「電子戦隊デンジマン」第2話「人喰いシャボン玉」感想

2024年6月5日水曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

電子戦隊壊滅を企むベーダーはシャボンラーを誕生させ、美しいものを次々と襲っていく。
一方、デンジピンク=桃井あきらは、テニスで日本一になる自分の夢を諦めきれず、電子戦隊の一員として戦う宿命を拒み、赤城たちは彼女を説得できずにいた。
そして、美しい音色でピアノを弾くあきらは、シャボンラーに取りつかれる。
あきらを救うため、赤城たちが駆けつける。果たして、電子戦隊は団結することが出来るのか。

自らの夢と戦士の宿命 2つの狭間で揺れる心

今回の主題となるのは、前回、眼の前でテニスのコーチをベーダー一族によって殺され、一度はデンジマンとして戦いながら、そのコーチの指導に報いるためにも、テニスで日本一になる夢を諦めきれないデンジピンク=桃井あきらの心。
戦士としてベーダー一族と戦う使命を受け入れた男たち4人と異なり、彼女はまだ自らの夢と、戦士として戦わなければならない宿命を受け入れる折り合いをつけられずにいた。

「バトルフィーバーJ」までのグループ・ヒーロー作品が、国際組織に所属するプロの戦士たちがチームを組むという設定上、戦士として戦う自覚は序盤から備えていたのに対し、今作でチームを組んだ若者たちは、それまで普通に生き、自分の夢を追っていた。
それゆえに、そんな普通の若者が自分の夢を捨ててまで、他人のために命をかけてベーダー一族と戦う道を選ぶことが出来るのか、という重い命題を今回のエピソードでは描いている。
普通に生き、夢を追いかけていた桃井あきらが、他人のために電子戦隊の一員としてベーダー一族と戦う宿命を受け入れるまでをドラマチックに描いた今回のエピソードは、ヒーローを血の通った人間として描き、そんなヒーローが先人から受け継いだ使命を自覚して高みへ至るドラマ展開を得意とした、上原正三氏脚本ならではの名作エピソードと言えるだろう。

ムササビラーとデンジマンの戦いの記録を見ていたヘドリアン女王は不機嫌だった。
この地球にも電子戦隊が存在していることを知ったヘドリアン女王は、かつて自分たちが滅ぼした忌まわしいデンジ星の住人が、地球に電子戦隊の装備を送り込んでいたことに激昂する。
ヘドラー将軍は、地球を正面から攻撃すれば必ず電子戦隊が阻止に現れ、総力戦になってしまうことを踏まえ、戦略の転換を提案。ミラーとケラーにベーダー怪物の卵を出現させると、ヘドリアン女王自身が選んだ生きの良い卵を孵化器にかけて孵化させる。
装置によって孵化した卵から、ベーダー01・シャボンラーが現れた。
ヘドリアン女王は、地球上から全ての美しいものを消し去り、地球を腐ったヘドロとガスが渦巻く世界に変えるため、シャボンラーを出撃させるのだった。

ヘドリアン女王の衣装の角は、「電子戦隊デンジマン」が「スパイダーマン」「バトルフィーバーJ」と続いてきた東映とマーベル・コミックとの定型作品の一作であることから、マーベル作品「マイティ・ソー」のヴィランである「死の女神ヘラ」の面影を残すものになっている。
マーベル・シネマティック・ユニバース作品の「マイティ・ソー バトルロイヤル(Thor: Ragnarok)」でヘラがヴィランとして登場し、枝分かれした角のような頭飾りを身につけていたが、その頭飾りでヘドリアン女王を思い出した特撮ファンも多い…はず。
この角はセットの装飾に引っかかることも多く、演じていた曽我町子氏からも不評だったこともあり、続く「太陽戦隊サンバルカン」でヘドリアン女王が続投、再登場した際には衣装が変更され、ミラーボールのような球形の頭飾りに様変わりすることになる。

一方デンジランドでは、赤城たちがデンジ星人が用意していた超兵器について調べていた。
青梅はアイシーに、デンジ星人が何故3000年も前にこんな超兵器を地球に送り込んだのか尋ねるが、アイシーの答えはいまいち要領を得ず、まともな回答は得られない。
その頃、あきらは一人、テニスの練習を続けていた。
眼の前で恩師である高山コーチをベーダー一族に殺され、その無念を晴らすために一度はデンジピンクとして戦ったとはいえど、あきらはテニス選手としての夢を諦められなかった。

その頃、地球に現れたシャボンラーはミラーとケラーの案内で、人間がその美しさで心を和ませる花を枯らすべく、花屋を襲っていた。シャボンラーの吐く泡は、花を一瞬にして腐らせてしまう。
だが突然、シャボンラーが苦しみ始める。
嫌な音がすると苦しむシャボンラーを見かね、ミラーとケラーが周囲を調べると、バイオリンコンサートが開催されていた。バイオリンの美しい音がシャボンラーを苦しめていたのだ。
ミラーとケラーの案内でコンサート海上に侵入したシャボンラーは、透明化してバイオリンを弾いている女性に接近し、泡を浴びせかける。
すると、女性の身体が硬質化し、倒れた女性の身体は粉々に砕けてしまった。

女性を抹殺し、姿を現して逃亡したシャボンラーの目撃情報がデンジランドに届いた。
あきらを欠いた電子戦隊の4人は、ベーダー一族を討つべくデンジマシーンに乗って出動する。
一方、電子戦隊の出撃を知ったヘドリアン女王も、ムササビラーの仇を討つべく攻撃を命令。
ヘドラー将軍の指揮のもと、ミラーとケラー、そしてシャボンラーがデンジマンを奇襲した。
デンジピンクを欠いたことでベーダー怪物への決め手を欠くデンジマンは、襲撃をなんとか躱したものの、一方的に攻撃を受けたまま、ベーダー一族を逃がしてしまう。
デンジレッドは、やはり5人揃わなくてはベーダー一族と戦えないと痛感するのだった。

赤城たちはあきらと合流すべくテニスコートを訪ねたが、あきらはもう一緒に戦えないと告げる。
5人揃わなくては電子戦隊の力を発揮できず、このままではベーダー一族をのさばらせることになると説得する4人だったが、あきらはテニス世界一になる夢を諦めきれなかった。
ベーダーの攻撃で命を落とした高山コーチは、病に冒された身を推してあきらをコーチしていた。
あきらは高山コーチの思いに報いるためにも、テニスを続けようとしていたのだ。
だが、同じく、父を眼の前でベーダーに殺された緑川は、自分さえよければ他人はどうなっても良いのかと訴え、なんとかあきらを翻意させようとするが、あきらは聞く耳を持たない。
見かねた赤城は一旦あきらを家に帰らせ、決意の固いあきらを時間をかけて説得することにした。

家に帰ったあきらはピアノを弾いていたが、その心中には、緑川が言った「自分さえよければ他人はどうなってもいいのか」という言葉が渦巻いていた。
するとそこに、シャボンラーの泡が漂い始める。あきらの手に付着した泡は、いくら拭っても、水で流しても膨らみ続け、たちまちあきらの全身に広がっていく。
あきらの悲鳴を聞きつけ、赤城たちがあきらの部屋に駆けつけたが、部屋の鍵が開かない。
青梅はサーカス団出身ならではの身軽な動きを見せ、マンションの屋上からロープを伝い、窓から部屋に侵入。青梅が中から鍵を開け、赤城たちも部屋に踏み込んだ。

だが時既に遅く、シャボンラーの泡によってあきらの肉体は既に硬質化していた。
あきらの心臓はまだ動いているが、下手に動かせば硬質化した肉体が粉々に砕けてしまう。
赤城は事態を打開すべくデンジレッドとなり、デンジスコープであきらの肉体を透視。
すると、あきらの肉体に透明化したシャボンラーが取り付いていたことが判明する。
だがシャボンラーは、自分を攻撃すれば硬質化したあきらの肉体が砕けると脅し、デンジレッドは手出しができない。あきらの心臓が止まり命が絶えるまで、もう数分しかない。

デンジレッドの強化服の額に内蔵された電子コンピューターが、あきらを救う方法を導き出した。
デンジレッドの指示を受けた青梅たちは強化服を纏い、4人は額のデンジストーンから人間に憑依したベーダーを追い出し、毒を解毒する光線・デンジシャワーを一斉に放射。
デンジシャワーによってシャボンラーはあきらの肉体から離れ、間一髪、あきらは助かった。
だが、美しいものを消し去らんとするシャボンラーはなおも執拗にあきらに迫る。
あきらを守るため、身を挺して懸命にシャボンラーに立ちはだかるデンジマン。
その姿に、自分を捨ててでも他者を守り、正義を成すため邪悪と戦う意味を悟ったあきらは、4人の仲間を救うべくデンジスパークし、デンジピンクとなった。

「見よ!電子戦隊デンジマン!」
5人揃った宿命の戦士が高らかに名乗りを上げ、美しい地球を守るため戦闘を開始した。
その様子を監視していたミラーとケラーはダストラーを呼び出し、一大決戦が始まる。
互いに俊敏かつ連携の取れた動きを見せるデンジマンとダストラー。
一進一退の攻防の中、デンジレッドのデンジパンチが炸裂。
デンジブルーはサーカス団出身ならではの身軽な動きを見せる。
デンジイエローのパワーがダストラーを吹き飛ばせば、デンジグリーンの華麗な足技がダストラーを寄せ付けない。そして、デンジピンクのしなやかな動きがダストラーを翻弄する。
5人揃った電子戦隊は、まさに無敵の力を発揮するのだ。

ダストラーは一掃され、残すはシャボンラーのみ。
デンジブルーは身体を高速回転させるデンジドリルで地中に潜り、シャボンラーの足元に接近。シャボンラーの足を取ってバランスを崩し、すかさず蹴り飛ばした。
シャボンラーが弱ったところに、デンジマンたちは5本のデンジスティックを合わせ、最後のトドメのデンジブーメランを放つ。火花を散らし飛ぶデンジブーメランが、シャボンラーに命中した。

だが、ベーダー怪物は、体内の細胞組織体を組み替え、自在に伸び縮みすることが出来る。
倒されたかに見えたシャボンラーは巨大化し、その猛威がデンジマンを襲う。
デンジレッドの呼びかけに答え、デンジランドからデンジタイガーが出撃した。
ヘドラー将軍はベーダー特別戦闘機体を出撃させるが、その砲撃もデンジタイガーには通じない。デンジタイガーの艦橋が回転し、放たれたミサイルが次々にベーダー特別戦闘機隊を撃墜した。

巨大シャボンラーの放つ泡がデンジマンを襲う。
その時、到着したデンジタイガーのミサイルがシャボンラーに直撃してデンジマンを救った。
さらにデンジタイガーは空中でカタパルトを開き、デンジファイターを出撃させる。
デンジファイターはダイデンジンに変形し、デンジマンがダイデンジンに乗り込む。
ブルーたち4人がダイデンジンのコンディションをチェックし、それを確認したデンジレッドの「アクション!」の指令でダイデンジンが起動した。
ダイデンジンのデンジボールの強烈な一撃がシャボンラーを苦しめるが、シャボンラーも反撃の杖でデンジボールを破壊すると熾烈な反撃を見せる。
ダイデンジンはデンジ剣を出し、剣戟でシャボンラーを圧倒。
必殺の電子満月斬りでシャボンラーの首を刎ね、ついにシャボンラーに勝利した。

子供たちに空手の稽古をつける赤城の様子を見ていた青梅たちは、ここにあきらが加わり、5人揃えば全力を出して戦えるのにと、あきらの不在を残念がっていた。
テニスはあきらの人生である以上、テニスを優先するのは仕方がないことだと、4人があきらの選択を受け入れようとしていたその時、あきらが姿を見せた。
あきらは自分がテニス世界一になるのではなく、ベーダー一族の犠牲になった高山コーチのように子供たちをコーチして、テニス世界一の選手を育てる新たな夢を抱き、子供たちが安心してテニスを楽しめるような平和な世界をベーダー一族から守るため、今はデンジマンとしてベーダー一族と戦うことを、自分自身で選んだのだった。
自分のためではなく、人類みんなが夢を追いかけられる平和な世界を守るために。

苦しい戦いでも、5人の仲間が心を1つにすれば乗り越えられる。
今ここに、団結のスクラムを組んだ電子戦隊。
5人の若者は今、自らの意思で無敵の電子戦隊となり、ベーダー一族へ挑戦状を叩きつけたのだ。
果たして、電子戦隊は謎の超異次元に棲むベーダー一族を討つことが出来るだろうか…。

仲間になることを拒んだ自分を助けるため、身を挺してシャボンラーの攻撃を食い止める仲間たちの姿に、自分のためではなく他者のために力を尽くす意義を見出すあきらの戦士としての自覚に至るドラマが非常に秀逸なエピソード。
台詞で語るのではなく、自らを守るために傷つく仲間の姿を見て体が動き、デンジスパークを行うあきらが、最後に自分が世界一の選手になるのではなく子供たちを世界一の選手に育てる夢を抱き、そのために世界の平和を守る決意を固め、吹っ切れた表情で心情を語る演出が見事だ。

こうして、ついに真の団結のスクラムを組んだ電子戦隊デンジマン。
5人の勇者は戦いの海へ漕ぎ出す。

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