あらすじ
石油王国からやってきた国王と王女を出迎えたのは、厳重な警戒網を突破したブラックサタンの奇械人・カメレオーンだった。国王を狙うブラックサタン。
その陰謀を仮面ライダーストロンガーが阻止する。
石油輸入を断とうとする陰謀 迫る日本経済の危機
今回のブラックサタンの奇械人は奇械人カメレオーン。
カメレオンの怪人らしい体色を保護色へ変える能力や、取り外し可能な回転ノコギリと尻尾が変形した鞭、そして尻尾の先端から放つ毒液を武器とする奇械人である。
また、自身の姿を映したフィルムに潜むことも可能で、隠密任務を得意としている。
そんな奇械人カメレオーンの任務は、日本に来日した石油王国アラプト王国のカザール国王を暗殺し、国際問題を引き起こすことで日本への石油の輸入を妨害、日本国内にオイルショックを引き起こすことで日本の産業に大打撃を与えること。
これまで局地的な混乱を引き起こす作戦を実行してきたブラックサタンだが、今回の作戦は石油輸入を絶ち、日本の産業にダメージを与えることで国力を低下させんとした戦略的なもので、国王の暗殺という国際問題により日本の国際的な立場も悪くなるという恐ろしいものだ。
東京羽田国際空港に、世界最大の石油国・アラプト王国のカザール国王とマリア王女が到着した。
しかしその様子を、ビルの屋上から監視する影が一人。タイタンだ。
厳重な警護態勢の中、車で移動するカザール国王とマリア王女。
だが突然、警護のパトカーが停車する。警官の耳には、サタン虫に寄生された証の痣があった。
カザール国王は車の運転手に停車するように要求するが、車は動き続ける。
車内には、不気味なカメレオンが潜んでいた。
カザール国王とマリア王女を乗せた車は人気のない場所で停車。
国王は運転手に、ホテルへ向かうように要求するが、運転手は意識を失って倒れてしまう。
連続する異常事態に怯える王女の前に、奇械人カメレオーンが現れた。
カザール国王を演じたのは、多くの特撮作品に外国人役や神父の役で出演し、「仮面ライダー」シリーズでは、後年の「仮面ライダースーパー1」のヘンリー博士や、「仮面ライダードライブ」のハーレー・ヘンドリクソン博士を演じられた大月ウルフ氏。
娘を愛する石油大国の国王の役どころを演じ、国際的なスケールの物語の演出に一役買っている。
奇械人カメレオーンは、カザール国王にブラックサタンの命令に従うように要求し、命が惜しくば日本に石油を売るのを止めるように迫る。だが、親日家のカザール国王はそれを決然と拒否。
怒った奇械人カメレオーンはブラックサタン戦闘員を呼び出し、マリア王女を攫おうとする。
だがその前に、城茂が現れた。
「貴様か…やはり嗅ぎつけたな!」
「その通り。石油の王様を狙って、日本の産業に打撃を与えようって作戦らしいな!」
城茂は戦闘員を蹴散らし、カザール国王を逃がす。
奇械人カメレオーンは舌を伸ばして城茂の腕を拘束するが、払いのけられる。
城茂はストロンガーに変身。
「何者だ!」
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ。俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!」
ストロンガーは電タッチで戦闘員を焼き尽くす。不利を悟った奇械人カメレオーンは逃亡。
なんとか国王を救ったストロンガーだが、乱戦に紛れてマリア王女が行方不明になってしまった。
ストロンガー相手に何も出来ず、おめおめとアジトに逃げ帰った奇械人カメレオーンは、一ツ目タイタンに叱責されていた。時間をかけて準備した襲撃作戦を仕損じた奇械人カメレオーンは、ストロンガーとまともに戦う前から「この作戦は失敗です」と完全に怖気づいた様子を見せる。
毎回奇械人が手も足も出ずにストロンガーに敗退していることもあり、まともに戦ったところで勝ち目がない以上、城茂に嗅ぎつけられた段階で国王を狙う作戦は失敗したという判断なのだろう。
だが一ツ目タイタンは、「このタイタン様に失敗はない」とますます怒りのボルテージを上げ、日本とアラプト王国の関係を悪化させるため、改めて国王に接近し抹殺するように命じる。
それでも完全に腰が引けている奇械人カメレオーンは、厳重な警備態勢で国王に接近するのは無理だと言い訳をするが、一ツ目タイタンは既に手を打っていた。
銀行強盗の一団が銀行を襲い、車で逃亡を図った。
そこに、おやじさんがジープで駆けつけ車の行く手を阻む。だが、銀行強盗は映画の撮影だった。
叱られるおやじさんを、銀行強盗役のキャストに紛れた城茂は苦笑しながら眺める。
そして、撮影現場を見学している一弾の中には、マリア王女の姿もあった。
撮影が小休止している間に、監督は美術スタッフから工場の背景のチェックをして欲しいと呼び出しを受け、一人人気のない工場に向かう。だがそこには誰もおらず、監督である自分を呼び出しておいて持ち場を離れているスタッフに呆れる監督。
しかしそれは、ブラックサタンによる罠だった。監督の前に奇械人カメレオーンが現れ、尻尾を鞭に変え監督を捕えると、体を乗っ取るべく毒液で監督を気絶させた。
しかし、監督の襲撃現場はマリア王女に目撃されていた。
奇械人カメレオーンは目撃者を消すためにマリア王女を追う。
奇械人カメレオーンから逃亡するマリア王女は、おやじさんに助けを求める。
しかし、先程映画の撮影を邪魔するなと叱られたおやじさんは、また映画の撮影かとマリア王女の助けを求める声を相手にせず、姿を現した奇械人カメレオーンも撮影用の偽物だと笑い飛ばす。
もちろん、奇械人カメレオーンは本物であり、完全に油断していたおやじさんを気絶させるとマリア王女を始末するべく王女の後を追う。しかしそこには、城茂が待ち伏せしていた。
二度目の対面となった城茂と奇械人カメレオーン。
奇械人カメレオーンは王女を逃さないためにブラックサタン戦闘員を呼び出すが、そこにタックルも駆けつけ、電波投げで戦闘員を蹴散らす。組み合う城茂と奇械人カメレオーン。
「ここでいったい何をやらかそうってんだい!」
「貴様の知ったことか!城茂、貴様のために、目的の途中で死んでいった仲間の仇を取ってやるわい!!」
「何ぃ?冗談言うな、そうそう仇を取られたんじゃ、こっちの命がいくつあっても足りねえ!」
やけに仲間思いなところを見せる奇械人カメレオーンは、左腕に回転ノコギリを装備。
それを躱した城茂は、ストロンガーに変身。
奇械人カメレオーンは回転ノコギリでストロンガーを攻め、一瞬の隙を突いて逃亡。
「ストロンガーよ!今度会う時は貴様の最期の時だー!!」
気絶していた監督を救出した城茂は、ユリ子や、マリア王女を保護したおやじさんと合流。
父親が危険だと訴えるマリア王女に、城茂は今はまだ国王と一緒では危険であると説き、おやじさんと一緒に隠れているように促す。
何故ブラックサタンが監督を狙ったのか、目的がわからない城茂とユリ子。
城茂はユリ子に監督の監視を任せ、奇械人カメレオーンの行方を探りに向かった。
工場での撮影を終えた映画撮影隊は移動を開始。ユリ子もテントローに乗ってそれを追う。
撮影所のスタッフルームに戻った監督が電話をかけようとすると、見たこともないフィルムがスタッフルームに置いてあった。監督がフィルムの内容を確認すると、フィルムには不気味な光を放つ目が映っており、それを見つめていた監督は催眠状態に陥ってしまう。
監督が棚からリールケースを取り出すと、その中には奇械人カメレオーンが化けたカメレオンが潜んでいた。そして、フィルムに映る目が激しく光り、スタッフルームに一ツ目タイタンが出現。
その途端、監督の意識が昏倒し、サタン虫が監督の耳の穴から身体に入り込む。
スタッフルームに駆けつけたストロンガーは、一ツ目タイタンと対峙。
ブラックサタンが監督を狙う目的を一ツ目タイタンから聞き出そうとするストロンガーだが、一ツ目タイタンは再び火炎攻撃を仕掛け、ストロンガーが怯んだ隙に姿を消す。
底知れぬ力を持つ一ツ目タイタンの脅威に、ストロンガーは戦慄する。
サタン虫に寄生された監督は撮影準備を進めるが、そこに俳優の姿はなかった。
それを不審に思ったユリ子は監督に接触するが、監督は奇械人カメレオーンとしての正体を現し、ユリ子を始末しようとする。
映画のスタッフも皆、ブラックサタン戦闘員に体を乗っ取られていた。
ユリ子が戦闘員と戦っている隙に、奇械人カメレオーンはフィルムを持って逃亡した。
奇械人カメレオーンは再び監督の姿になると、カザール国王のもとへ移動していた。
城茂はそれをカブトローで追う。
タイタンは城茂を足止めすべくブラックサタンオートバイ部隊を出撃させた。
熾烈なオートバイ戦が展開される。
その頃、カザール国王が滞在するホテルでは、奇械人カメレオーンに乗っ取られている監督が、行方不明のマリア王女が映ったフィルムを持っているという名目で侵入しようとしていた。
国王がフィルムを確認することになり、監督は警護のSPにフィルムを渡すとほくそ笑む。
映写室でフィルムを確認するカザール国王だが、フィルムに映し出されていたのは奇械人カメレオーンだった。奇械人カメレオーンはフィルムを通して画面から飛び出し、カザール国王を襲う。
護衛を抹殺し、カザール国王を追い詰めようとする奇械人カメレオーン。
しかしそこに、ストロンガーが立ちはだかった。
ストロンガーはマリア王女の無事をカザール国王に伝え、国王を避難させる。
ストロンガーの猛攻にダメージを負った奇械人カメレオーンは体色を変え、保護色となってホテルの壁に溶け込み身を隠すが、ストロンガーのカブトキャッチャーで実体を暴かれ、渾身のパンチを食らったダメージで姿を現す。
なんとか屋上まで逃れた奇械人カメレオーンを、ストロンガーは追跡。
渾身の突進攻撃も躱された奇械人カメレオーンは、ホテルの屋上から飛び降りて逃亡。
「どうしたストロンガー!お前には負けんぞ!!」
負け犬の遠吠えをこれ以上なく体現するような捨て台詞を吐き、ひたすら逃げる奇械人カメレオーンを追い、なおも一方的に攻撃を加え続けるストロンガー。
奇械人カメレオーン必殺の回転ノコギリもストロンガー相手には有効打にならず、逆に電タッチを受け高圧電流によるダメージを受けてしまう。
再びビルの屋上まで吹き飛ばされた奇械人カメレオーン。
ストロンガーも屋上までジャンプし、最後の決め手を食らわせようと力を貯める。
だが、奇械人カメレオーンの尻尾からの毒液がストロンガーの緑の目に命中。
ストロンガーは視力を奪われてしまう。
「しめたーっ!どうしたストロンガー!こっちだー!あーらよっと!!」
ストロンガーを倒す千載一遇の好機を得た奇械人カメレオーンは、大声を出してストロンガーを誘導し、ビルの屋上から転落させて転落死させる戦法に全てを賭ける。
「おいで!ストロンガーこっちだよ!おいでおいで!こっちよこっち!ほーれ!」
声に誘われたストロンガーは、ビルの屋上の縁まで追い込まれる。
奇械人カメレオーンは、ストロンガーを転落死させるべく体当たりを仕掛けた!
だが、ストロンガーはその体当たりをあっさりと回避。
体当たりの際の掛け声で居場所を知られた奇械人カメレオーンは組み付かれ、反撃される。
そうこうしている間にストロンガーの視力は回復し、奇械人カメレオーンは電タッチで頭部を焼き尽くされた後、炎のストロンガー電キックで粉砕されるのだった。
こうしてカザール国王は救われ、マリア王女にも笑顔が戻った。
日本の経済を破壊する大作戦を失敗した一ツ目タイタンは、「今のままでは奇械人に勝ち目はない」と、ストロンガーの脅威をブラックサタン大首領に報告する。
だが、ブラックサタン大首領は、一ツ目タイタンに「仮面ライダーストロンガーに必ず勝てる、ブラックサタン最強の奇械人を作りつつある」ことを教え、その完成の日が近いことを告げる。
大首領自らが「最強の奇械人」と宣言する未曾有の脅威が、城茂に迫りつつある。
ブラックサタン大首領の不気味な言葉。最強の奇械人とは一体何であろうか。
奇械人カメレオーンがフィルムの中から飛び出してくる能力には説明がなく、一ツ目タイタンも同じようにフィルムの中から出てくる描写があることを思えば奇械人共通の能力なのかも知れないが、全体的に突拍子もない展開が目立った回。
石油の輸入を絶って日本の産業に打撃を与え、国際問題を引き起こして日本の立場を悪くすることを目論むなどブラックサタンの作戦目的はちゃんとしているだけに、余計に映画監督を利用しようとした展開の不可思議さ、不条理さが目立っている気はする。
撮影現場の見学者に紛れ込んでいるマリア王女や、撮影現場に割って入ってくるおやじさんが唐突な印象を与えるのを思うと、映画監督を利用した作戦というお題を石油王国の国王を狙う作戦というお題の話に無理に合体させたような統一感のなさは否めなかった。
そんな中、奇械人カメレオーンのキャラクター造形が非常に面白いのがこの回の見どころだろう。
国王襲撃が城茂に露見した事件で作戦の失敗を悟り怖気づく臆病さや、城茂に今まで敗れた仲間の仇討ちを宣言する妙に仲間思いな面、徹底的にストロンガーとの対決を避け逃げ回ったかと思えば、たまたま命中した毒液でストロンガーの視力を奪えたのを見逃さず、高所からの転落死に持ち込もうとする狡猾さなど、多面的な性格設定は見ていて飽きない。
戦闘面においては武器である回転ノコギリすらストロンガーにはろくに通じていなかったので、高所からの転落死による一発逆転に賭けるしかなかったのだろう…というのは伝わる。
今まで敗れた仲間のことを口にする場面を思えば、これまでストロンガーと戦った奇械人がほぼストロンガーに太刀打ちできず負けていったことを知っているからこそ、城茂に作戦が露見した段階で作戦は失敗だと思ったとも見えるし、実際その見立てが正解ではあった。
そういう意味では、実力では勝てない戦いだとわかっているにも関わらず、一ツ目タイタンの指示でストロンガーと戦わざるを得なかった、不幸な怪人なのかもしれない…。