あらすじ
ベーダーの陰謀によって、三太の住んでいる団地が危機に見舞われた。
珍しい植物として団地に入り込んだ怪物・ツタカズラーは、住民を養分にしてどんどん成長する。そして、デンジマンの前にツタカズラーが現れる。
団地を襲う成長する悪意 窮地を救えデンジタイガー
今回のベーダー怪物は、ベーダー04・ツタカズラー。
ヘドラー将軍によって選ばれ、ダイデンジンを引き裂くべく地球に送り込まれたツタカズラーは、卵から孵化すると珍しい赤い花へと成長し、その珍しさに目が眩んで自宅に持ち帰った男・黒部によって団地に運び込まれると、黒部が住む団地の人々に蔦を伸ばして次々と襲いかかり、彼らの体液を養分として成長し、ベーダー怪物の姿へと急成長した。
ツタカズラーは身体に絡みつく蔦を伸ばし、標的に絡みつかせることで窒息死させるほか、身体から一酸化炭素を含んだガスや窒素ガスを噴射して周囲を酸欠状態にすることが可能。
ツタカズラーは巨大化した後、デンジマンたちが一時退避した廃ビルに蔦を絡みつかせて絞め上げることで崩落寸前に追い込み、デンジマンたちがダイデンジンに乗り込むとコクピット内にガスを注入、さらに排気装置を蔦で封じることでデンジマンたちを酸欠状態に追い込みギリギリまで追い詰めた、ヘドラー将軍肝入りの存在なだけはある強豪ぶりを見せつけている。
ムササビラーにルパンカメラー、次々に電子戦隊に敗れていくベーダー怪物。
ヘドリアン女王はベーダー魔城に、ダイデンジンの電子満月斬りで刎ねられたベーダー怪物の首を並べ、彼らが電子戦隊に敗れた痛みと苦しさを想って涙し、電子戦隊への憎悪を燃やしていた。
このままでは電子戦隊の思うままにされ、地球をヘドロの海にすることなど出来ない。
焦燥感を募らせるヘドリアン女王は、ヘドラー将軍にダイデンジンを八つ裂きにするように命じた。ヘドラー将軍はそれを受け、ベーダー04・ツタカズラーの卵を呼び出す。
憎き電子戦隊を葬り去るにはツタカズラーが適役だと言うヘドラー将軍の進言を受け入れ、納得したヘドリアン女王はミラーに命じ、ツタカズラーの卵を孵化させる。
割れた卵からは、毒々しいほどに赤い、不思議な花が咲いていた。
ヘドリアン女王はその様子に満足の笑みを浮かべ、ヘドラー将軍はツタカズラーに超パワーをつけさせるため、「特殊な飼育」を行うべく、ミラーとケラーに命じ、ツタカズラーの花を地球へと運ばせる。こうして、ツタカズラーの花は地球の大地に植え付けられた。
冒頭で描かれたツタカズラー誕生シーンは、敵対する電子戦隊や、美しいものへの憎悪を徹底的に燃やすと同時に、電子戦隊に敗れたベーダー怪物が死の間際に味わった苦しさを思って涙し、電子戦隊を倒すための知略を提言するヘドラー将軍の進言を心より納得して受け入れ、信頼している部下や同族への深い愛情を示すヘドリアン女王の二面性が見事に演出されたシーン。
このヘドリアン女王の慈悲深さと残酷さを併せ持つ性格は、曽我町子氏の圧倒的な演技力で愛嬌と残酷性を両立する見事な演技で表現されており、鮮烈な印象を残す。
後年の「時空戦士スピルバン」で曽我町子氏が演じた女王パンドラが一見表情豊かながら、敵対しているスピルバンたちに留まらず、支配しているワーラーの配下に対しても氷のような冷酷さを持つ演技を見せていたのとは対照的で、同じ悪の組織に君臨する女王でありながら、脚本や監督の演出意図を正確に汲み取り全く異なるキャラクターとして成立させている確かな演技力が圧巻だ。
そんなヘドリアン女王から絶対の信頼を得ており、彼の進言によって女王が電子戦隊の前に焦燥感に駆られた心を落ち着かせる描写で、ヘドラー将軍の確かな実力も感じさせる一幕になっている。
夜が明け、アスレチッククラブで赤城に空手の指導を受けている少年・野田三太は、タクシー運転手である父・三郎を見送っていた。三郎は赤城に空手の指導をした過去もある旧知の仲だった。
友達と合流し、登校していた三太たちは、ツタカズラーの赤い花を見つける。
不気味なほどに赤く、これまで見たこともない珍しい花に興味を惹かれる子供たち。
そこに、所謂口うるさい近所のおじさんである男・黒部が、寄り道せずに学校に行けと説教をしながら現れた。だが、黒部は赤い花の美しさに魅入られてしまい、自分たちが見つけたんだという子供たちを追い払うと、花を鉢に移し、団地の自室に持ち帰ってしまう。
品評会に出せば10万円、20万円もくだらないと、欲にかられた笑みを浮かべる黒部。
赤城は今日もアスレチッククラブで空手の指導をしていた。
赤城と旧知の仲である父からの言伝を伝えた三太は、団地の自室に帰宅して夕食を食べていると、不審な物音が聞こえた。物音の主は三太曰くいじわるおじさん、そう、黒部だった。
黒部がベランダに赤い花を置くと、赤い花は突然光り始めた。
すると、またしても物音が響く。黒部がベランダを確認すると、赤い花を植えた植木鉢が割れていた。花は無事だったことに安堵した黒部は、ストーブの傍に花を置き、植木鉢の修理を始める。
すると、赤い花から蔦が伸び始め、黒部の身体にあっという間に巻き付き、締め上げ始めた。
締め上げられる苦しみに悶える黒部の前で、花は再び赤く光り始めると、ガスを噴出し始める。
ガスに包まれた黒部は、酸欠状態となって絶命した。
翌日、黒部は死体で発見された。団地で発見された変死体は世間を騒がし、警察による検死の結果、黒部はストーブの消し忘れによる一酸化炭素中毒と判断される。
現場を訪れた赤城と黄山は黒部の死体が、単なるガス中毒によるものではない形相だったことや、身体からベーダー怪物の発する臭いを感じる。
自分たちの見つけた赤い花を横取りした罰が当たったのだという子供たちの話から、赤城と黄山はベーダー怪物と赤い花に何か関係があると考え、赤城は屋上からロープを伝い、警察に封鎖されていた黒部の部屋に潜入。だが、そこに赤い花は既になかった。
その頃、ベーダー魔城では、せっかく送り出したのに未だに派手な行動を見せず、音沙汰がないままのツタカズラーに、ヘドリアン女王が苛立ちを見せていた。
何故ダイデンジンを八つ裂きにしないのかと苛立つヘドリアン女王だが、ヘドラー将軍はツタカズラーはベーダー怪物の強者であり必ず期待に応えてくれると説明し、それを聞いた女王は途端に機嫌を直してミラーを鏡へ変身させると、全宇宙で一番美しい自らの姿を見て高笑いする。
一瞬、ツタカズラーがなかなか行動を見せないことにヒステリックになりながら、ヘドラー将軍に説明を受けるとすぐに納得して上機嫌になるヘドリアン女王が面白い。
それだけ、ヘドラー将軍の信頼が厚いのだということがわかるシーンだ。
黒部の部屋に唯一残されていた赤い染みを分析すべく、赤城と黄山はデンジシューターでデンジランドに向かった。そんな中、あきらはタロット占いに夢中でカードを並べていてマイペース。
分析の結果、赤い染みは人間や動物の血液ではなく、赤城は子供たちが話していた赤い花の樹液ではないかと推測。あきらはタロット占いで団地に不吉な影に覆われていると占う。
赤城は事件の起こった団地に住む三太を心配し、三太の部屋に泊まり込んでいた。
赤城は三太の父に空手を教わった過去があり、三太の父が空手をやめた今も武道の師として仰いでいた。そのため、師の息子である三太のことを放っておけなかったのである。
するとそこに、女性の悲鳴が響いた。悲鳴の聞こえた部屋に急いだ赤城は、犠牲になった女性の身体から、またしてもベーダー怪物の匂いを嗅ぎ取り、部屋の天井に赤い染みを発見する。
赤い花が団地に潜んで人を殺す恐ろしいベーダー怪物だと考えていた赤城は、デンジスパークしデンジレッドに変身。デンジスコープで壁を透視すると、壁の中にツタカズラーが潜んでいた。
デンジパンチで壁を突き破り、ツタカズラーの蔦を掴んだデンジレッド。
だが、ツタカズラーは蔦を引き千切って逃亡。千切れた蔦から赤い樹液が迸るのを見たデンジレッドは、ベーダー怪物がこの団地で人間を襲って成長していると確信する。
次々に犠牲者が出る団地では、引っ越しを決意する人々が大勢出ていた。
赤城は電子戦隊の仲間に声をかけ、夜を徹して団地の中でベーダー怪物を待ち伏せする。
だが、夜が明けてもベーダー怪物は姿を現なかった。アンパンを食べて休憩する青梅。
しかし、一人で団地の部屋の中を見張っていたあきらが、ツタカズラーに襲われた。
あきらはデンジスパークしデンジピンクとなると、SOS信号を出し仲間を集合させる。
デンジイエローとデンジグリーンの助けで、ツタカズラーを団地から追い出したデンジピンク。
そして、5人揃った電子戦隊が、逃亡するツタカズラーの前に立ちはだかった。
「見よ!電子戦隊デンジマン!」
ミラーとケラーが駆けつけ、ダストラーに抹殺指令を出す。
電子戦隊とベーダーの一大決戦が始まった。
軽やかな技を見せ、ダストラーを蹴散らしていく電子戦隊。
デンジレッドはデンジパンチでツタカズラーに大ダメージを与えるが、ツタカズラーは地面に紛れて姿を隠すと、蔦を伸ばしてデンジレッドを絡め取り、締め上げ始めた。
デンジブルーがデンジスティックで蔦を切断し、難を逃れたデンジレッドはデンジスコープで地中に隠れたツタカズラーを発見し、デンジスティックを投げつけ地上へ引きずり出す。
そこに、最後のトドメのデンジブーメランが炸裂した。
だが、ベーダー怪物は、体内の細胞組織を自在に組み替えて巨大化することが出来る。
執拗に迫るツタカズラーの猛攻に、電子戦隊は廃ビルに一時退避。
ツタカズラーは蔦を伸ばし、電子戦隊が隠れた廃ビルに絡ませて周囲を塞ぐと、両肩からガスを噴射。窒息の危険に陥った電子戦隊は、デンジタイガー出動を要請。
要請に応え、アイシーがデンジタイガーを発進させた。
デンジランドの奥からとてとてと歩いてくるアイシーが可愛い。
ツタカズラーのガスに耐えていた電子戦隊の前に、デンジタイガーが到着。
デンジファイターが発進し、ダイデンジンに変形した。
蔦に締め上げられ、崩落寸前の廃ビルから脱出した電子戦隊はダイデンジンに乗り込む。
その頃、ベーダー魔城ではヘドリアン女王とヘドラー将軍が戦いの行方を見守っていた。
ヘドリアン女王はダイデンジンがきりきり舞いする様が見れるとエキサイトする。
ツタカズラーは蔦でダイデンジンを絡め取り、両肩からガスを噴射。
ガスを浴びたダイデンジンのコクピットは一酸化炭素と窒素が充満し、換気パイプや換気装置の全てが蔦で封じられていた。電子戦隊は酸欠に陥り、操縦不能となるダイデンジン。
絶体絶命の危機。その時、デンジタイガーが自動操縦でダイデンジンを援護。
デンジタイガーのデンジミサイルでツタカズラーの蔦が切れ、その隙にダイデンジンはデンジ剣を取り出すと、必殺の電子満月斬りを放ち、ツタカズラーを一刀両断した。
ヘドリアン女王は屈指の強者であるツタカズラーが敗北し、肩を落とすのだった。
戦いが終わり、赤城は久々に、師匠である三郎と稽古をしていた。
技のキレと凄みが出たことを評価する三郎は、息子の三太にも、赤城の指導を受けて強くたくましく育ってほしいと願いを託す。父の願いを受け、三太は赤城との稽古に励むのだった。
赤城の技に凄みがあるのは、ベーダー一族と戦っているからである。
赤城よ、もっと磨け、君の技を。恐るべきベーダー一族を倒すために。
がんばれ、電子戦隊デンジマン!
美しい花が高値で売れると欲に駆られた大人が犠牲になるあたりは、モンスターパニック映画などでもよく見る定番のパターン。一酸化炭素を含んだガスによって人を殺し、ストーブの消し忘れによる一酸化炭素中毒による事故と見せかけるツタカズラーの悪辣さも印象に残る。
酸欠状態の前では強化服を身に纏った電子戦隊も危ういなか、またしてもダイデンジンの危機を自動操縦で救ったデンジタイガーの頼もしさも演出されていた。
また、ヘドリアン女王の身内への愛情と、敵対者への憎悪の二面性も強調されたのが印象に残る。
なかなか目に見える行動を起こさないツタカズラーに苛立ちながら、ヘドラー将軍にツタカズラーの頼もしさを説明されると途端に機嫌を直して笑顔になるチャーミングさと、憎きダイデンジンが痛めつけられて狂喜する恐ろしさを兼ね備えたヘドリアン女王は、まさに曽我町子氏が演じたからこそ説得力を持って表現されたキャラクターで、とても魅力的な悪の女王だ。