「電子戦隊デンジマン」第3話「油地獄大パニック」感想

2024年6月12日水曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ベーダー一族が放つ怪物・チカゲリラーによって東京の地盤が緩み、地盤沈下が起きた。
ビルやオイルタンクが沈み、東京中に大火災の危機が迫る。
ベーダー怪物打倒のため、デンジマンはデンジタイガーで出撃する。

東京炎上の危機 幼き命を守るため、火炎地獄を突破せよ

今回のエピソードは、大東京を炎上させ、静寂が支配する死の世界を作り出そうとするベーダー一族と、電子戦隊の攻防戦が展開される大スペクタクル巨編。
ベーダー怪物・チカゲリラーは名前のごとく「地下ゲリラ」をモチーフにしており、地下に潜伏して地盤を緩ませ、大規模な地盤沈下を引き起こし、石油基地のオイルタンクを沈没。
水道にオイルタンクから流出させた原油を流し、東京全土に張り巡らせている水道に原油を充満させ、点火させることで東京全土を炎上させるのが今回のベーダー一族の計画だ。

今回のエピソードで白眉となる描写は、そのような大量殺戮を平然と命じ、地球を死の世界に変えヘドロで腐った世界にしようとするベーダー一族の首領・ヘドリアン女王が、これまで電子戦隊によって倒されたベーダー怪物の死を惜しみ悲しんでいる描写だ。
ダイデンジンの電子満月斬りで刎ねられたムササビラーとシャボンラーの首を回収、首塚としてベーダー魔城に飾り、電子戦隊に倒された痛みや苦しみを思って涙する、同じベーダー一族への優しさや慈悲深さがあるからこそ、美しい地球に住んでいるというだけで地球人類に激しい憎悪を見せる、自らが価値を感じないものに対する冷酷非情さの恐ろしさが強調されている。
ヘドリアン女王が持つこの二面性は、曽我町子氏の演技によって圧倒的な説得力で表現され、同族への慈悲深さと嫌悪する存在への冷酷さを併せ持つ多面的な性格が見事に演出されている。

超異次元内のベーダー城では、ヘドリアン女王がデンジマンに敗れたムササビラーやシャボンラーの首を見て、彼らが電子戦隊に受けた痛みや苦しみを想い、涙していた。
ミラーは女王の嘆きを収めるべく、女王の宇宙一の美しい姿を鏡に映して心を和やかにしてほしいと気遣い鏡に姿を変えるが、電子戦隊に怒りを燃やすヘドリアン女王はそれどころではない。
ヘドリアン女王はヘドラー将軍に命じ、ベーダー02・チカゲリラーの卵を孵化かせる。
ヘドラー将軍によれば、東京を火炎地獄にするには一番適しているというチカゲリラーの卵は、ミラーとケラーの手で孵化器にかけられ、その姿を現すのだった。

使命に導かれ電子戦隊に選ばれた5人は、共に同じアスレチッククラブでインストラクターとして働くことになった。各々の特技を活かし、子供たちにスポーツを教えていく面々。
科学者畑の黄山だけは、美肌に効果的な植物を子供たちの母親に教えているのが面白い。
赤城の空手の稽古を終えた子供たちは、料理上手な黄山の作ったナポリタンをごちそうになることになり、腹ペコの青梅もそれにありついていると、そこに突然大地震が起きる。

震源地に向かった電子戦隊の5人は、凄まじい地盤沈下で高層ビルが沈んでいく光景を目の当たりにする。だが、この高層ビルの沈下はこれから起こる大パニックのきっかけに過ぎなかった。
その夜、東京近郊の石油基地で地割れが起き、警備員たちが地割れに巻き込まれる中、地盤沈下によって原油を内蔵しているオイルタンクが地中に埋没してしまう。
翌朝、現場に向かった電子戦隊たちの目前でも、次々とオイルタンクが沈む一方だった。
不自然にこの一帯だけで起きた局所的地盤沈下に、電子戦隊はベーダー一族の暗躍を感じ取る。
黄山は現場の土から酸の匂いを感じ取る。赤城と黄山が土をデンジランドに持ち帰って調査した結果、土からは蟻酸のような成分が検出された。強烈な酸が地盤を緩ませているのか?

一方、石油基地にはチカゲリラーが出現。石油基地の地盤を酸で緩ませたのはチカゲリラーだったのだ。チカゲリラーはダストラーとともに復旧工事を行っていた工事員を襲い始める。
現場に残っていた青梅と緑川、あきらの3人はデンジスパークし、チカゲリラーと戦闘を開始。
蟻酸の調査をしていた赤城と黄山も、デンジランドに届いたベーダー一族出現の反応に応じてデンジスパーク。デンジレッドはサイドカー型のマシンであるデンジマシーンに、デンジイエローはバギー型のマシンであるデンジバギーに乗り、石油基地へ急行した。

チカゲリラーが頭を地面にぶつけると、局地的な揺れが発生してデンジブルーたちの足場を崩す。
そこに、デンジレッドとデンジイエローを乗せたニ台のマシンが駆けつけた。
デンジマシーンを操り、ダストラーを蹴散らしていくデンジレッド。デンジマシーンの車体を傾け、サイドカーの側車を浮かせたままダストラーたちに突進していくのがカッコいい。
5人揃った電子戦隊を前に形勢不利と見たチカゲリラーは爆発を起こし、それに紛れて姿を消す。

アスレチッククラブに戻り、シャワーを浴びていたあきら。
しかし、突然シャワーから黒い原油が吹き出す。
あきらの悲鳴を聞いて駆けつけた青梅は覗きと思われて原油を顔に浴びせかけられる。
チカゲリラーが起こした地盤沈下で沈んだオイルタンクから流出した原油が下水道に流れ込んだことで、たちまち東京各地の水道から原油が吹き出すようになってしまったのだ。
料理をしようとした主婦の眼の前でガスコンロは炎上、子供が掘った砂場からも原油が溢れる。
水道局や警察が水道を使用しないように周知徹底を行う対応に追われる中、アスレチッククラブの子供達は、排水を行う下水道から原油が吹き出しているのを目撃。
彼らは原因を突き止めようと興味本位でマンホールに入り、下水道の様子を見に行ってしまう。

こうして、ヘドラー将軍の計画通り、チカゲリラーの火炎地獄作戦の準備が完了した。
水道に原油が充満した今、東京はマッチ一本で火炎地獄と化す地獄絵図へと変わろうとしていた。
ヘドリアン女王は、その後に訪れる静かな死の世界、腐った世界の到来を楽しみに高笑いする。
その頃、下水道を探検していた子供たちの前に、チカゲリラーの巨大な顔が出現。
子供たちを蒸し焼きにしようと、下水道内部に火災を引き起こし、巨大な炎が子供たちを襲う。
一方、アスレチッククラブにいた電子戦隊も、テレビのニュースで地下道の火災を知る。
このままでは東京全体が炎上し、火の海地獄へと変わってしまう。

そんな中、アスレチッククラブに通う少女・ゆみ子から、アスレチッククラブの子供たちがマンホールから下水道に入ったことを教えられた電子戦隊は、子供たちを救うべくデンジスパークする。
そこにアイシーが現れ、電子戦隊をアスレチッククラブの地下へと連れて行く。
アイシーはアスレチッククラブの地下に、デンジランドまで10秒で移動することが出来る移動装置・デンジシューターを作っていた。デンジリングに反応して開いた扉からデンジシューターに乗り込んだ電子戦隊は、マッハ3のスピードでデンジランドに到着。
電子戦隊は幼き命を守るため、デンジタイガーに乗って発進する。

デンジタイガーの出撃を知ったベーダー一族は、チカゲリラーに行動開始を命ずる。
巨大化したチカゲリラーがオイルタンクを破壊すると、巨大な爆炎が石油基地を包んだ。
街が大混乱に陥る中、クローラーを出して着陸したデンジタイガーは、チカゲリラーの攻撃を受けながら炎の中を突き進み、石油基地へと向かう。
デンジタイガーが炎の中を突破するシーンは「バトルフィーバーJ」のバトルシャークの空と海を制する巨大母艦というコンセプトを受け継ぎ、クローラーを展開して巨大戦車となるギミックが追加され陸をも制するパワフルさをも備えた、デンジタイガーの魅力を十全に演出したシーンだ。

だが、チカゲリラーの工作で地盤が緩んでいた地帯に誘い込まれたデンジタイガーは、地盤沈下に巻き込まれ土砂の中に埋没し、クローラーが空転して脱出困難に追い込まれる。
急がなくては子供たちが下水道の中で蒸し焼きになってしまう。
埋没したデンジタイガーと炎上する石油基地に、勝利を確信するベーダー一族。
だが、電子戦隊は小さな命を守るため、愛と勇気の炎を燃やす。
デンジレッドの操縦で、出力を向上させるデンジパワーを発動させたデンジタイガーは、土砂から脱出。デンジフルスピードで速度を上げ、石油基地に突っ込んでいく。
手中に収めかけていた勝利がするりと逃げていく光景を目の当たりにしたヘドリアン女王とヘドラー将軍は、自分たちの計算を上回るデンジタイガーの凄まじい性能に絶句する。

石油基地に辿り着いた電子戦隊は名乗りを上げる。
「見よ!電子戦隊デンジマン!」
ミラーの抹殺指令を受け、ベーダー一族が電子戦隊に襲いかかる。
デンジマンはデンジスティックをナイフとして使い、次々にダストラーを蹴散らす。手持ちナイフとしてだけでなく、投げナイフとして使い、的確に命中させてダストラーを討つのがカッコいい。
ダストラーを一掃し、残すはチカゲリラーのみ。
チカゲリラーは地面を炎上させ、電子戦隊を寄せ付けまいとする。
炎に包まれる電子戦隊は、デンジジャンプで跳躍し、炎の中から脱出。
さらにデンジスティックを地面に突き立て火柱を走らせた電子戦隊は、この攻撃で怯んだチカゲリラーに最後のトドメのデンジブーメランを炸裂させた。

だが、ベーダー怪物は体内の細胞組織を自在に組み替えて、巨大化することが出来る。
暴れまわる巨大チカゲリラーに対抗すべく、デンジタイガーからデンジファイターが発進。
デンジファイターはダイデンジンへと変形。
電子戦隊を乗せたダイデンジンは、デンジレッドの「アクション!」の指令で起動した。

ダイデンジンブーメランを振るい、チカゲリラーと戦うダイデンジン。
怒りのヘドリアン女王はなんとしても憎きダイデンジンを粉砕するように命じ、指令を受けたヘドラー将軍はチカゲリラーを援護させるべくベーダー戦闘機隊を発進させる。
ベーダー戦闘機隊の攻撃がダイデンジンを襲うが、そこに自動操縦のデンジタイガーも飛来。
デンジタイガーがミサイルを発射してベーダー戦闘機隊を倒せば、ダイデンジンもデンジボールやパンチを繰り出しベーダー戦闘機隊を破壊する。
「バトルフィーバーJ」の、巨大怪人と母艦から発進した巨大ロボの対決というクライマックス・シーンを踏襲しつつ、巨大ロボと巨大怪人だけでなく、母艦や敵戦闘機も加わった大規模な戦闘シーンが展開されており、見応え抜群の演出だ。
ベーダー戦闘機隊を一掃したダイデンジンは、デンジ剣を取り出しチカゲリラーの首を刎ねる。
そして、必殺の電子満月斬りでチカゲリラーの体を一刀両断するのだった。

またしても敗北したベーダー一族は電子戦隊への怒りを燃やす。
一方、勝利した電子戦隊も、子供たちを救うべく地下道へ急行。鉄の扉も透視するデンジスコープで子供たちを発見、戦車の鋼鉄も突き破るデンジキックで壁を破壊し、子供たちを救出した。

ヘドリアン女王への怒りは日ごと高まるばかりである。
平和な僕らの街を守る勇者は、電子戦隊しかない。
頼むぞ、デンジマン。戦え!ダイデンジン!

ヘドリアン女王の残酷さと慈悲深さを兼ね備えた二面性の表現、幼き命を守るために命をかける電子戦隊の使命などが描かれた第3話。
やはりこの回の最大の特色は、前作「バトルフィーバーJ」からのスケールアップを否が応でも感じさせる巨大ロボや巨大怪人、母艦と戦闘機隊が入り乱れる迫力のロボ戦シーンだろう。
「バトルフィーバーJ」でも、母艦バトルシャークとエゴス戦闘機隊の戦闘が描かれた回はあったが、バトルフィーバーロボと悪魔ロボットの戦闘シーンは基本的にバトルフィーバーロボと悪魔ロボットの一騎打ちとして演出されていた。
今回の戦闘シーンは、巨大化したベーダー怪人に対抗すべく巨大ロボ・ダイデンジンが発進、ベーダー怪人を援護すべく現れたベーダー戦闘機隊に対し、母艦のデンジタイガーも自動操縦でダイデンジンを援護すると、お互いが持てる戦力を惜しみなく投入して戦闘する総力戦の様相を呈しており、非常に見応えのある戦闘シーンとなっていた。

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