「電子戦隊デンジマン」第15話「悪の園への招待状」感想

2024年7月24日水曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ケラーがDJを担当する海賊ラジオ放送・スタークィーンは、若者の集団催眠を企んでいた。
緑川は、若者・上松剛に襲撃されたことからベーダーの陰謀に気づく。
電子戦隊は、スタークィーンによって操られる剛を追い、パンチローラーと対決する。

ベーダー一族のオールナイトニッポン 催眠ラジオを食い止めろ!

今回のベーダー怪物は、ローラースケートの怪物であるパンチローラー。
ローラースケートと、ローラースケートを履いて行うスポーツ・格闘技として60年代から70年代に流行したというローラーゲームをモチーフにしたパンチローラーは、自らと同じくローラースケートを履いたダストラー・ローラー部隊を率いて、連携の取れたローラースケートによる素早い動きでデンジマンを翻弄し、鋭い刃のついたフリスビーカッターで攻撃する実力派怪人だ。

そんなパンチローラーは、ミラーが変装したDJスタークィーンによる海賊ラジオ放送を流し、ラジオのリスナーであった若者に催眠音波「パンチロック」を聞かせることで、若者たちをベーダー一族同様、美しいものを憎むベーダー人間にしてしまう計画を遂行。
スタークィーンの海賊ラジオ放送の熱心なリスナーの若者・上松剛を筆頭に、多くの若者がパンチロックで洗脳されてしまい、ベーダー一味のアジトであるローラーディスコに集められてしまう。
果たして電子戦隊は、若者のベーダー人間化を食い止めることが出来るのか。

若者がローラースケートを楽しむ平和な公園。緑川と待ち合わせをしていたチーコは、10分遅刻した緑川に、一緒にローラースケートをしないかと誘う。
自分は忙しいのだと文句を言う緑川に、チーコは本題を切り出す。
刑事を辞めた緑川が、一体何で忙しいというのか。
父親が殺されたことで刑事に嫌気がさしたのだと誤魔化す緑川に、チーコはかつて緑川が父親を超える名刑事になると意気込んでいたにも関わらず、刑事を辞めて何をしているのかと問い詰める。
チーコは既に、緑川がデンジマンとして働いていることに感づいていた。

緑川がどう答えたものか悩んでいると、そこに突然、刃のついたフリスビーが投げ入れられた。
チーコを庇う緑川のもとに、ローラースケートをつけた若者が突っ込んできた。
若者の被ったヘルメットにはラジオが付いており、軽快な音楽を奏でていた。
若者は緑川に体当たりをし、高く跳躍してチーコを蹴りつけようとする。
それを庇った緑川はふっ飛ばされるが、若者はなおもチーコを執拗に襲う。
怒った緑川が若者に飛びかかり地面にひれ伏させ、ヘルメットを外す。
すると、ヘルメットから流れる音楽が止まり、若者はあろうことか緑川に逆ギレしてきた。
緑川は自分たちを襲った理由を問い詰めるが、若者は何も知らないと言い張り、自分が何かしたのかと呆然とした様子で尋ねる。若者・上松剛は、自分が何をしたのか本当に覚えていなかった。
緑川とチーコが呆気にとられる様子を影から監視していたミラーは、アンテナを付け、内部が簡易スタジオになっている車に戻り、中で待機していたケラーに作戦の成功を告げる。

緑川が持ち帰った、剛が投げつけてきた刃のついたフリスビーを確かめていた電子戦隊は、人間の首もふっ飛ばすような恐ろしい殺人兵器が出回っていることに戦慄する。
この裏に、ベーダー一族の陰謀を感じた電子戦隊。
黄山は、剛が被っていたヘルメットに付いていたラジオを調べていたが、ラジオは普通のラジオだった。緑川は、ラジオから流れる音楽が途切れた途端に正気を取り戻した剛の様子を思い返し、ラジオから流れる音楽が何らかの催眠音波でないかと推測する。

剛の家を訪ねた緑川は、ラジオから流れる音楽がないと落ち着かないほどにラジオ放送のジャンキーだった剛の気持ちを落ち着かせるべく、得意のギターを爪弾いていた。
剛は緑川に、ラジオを返して自分の家から出ていくように迫る。
緑川はベーダー一族が剛を利用しようとしていると諭し、ベーダー一族が剛にいかようにして指令を出しているのかを尋ねるが、剛は時計を見ると、母親にラジオを渡すように要求。
母親も、ラジオ中毒になっている剛に呆れた様子を見せる。
押し入れを探し回り、ラジオを見つけ出した剛は、ヘッドホンでラジオ放送を聞き始める。
ラジオから聞こえてきたのは、ケラーの声だった。

「シークレットカードNo.033の貴方。お便りありがとう。これからの30分は、貴方と、そして私、スタークィーンの二人だけの30分よ…」
ケラーは、簡易スタジオとなっている車から、剛の家に向けて海賊ラジオ放送を流していた。
「剛くん。君の気持ち凄く良くわかるわ。では、鬱陶しい君の頭と心をリフレッシュしてあげる。君のリクエスト曲、『パンチロック』!」
ラジオから流れる「パンチロック」を聞く剛の様子を見ていた緑川は、ギターに隠した周波数測定装置から、剛が聞いているラジオ放送の周波数をデンジランドの基地へ送信。
周波数を割り出した電子戦隊はこのラジオ放送の発信源を探知し、発信源に急行する。

緑川が剛の家の窓から外の様子を窺っていることを確認したケラーは、ミラーに連絡。
ミラーの命を受けたベーダー怪物・パンチローラーは、ラジオ放送を通して剛に緑川を倒す指令を出す。パンチロックで完全に催眠状態となった剛は、隠していたナイフを手に緑川に襲いかかる。
だが、緑川はその凶刃を躱し、剛の頬を叩いて正気を取り戻させる。
剛が聞いていたラジオ放送が間違いなく催眠音波であることを確認した緑川の連絡を受けたデンジマンたちは、デンジマシーンとデンジバギーで急ぎ発信源となる車の元へ向かう。

緑川に傷を負わせ、パンチロックの効果の程を確かめたことに満足するミラーとケラー。
パンチローラーはデンジマシーンの接近する音を感知し、ミラーとケラーは車を移動させる。
ラジオ放送の発信源に到着したデンジマンだが、既にそこには誰もいない。
車がラジオの発信源であると推理したデンジマンは、その後を追おうとする。
だがそこに、パンチローラーとローラースケート・ダストラー部隊が襲いかかってきた。
パンチローラーたちの軽やかな動きを捉えられず、翻弄されるデンジマン。
そこに、デンジグリーンが合流し、全員揃ったデンジマンはデンジブーメランで一気に決着をつけようとするが、不利を悟ったパンチローラーたちは撤退した。

緑川と赤城は、キラークィーンのラジオ放送を聞き続ける剛を問い詰めていた。
だが、剛は何も答えようとしない。日本には剛のように音の虜になり、真夜中も眠らずにライオやステレオに聞き入る若者が大勢いた。ベーダー一族は、そんな若者を標的に定め、ベーダー放送を流すことで、ラジオのリスナーである若者たちを催眠音波で洗脳していたのだ。
そして、ミラーとケラーはその作戦の最終段階として、ベーダー放送のヘビーリスナーである剛のような若者たちに招待状を送っていた。
その招待に誘われ、ローラーディスコを訪れた若者たちは、スタークィーンと共に踊ることで魅力の虜となり、人間の愛を忘れて美しいものを憎むベーダー人間となってしまうのだ。

朝から、郵便配達を待っていた剛の様子を監視していた緑川。
そして、スタークィーンからの招待状を受け取った剛は、ローラースケートを履いて街中に繰り出す。その周囲には、同じようにローラースケートを履いた若者が次々集まっていた。
剛を尾行していた緑川は、ローラースケートを履いた別働隊にそれを阻まれる。
緑川から尾行を妨害された報告を受けた赤城は、黄山とあきらを応援に向かわせる。
いよいよ決戦が近いと、アンパンを食べてエネルギーを補充する青梅。
アイシーは、あまりにもよく食べる青梅に呆れた様子を見せるのだった。

あきらは、剛と同じく催眠音波を聞いた若者たちが、80年代に流行していたローラースケートを履いて踊るディスコ、ローラーディスコに集まっていることを突き止める。
合流した緑川たち3人は、若者たちと同じくローラースケートを履いた格好に変装して潜入。
ディスコ特有の、音と光の熱狂が渦巻く空間の中央に、ラジオDJキラークィーンに姿を変えたケラーがいた。ケラーの合図で、ラジオの発信源の車に待機していたミラーは催眠音波を流し始める。

催眠音波に苦しむ緑川たちは、剛たち若者が、正気を失ったまま踊り続ける様子を目の当たりにする。なんとか踊りを止めさせようとする緑川たちは、剛たちが被っているヘルメットのラジオを止め、催眠音波を聞かせまいとする。
だがそこに、ローラースケートをつけた襲撃者が次々と現れ、緑川たちを襲う。
襲撃者の正体はダストラー・ローラースケート部隊だった。
緑川たち三人はデンジスパークし、ラジオの発信源である車を破壊するべく地上に出る。

ダストラー・ローラースケート部隊の熾烈な妨害に道を阻まれるデンジグリーンたちだが、そこにデンジレッドとブルーが、デンジマシーンとデンジバギーに乗って合流。
デンジバギーに飛び乗ったデンジグリーンたちは、ラジオの発信源である車を捜索する。
その途中、パトロール中のチーコに遭遇したデンジマン。ラジオ放送の発信源に心当たりがないか尋ねられたチーコは、アンテナを付けた車に遭遇したこととその進路を教える。
協力に感謝を告げて去っていくデンジグリーンに「チーコ」と呼ばれたチーコは、自分の見立て通り、自分をそう呼ぶ緑川がデンジマンの一員であることを確信するのだった。

ラジオ放送を発信する車を発見したデンジマン。
デンジレッドは、デンジマシーンのデンジマシンガンで車を破壊。
ベーダー放送を遮断された若者たちは正気に戻る。
作戦の失敗を悟ったキラークィーンことケラーは姿を消し逃亡した。

「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
残すは、パンチローラーを倒すのみ。名乗りを上げたデンジマンは決戦に挑む。
だが、デンジマンはダストラー・ローラースケート部隊の軽業に翻弄されてしまう。
パンチローラーの突進を見を伏せて回避したデンジマンは、デンジタワーでエネルギーを開放。
デンジマンには大きくジャンプして飛び蹴りを食らわせるドラゴンフライを決め、周囲を包囲するダストラーたちに対し、円を組んでから突進するショットガンでその包囲を突破する。
さらに、横一列に並び突撃する電撃アタックから、それぞれの得意技を炸裂させてダストラーを一掃したデンジマンは、デンジスティックをパンチローラーに投擲。
さらに、最後のトドメのデンジブーメランを炸裂させ、異星怪物をぶっ飛ばした。

パンチローラーは大ダメージを負って追い詰められ、細胞を組み換えて巨大化した。
それに対し、デンジマンはデンジタイガーを呼び、ダイデンジンを発進させる。
ダイデンジンはデンジボールでパンチローラーの武器を絡め取るが、パンチローラーもフリスビーカッターで反撃。だが、ダイデンジンはデンジ剣を取り出すことで、フリスビーカッターを跳ね返し、電子満月斬りでパンチローラーを打ち破った。

ベーダー放送の呪縛から解き放たれた剛は、一人でラジオを聞く日々から一転、共に楽しく語り合い、スポーツし合える仲間を得た。もう二度と、キラークィーンの虜になることはないであろう。
剛は、デンジマンによって太陽の明るさを取り戻したのである。

音楽を使った若者の洗脳作戦は、脚本を担当した上原正三氏の得意なパターン。
前回の「嫌い嫌い音頭」は純真な子供たちの心を掴むものだったが、今回はラジオ放送のヘビーリスナーであり、夜中じゅうラジオを聞き続ける若者がそのターゲットになっている。
人間関係に悩む若者にとって、ケラーが化けた、自分の悩みに寄り添ってくれるラジオDJ・キラークィーンは希望であったことは想像に難くなく、悩みを抱えた人間の心の隙に付け込み、美しいものを憎むベーダー人間にしようとするベーダー一族の邪悪さが演出されている。

登場回から展開されていた、緑川をデンジマンと疑うチーコのドラマも今回で決着。
うっかり「チーコ」と呼んでしまったことで正体が露見した緑川だが、結果的にチーコが警察の立場で入手した怪事件の情報を提供されるようになり、協力体制が確立される。
父親がベーダーに殺された緑川からすれば、自分の知人を必要以上にベーダーとの戦いに巻き込みたくないという思いがあったのであろうが、ここでチーコがデンジグリーンの正体を確信したことで、電子戦隊の面々は心強い協力者を得ることになった。

パンチローラーのモチーフとなったローラースケートやローラーゲームの要素や、劇中でベーダーが若者を集めた、ローラースケートを履いたまま踊るローラーディスコ、そして深夜ラジオに熱狂する若者たちなど、80年代当時の流行を感じさせる時事ネタも多いエピソード。
東映特撮ヒーロー、特に「バトルフィーバーJ」でシリーズを確立し、そこから毎年継続して制作されている「スーパー戦隊シリーズ」は、毎年のように新作が制作されていく中で、個々の作品が制作された時代の時代性を反映した作風で制作されてきたからこそ、それぞれの時代を生きる子どもたちや、大人たちの心に刺さるドラマを展開してきた。
そして、後年になってから作品を視聴する我々は、その作品内のドラマで描かれる時代性を通して、作品が制作された年代に思いを馳せることが出来る。
これは、コンスタントに新作が制作され、かつ1年毎にキャラクターがモデルチェンジすることで、常に当時の最新のトレンドを反映してきた東映特撮ヒーローならではの強みや楽しみであることは間違いない。時代時代を戦ったヒーローの歩みは、やがて歴史となるのだ。

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