「電子戦隊デンジマン」第11話「いのち泥棒を追え」感想

2024年7月10日水曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ベーダー一族はタイヤジコラーを生み出し、子供たちの魂を盗む。
教え子を襲われた赤城は、その怒りから単独行動を取ってしまい、ベーダーに捕まってしまう。
そして、ヘドラー将軍は教え子の魂と引き換えに、強化服のデンジストーンを要求し…。

子供を襲う恐怖のタイヤ 奪われた魂を救い姉弟の絆を守れ

今回のベーダー怪物は、人間を追尾するタイヤの姿に変身する能力を持つタイヤジコラー。
タイヤとなって轢いた人間の魂を奪い、カプセルに封じ込める能力を持つタイヤジコラーは、アスレチッククラブで赤城に空手の稽古をつけてもらっていた少年・紀夫を轢き、その魂を奪う。
紀夫の無事を祈り、自らタイヤジコラーに魂を差し出し犠牲となることで紀夫の魂の返却を求めた紀夫の姉・夏子の想いを受け、赤城はベーダーの調査で単独で突出してしまう。
そして、ベーダー一族によって捕らえられてしまうのだった。

ベーダー一族に捕まった赤城は、デンジマンの強化服に埋め込まれたデンジストーンを求めるベーダー一族の拷問に耐えながら、捕らえられた窮地を反撃のチャンスに変えるため、ベーダー一族の懐に潜り込み、ヘドリアン女王を一気に倒す乾坤一擲の反撃を目論む。
しかし、紀夫の魂の結晶を人質にされてしまい、手出しができなくなってしまう赤城。
果たして、赤城はこの絶体絶命の窮地を生き延びることは出来るのか…。

アスレチッククラブの生徒たちは、後楽園球場で赤城に空手の稽古を受けていた。
しかし、その様子はミラーとケラーに監視されており、彼女たちはアスレチッククラブの生徒の一人、紀夫が赤城に目をかけられていることに目をつける。
稽古が終わり、アスレチッククラブの生徒たちを見送る赤城。紀夫の姉の夏子は、赤城に空手の稽古を受けるようになってから紀夫が元気になったことにお礼を言う。

ベーダー魔城では、ミラーとケラーが隠し撮りした赤城と紀夫の写真を見たヘドリアン女王が、邪悪な策謀を燃やし笑みを浮かべていた。
紀夫と夏子の姉弟は両親もなく、夏子は病弱な紀夫をアスレチッククラブに通わせていた。
ヘドリアン女王は、そんな彼女たち姉弟を餌にするにはもってこいだと嘲笑い、ヘドラー将軍に命じてベーダー怪物の卵を孵化させ、タイヤジコラーを誕生させる。
「おめでたい、めでタイヤ~!!タイヤジコラーめにございます!」

翌朝、仕事へ向かう夏子と別れ、学校へ登校する紀夫の目前に、突然恐ろしいほどの速度で階段を転がり登ってくるタイヤが現れ、紀夫に直撃。タイヤは紀夫を轢過する。
悲鳴を聞いた夏子は気を失った紀夫の元に駆けつけ、高速で走り去っていくタイヤを目撃する。
病院に運び込まれた紀夫の顔にはタイヤに轢かれた跡が浮かび上がり、夏子の呼びかけにも応えることがない。赤城とともに病室に駆けつけたあきらは、悲しむ夏子を励ますのだった。

アスレチッククラブに戻った赤城とあきら。
青梅は今日もお腹が空いていて、黄山にライスカレーを早く作るように急かしていた。
まちきれずにアンパンを食べて待つ青梅に呆れる緑川とあきら。その中で、赤城は浮かない顔をして、紀夫を轢き逃げした、ひとりでに動くタイヤについて思案していた。
その頃、アスレチッククラブに向かっていた三太たちも、ひとりでに動くタイヤに襲われていた。
ようやくライスカレーが出来あがり、食べようとする青梅。だが、そこに現れたアイシーは、カレーを食べている場合じゃない、子供たちの悲鳴が街に響いていると伝える。
電子戦隊は、急ぎ街へと向かった。

空を飛び、地を駆けるタイヤが子供たちを追い回す。
駆けつけたデンジレッドがタイヤを蹴り飛ばすと、タイヤはタイヤジコラーの正体を現した。
ミラーとケラーは、タイヤジコラーが「魂泥棒」であると明かす。
タイヤジコラーの魂袋の中には、タイヤとなって轢いた人間の魂が込められたカプセルが大量に入っていた。タイヤジコラーはそうして奪った子供の活きの良い魂をエネルギー源にしているのだ。

電子戦隊は、タイヤジコラーから子供たちの魂を奪い返すべく戦いを挑んだ。
だが、タイヤジコラーは砲撃に隠れ、タイヤになって逃亡を図る。
デンジマンは100メートルを3秒で走るスピードでタイヤジコラーを追うが、逃がしてしまった。
病院で紀夫を診察した医師は、脳波には異常がないのに、反応が一切見られない紀夫の状態を魂が抜けた状態としか形容できずにいた。電子戦隊と医師が、紀夫がタイヤジコラーによって魂を盗まれたという話をしているのを聞いた夏子は、病室を抜け出してしまう。
電子戦隊は夏子を探すために街に出た。

夏子は、弟を救うため、悲壮な決意とともにタイヤジコラーを探していた。
夏子を発見したミラーとケラーは、夏子の魂をも食い物にすべくタイヤジコラーを呼び出す。小さなタイヤとなって隠れたタイヤジコラーは、夏子に踏みつけられ正体を現した。
夏子は自分の命を差し出す代わりに、弟の魂を返すように懇願。
タイヤジコラーは夏子を食い物にしようと迫るが、そこに電子戦隊が駆けつけた。

デンジマシーンからの砲撃でタイヤジコラーを食い止め、夏子を救出したデンジレッドとピンク。
デンジレッドは、弟を救うためとはいえ、自分の命を捨てる行為をした夏子を咎めるが、タイヤジコラーはそこに容赦なくタイヤ攻撃を仕掛ける。
高速で飛んでくるタイヤから夏子を庇ったデンジレッドは、夏子をデンジピンクに任せると、単独でデンジマシーンでタイヤジコラーを追跡。
タイヤジコラーは、わざと姿をちらつかせ、デンジレッドを誘き寄せるように逃亡を重ねる。
教え子とその姉の生命を危険に晒したタイヤジコラーへの怒りに突き動かされたデンジレッドは、待ち構えていたミラーとケラーの罠に嵌ってしまい、超高圧電流を流す網に捕らえられ、電流によって気絶、戦闘服の機能も一時的に停止してしまい、ベーダー一族に捕まってしまうのだった。

ベーダー一族のアジトに運ばれたデンジレッド。やがて、超高圧電流で一時的に停止した戦闘服の電磁メカの機能がデンジストーンの作用で回復し、赤城も意識を取り戻した。
デンジレッドを捕らえたベーダー一族は、デンジストーンがデンジマンの戦闘服で最もパワーのある石であり、それさえあればダイデンジンを倒すことすら可能だと分析。
ヘドラー将軍はデンジストーンの摘出作業を急がせる。
赤城は、ベーダー一族がデンジストーンを奪おうとしていることや、ベーダー一族がいきなり宿敵であるデンジレッドを本拠地のベーダー魔城に運び込むようなヘタを打たなかったことを悟る。
デンジレッドは、ピンチを逆に利用しようと考えた。敵の懐に潜り込んだこの機会に、このまま時間を稼ぎ、一気にベーダー魔城に乗り込んでヘドリアン女王を討とうというのだ。

デンジストーンを戦闘服から摘出すべく、巨大ドリルがデンジレッドの額に迫る。
デンジレッドは強化服をデンジリングに収納することでデンジストーンを守るべく、変身を解き赤城の姿に戻る。ヘドラー将軍は取り押さえられた赤城から、デンジリングを奪う。
そこに、赤城を探す4人の電子戦隊が基地に接近しているという知らせが届いた。
ヘドラー将軍はタイヤジコラーに命じ、タイヤとなって姿を現させることで電子戦隊をアジトと逆方向に誘導させる。タイヤジコラーの機動力を活かし、揺動による時間稼ぎを果たしてみせる、ヘドラー将軍の指揮官としての優秀さが伺えるシーンだ。

デンジリングから強化服を取り出そうとするベーダー一族だが、デンジリングは何をしても傷一つつかない。ヘドラー将軍の全力にすらビクともしないデンジリング。
ミラーとケラー、ヘドラー将軍はデンジリングが赤城のテレパシーにしか反応しないのだと判断し、あえてデンジリングを赤城に返却。赤城をデンジレッドに変身させるべく、ヘドラー将軍が決闘を挑んだ。
赤城はヘドリアン女王を連れてくれば戦ってやると不遜な態度で返すが、憎き宿敵の口から女王の名を出されたことに激昂したヘドラー将軍に頬を斬られる。
ヘドラー将軍は、女王を侮辱された怒りで赤城を暴行し、地下牢に閉じ込めるのだった。

満身創痍の赤城は、地下牢の中で夏子と紀夫の姉弟のことを考えていた。
両親のない身で、必死に生きていたにも関わらず、ベーダー一族の魔手によってささやかな幸せも奪われようとしている姉弟に、赤城は希望を捨てず待っていてほしいと祈るのだった。
ベーダー魔城では、ヘドリアン女王がヘドラー将軍たちを生ぬるいと叱責。
頭を使って赤城に強化服を着せ、デンジストーンを奪うように命ずるのだった。
それを受けたヘドラー将軍は、赤城の眼の前で、タイヤジコラーに紀夫の魂が入ったカプセルを破壊させようとする。タイヤジコラーがハンマーを振り下ろし紀夫の魂の入ったカプセルを破壊すれば、たちまちに紀夫の命は潰える。
子供を見殺しに出来ない赤城の正義感を突いた非道な作戦に、赤城は怒りを燃やす。

ついにタイヤジコラーがハンマーを振り下ろしたその時、赤城はデンジスパークした。
だが、デンジレッドとなった瞬間、天井から檻が降下し、デンジレッドを閉じ込める。
檻に触れれば火花が走り、デンジレッドは身動きが取れない。
絶体絶命のその時、強化服のデンジストーンからSOS信号が放たれ、停車していたデンジマシーンがオートコントロールでデンジレッドの元へ急行。
デンジマシーンは壁を突き破り、デンジマシンガンでアジトの設備や檻を破壊する。
脱出に成功したデンジレッドは、車に乗って逃亡するタイヤジコラーを追跡する。

デンジレッドを乗せたデンジマシーンは、幾多のバリケードや、地雷による大爆発を突破。
恐ろしいほどの火薬が使われた地雷原突破シーンは迫力満点だ。
さらに、ダストラーの砲撃や、戦闘機部隊の空爆が次々にデンジマシーンを襲う。
だが、デンジマシーンはデンジマシンガンで戦闘機を撃ち落とした。
そしてそこに、4人を乗せたデンジバギーをも駆けつける。
デンジバギーから飛び降りたデンジブルーとグリーンがダストラーを蹴散らし、デンジイエローとピンクを乗せたデンジバギーが包囲網を突破。
さらに、デンジレッドはタイヤジコラーを乗せた車に飛び乗り、タイヤジコラーを車から引きずり下ろすと、紀夫たちの魂が入った魂袋を奪取する。

追い詰められたタイヤジコラーの前に、電子戦隊が5人揃って名乗りを上げた。
「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
「なんとか言わねば…」
「抹殺せよ!」
デンジマンとベーダー一族の決戦が始まった。
タイヤジコラーはタイヤとなって高速回転、囲んだデンジマンたちを吹き飛ばし、さらに何度も往復してデンジマンたちに体当りし、デンジマンを轢き潰そうと目論む。
デンジレッドはタイミングを合わせデンジジャンプし、飛び蹴りでタイヤジコラーを止めようとするが、逆に弾き飛ばされた。デンジブルーのスクリューキックも通じない。
そこでデンジマンは、デンジタワーを組み、一斉にジャンプ。
デンジスティックを5本同時に投げ、突き刺すことで大ダメージを与える。
「五本も刺したな!!」
そこに、最後のトドメのデンジブーメランが炸裂した。

だが、タイヤジコラーは体内の細胞を組み替えて巨大化し、巨大な交通標識を持って暴れまわる。
デンジマンはデンジタイガーを発進させ、デンジファイターがダイデンジンに変形。
デンジマンはダイデンジンに乗り込み、デンジボールでタイヤジコラーを攻める。
交通標識をデンジボールで絡め取られ、ダメージを負ったタイヤジコラー。
ダイデンジンはデンジ剣を取り出し、電子満月斬りで勝利するのだった。

タイヤジコラーが倒され、夏子が紀夫の額に魂の入ったカプセルをかざす。
すると、顔からタイヤジコラーに轢かれた跡が消え、紀夫は意識を取り戻した。
二人きりの姉弟に笑顔が戻ったのである。
赤城一平の命がけの頑張りで、紀夫の命を救うことが出来た。
それにしても、ベーダー一族は恐ろしい。
早くやっつけてくれ!デンジマンよ!ダイデンジンよ!!

タイヤジコラーは、言動の節々にユーモラスな面が見られるが、それがかえって恐ろしい印象を与えているキャラ。とぼけた言動のまま、狙った相手を冷徹に轢き潰し魂を奪い、それを粉々に砕くことを平然と行う底しれない恐ろしさを感じさせる、秀逸なキャラクターだ。

普段は冷静で的確なリーダーシップを発揮する赤城だが、今回は教え子を直接狙われただけにとどまらず、その姉まで毒牙にかけようとするベーダー一族に怒りを爆発させ、単独で突出した結果罠に嵌り捕まってしまう失敗を犯している。
やみくもに怒りを燃やして向かうだけでは勝てないベーダー一族の恐ろしさを感じさせると同時に、電子戦隊の最大の武器はやはり団結のスクラムであり、一人の突出ではベーダーの脅威に勝利を掴めないあたりに、「団結」をテーマにしたスーパー戦隊シリーズらしい作風を感じる展開だ。

赤城を捕らえ、デンジストーン入手まであと一歩まで迫ったヘドラー将軍の優秀さもまた印象に残るエピソード。4人の電子戦隊がアジトまで迫っているとあれば、機動力に優れるタイヤジコラーを囮としてアジトと逆方向に誘導するなど、指揮官としての有能さを見せつけている。
そんなヘドラー将軍だが、ヘドリアン女王からすればまだ手ぬるい面もあり、また赤城に女王を侮辱されたと感じれば怒りのままに赤城を暴行するなど、人間的な弱さも垣間見せている。
とはいえ、女王を侮辱された相手を決して許さないベーダー一族への厚い忠誠心は、電子戦隊にとって脅威。ヘドリアン女王といい、悪のベーダー一族もまた多面的な性格設定がされた、人間的な厚みのあるキャラクターとして描かれていることで魅力的なドラマが展開されている。

今回はデンジマシーンの活躍回になっていて、デンジレッドの窮地をオートコントロールで救い、バリケードや地雷原、砲撃の爆炎を突破するカッコいい活躍を見せている。
ポピニカシリーズで登場メカのおもちゃが販売されることが当然となり、その販促としてメカの活躍シーンが劇中に盛り込まれた結果、見ごたえのあるメカアクションシーンが展開されている。
おもちゃを販促するシーンを枷とすることなく、映像作品中の見せ場として魅力的に演出して見せるセンスに、東映という映像制作のプロ集団のプライドを感じずにいられない。

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