あらすじ
とある遊園地の一角にあるスリラーハウス。
そこに次々と子供たちが入っていくが、誰1人として戻ってくることはなかった。
その事件の調査のために遊園地に潜入した城茂は、支配人・北村の行動に疑念を抱く。
狙われた子供たち 立花藤兵衛との運命の出会い
今回、城茂と岬ユリ子がブラックサタンを追って現れたのは、富士の裾野に広がるアミューズメントパークとして現在も人気の高い遊園地、富士急ハイランド。
そこでは、サソリ奇械人が子供たちを「レインジャー子供部隊」にするべく暗躍しており、豪華景品を目当てにスリラーハウス「ショック119」に挑んだ子供たちを罠に嵌めて拉致していた。
城茂と岬ユリ子は子供たちをブラックサタンの魔手から救うべく、戦うことになる。
そしてこのエピソードからついに、「ストロンガー」にもおやじさんこと立花藤兵衛が参戦。
グランプリレース優勝を果たす一流オートレーサーを育て上げる夢を抱き続けるおやじさんは、その人材発掘のため、有望な若者を探して愛車のジープで日本中を旅する道楽親父となっていた。
その過程で、城茂の荒削りながらに才能を感じさせるバイクの操縦を見たおやじさんは、スカウトのために城茂を追った際、彼とブラックサタンが戦っているのを目撃し、助太刀。
そして、城茂や岬ユリ子が子供たちを救うためにブラックサタンと戦い、「仮面ライダー」として戦う姿を見たことで、自分の知らないところで新たな仮面ライダーと悪との戦いが始まっていたことに気付いたおやじさんは、オートレーサーのスカウトを兼ねて二人を追い回すことになる。
「ストロンガー」の特色である、ブラックサタンを追ったさすらいの旅を描くロード・ムービー形式に合わせ、おやじさんもさすらいの旅に加わるのだった。
平和な富士急ハイランド。しかしそこにも、ブラックサタンの魔手が伸びていた。
富士急ハイランドの支配人・北村は、名物というスリラーハウスに子供を誘っていた。
スリラーハウスをクリアした子供たちには、人気を攫っていたポピーの人気商品「ジャンボマシンダー」や、美しい人形などの豪華景品が出るが、スリラーハウスには大人は入れないのだという。
スリラーハウスを気味悪がる少女・エミの兄は、景品の1つである人形を欲しがるエミを慮り、景品獲得のために友人と連れたってスリラーハウスに挑戦を決める。
北村はエミの兄たちをスリラーハウスへと案内し、従業員たちをスリラーハウスの中へ急がせる。
そこに、帰省のため休んでいた従業員の一人・三枝が、支配人である北村に休暇をもらった感謝の意と現場復帰を伝えにやってきた。だが、三枝は北村の様子がおかしいことに気づく。
三枝は、北村の右手の指がまるで蠍の鋏のように動いていることに気づき、不審に思うのだった。
その頃、富士山麓のある地点でブラックサタンの活動している気配をいち早く感づいた城茂は、一路富士山麓へ向かっていた。そんな城茂の往く道に、一人の男がいた。
眼の前を通っていった城茂のバイクの腕を見込み、自分が鍛え直せば世界一のオートレーサーになれると見込んだ男は、愛車のジープに乗って城茂の後をついていく。
その男こそ、かつて「仮面ライダー」と呼ばれる戦士たちと共に戦ってきた、立花藤兵衛だった。
スリラーハウスに入った子供たちが仕掛けに怖がりながらも前進していた。
だが、その様子を陰から見ていた従業員たちは、なにかの品定めをするように子供たちの度胸を評価する。三枝がそんな従業員たちを不審に思う中、他の従業員たちの耳には、サタン虫に寄生されてブラックサタンの操り人形とされた証の黒い痣が浮かんでいた。
荒野をカブトローで疾走する城茂。
そんな城茂とすれ違った男の耳にも、黒い痣が浮かんでいた。
男はブラックサタン戦闘員の姿を現し、城茂の接近を報告する。
富士急ハイランドの従業員たちが皆サタン虫に寄生され、道すがらの男もブラックサタンの偵察員であるという描写で、人間に寄生して操り人形にするブラックサタンの恐ろしさが表現された。
道ですれ違った何の変哲もない男も、耳に痣が浮かんだブラックサタンの手先かもしれない。
隣人すらも信用できないような、社会不安を煽る恐ろしさがそこにはある。
密かにサタン虫に寄生された者を増やし、社会を乗っ取ってしまう恐怖が演出されている。
スリラーハウスの行き止まりに辿り着いた子供たちの前に北村が現れ、シャッターで子供たちを閉じ込めると、天井から丸鋸が出現して子供たちを襲い始めた。
子供たちが丸鋸を必死で避けるべく床に這いつくばると、今度は床が抜け、子供たちは地下へと落下する。そこには北村が待ち受けていた。そこに駆けつけた三枝は、眼の前の北村が自分の知っている支配人でないと糾弾する。すると、北村が苦しみ始め、耳からサタン虫が出現。
サタン虫はブラックサタンのサソリ奇械人としての正体を現した。
サソリ奇械人は右腕をマジックハンドのような内蔵メカで伸ばし、鋏で三枝を殺害。
子供たちに、ブラックサタンのテストを合格した体力・気力の優れた存在として、還らずの山に連れて行き、「ブラックサタンレインジャー部隊」に仕立て上げることを宣告する。
サソリ奇械人のデザインは王道のサソリモチーフ怪人という正統派の趣だが、右腕の鋏を飛び道具として使うべく、マジックハンド式のメカを右腕に内蔵することで伸縮自在にしているのが新味。
メカニカルな要素が特徴である奇械人らしく、伸縮自在の腕という能力に内部メカの描写を加えたことで、奇械人としての特徴を見事に表現しているのが素晴らしい。
その頃、喫茶店でコーヒーを嗜んでいたタイタンは、城茂が富士山麓へ向かっているのを目撃。
罠に嵌めるため、その行く手にブラックサタン戦闘員を出現させる。
城茂は奇襲をかけてきたブラックサタン戦闘員に臆せず立ち向かうと、ブラックサタン戦闘員は逃走して姿を消した。城茂がそれに気を取られた瞬間、背後から網を持ったブラックサタン戦闘員の別働隊が出現。動きを封じられた城茂は、ブラックサタン戦闘員に痛めつけられる。
さらに、車で待機していたブラックサタン戦闘員が、ロケット砲で城茂を狙い撃つ。
だがそこに、城茂を追ってきた、おやじさんこと立花藤兵衛が現れた。
自分の知らないところで、新たな悪の組織が胎動していたことを知ったおやじさんは、ロケット砲の砲身を掴み、砲撃の方向を変えて城茂を救い、助太刀を宣言。
おやじさんをおっさん扱いし、怪我すると警告する城茂に言い返していたおやじさんは、その隙を突かれて戦闘員に殴打される。助けに入ろうとした城茂の足を、巨大な鋏が捕らえた。
鋏の主は地中から現れたサソリ奇械人だった。サソリ奇械人は城茂を痛めつける。
だが、城茂はそんな窮地にも不敵な笑みを浮かべ、両腕の電極を擦り合わせる。
変身ベルト・エレクトラーがスパークし、仮面ライダーストロンガーがその姿を現した。
サソリ奇械人はブラックサタンオートバイ部隊を呼び出した。
ストロンガーもカブトローに乗って対抗し、次々に戦闘員を跳ね飛ばす。
サソリ奇械人は地中から右腕のマジックハンドを伸ばし、鋏でカブトローの車輪を掴んで攻撃する。だが、ストロンガーは全く動じずに、カブトローの車体に「エレクトロファイヤー」で高圧電流を流すことで、カブトローの車体を通してサソリ奇械人にダメージを与える。
さらにストロンガーは、電磁石の作用によって磁力を発生、鉄を含んだ物体を高速度で引き寄せる「電気マグネット」を発動。それによってブラックサタンオートバイ部隊のオートバイはコントロールを失い、岩肌に激突して全滅する。
ひとり残されたサソリ奇械人もストロンガーの力の前に劣勢になり、捨て台詞を残し撤退する。
ストロンガーの代名詞とも言える、地面に電流を流し火柱を走らせる技・エレクトロファイヤーの初披露となった戦闘だが、その初披露が応用ともいえるカブトローに電流を流すことでカブトローを拘束する敵に電流を流すという戦法なのが面白い。
電気マグネットによるオートバイ部隊の一掃も合わせ、既にストロンガーが自らの持つ力を完全に使いこなして戦う頼もしさが十全に演出されている。
富士急ハイランドでは、城茂と同じくブラックサタンを追っていた岬ユリ子がその平穏さに拍子抜けしていた。だが、観覧車のゴンドラから三枝の惨殺死体が発見され、空気は一変する。
合流した城茂に、もっとしっかり場内を探るように嫌味を言われた岬ユリ子は、富士急ハイランド内を調べ始めた。だが、その様子はタイタンによって遠くから監視されていた。
1ツ目タイタンとしての正体を現したタイタンは、サソリ奇械人に城茂抹殺指令を出す。
スリラーハウスに入っていったまま戻ってこない兄たちを心配し、涙していたエミと出会った岬ユリ子は、一緒にスリラーハウスの中へエミの兄たちを探しに行くことになった。
ユリ子はそこで、ブラックサタン戦闘員が子供たちを拉致すべくトラックに運び入れているのを目撃。ユリ子はエミを庇いながら、戦闘員を蹴散らしていく。
だがその前に、サソリ奇械人が現れ、左腕の砲身からサソリ麻酔銃を発射。
サソリ麻酔銃の鋭い針がユリ子の右腕に突き刺さり、その猛毒でユリ子は意識を失ってしまう。
ユリ子とエミを捕らえたサソリ奇械人は、遊園地という舞台を活かした処刑を思いつく。
すなわち、遊園地の象徴であるジェットコースターのレールの上にユリ子とエミを縛り上げ、ジェットコースターを発車、轢き殺すという、猛スピードのジェットコースターによる轢殺処刑だ。
助けを求めるエミの声も虚しく、ブラックサタン戦闘員はジェットコースターを発車させる。
もはや一刻の猶予もない。残酷な処刑ショーにほくそ笑むサソリ奇械人。
だがそこに、城茂の口笛が聞こえてきた。
自分の出番が来たと宣言した城茂は、手袋を脱ぎ捨て、両腕を擦り合わせる。
「変身…ストロンガー!」
エレクトラーがスパークし、アーク・フラッシュと共に姿を現した仮面ライダーストロンガー。
ストロンガーは磁力の反対の働きをする反磁力線によってジェットコースターを逆流させ、ユリ子とエミを救うと、サソリ奇械人と戦闘を開始する。
サソリ麻酔銃を躱し、ブラックサタン戦闘員の砲撃をも躱すストロンガー。
高圧電流を帯びた手足は、ブラックサタン戦闘員程度なら触れるだけでひとたまりもない。
富士急ハイランドの足漕ぎボートに乗って迫るブラックサタン戦闘員を、次々に撃退、水中に落としていくストロンガーは、ついにサソリ奇械人を追い詰める。
サソリ麻酔銃を撃とうとしたサソリ奇械人の隙をつき、ストロンガーはエレクトロファイヤーを発動。階段の手摺に高圧電流を流し、火柱を走らせてサソリ奇械人に大ダメージを与える。
苦し紛れに跳躍し、観覧車の上に逃げたサソリ奇械人だが、金属で出来ている以上、ストロンガーから逃れる術はない。サソリ奇械人を追い、またしても放たれたエレクトロファイヤーが炸裂。
感電したサソリ奇械人は痙攣したまま観覧車から落下し、ほぼ虫の息で地中に逃亡した。
ストロンガーはユリ子とエミを縛る縄を解くのだった。
サソリ奇械人によって不覚を取った岬ユリ子は、城茂を見返して子供たちを救うべく、ブラックサタン戦闘員が運転するトラックを追跡していた。
その頃、愛車のジープがガス欠で動けなくなったおやじさんは、通りかかったトラックの運転手にガソリンを分けてもらえないかと頼む。そのトラックこそ、ブラックサタンのトラックだった。
頑なに話を聞こうとしない運転手の耳に、黒い痣が浮かんでいるのを見つけたおやじさんは、なんとかトラックに乗り込もうとするが、結局弾き飛ばされてしまう。
おやじさんが悔しがっていると、そこにエミを後ろに乗せ、テントローを飛ばすユリ子が現れた。
ユリ子はブラックサタンのトラックの情報を聞き出すと、ガソリンを分けてもらえないかと頼むおやじさんに、逆にエミを預けてトラックを追跡する。
還らずの山に急ぐブラックサタンのトラックを、ユリ子は懸命に追う。
トラックの前に回り込み、身を呈してトラックを停車させたユリ子は電波人間タックルに変身。
トラックから現れたブラックサタン戦闘員を電波投げで吹き飛ばしていく。
しかしそこに、サソリ奇械人が現れ、サソリ麻酔銃を放った。
変身して身体能力の向上したタックルには、サソリ麻酔銃は通じなかったが、サソリ奇械人は右腕を伸ばし、鋏でタックルを捉える。だがそこに、口笛とともにストロンガーが現れた。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ」
カブトローから降りたストロンガーは、高らかに名乗りを上げる。
「聞け、悪人ども。俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!」
ストロンガーはタックルを救出し、子供たちの救出を任せると、サソリ奇械人にとどめを刺すべく最後の戦いに挑んだ。サソリ奇械人の鋏に、ストロンガーは高圧電流を流す電タッチで反撃。
さらに、サソリ奇械人最大の武器であるマジックハンドを伸ばした一撃をも正面から受け止め、力の差を見せつけたストロンガーは、マジックハンドに高圧電流を流してそれを破壊。
右腕の鋏を失ったことで戦意喪失し、跳躍して逃亡を図ったサソリ奇械人だが、ストロンガーは高圧プラス電流を流し、相手に電撃ショックを与えるエレクトロファイヤーで攻撃。
そこから逃れようとしたサソリ奇械人が足を踏み入れたのは、金属で出来た工事用の足場だった。
電気を通す場に立ち、再びエレクトロファイヤーを食らう羽目になったサソリ奇械人には、もはや戦う力は残されていない。そこに、ストロンガーはストロンガー電キックを炸裂させる。
サソリ奇械人は爆発して散り、それを監視していたタイタンは逆襲を誓う。
こうして、ブラックサタンレインジャー部隊にされそうになった子供たちは助けられた。
ガス欠のジープを押してきたおやじさんに連れられてきたエミも、無事に兄と再会出来た。
おやじさんは、子供たちを助けたユリ子を称える。その頃、城茂は次の戦場へ旅立っていた。
ブラックサタンに攫われた子供たちは仮面ライダーストロンガーによって助けられた。
だが、悪魔の手はとどまろうとしない。
頑張れ!正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!
改造電気人間の力を使いこなすストロンガーの圧倒的な頼もしさが演出されたエピソード。
サソリ奇械人も、ブラックサタンオートバイ部隊も、その電気の力の前には手も足も出ず、「強さ」を最大の特徴とするストロンガーの魅力が存分に堪能できる話となっている。
あまりにも相手が悪すぎたサソリ奇械人だが、マジックハンドの右腕と、砲身になっている左手を兼ね備えた、武器を満載したメカニカルな魅力に溢れた名怪人。
また、密かにサタン虫を蔓延させて富士急ハイランドを乗っ取り、各地に監視の目を置いているブラックサタンの不気味さ、底知れなさの演出も見事。
ストロンガーとブラックサタン、どちらの魅力も楽しめる佳作エピソードだった。