「仮面ライダーストロンガー」第1話「おれは電気人間ストロンガー!!」感想

2024年6月8日土曜日

仮面ライダーストロンガー 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

秘密組織・ブラックサタンの奇械人・ガンガルの前に、2人の改造人間が現れた。
彼らの名は、仮面ライダーストロンガーこと城茂と、電波人間タックルこと岬ユリ子。
天が、地が、人が、悪を倒せと彼らを呼ぶ時、2人はブラックサタン相手に戦いを繰り広げる。

口笛高くやって来る、さすらいの改造電気人間現る

「原点回帰」を掲げ、「仮面ライダー」が持つ、異形の姿ゆえの人間社会からの孤立という要素を、文明社会から隔絶したアマゾンの奥地で1人育った野生児として換骨奪胎し、原点回帰を志向しながら最大の異色作として成立した「仮面ライダーアマゾン」。
主人公であるアマゾンのインパクトの強いキャラクターが話題を呼んだ「アマゾン」の次回作として生まれた「仮面ライダーストロンガー」は、沈静化しつつあった「変身ブーム」の中で孤軍奮闘しながらも、「仮面ライダー」シリーズに漂い始めていた手詰まり感を打破すべく、ヒーロー作品としての原点である、徹底的に強く頼もしいヒーローを描くパワフルな作風に立ち返ることを狙いとし、「単純明快・痛快明朗」なヒーロー像を模索して成立した作品だ。

「改造電気人間」である仮面ライダーストロンガーの痛快な活躍を描くことを志向したこの企画は、改造電気人間という新たな設定を付与し、従来のアクションに加え電気の力を用いた様々な技を描き、新鮮味のある画作りで視聴者の興味を引くことが目指された。
そしてシリーズ最大の特色となる要素として、シリーズ初の女性変身ヒーロー・電波人間タックルの登場が挙げられる。女の子の視聴者からの「私達も仮面ライダーごっこがしたい」という意見を耳にしていた平山亨プロデューサーが、その意見に応える形で考案したこのキャラクターは、ストロンガーと共にブラックサタンの陰謀に立ち向かう、対等の相棒である。
「孤独」なヒーローとして志向された「仮面ライダー」の原点に回帰し、身寄りのない野生児として主人公アマゾンを描いた「仮面ライダーアマゾン」の企画とは対極をなす、この「相棒」の存在は、共に人ならぬ身となった哀しみを内面に秘めながら、気丈に悪に立ち向かい、時に競い合いながら、時に支え合う二人の改造人間の姿を描き、ドラマを更に盛り上げている。

そうして始動した「仮面ライダーストロンガー」第1話「おれは電気人間ストロンガー!!」は、これまでの「仮面ライダー」シリーズが、その序章となる第1話でヒーローの誕生に至るドラマを描いていたのに対し、仮面ライダーストロンガーとその相棒、電波人間タックルと、彼らが戦う悪の組織・ブラックサタンとの息詰まる攻防戦やド派手なアクションを存分に描いた。
この変則的な構成は、仮面ライダーストロンガーの悪を打ち破る圧倒的な強さを十全に演出してその魅力を視聴者に伝えると同時に、なぜストロンガーとタックルは改造人間になったのかという謎を提供して、次回以降の展開へと視聴者の興味を引くことを意図している。
そこには第5作を迎えた「仮面ライダー」シリーズだからこそ出来るパターン破りの手法が用いられ、シリーズのマンネリ感を見事に打破することに成功した、と言えよう。

「仮面ライダーストロンガー・城茂は、自ら進んで改造手術を受け電気人間となり、日本の平和と正義を守るため、世界征服を狙う悪の組織ブラックサタンを倒すべく、敢然と立ち上がった!」
シリーズの特徴である、改造電気人間ストロンガーの電気を使った数々の技や、カブトローに乗って繰り広げる激しいバイクアクションを演出したオープニング映像のラストでは、「仮面ライダーX」まで採用され、「仮面ライダーアマゾン」では一度廃されたナレーションが復活。
ナレーターには「仮面ライダーX」までシリーズを一貫して担当していた中江真司氏が復帰し、異色作だった「仮面ライダーアマゾン」からの回帰を感じさせる構成になっている。

愛知県は三河湾。そこには、最新鋭のホバークラフトが滑るように水面を走り、乗客たちが快適な船旅を楽しむ平穏な日常の風景があった。だが、船内でホバークラフトの説明をする添乗員の話を聞く乗客たちの中に、耳に謎の黒い痣が浮かべた男がいた。
そして、平穏は突然破られる。
耳に黒い痣が浮かんだ男は、突如として鋼のボディを持つ怪物・奇械人ガンガルへと姿を変えると、それに呼応して同じく黒い痣を浮かべた男たちも血走った目玉を持つ黒装束の戦闘員になる。
奇械人ガンガルたちは、世界征服を狙う謎の組織・ブラックサタンの尖兵だった。
彼らはホバークラフトをブラックサタンの輸送船とするべく、シージャックを行ったのだ。

恐怖に怯え騒ぎ出した乗客の一人を締め上げ絶命させた奇械人ガンガルは、ホバークラフトを占領し、輸送船とするべく着岸させる。だがそこに、一人の男が真紅のオートバイに乗って現れた。
男は不敵な笑みを浮かべ、動き始めたホバークラフトへオートバイを飛ばし接近。
奇械人ガンガルは戦闘員に男の排除を命じる。だが、命令を受け船外に向かおうとした戦闘員は、先ほどホバークラフトの説明をしていた添乗員に攻撃を受け、気絶する。

再度着岸したホバークラフトから、戦闘員たちが上陸。
だがそこには、真紅のオートバイだけが残されていた。
周囲を捜索する戦闘員の耳に、口笛のメロディーが聞こえてくる。
口笛の主は、オートバイでホバークラフトを尾行していた男。
胸に「S」マークが描かれた服を纏った彼は、自らを「姓は城、名は茂」と名乗る。
城茂は、自分たちの存在を知る者を消そうとするブラックサタンの戦闘員と戦闘を開始した。
一方、船上の奇械人ガンガルの前には、てんとう虫の格好をした改造人間が現れた。
改造人間は自らを「ブラックサタンと戦う自由と平和の戦士・電波人間タックル」と名乗る。
電波人間タックルは、添乗員に変装しブラックサタンを探っていた岬ユリ子が変身した姿だった。
電波人間タックルは奇械人ガンガルを捕らえようと戦闘を開始する。

形勢不利を悟った奇械人ガンガルは撤退し、姿を消す。
城茂はタックルと合流し、タックルになるのが早すぎて奇械人を逃がしたタックルを窘める。
タックルは気丈にもそれに対し反論するが、城茂は慣れた様子でそれをあしらうのだった。
茂はホバークラフトを調べ、そこに残されていた伊良湖ビューホテルのマッチを発見。
ブラックサタンが伊良湖ビューホテルに潜伏していると踏んだ城茂は、伊良湖ビューホテルに向かった。タックルは岬ユリ子に戻ると、城茂への対抗心を燃やして後を追うのだった。

城茂と岬ユリ子のやり取りで、男勝りで勝ち気な岬ユリ子の性格と、それの跳ねっ返りぶりにもすっかり慣れていて、あっさりあしらう城茂の伊達男ぶりが短い尺で印象付けられる名シーン。
短い尺でキャラを立たせるやり取りを成立させるのは、幾多の作品の「第1話」脚本を執筆し、幾多の名キャラクターの基盤を作ってきた伊上勝氏ならではの凄みがある。

一緒に戦う相棒である城茂にも対抗心を燃やし、前のめりにブラックサタンと戦う姿勢を見せる岬ユリ子の勝ち気な性格には、女性ヒーローに男性ヒーローのサポート役ではなく、対等の相棒としての精神性を持たせようとした試みが見える。
残念ながらこの時点では未だ主役ヒーローと対等の戦力を持ったもう一人のヒーロー、という枠組みを「仮面ライダー」シリーズで成立させるのは難しかったのか、戦力面では主役である仮面ライダーストロンガーに一歩もニ歩も引いた存在ではある電波人間タックルだが、キャラクターの性格設定や精神性としてはあくまで主役と対等の相棒として、自立した強い女性キャラクターとしての性格設定がされているのは、かえって現代的にも思える先進性がある。

伊良湖ビューホテルに到着した城茂は、そこで黒いスーツに身を包んだ怪紳士に遭遇。
怪紳士がホテルの部屋に戻ると、ブラックサタン戦闘員が出迎えた。だが、戦闘員はうっかり怪紳士とぶつかり、怪紳士が吸っていたタバコを顔に押し付けられるパワハラを受ける。
用意されていた新しい黒スーツに着替えた怪紳士の下に、ブラックサタン戦闘員が報告に現れた。
ホバークラフトのシージャックが、城茂と電波人間タックルという二人組に邪魔されたという報告を受けた紳士は、顔に巨大な一つ目を備えた怪人・一ツ目タイタンへと姿を変える。
一ツ目タイタンは、戦闘員に計画を狂わせた謎の男・城茂の監視とその素性の調査を命じると、既に正体を把握している電波人間タックルの抹殺のために行動を開始した。

伊良湖ビューホテルに到着した岬ユリ子が、部屋に戻って着替えを行っていると、突然部屋に飾られていた花から毒ガスが噴出を始めた。それはブラックサタンによるタックル捕縛の罠だった。
一方、ユリ子をホテルのロビーで待っていた城茂は、そこで不審な男がトラックに何かを積み込んで、何処かへ向かおうとしているのを目撃する。

毒ガスで気絶したユリ子を、ブラックサタン戦闘員が拉致しようとしていた。
だがその前に、城茂が立ちはだかる。「貴様」と呼ぶ戦闘員に、城茂は不敵な笑みを浮かべ言う。
「名乗ったはずだがね。城さんとか、茂さんとか言ってほしいものだな」
城茂が戦闘員を蹴散らし、意識を取り戻したユリ子もその後を追った。
戦闘員が奇械人ガンガルの元へ撤退すると、そこに城茂が着ていたジャケットが投げ込まれる。
すると、あの口笛が聞こえてきた。口笛の主を探すブラックサタン戦闘員が見上げた先には、巨大な角を備えた改造人間が、全身から火花を吹き出し勇壮な姿を見せていた!

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ。俺は正義の戦士!」
高らかに自らの正義を叫ぶ改造人間は、高圧電流を帯びた打撃で戦闘員を燃やし尽くす。
「俺の名は、仮面ライダーストロンガー!」
突如現れた正義の戦士、仮面ライダーストロンガーは、ブラックサタンが奇械人ガンガルをこの三河湾に派遣した目的を突き止めるため、戦闘を開始した。
ストロンガーの身体が帯びた高圧電流が、鋼の身体を持つ奇械人ガンガルに大ダメージを与える。
その様子を、一ツ目タイタンが監視していた。
タイタンはブラックサタンオートバイ部隊を出撃させ、劣勢の奇械人ガンガルを援護させる。
ブラックサタンオートバイ部隊に対抗するように、ストロンガーは愛用のオートバイ・カブトローに乗り込む。オートバイ同士の熾烈な戦闘が開始された。

「仮面ライダーストロンガー」のウリの1つが、大きな見せ場として描かれたオートバイアクションだ。そのため、ストロンガーが乗るオートバイ、カブトローは極力装飾を配したシンプルなフォルムとなっており、オートバイ本来のスピードと軽快さを演出している。
また、カブトローはベース車両が異なる車両が3台用意され、城茂が常用するオンロードタイプと、ストロンガーが戦闘時に乗り込むオフロード(モトクロッサー)タイプとトライアラータイプがシーンによって使い分けられ、オフロード専用のモトクロッサータイプやトライアラータイプがブラックサタンオートバイ部隊とのバイクチェイスで活躍した。
モトクロッサータイプやトライアラータイプは、オンロードタイプが備えているテールカウルも省略されており、激しいアクションに伴うパーツの脱落の心配が少ない配慮がなされている。

熾烈なオートバイ戦は、カブトローを自在に操るストロンガーの勝利に終わった。
だが、ブラックサタンオートバイ部隊の時間稼ぎで奇械人ガンガルは撤退。
一ツ目タイタンは、奇械人ガンガルに、城茂たちが変装に気づく前にホテル中に毒花を飾り、花から噴出する毒ガスによってホテル中の人間を全滅させることを命ずる。
一ツ目タイタンは、ストロンガーの姿を何処かで見た覚えがあった。

生花業者が温室から花を運び出そうとしていると、その前に岬ユリ子が立ちはだかった。
ユリ子は、眼前の生花業者がホバークラフトの中にいたことを突き止めていた。
奇械人は人間に成り代わるのを得意としている。そして、生花業者が温室から運び出そうとしている花は、先程ユリ子を気絶させたガスを噴射する花だった。
すなわち、この生花業者こそ奇械人ガンガルなのだ。
正体が露見した奇械人ガンガルは、奇械人の姿を現す。ユリ子も電波人間タックルに変身し、得意技の「電波投げ」で戦闘員を吹き飛ばすが、奇械人ガンガルには力及ばず捕まってしまった。

サタンドームに吊るし上げられたユリ子の前で、ガンガルは冥土の土産として計画を話す。
ガンガルは温室で栽培した毒花を街の花屋に運び、何も知らずに花粉を吸った人々を全滅させようとしていたのだ。毒花計画を突き止めながら、もはや成すすべもないことを悔しがるユリ子。
「そう悔しがりなさんなって」
軽口とともに、城茂が姿を現した。
一人で無謀に突っ込んだユリ子を窘めつつ、城茂は両手に嵌めた手袋を脱ぎ捨てる。
城茂の両腕は巨大な電極になっていた。
茂がその電極を擦り合わせると、変身ベルト・エレクトラーに激しいスパークが発生する。
「変身…ストロンガー!!」

城茂こそが、仮面ライダーストロンガーだった。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ」
ストロンガーはあっさりと戦闘員を倒し、ガンガルとの決戦が始まる。
「俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!」
ガンガルは腕から銃弾を放つガトリング砲・ガンガルバズーカで攻撃。
さらに、スプリングの機能を持った身体を伸縮させ、驚異的なジャンプ力で飛びかかり攻撃するガンガルスプリングアタックでストロンガーを攻める。
だが、ストロンガーはガンガルスプリングアタックをいともたやすく受け止める。

「強さ」を意味する「ストロンガー」という名前が示す通り、仮面ライダーストロンガーというヒーローの最大の特徴は「強さ」である。奇械人が鋼のボディを備えており、ストロンガーの持つ電気を通しやすく相性がいいということもあり、ストロンガーはその強さで奇械人を蹂躙する様も多々見られ、企画意図である「徹底的に強く頼もしいヒーロー」を見事に表現している。

一気に肉弾戦に持ち込もうとするストロンガーだが、奇械人ガンガルは、拳が届かない距離から打撃を一方的に命中させる不可思議な攻撃を仕掛け、ストロンガーを接近させない戦法を取る。
ストロンガーはこの攻撃の仕組みを突き止めるため、「ライダービデオシグナル」を発動。
ストロンガーの持つ能力の1つである、記録再生装置・ライダービデオシグナルを使えば、以前の様子をスローモーションで映し出すことが出来るのだ。
ライダービデオシグナルの映像により、奇械人ガンガルが、胸に収めている小カンガルーの頭部・スモールヘッドをスプリングで打ち出す武器にしていることを突き止めたストロンガーは、スモールヘッドを攻め、内部のスプリングを破壊しスモールヘッド攻撃を封じる。
そして、激しい電流を纏って放たれる必殺の一撃、ストロンガー電キックが炸裂。
奇械人ガンガルは爆発四散し、死闘に終止符が打たれるのだった。

奇械人ガンガルは珍しいカンガルーがモチーフの怪人。
カンガルーのパブリックイメージと言える有袋類として腹部の袋で子供を育てる生態を、小カンガルーの頭部を武器として使う意外性として表現するセンスが抜群だ。
また、奇械人というメカニカルな性質を持つ怪人として、カンガルーの跳躍力を機械的なスプリングによる跳躍力と解釈しているのも秀逸。
「アマゾン」の獣人が巨大な生物をコンセプトにした生物的な造形だったのに対し、スプリングの意匠を持つ金属質のフォルムで鮮烈な印象を残すものになっている。

ストロンガーは設定上既にブラックサタンと戦っており、第1話にして既に自身の能力を把握、的確に使いこなすことが出来る。仕掛けがわからない攻撃に対しても「ライダービデオシグナル」によって技を見切り反撃する頼もしさは、「強い」ヒーローとして頼もしさを見事に演出している。

「アマゾン」では「アマゾンキック」という技は存在したものの、主な必殺技としては「大切断」にその座を譲っていたライダーキックも、「ストロンガー電キック」として必殺技に返り咲いた。
「電気」と「キック」をかけ合わせ、高圧電流を帯びたキック技という特性を簡潔かつ十全に表現したそのネーミングは、本当に優れたものはシンプルであるという好例だ。

戦いが終わり、城茂と岬ユリ子はブラックサタンの陰謀を砕くべく次なる旅に出た。
そしてその様子を、タイタンが監視していた。
突如現れ、悪の陰謀を打ち砕いた仮面ライダーストロンガーと電波人間タックル。
一体この二人は何の目的で戦い、またどうやって出現したのだろうか。
謎を秘めた二人の戦士とブラックサタンの熾烈な戦いの幕が、切って落とされた。

「仮面ライダーストロンガー」のドラマ面の特色は、城茂と岬ユリ子、そして後に合流する立花藤兵衛が、ブラックサタンの陰謀を追ってさすらいの旅を続けるロード・ムービー形式にある。
この形式は、「仮面ライダーストロンガー」においては、自らブラックサタンの影を追って悪を滅ぼすための旅を続ける、能動的に悪と戦うパワフルなヒーロー像を演出した。
第1話でヒーローの誕生を描かず、スピード感あふれるヒーローと悪の組織の攻防を描く変則的な構成も含め、自ら進んで悪を滅ぼすべく戦う強靭な意志を持ったパワフルなヒーローを描き、ヒーロー作品の王道を往かんとする制作陣の心意気が伺える。

こうして、口笛高くやって来る、さすらいの改造電気人間の戦いが始まった。
ふたりで守ろう、世界の平和を。

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