「電子戦隊デンジマン」第12話「危険な子供スパイ」感想

2024年7月11日木曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

アスレチッククラブの生徒であるゆみ子を捕らえたバラの怪物・バーラー。
ベーダー一族はゆみ子のコピー人間を作成し、コピーゆみ子にあきらを暗殺させようと目論む。
さらに、コピーゆみ子は他の子供達をも捕らえ、4人の子供たちのコピー人間を生み出すと、彼らとともにアスレチッククラブに侵入し、赤城たちを抹殺しようとするが…。

美しい花には棘がある コピー人間大襲撃

今回のベーダー怪物はバラの怪人であるバーラー。
バラという花が美しい花の代名詞ということもあってか、バラの怪人は割と多くいる気がするが、バーラーはバラの特徴的な花弁ではなく、棘のある茎をフィーチャーしたデザインが特徴。
バラの美しさに惹かれたものに棘を刺す、「美しい花には棘がある」という諺を体現する怪人だ。

バーラーはバラの実の中で、捕らえた人間のコピー人間を作る能力を持つ。
ベーダー一族は電子戦隊の面々が働くアスレチッククラブの生徒の一人であるゆみ子を、バラの美しさで惹きつけて捕らえると、ゆみ子のコピー人間を生み出す。
ゆみ子のコピー人間によってあきらを抹殺せんとしたベーダー一族は、さらにゆみ子のコピー人間に他の子供達を誘い出させ一網打尽に捕らえると、彼らのコピー人間をも作成。
赤城たち電子戦隊を油断させ、襲撃させるのだった。

今回から、緑川の警察時代の知人である女性警察官・松尾千恵子が登場。
緑川とは「チーコ」「ミドちゃん」と呼び合う気の置けない仲で、チャウチャウの外見をしたアイシーをライオンだと勘違いする早とちりな面もありながら、様子がおかしいコピー人間の子供たちを怪しみ、緑川たちが何かの陰謀を追っているのに感づくなど、優秀な警察官である面も披露。
戦士としての経験を積み、落ち着いた雰囲気のあきらと違い、ベーダー一族の引き起こす怪奇現象に派手なリアクションを見せる絶叫クイーンとしての役回りも果たすキャラクターだ。

アスレチッククラブに通う子どもたちは、下校中にじゃんけんで負けた相手がみんなのランドセルを一人で担ぐ、子供らしい遊びに興じていた。
だが、彼らの様子は密かに、変装したミラーとケラーに監視されていた。
じゃんけんで負けたゆみ子は、ちょうど自宅へ向かう分かれ道に差し掛かったのを口実にしてランドセルを担ぐのを免れると、後でアスレチッククラブで会うことを約束し去っていく。
ミラーとケラーはそれを見逃さず、ベーダー怪物・バーラーを向かわせるのだった。

自宅へと向かう道すがら、大きなバラが咲いているのを見たゆみ子は無防備にバラに近づく。
バラに触れたゆみ子が蔓の棘に刺されるやいなや、薔薇の花吹雪が舞い散り、巨大なバラはベーダー怪物・バーラーの姿を現した。バーラーに迫られたゆみ子は気絶してしまう。
ミラーとケラーはゆみ子を拉致すると、白い土で満たされた特殊な装置の中に入れた。
バーラーはその白い土に、養分となる液体をふりかける。
すると、装置の中の白い土から巨大なバラが育ち、巨大な花が咲き、やがて実をつけた。
バーラーがバラの実を割ると、中からはゆみ子の姿が。
バーラーは、捕らえた人間を養分にして咲いたバラから育ったバラの実の中で、養分となった人間のコピー人間を作る能力を持っていたのだ。
ミラーとケラーはゆみ子のコピー人間に、桃井あきら抹殺を命じるのだった。

その頃、警察にゆみ子の母親からの電話があった。
家の近くで友達と別れたきり、家に帰ってこない娘を心配するゆみ子の母親の電話を受けたのは、緑川の知人である女性警察官、松尾千恵子だった。
ゆみ子が行方不明になった知らせはアスレチッククラブの電子戦隊にも届き、赤城たちはゆみ子が誘拐されたのかと緊張が走る。だがそこに、ゆみ子が花束を持って現れた。
家にも帰らずにフラフラしていたゆみ子を咎める電子戦隊だが、ゆみ子は知らないおばあちゃんに道を尋ねられて案内していたと弁明し、花束はそのお礼にもらったものだという。
お詫びにアスレチッククラブを花で飾るといい出したゆみ子は、花束の花を花瓶に飾る。
そして、あきらにピアノを教えてもらうように頼み、あきらもそれを了承するのだった。

だが、ゆみ子、いやゆみ子のコピー人間がアスレチッククラブに飾った花には監視カメラが内蔵されており、アスレチッククラブの様子はミラーとケラーに筒抜けだった。
コピーゆみ子がまんまとあきらを誘い出したことにほくそ笑むミラーとケラー。
一方、ゆみ子が姿を見せて安心した電子戦隊はリラックスし、緑川は趣味のギターを爪弾くため外出する。そこに、緑川の城南署の刑事時代の知人である、松尾千恵子が現れた。
「チーコ」「ミドちゃん」と呼び合う気の置けない仲である二人は、久々の再会を喜ぶ。

少年課の巡査であるチーコは、ゆみ子の母親の電話を受けて、ゆみ子の無事を確認するためアスレチッククラブを訪れ、旧知の緑川を訪ねてきたのだった。
ミラーとケラーは、コピーゆみ子によるあきら抹殺を邪魔させないため、チーコの排除すべくダストラーを出動させる。あきらの家に向かうパトカーを、ダストラーが乗った車が襲った。
車を躱そうとしてパトカーを壁にぶつけてしまい、チーコは気絶。
さらに襲い来るダストラーを蹴散らすため、緑川はデンジグリーンにデンジスパークした。
朦朧とする意識の中で、チーコは旧知の仲である緑川が何者かに変身して戦う姿を目撃。
自分の知らないところで、緑川が何かと戦っているという疑念を抱くのだった。

その頃、あきらとコピーゆみ子は、踏切で電車の通過待ちをしていた。
ミラーとケラーはコピーゆみ子に、あきらを踏切内へ突き飛ばし抹殺するように命ずる。
鋭い眼光であきらを睨むコピーゆみ子があきらの背後に回り、突き飛ばそうとしたその時、踏切の遮断器が上がり、コピーゆみ子は機会を逃すのだった。

家に着いたあきらは、コピーゆみ子にピアノのレッスンを始めた。
あきらの家にも既にコピーゆみ子によって監視カメラ入りの花が飾られており、ミラーとケラーはコピーゆみ子に、窓際にあきらを誘き出し、突き落として抹殺するように命ずる。
コピーゆみ子は始まったばかりのピアノのレッスンの休憩を頼み、ベランダに立ってあきらを呼ぶ。富士山の方角を聞くふりをしてあきらを突き落とそうとするコピーゆみ子。
だが、あきらはちょうど振り向いてしまい、コピーゆみ子は危うく自分だけ転落しそうになる。
あきらは挙動不審なゆみ子を落ち着かせようと思ったのか、ホットケーキを振る舞おうとするが、コピーゆみ子はあきらがホットケーキを焼く隙をつき、背後から包丁を突き刺そうとする。

そこに、緑川が現れた。あきらを刺そうとしている現場を目撃されたコピーゆみ子は逃亡する。
あきらの暗殺に失敗したミラーとケラーだが、コピー人間を見破る方法はなく、緑川もゆみ子が何故あきらを狙っているのかまではわからなかった。
家に帰ったコピーゆみ子は、真夜中になって家を抜け出し、ベーダー一族のアジトへ戻る。
ベーダー魔城での会議で、ヘドリアン女王は暗殺に失敗したコピーゆみ子の生ぬるさを叱責していた。ヘドラー将軍は、あきらの暗殺に失敗したことを受け、次はデンジランドを標的に、アスレチッククラブにあるはずのデンジランドへの隠し通路を探すことにする。
そして、コピーゆみ子に仲間を増やすように命ずるのだった。

コピーゆみ子は、アスレチッククラブに通う子供たちをベーダーのアジトへ誘う。
そこで、本物のゆみ子が捕まっている現場を目撃した子供たちの前に、バーラーの幻影が現れた。
バーラーに怯えた子供たちは一網打尽にされ、コピー人間を作られてしまう。
ミラーとケラーは子供たちのコピーの体に爆弾をつけ、アスレチッククラブに潜り込んでデンジランドへの秘密ルートを探り出させると同時に、電子戦隊の抹殺へ向かわせるのだった。

仮初の命に過ぎないコピー人間とはいえ、子供の身体に爆弾をつけるシーンはショッキング。
「子供スパイ」というサブタイトルも含め、世界の何処かで国際的な問題となっている少年兵を想起させるこのシーンは、ベーダー一族の恐ろしさを物語っている。

一方、チーコは事故の瞬間に緑川が姿を変えて何かと戦っていた光景を思い出し、狐につままれたような不可思議な現象を解決すべく、アスレチッククラブを調べようとしていた。
チーコはそこで、子供たちのコピーがアスレチッククラブに侵入する現場を目撃する。
子供たちのコピーはアスレチッククラブに潜り込み、部屋を調べていくが、ロッカーを開けても青梅が大量にストックしたアンパンしか見つからなかった。
チーコはその後を追い、アスレチッククラブの地下へ入っていく。
そこでアイシーと鉢合わせしたチーコは、チャウチャウの外見をしたアイシーを怪獣と勘違い。
悲鳴を上げて電子戦隊がたむろしている部屋へ逃げ込み、コピーゆみ子が花を飾った花瓶を倒す。

チャウチャウをライオンと間違えるチーコの早とちりを笑いながら花瓶を戻そうとした赤城は、花瓶に活けられた花の異変を察知し、ベーダーが自分たちを見張っていることを知る。
チーコから子供たちがアスレチッククラブの地下に入っていったことを聞いた赤城は、花が自分たちの様子を監視していることを感じながら皆でアスレチッククラブの地下へ向かう。
その後を追おうとしたチーコは、アイシーに行く手を阻まれて動けなくなってしまうのだった。

地下へ向かった電子戦隊は、花瓶のバラが隠しカメラとなっており、ベーダーが自分たちを見張っていることを知る。すると、天井に潜んでいた子供たちのコピーが飛びかかってきた。
手が植物の蔦のようになっていることから、彼らが本物の子供たちではないことを知った電子戦隊はデンジスパークし、子供たちのコピーを外へ連れ出す。
ミラーとケラーはこの機を逃さず、子供たちのコピーに持たせた爆弾を使うように命ずる。
子供たちのコピーを振りほどいたデンジマンに爆弾が投げつけられ、爆発がデンジマンを襲った。

なんとか爆発を切り抜けた電子戦隊だが、子供たちのコピーは姿を消した。
爆音を聞いて駆けつけたチーコは何が起こったのか事情を尋ねるが、電子戦隊は子供たちのイタズラで花火が爆発しただけだとごまかす。チーコはその様子を怪しみ、電子戦隊の後を追おうとするが、またしてもアイシーに行く手を阻まれるのだった。
ベーダーが自分たちを見張っていることを知った電子戦隊は、あえて監視カメラとなっている花を放置し、油断してリラックスしているふりをする。
そして、黄山が入れたコーヒーを熱がるフリをして花瓶を倒し、花を踏み潰して監視カメラを排除するのだった。隠しカメラの発信機を見た黄山が発信機の通信可能距離を割り出し、その距離の間にベーダーのアジトがあると睨んだ電子戦隊は街に出てアジトを捜索した。

街中に散ってベーダーのアジトを捜索するデンジマンたち。
デンジピンクはそこで、美しいバラを見つける。その美しさに惹かれ、変身を解除して近づいたあきらは、バラの中から捕まった子供たちの助けを求める声を聞く。
するとそこに花吹雪が舞い散り、バラの蔦があきらの体を拘束。
バーラーの罠に嵌ったあきらは、ベーダー一族に捕まってしまう。
そして、緑川たちを探していたチーコの前にも花吹雪と共にバーラーが現れ、恐怖で身体が硬直したチーコもまた、ベーダー一族に捕まってしまうのだった。

あきらとチーコを捕らえたミラーとケラーは、彼女たちを即刻死刑にしようとする。
電気椅子に座らさせられた二人の処刑が始まろうとした瞬間、デンジマンが助けに現れた。
デンジマンは素早くあきらを救出し、あきらはチーコを救出して避難させる。
そして、捕らえられた子供たちを発見したデンジマンは、デンジシャワーで子供たちを救う。
ベーダーから全ての人質を解放したデンジマンたちは、最後の戦いに挑むのだった。

「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
「何を、何をぉ~!!」
「抹殺せよ!」
バーラーはバラの花からダストラーを呼び出し、デンジマンとベーダーの戦いが始まった。
デンジレッドのデンジパンチや、デンジグリーンのグリーンスピンキックが炸裂。
ダストラーを蹴散らしたデンジマンの前に、バーラーが現れる。
バーラーは巨大なバラの花となり、デンジマンを念力で吹き飛ばす。
だが、デンジマンはデンジスティックを地面に突き立て、火柱を走らせてバーラーに大ダメージを与える。たまらずバーラーは巨大化し、デンジマンを踏み潰そうとするのだった。

巨大化したバーラーに対抗すべく、デンジタイガーが、そしてデンジファイターが発進。
デンジファイターがダイデンジンに変形した。
巨大バーラーは薔薇の花をダイデンジンにまとわりつかせ、ダメージを与える。
デンジ剣を取り出し、電子満月斬りでとどめを刺そうとしたダイデンジンだが、バーラーは逆に、自らの身体を縮小させ、舞い散る花吹雪の中に姿を隠した。
デンジマンたちもダイデンジンを降り、バーラーを探す。

花吹雪が舞い散り、デンジマンを襲う。
デンジピンクがバーラーが化けたバラの花を発見し、なんとかバーラー本体を引きずり出したものの、バーラーはデンジマンのマスクに巨大なバラの花をつけ、念力でデンジマンの身体を翻弄。
バーラーはさらにデンジマンへ向けてバラ爆弾を投げつける。
デンジジャンプでバラ爆弾を躱し、バーラーを取り囲んだデンジマンは、周囲を拘束で回ることでバーラーの目を回し混乱させたところに、最後のトドメのデンジブーメランを放つ。
ついに、バーラーはデンジブーメランの前に敗れ去ったのだった。

平和を取り戻したアスレチッククラブでは、あきらが子供たちに水泳のコーチをしていた。
プールサイドでそれを応援する緑川たちの前に、チーコが現れ、抱えている秘密について問い詰める。だがそこにアイシーがまたしても現れ、それに驚いたチーコはプールに落ちる。
そこに手を貸した緑川もまた、チーコにプールの中に引きずり込まれる。
アスレチッククラブの平和な日常がそこにあった。
デンジマン打倒を狙ったベーダーの秘策も、固いスクラムの前に崩れた。
次に企む陰謀はなにか。頑張れ、デンジマン。戦え、ダイデンジン!

電子戦隊の拠点であるアスレチッククラブ、ひいてはデンジランドへの潜入、破壊工作のためには、何の気兼ねもなくアスレチッククラブに入れる子供たちを利用するのが常道。
そういう意味では、子供たちのコピー人間を作り、アスレチッククラブへの潜入とデンジランドへの通路を発見させようとしたヘドラー将軍の采配は見事なもの。
せっかくのコピーゆみ子に、あきら一人の暗殺だけをさせようとし、結局失敗したミラーとケラーと比べると、指揮官としての優秀さを見せている。

コピーゆみ子が花に潜ませた監視カメラを排除するため、コーヒーを飲んでリラックスし油断していると見せかけ、花瓶を倒してしまったフリをして花を排除する電子戦隊も見事な手腕。
偶然を装うことで、ベーダー側に自分たちが監視に気づいていることを悟られず発信機を入手し、そこから通信可能距離を割り出すことでベーダーのアジトを見つけ出そうとするクレバーな方法でベーダーの計画に対処する、スパイアクションらしい展開が見ていて楽しい。

ラストの戦闘シーンでは、毎回デンジブーメランで倒した怪人が巨大化し、ダイデンジンが出動して電子満月斬りでトドメというパターンが定着してきたが、このエピソードではダイデンジンの電子満月斬りからバーラーが身体を縮小して逃亡し、それを追ったデンジマンが再び等身大戦を展開、デンジブーメランでとどめを刺すというパターン破りを展開。
ベーダー怪物は巨大化だけでなく縮小も自在であるという設定を活かし、見せ場である戦闘シーンを通り一遍のものにせず、毎回のパターンを破る展開を挿入することでマンネリ防止を果たす非凡なセンスを見せ、視聴者を楽しませている。

コピー人間の子供たちがデンジランドへの通路を探してアスレチッククラブを調べるシーンでは、青梅のロッカーにアンパンが大量にストックされているというギャグシーンがあった。
毎回のように本人がアンパンを食べていたことで、ロッカーにアンパンが大量に入っているだけで青梅のロッカーなのだと見ていてわかるあたり、大食いでアンパンが大好きな青梅大五郎のキャラクターの個性付けが見事に成功し、キャラを立たせることに成功していることがわかるシーンだ。
番組も1クール近く話数が経過するにあたり、青梅だけでなく、真面目で実直な赤城、料理を振る舞う優しい黄山、クールで気障な緑川、他者のために自分の夢を諦められる優しさと芯の強さを併せ持つあきらと、電子戦隊の面々のキャラも立ってきた。
個性豊かな彼らが団結し、ベーダー一族に立ち向かう今度のドラマも楽しみだ。

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