「電子戦隊デンジマン」第16話「熱海の陰謀を砕け」感想

2024年7月24日水曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ベーダーは相模湾に“サメラ菌”をばら撒くことで、900万人の殺人計画を立てていた。
サメラ菌の犠牲になった細菌学の権威・小川博士が遺した言葉をヒントに、デンジマンは熱海へと向かい、サメラ菌を培養するためにベーダーに捕らわれた浅野教授と夫人を捜索する。

海を汚染する恐怖の細菌 熱海の街に潜む陰謀を追え

今回のベーダー怪物は、サメのベーダー怪物であるサメラー。
鋭い牙による噛みつき攻撃を得意とするサメラーは、感染すると3ヶ月間の潜伏期間後に発症、皮膚の腐敗から細胞の灰化を経て、全身が土塊となって消滅する恐怖の細菌・サメラ菌を相模湾にバラ撒き、海水浴に訪れる900万人もの人間をサメラ菌の保菌者に変えて抹殺しようと計画。

ベーダーの陰謀により、細胞学の権威である小川博士はサメラ菌の実験台として抹殺され、さらに細菌学者である浅野博士はベーダーに脅され、サメラ菌を培養することを強制させられる。
サメラ菌の犠牲になった小川博士が最期に遺した言葉をヒントに、電子戦隊は熱海へ向かい、ベーダー一族の魔手から浅野教授と婦人を救うために奔走するのであった。

パトカーに乗ってパトロール中のチーコは、タクシーの運転手が慌てて降車し、乗客の無事を確かめる現場に遭遇する。乗客の皮膚は赤くただれ、息も絶え絶えに苦しんでいた。
乗客は最期に、「富士山…探せ…900万人が死ぬ…」という言葉を遺し、絶命。
その遺体は一瞬にして土塊に変わり、跡形もなく消失してしまった。

怪死した乗客は、細菌学の権威である小川博士だった。
小川博士の死を見届けたミラーとケラーは、ベーダー魔城に戻りそれを報告。
ベーダー一族は900万人を抹殺する計画のために開発した細菌・サメラ菌の実験台として、小川博士をサメラ菌に感染させて殺害し、土塊に変えてしまったのだ。
ヘドラ―将軍は、このサメラ菌を相模湾にバラ撒き、湘南海岸などで泳ぐ人間をサメラ菌の保菌者に変えようとしていた。ひと夏の間に海水浴に訪れる人数はおよそ900万人。
サメラ菌には3ヶ月間の潜伏期間がある。3ヶ月後、夏が終わった秋頃には、サメラ菌の保菌者たちは小川博士のように次々に土塊に変わってしまうのだ。
ベーダー一族による、サメラ菌を用いた900万人抹殺計画が進行しようとしていた。

そんなこととはつゆ知らず、電子戦隊の面々は一時の休息の中にあった。
青梅はロッカーに70個以上のアンパンをストックし、赤城とあきらは、日本中のアンパンを独り占めするつもりかと呆れた様子を見せる。
そこに、小川博士の怪死を調査していた黄山と緑川が戻ってきた。
黄山は、小川博士の死因が人間の細胞を灰のようにしてしまう恐ろしい細菌であることを突き止め、緑川は、小川博士が熱海からタクシーに乗ってきたことと、小川博士と同じく細菌学者である、城北大学の浅野教授も行方不明になっていることを突き止めていた。

小川博士が最期に残した「富士山を探せ」という言葉の謎に困惑する電子戦隊に、アイシーはテレビを見るように促す。テレビのニュースでは、熱海の海岸で海水浴を楽しんでいた若者が高熱に倒れ、みるみるうちに土塊と化して絶命した痛ましい事件が報じられていた。
赤城は、熱海に謎を解く鍵があると考え、あきらとともにデンジマシーンで熱海に急行する。

しかし、ベーダー一族は熱海に通じる道に監視員を置き、デンジマシーンで熱海に向かうデンジレッドとピンクの動きを掴むと、その行く手を阻むべくダストラー部隊を出動させる。
デンジマシンガンで突破を図ったデンジレッドだが、砂にデンジマシーンのタイヤを取られてスタックしてしまい、身動きが取れないところに銃弾の雨を浴びる危機に。
そこに、ベーダー怪物・サメラーも現れた。絶体絶命の危機。
だがそこに、デンジバギーに乗ってデンジブルーたち3人が救援に現れた。
不利を悟ったサメラーは、海中に潜って撤退する。

ベーダー一族に待ち伏せされた電子戦隊は、ちんどん屋に変装して熱海市内に潜入。
手分けして小川博士の足取りを追った。
各地の名所を回りながら、小川博士についての情報を集めた電子戦隊は、熱海後楽園ホテルに、宿泊客を装って訪れる。そこには、行方不明の浅野教授とその妻、そして息子雄一がいた。
赤城とあきらは彼らを尾行するが、その様子は宿泊客に化けたミラーとケラーに監視されていた。
浅野教授に捜索願が出ていると声をかけた赤城だが、浅野教授はせっかくのバカンスを邪魔されたくないだけだと言う。そして、息子の雄一に促され、浅野教授一家は遊園地に向かった。
集合した電子戦隊は、遊園地で遊ぶ浅野教授一家の様子を監視する。

夜になり、浅野教授一家は熱海後楽園ホテルのアトラクションショーを楽しんでいた。
その様子を窺っていた電子戦隊は、アトラクションショーの踊り子の中にミラーとケラーが混ざっていることに気づく。ミラーとケラーは浅野教授を監視しているようだった。
青梅はミラーとケラーを排除しようとするが、周囲の人を巻き込むまいとする赤城に抑えられる。
ベーダー一族が浅野教授一家を狙っていることは明白だが、それと小川博士が遺した「富士山を探せ」という言葉の謎が繋がらず、困惑する電子戦隊。
ベーダー一族が細菌を利用しようとしていること、何故か干渉を嫌う浅野教授。
多くの謎が熱海に渦巻く今、電子戦隊は熱海後楽園ホテルに泊まり込みその謎を追うことにした。

ベーダー魔城で、電子戦隊が熱海後楽園ホテルに泊まり込んだ報告を受けたヘドリアン女王は、900万人暗殺計画が電子戦隊の知るところになり、失敗することを危惧する。
ヘドラ―将軍は、バイオ研究を急がせるように指示を飛ばすのだった。
一方、赤城も「富士山を探せ」という言葉の謎が解明できずに苦慮していた。
だが、部屋の外で誰かが忍び足で歩いている気配を察知した赤城は、密かに部屋を出る。
忍び足で歩いているのは浅野教授だった。
赤城は、急いで仮眠を取っていた緑川たちを起こすが、青梅が寝ぼけてなかなか目覚めない。
緑川に起こされてようやく目を覚まし、アンパンを食べてエネルギーを補充した青梅。
5人揃った電子戦隊は、密かにホテルを出た浅野教授を捜索する。
浅野教授を捜索する中、青梅と緑川は、1964年に建造された、73フィートの日本最大のセーリングヨットであり、この当時、熱海後楽園ホテルに上架展示されていた(この後、90年代後半のホテルリニューアル時に撤去されたという)ヨット・ふじやま丸の内部に潜入する。
だが、青梅たちは何も見つけることは出来なかった。

一方、浅野教授はミラーとケラーが待つ培養室を訪れていた。
恐ろしいサメラ菌の培養に協力させられていた浅野教授は、これ以上の協力を断ろうとする。
だが、ミラーとケラーはサメラ菌の犠牲になった小川博士の写真を見せ、浅野教授を脅迫。
ミラーとケラーはこのヨットでサメラ菌を相模湾にバラ撒こうとしていたのだ。

一方、ホテルに戻った赤城たちは、浅野教授の部屋を尋ねる。
浅野教授が外出している現場を目撃したことを告げられた教授夫人は、赤城たちを部屋に案内する。すると、眠っていた息子の雄一が目を覚ました。
教授夫人は何かに怯えた様子で、浅野教授が東京に戻ったと告げる。
赤城たちはそれ以上追求できず、部屋を出ていった。
部屋に鍵をかけた教授夫人に、雄一が突然恐ろしい形相で声をかけてくる。
「デンジマンに告げてみろ!お前の夫、浅野教授は死ぬのだ!」
雄一の姿がみるみる変わり、ベーダー怪物・サメラーに変化。
サメラーは雄一に化けて、浅野教授と夫人を監視していたのだ。
教授夫人はその恐ろしさに卒倒する。

夫人が目を覚ますと、そこは遊園地の観覧車のゴンドラの上だった。
無邪気に遊園地を楽しむ雄一に化けるサメラーの恐怖に怯える夫人。
電子戦隊がその様子を監視する一方、別行動を取っていた緑川は、ホテルのフロントでチーコからの電話を受けていた。緑川に浅野教授の行方を調べるように頼まれたチーコは、浅野教授が自宅にも大学にも戻っていないこと、そして、今熱海にいる雄一は偽物であることを告げる。
本物の雄一は風邪をこじらせて病院に入院しており、ようやく回復に向かったばかりだったのだ。

チーコからの情報で、今夫人のそばにいる雄一が偽物であることを知った電子戦隊。
夫人の手を引いて進む偽の雄一に、赤城は物を投げつける。
それを受け止めた雄一は、本物の雄一の所在を知らされたうえで偽物であることを指摘されると、ついにその正体を現し、サメラーに変化。海中へ逃亡してしまう。
電子戦隊は、浅野教授が何処かに監禁されていると見て、ベーダー秘密基地の捜索に乗り出した。だが、その行く先々で、ベーダーの刺客が電子戦隊に襲いかかる。
一方、それとは関係なく、黄山はカップルがいちゃつく部屋に間違えて入ってしまい、青梅は美女に声をかけられて一瞬鼻の下を伸ばしかける。
だが、青梅は哀しいことに、自分がそんなにモテるはずはないと襟を正す。
案の定、青梅に声をかけてきた女性はベーダーの刺客で、爆弾を投げてきた。
青梅は自虐ネタのおかげでそれを無事に躱すことに成功する。

ベーダー秘密基地は一向に見つからず、小川博士の「富士山を探せ」の謎も解けない。
手詰まりになった電子戦隊だが、赤城が、青梅たちが昨夜調べたヨットの名前が「ふじやま丸」であることに気づいたことで、再びヨットの内部に潜入。
船内で、カーペットに隠されていた隠し部屋への入口を発見した電子戦隊は、ベーダー一族がサメラ菌を培養していた培養室を発見。
ついに、ベーダー一族の狙いがサメラ菌を海にばら撒くことにあると掴むのだった。

ふじやま丸を出た電子戦隊は、サメラーが浅野教授を捕らえ、船に乗って海に出る現場を目撃。
サメラーは浅野教授にサメラ菌をばら撒かせようとするが、浅野教授はそれを拒否する。
キレたサメラーは浅野教授を殴打すると、同船していたダストラーにサメラ菌をばら撒かせようとする。だがそこに、デンジマンたちがモーターボートに乗って現れた。
モーターボート同士の熾烈な追撃戦が、相模湾に展開する。

ダストラーの砲撃をくぐり抜け、海にダイブしたデンジマン。
彼らはロープをモーターボートにくくりつけており、銃撃を躱していた。
サメラーたちは海岸へ逃亡し、ミラーとケラーはデンジマンを迎え撃つべく地雷を設置する。
そして、サメラーに追いついたデンジマンたちは浅野教授をベーダーから奪還。
浅野教授を逃がしたデンジマンたちは、地雷原を突破しながらサメラーを追う。
デンジジャンプからの飛び蹴りがサメラーに炸裂し、サメラーは大ダメージを負った。

サメラーは細胞を組み換え、巨大化。
デンジマンもデンジタイガーを呼び、ダイデンジンが発進する。
サメラーは首だけの姿になると、陸を泳ぐかのように素早い動きでダイデンジンに接近。
顔だけのサメが陸を泳いでくる、Z級サメ映画のような絵面だが、噛みつかれたダイデンジンは大ダメージを負う。なんとかデンジ剣で反撃したダイデンジンだが、サメラーは逆にミクロ化して逃げてしまった。デンジマンもそれを追い、ダイデンジンを降りる。

「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
「邪魔されてたまるかぁ!900万人暗殺計画!」
ついに、デンジマンとサメラーの最終決戦が始まった。
デンジマンは、サメラーがけしかけるダストラーの包囲網をショットガンで突破。
デンジブルーは、猿周り、ブルースネークやカンガルーキックといった、まるでバトルケニアのような、野獣の如きしなやかな動きの技でダストラーを次々に蹴散らしていく。
サメラーが槍を振り回すと、巨大な爆発が起こりデンジマンを痛めつける。
だが、デンジマンはデンジタワーを組み、ドラゴンフライでサメラーを蹴りつける。
再び顔だけのサメになり、サメ牙でデンジマンの足に噛みつくサメラーだが、デンジマンはデンジスティックで反撃し、サメラーを地上に引きずり出して連続攻撃を加える。
そして、最後のトドメのデンジブーメランを炸裂させ、異星怪物をぶっ飛ばした。

こうして、浅野教授一家に平和と笑顔が戻った。
本物の雄一も熱海を訪れ、熱海後楽園ホテルの遊園地でゴーカートやボーリングを楽しむ。
電子戦隊の面々も、ほんのひと時、熱海での休日を楽しむことになったのである。

冒頭の「富士山を探せ」という言葉の謎は、ある意味何のひねりもなく「ふじやま丸」を探せというそのまんまの意味だったのが、肩透かし気味ではあったエピソード。
ただ、私的にはこの回でのフィーチャーのおかげで、熱海後楽園ホテルにかつて展示されていた73フィートのセーリングヨット・ふじやま丸やそれに関するエピソードを知ることを知ることもなかっただろうから、映像作品を通して知識が増え、面白いエピソードだった。
90年代のホテルリニューアルによる撤去で、今ではその姿を見ることは出来ないことを思えば、往年の姿を見ることが出来る貴重な資料としても意義のあるエピソードだ。

相模湾を舞台に展開する戦いにふさわしく、海の最強生物であるサメをモチーフにしたサメラーは、牙を剥く頭部の造形が迫力満点。1980年は既に、サメ映画というジャンルを切り開いた不朽の名作「ジョーズ」が公開されて久しい時期だっただけに、「ジョーズ」のポスターに描かれたサメにも負けない、凶悪かつシャープな牙の造形が魅力的な怪人だ。
首だけの姿になって陸を泳いでくる「サメ牙」の能力は、密かに迫ってくる「ジョーズ」のサメの恐怖感を怪人として描写しようという試みを感じさせ、面白い映像になっている。
とはいえ、Z級サメ映画が何故かどんどん日本に輸入され、動画定額見放題サイトなどで視聴が容易になっている今の目で見ると、どこかZ級サメ映画っぽい描写にも見えてしまうが…。

熱海を舞台にし、熱海後楽園ホテルとタイアップで制作されたこのエピソードは、東映まんがまつり用に制作された劇場版と並行して撮影されたとのこと。
この劇場版では、ベーダー一族に滅ぼされたデンジ星人の生き残り、デンジ姫やデンジ星人の末裔の存在が語られることになる。劇場版についてもデンジ姫の存在がTVシリーズで語られるという26話までの間に、記事に出来れば…と考えています。

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