悩するドラマなどが描かれることになり、よりヒーローのパーソナリティが深く描かれる作劇が行われるようになった。
「南総里見八犬伝」のような壮大なスケールを意識して導入されたこうした作劇は、メインライターを勤めることになった上原正三氏の得意なパターン。
普通に生きていた若者が自分の出自に秘められた宿命を知り、先祖が子孫に託した思いを受け継いでいくという、時を超えて繋がっていく人の想いを描いた壮大なドラマは、後に上原正三氏がメインライターとして描いた「宇宙刑事シリーズ」においても重ねて描かれていくことになる。
3000年前、邪悪なベーダー一族に滅ぼされたデンジ星の住人が、ベーダー一族の脅威を阻止すべく、地球に送り込んでいた巨大宇宙船デンジランド。
その中で眠っていたデンジ犬アイシーは、3000年の時を超えついに地球進行を開始したベーダー一族の出現に合わせ目覚めると、地球に移住していたデンジ星人の血を受け継ぐ5人の若者を、ベーダー一族に立ち向かう戦士、「電子戦隊デンジマン」に選ぶ。
地球をヘドロの星にせんとするベーダー一族と、地球をデンジ星のように滅ぼさせないために戦う使命を受け継いだ電子戦隊デンジマンの死闘が描かれる「電子戦隊デンジマン」は、まさに宇宙スケールの宿命の物語として展開していくことになった。
そして、「バトルフィーバーJ」で好評を博した巨大ロボットと巨大戦艦もシリーズの特徴として受け継がれることになった。デンジ星人がデンジランドの中に残した巨大戦艦、デンジタイガー。
陸・海・空を自在に運行する万能戦艦デンジタイガーは、内部に巨大戦闘機デンジファイターを格納し、デンジマンの呼ぶ声に応じてデンジファイターを出撃させる。
そしてデンジファイターは巨大ロボット・ダイデンジンに変形し、巨大化したベーダー一族の怪物に挑む。戦艦から発進する巨大ロボットに変形ギミックを導入することでより見ごたえのある出撃シーンを描くことに成功したダイデンジンは、前作からのスケールアップを見事に果たしている。
こうして、ドラマチックな作劇やメカ描写といった「バトルフィーバーJ」が好評を博した要素をさらにスケールアップし、デンジマンの物語が始まろうとしていた。
今から3000年もの昔、太陽系外宇宙から地球に飛行物体が飛来した。
デンジ星から送り込まれた、デンジランドである。
原人がその威容に怯える中、デンジランドはとある半島に着陸した。
そして、デンジランド内部のカプセルでは、一匹の犬が長い眠りについていた。
未だ文明を築いていない原人の前に超巨大宇宙船デンジランドが姿を現し、その姿に原人が怯える描写は「2001年宇宙の旅」のモノリスの出現のようなイメージも感じさせる。
3000年前に宇宙から飛来した地球外文明の産物の飛来から物語が始まる、これから始まる物語が宇宙的スケールの壮大なものであると期待させる描写があまりにも見事だ。
それから長い歳月が流れた。現代の日本に、平穏を乱す大地震が起きる。
デンジランドの機器がそれを察知し、長い眠りから目覚めて起動した。
それに伴い、カプセルの中で眠りについていたデンジ犬・アイシーもまた目覚める。
デンジランドの記録装置に促され、アイシーは使命を果たすべく動き始めた。
空手の稽古をしていた青年・赤城一平の目前で、空が突然裂けた。
空の裂け目より現れた異次元から光線が放たれ、ビルを破壊し始めた。
赤城のいた場所にもビルの破片が降り注ぐ絶体絶命の危機に、アイシーが姿を見せる。
アイシーは目を光らせてバリヤーを出し、飛んでくるビルの破片から赤城を守る。
そして、アイシーはテレパシーによって、赤城にデンジレッドとなってベーダー一族と戦う使命を告げ、集合の合図として不思議なメロディーを残し、姿を消すのだった。
同じ頃、テニスの練習をしていた桃井あきらの目前にも、空を裂き異次元が現れた。
異次元から放たれた光線は桃井を指導していた高山コーチに直撃。
光線によって高山の身体は炎上し、高山はあきらの眼の前で炎に苦しみ絶命する。
突如、恩師を襲ったあまりにも悲惨な事態を目の当たりにし、悲しみに涙を流すあきらの前にアイシーが現れ、デンジピンクとなってベーダー一族と戦う使命を告げる。
その頃、工事現場上空にも空を裂いて異次元が現れた。
異次元から落下した隕石が大きな被害を出し、その調査に東明大学の研究室員が向かった。
その中には、宇宙物理学を専攻し隕石と宇宙生物の研究に励む頭脳明晰な大学生・黄山純がいた。
そして、赤城や、多発する怪現象を捜査していた刑事・緑川達也もその現場に居合わせていた。
そこに姿を見せたアイシーは、黄山にデンジイエローとなってベーダー一族と戦う使命を告げる。
一方、緑川は共に現場を調査していた父親から、隕石が不気味に胎動しており、生物であることを教えられる。赤城も緑川親子の話を耳にし、隕石が生物であることを知るのだった。
東名大学研究室のX線分析で、隕石の内部に何者かの陰が確認され、隕石は何者かの卵であるという結論が出た。そこに、不審な物音が響く。
研究室員が部屋を捜索すると、そこには割れた隕石の破片があった。卵が孵化したのだ。
調査に立ち会っていた緑川は、父親の刑事の勘が当たり、隕石が生物だったことを確信する。
緑川は父親と二手に分かれ、孵化した卵から現れた生物を探すが、父親は姿を現した不気味な生物によって重症を負わされ、怪物が現れたと言い残し息絶えてしまう。父を殺された緑川の前にアイシーが現れ、デンジグリーンとしてベーダー一族と戦う使命を告げるのだった。
夜の矢下サーカスでは、青梅大五郎がサーカスで働く動物たちをいたわっていた。
青梅はそこで、嗅いだことのない不気味な匂いを感じる。
するとそこに、緑川の父を襲った不気味な怪物が現れた。
怪物はムササビのような素早い動きで青梅を襲うが、アイシーの姿を目撃すると姿を消した。
アイシーは青梅に、デンジブルーとなってベーダー一族と戦う使命を告げるのだった。
異次元の中に浮かぶ不気味な城。
そこに君臨する女王は、姿鏡に世界で一番美しい者は誰か問うていた。
それはヘドリアン女王だと答え、女王を満足させた鏡は美しい女性・ミラーの正体を現す。
ミラーとケラー、二人の女スパイを従えるヘドリアン女王の前に、精悍な武人が現れた。
卵から孵化した怪物、ベーダー00・ムササビラーの孵化を報告しに現れた武人・ヘドラー将軍に、ヘドリアン女王は地球への進行開始を命ずる。
彼女たちこそ、空を裂いて異次元から地球を襲ったベーダー一族なのだ。
ヘドリアン女王の命を受け、巨大化したムササビラーが街を襲った。
ムササビラーの出す毒ガスが人間を一瞬で白骨に変え、出動した警官隊の銃撃も、巨大なムササビラーには通じない。港から上陸したムササビラーの猛威によって、街は火に包まれ、警官隊も毒ガスを浴びて全滅する。もはや地球を救えるものはいないのか。
ムササビラーの出現を知ったアイシーは、集合の合図のメロディーを鳴らした。
それぞれの場所で暮らしていた5人の若者の耳に、集合のメロディーが届く。
メロディーに導かれ、若者たちは巨大な岩山の前に集った。
岩山が開き、若者たちは岩山に偽装していたデンジランド内部へと入っていく。
彼らはそこでアイシーと再会。
そして記録装置から、3000年前にベーダー一族に滅ぼされたデンジ星の文明が、地球を守るためにデンジランドや、電子ロボットダイデンジンを地球に送り込んだこと、そして自分たちがアイシーに選ばれ、地球を守る宿命を背負った戦士・電子戦隊デンジマンであることを知る。
記録装置から、デンジマンに変身するための指輪・デンジリングを授かった若者たちは、デンジリングの力で強化服を纏い、5色の戦士・デンジマンとなった。
彼らは強化服を纏った瞬間、デンジマンとしての全ての知識や能力を得た。
デンジランドに用意された専用マシン・デンジマシーンと、巨大戦艦デンジタイガーの存在を知った彼らは、ムササビラーの猛威を阻止すべく、デンジタイガーに乗って出動するのだった。
デンジランドの記録装置によって冒頭で説明された3000年前のデンジランドの来訪は、ベーダー一族によって滅ぼされたデンジ星の住人たちが、ベーダー一族の脅威を阻止し、自分たちのように母星を失わせまいとする善意の表れであることが説明された。
同時に、ベーダー一族はデンジ星を滅ぼした、異次元からの脅威であることも説明されている。
若者たちが自分たちの宿命を知らされるというシーンによって、このドラマにおける敵味方の設定を自然に視聴者に説明しているのが見事な手腕だ。
デンジランドからデンジタイガーが飛び立った。
街の人々がその威容に驚く中、デンジタイガーはキャタピラを出して着陸。
ベーダー一族はデンジタイガーの存在に驚き、破壊すべくベーダー戦闘機を出撃させる。
ベーダー戦闘機の攻撃をものともせず、デンジタイガーは前進。
ミサイル攻撃でベーダー戦闘機を全滅させた。
人間サイズに縮小し、街で暴れるムササビラーの前に、デンジマンが立ちはだかった。
「見よ、電子戦隊デンジマン!」
ベーダー一族の脅威に立ち向かうべく、高らかに名乗りを上げた5人の勇者。
その抹殺を命ずるミラーとケラーの指令を受けたムササビラーはデンジマンに襲いかかる。
ついにデンジマンとベーダー一族の死闘の幕が切って落とされた。
デンジマンは軽やかな動きの連携攻撃でベーダー一族の戦闘員・ダストラーを蹴散らし、デンジレッドの放つ100万パワーのデンジパンチが敵を吹き飛ばす。
不利を悟って逃亡、高所に逃げるムササビラーだが、100メートルを3秒で走り、150メートルのジャンプ力を誇るデンジジャンプを誇るデンジマンからは逃げられない。
なおも姿を透明にして撹乱しようとするムササビラーだが、異次元をも透視出来るデンジスコープの力によって見破られ、デンジレッドの一撃で吹き飛ばされる。
ついにムササビラーとの最終決戦が始まった。デンジレッドのデンジパンチが炸裂する。
ムササビラーが反撃として繰り出す突風に、デンジマンは櫓を組むデンジタワーで対抗。
デンジマン5人が武器であるデンジスティックを組み合わせ、ブーメランとして投げつける合体技、最後のトドメのデンジブーメランが直撃し、ムササビラーを打ち破ったかに見えた。
だが、ベーダー一族の怪物は、体内の細胞体を自由にコントロールし、巨大化やミクロ化をすることが出来る能力を持っていた。巨大化したムササビラーは街で暴れ回り始める。
デンジマンは、デンジタイガーからデンジファイターを出撃させる。
デンジタイガーのハッチが開き、巨大戦闘機・デンジファイターが出動。
さらに、デンジファイターは変形、電子ロボット・ダイデンジンとなった。
デンジマンはダイデンジンの足元からエレベーターに乗り込み、コクピットへ移動。
デンジレッドは「アクション!」の掛け声でダイデンジンを起動させた。
ダイデンジンの目とバックルが電子回路のように発光する描写がカッコいい。
ダイデンジンは巨大なダイデンジンブーメランでムササビラーの剣を受け止めるが、続く一撃によってブーメランを弾き飛ばされてしまう。だが、ダイデンジンは怯むことなく巨大な鉄球・デンジボールを取り出し、さらにムササビラーを攻める。
だがムササビラーの抵抗も激しく、デンジボールの鎖を断ち切り反撃した。
死闘に決着をつけるべく、ダイデンジンはついに必殺の剣、デンジ剣を取り出す。
デンジ剣の一撃がムササビラーに決まり、ついに必殺の電子満月斬りが炸裂。
ムササビラーは首を刎ねられ爆発した。
父の仇を討ったデンジグリーンは、勝利を高らかに叫ぶ。
ヘドラー将軍は、地球にも電子戦隊が出現したことに驚愕していた。
報告を受けたヘドリアン女王は、地球をヘドロの星にする決意を固めた。
ベーダー一族には、孵化する時を待っている怪物の卵がまだまだ無数に存在するのだ。
ヘドラー将軍が地球に電子戦隊が出現したことに驚いていることを踏まえると、3000年前にもデンジ星人が電子戦隊としてベーダー一族と戦っていたのであろうことが想像される。
高度な科学力を持ち、デンジランドやデンジタイガー、ダイデンジンといったメカニックを誇るデンジ星すらも滅ぼしたベーダー一族の脅威がより強調されると同時に、そんなベーダー一族でも電子戦隊の出現は警戒すべきことである、と電子戦隊の頼もしさも演出されている台詞だ。
戦いが終わり、ダイデンジンから降りたデンジマンは、勝利のスクラムを組んでいた。
そこに、アイシーも駆けつけ、勝利を喜ぶ。
異次元の侵略者・ベーダー一族は、地球を腐りきったヘドロの星に変えようとしている。
デンジ犬アイシーに選ばれた5人の戦士の戦いは、今始まったばかりなのだ。
果たして、ベーダー一族とは何者か。電子戦隊によって、その謎が明らかにされていくのだ。
運命に導かれた5人の若者の集合や、驚異の科学力を誇るデンジ星と、異次元よりの侵略者・ベーダー一族との3000年の因縁、宇宙スケールで描かれるスケールの大きな世界観を演出しつつ、デンジマンの軽快なアクション、戦闘機の攻撃をものとしない超弩級のデンジタイガーや、デンジファイターからダイデンジンへの変形と、見どころをこれでもかと詰め込んだ超豪華な第1話。
ベーダー怪物の猛威や、それに対するデンジマンの戦いを経て、倒したと思ったベーダー怪物の巨大化とそれに対するデンジファイター出動、ダイデンジンの戦いという基本フォーマットを敷き、「スーパー戦隊シリーズ」のフォーマットを見事に確立させている凄さがある。
こうして、自分の運命を知った5人の若者は、熾烈な戦いの海へ漕ぎ出した。
小さな命を守るため、愛と勇気の炎を燃やす、電子戦隊の戦いが幕を開ける。