あらすじ
ベーダー怪物・デッドボーラーはプロ野球界のホームラン王・玉木を狙うが、青梅の活躍により阻止されてしまう。デッドボーラーは兄を試合中の事故で再起不能にされたことで玉木を憎んでいる少年・球太を利用し、玉木を抹殺しようとするが…。
恐怖!ベーダー殺人野球 過去に囚われた少年の心を救え
今回のベーダー怪物は、走塁すれば対戦相手の首を刎ねてでも塁に出て、三振すれば死刑になるベーダー一族の恐怖の殺人野球、ベーダー野球のエースピッチャーであるデッドボーラー。
ルール無用のベーダー野球で、デッドボールを直撃させ相手チームを壊滅させるエースであるデッドボーラーの目的は、地球で流行する野球を衰退させ、地球にベーダー野球を根付かせること。
デッドボーラーはそのために、練習に励む高校球児やプロ野球選手を次々に襲撃。
鉛で出来たボールを時速300kmの豪速球で投げ、標的にした選手の頭部に直撃させることで次々に未来ある野球選手たちを再起不能の重症に追い込んでいく。
そして、そんなデッドボーラーの最終目標になったのが、日本プロ野球界にホームラン王としてその名を輝かせ、球界にその名を轟かせる名選手・玉木。
デッドボーラーは玉木を抹殺すべく、玉木との試合中の事故によって兄を野球選手として再起不能に追い込まれ、玉木を恨み続ける少年・球太を利用しようと目論む。
果たして、電子戦隊は玉木を守り、過去に囚われた球太の心を救うことが出来るのか。
ヘドリアン女王はベーダー城を出て、ダストラーたちの「ベーダー野球」を観戦していた。
塁を守るダストラーは打者のダストラーにタックルで吹き飛ばされ、打者がそのままホームベースへ戻ろうとすれば、今度はキャッチャーのダストラーによって首を刎ねられる。
恐ろしいほどの残酷プレーが連発するものの、ヘドリアン女王からすればこんなプレーは手ぬるいもので、かつてベーダー星で見たプロ野球はこんなものではなかったのだという。
そして、ヘドリアン女王の前で空振り三振したダストラーは、死刑に処され銃殺された。
不甲斐ないプレーにご立腹のヘドリアン女王の気を鎮めるために、ヘドラ―将軍はベーダー野球のエースピッチャーであるベーダー怪物・デッドボーラーを呼び出す。
ヘドラ―将軍に、ベーダー野球の真髄を見せるように命じられたデッドボーラーは、その名の通りデッドボールを連発。ヘドリアン女王もそのプレーに興奮し、満足する。
デッドボーラーのプレーにたいへん上機嫌のヘドリアン女王は、今日本で流行する綺麗事の野球を追放し、ベーダー野球をこの日本に確立するように命じられるのだった。
ほどなくして、各地で練習中の野球選手が何者かに襲撃される事件が立て続けに起きた。
襲撃者の正体は、もちろんデッドボーラーである。
高校球児やプロ野球選手に、次々とボールを直撃させていくデッドボーラー。
その様子を、一人の少年が見ていた。
野球選手連続襲撃事件の調査に乗り出した電子戦隊。
鉛で出来た超重量のボールを、人間の常識では考えられない時速300kmもの豪速球で投げつけられた野球選手たちは、野球選手としては再起不能となる重症を負わされていた。
現場で、デッドボーラーが名乗りを上げていた話を聞いた電子戦隊は、ベーダー一族が国民的スポーツになった野球を日本から失わせるために暗躍しているのだと推測する。
青梅は、デッドボーラーの次なる目標が、日本球界でホームラン王としてその名を轟かせる玉木選手ではないかと推測する。そこに、またしても野球選手の襲撃事件が起きた知らせが入った。
青梅の推測は当たっていた。
プロ野球チームのファームで練習を重ねていた選手たちを襲撃したデッドボーラーは、次なる目標に日本球界のホームラン王である玉木選手を定めていたのである。
ユニフォームに着替えようとしていた玉木選手に、背後から忍び寄るデッドボーラー。
しかし、玉木選手はマウンドに出てしまい、人目の多さを避けたデッドボーラーは一旦撤退する。
そして、青梅も球場に到着していた。
その頃、ベーダー魔城では、ヘドリアン女王がベーダーのフルコースに舌鼓を打っていた。
ウミヘビとヘドロのスープや、エスカルゴの青酸カリ炒めなどの料理を前にしたヘドリアン女王は、デッドボーラーによって負傷した野球選手たちが苦しむ姿を見て食欲を沸かせるのだった。
食卓を囲むヘドラー将軍は、ベーダー野球の普及の経過を報告する。
日本球界が世界に誇るホームラン王にしてシンボルである玉木に引退を勧告したベーダー一族だったが、玉木はその勧告を無視してホームランを打ちまくっていた。
ヘドリアン女王は、引退勧告は生ぬるいとし、玉木の抹殺を命ずるのだった。
翌日、玉木選手が海岸で素振りを繰り返していると、そこにデッドボーラーが忍び寄ってきた。
さらに、その様子を先ほどデッドボーラーの殺人球を目撃した少年が影から見ていた。
デッドボーラーは時速300kmの豪速球を投げつけるが、なんと玉木はそれをバットで打ち返す。
だが、バットは真っ二つにへし折れてしまった。
デッドボーラーはさらにもう一球、殺人球を投げつけ玉木を抹殺せんとする。
しかしそこに、デンジブルーが駆けつけ、玉木を救った。
玉木抹殺を阻止されたデッドボーラーは、時速300kmの豪速球をデンジブルーに投げつける。
デンジブルーがデンジジャンプでそれを躱すと、デンジバギーに乗ったイエローとグリーンが救援に駆けつけ、不利を悟ったデッドボーラーは退却した。
退却するデッドボーラーは、少年が自分の後をつけてきていることに気づく。
球太と名乗った少年は、ホームラン王の玉木を二度と野球ができないようにめちゃくちゃにやっつけてほしいとデッドボーラーに頼み込むのだった。
ラジオで玉木の活躍を聞く球太は、玉木をひどく憎んでいる様子だった。
入院している兄の病室を訪れた球太は、病室で寝ている兄に仇を取ってやると宣言する。
兄は玉木を恨むのはやめるように球太を説得するが、球太はそれに聞く耳を持たなかった。
後楽園ゆうえんちで、子供たちにサインをせがまれていた玉木、球太は背後から近づく。
そして、パチンコで石を飛ばし、玉木にぶつけようとするが、寸前で緑川に阻止される。
駆けつけた青梅や黄山に詰問される球太。
すると、球太を見つけた玉木が駆け寄ってきた。
玉木は、球太の兄の具合を尋ね、明日は休みなので球太の兄を見舞いに行くつもりであったことを話すと、プレゼントとしてグローブを手渡す。
だが、球太はそのグローブを跳ね除け、兄の仇は取るのだと言い捨てて去っていった。
グラウンドで練習する覆面選手のもとに、デッドボーラーが現れた。
覆面選手を玉木と思ったデッドボーラーは三球勝負を申し込み、覆面選手もそれを受けて立つ。
デッドボーラーは豪速球で選手を仕留めようとするが、覆面選手はそれを難なく打ち返した。
三球連続で豪速球を打ち返されたデッドボーラーの前に、覆面選手は正体を明かす。
選手の正体は青梅だった。青梅はデッドボーラーの息の根を止めるべく、最後の勝負に挑む。
だが、デッドボーラーは切り札の消える魔球を披露。
青梅はそれを躱しきれず、顔面にデッドボールの直撃を食らってしまう。
気絶した青梅は救出され、玉木選手の護衛には黄山と緑川がついていた。
時速300kmの豪速球が消えてしまう、消える魔球の脅威に戦慄する一同。
青梅とあきらは、玉木を恨む球太を心配し、球太の家を尋ねることにした。
球太の家には、球太の兄である草間選手が獲得したトロフィーが並んでいた。
玉木と草間は学生時代からのライバルで親友であり、卒業してからも互いにプロ野球選手として切磋琢磨し幾多の名勝負を繰り広げて野球ファンの心を踊らせた名選手だった。
しかし、とある試合中、草間の投球を玉木が打ち返した打球が草間の頭部を直撃。
草間はその後遺症で、野球選手として再起不能、歩くことすらままならぬ体になってしまった。
球太は、兄が再起不能になったのは玉木のせいだと、過去に囚われ玉木を恨み続けていたのだ。
一方、地下道に潜んでいたデッドボーラーのもとに、ヘドラー将軍が現れる。
ヘドラー将軍は、ヘドリアン女王が玉木の死を待ちかねていることを伝え、24時間以内に二度と球場の土を踏めないようにするように伝えると、吉報を待つと言い残し去っていった。
そこに、球太が現れる。
ガードが高く、玉木を倒す隙がないことに困り果てたデッドボーラーは、球太の知恵を借りようとする。球太は、地下のマンホールから接近することが可能であると入れ知恵してしまうのだった。
草野球を楽しむ子供達を、球太が複雑な顔で見つめていた。
そこに現れた青梅は、自分の誇りであり夢だった兄が野球が出来なくなったことを悲しむ球太の悲しみに理解を示しながら、玉木を恨む球太を立ち直らせるために球太を病院に連れて行く。
病院では、草間が玉木とともに、懸命にリハビリを重ねていた。
懸命のリハビリと、玉木の励ましが、草間をわずかでも歩けるまでに回復させていた。
その様子を目の当たりにした球太は、涙を流す。
「球太くん。何も言わなくても、わかるな?」
青梅は、草間と玉木が忌まわしい過去を乗り越え、未来に進むべく励まし合って新たな努力を重ねる姿を見せ、過去に囚われる球太を立ち直らせようとしたのだ。
親友の野球生命を絶ったことで自分も野球を辞めようとした玉木を思いとどまらせたのが草間本人だった。草間は玉木に夢を託し、玉木も託された夢のために努力してきたのだ。
球太を見つけた草間は、玉木とのリハビリで歩けるようになったことと、玉木がスポーツ店への就職を斡旋してくれたことを話す。過ぎ去ったことにくよくよせず、未来に進む兄の強さを目の当たりにした球太は改心し、デッドボーラーの玉木襲撃計画を電子戦隊に伝える。
翌日。
試合を控える玉木のもとに、まんまとマンホールから球場に潜入したデッドボーラーやダストラーたちが現れる。控室を出た玉木を襲撃するデッドボーラーたち。
ついにデッドボーラーの豪速球が玉木に向かって投げつけられたその時。
玉木の身体が突然地下へ沈んでいき、姿を消した。
デンジブルーがデンジドリルで玉木を地下へ避難させたのだ。
そして、デンジレッドたちも駆けつけ、球場から逃亡するデッドボーラーを追い詰める。
「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
名乗りを上げたデンジマンと、ベーダー一族の決戦が幕を開けた。
デンジマンは、ダストラーの包囲に電撃アタックで突撃。個々の得意技でダストラーを蹴散らす。
さらに、バットを使った殺人球のピッチャー返しでダストラーたちを一網打尽にした。
デッドボーラーは「デンジマン殺し・消える魔球」で勝負をかける。
しかし、事前に消える魔球のことを聞いていたデンジレッドは、デンジスコープ・超高速分析で消える魔球の軌跡を捕らえ、ピッチャー返しを直撃させる。
奥の手として、自らの身体をボールに変えて突っ込んできたデッドボーラーだが、バットを投げつけられて勢いを殺されたところに、デンジブーメランを叩き込まれるのだった。
追い込まれたデッドボーラーは巨大化し、デンジマンもダイデンジンを発進させる。
棘付きバットで殴打するデッドボーラーに、ダイデンジンはデンジボールで反撃。
巨大なボールになって襲ってくるデッドボーラーを、電子満月斬りで一刀両断するのだった。
こうして、日本プロ野球界の至宝である玉木は守られ、彼を恨む球太の心も救われた。
デンジマンは、秘打・秘球返しでデッドボーラーを倒した。
球太は素直に謝り、これからは兄弟仲良く生きることを誓った。
明日も戦うぞ!デンジマン!!
暴力と死球が蔓延する殺人野球・ベーダー野球は、漫画「COBRA」のラグボールもびっくりの殺人スポーツ。そんなものがプロ野球として成立していたベーダーの恐ろしさは、走者の首が飛び、三振すれば死刑になるあたりで十全に伝わってくる。
そして、鉛で出来たボールを時速300kmで投げ、選手の頭部に直撃させるデッドボーラーの恐ろしさも、野球という身近な競技が引き合いに出されていることでより身近に感じることが出来る。
デッドボーラーそのものも、「秘密戦隊ゴレンジャー」の野球仮面のような愛嬌が存在せずに、的確にその豪速球で選手を殺しにかかってくる恐怖感が秀逸な怪人だ。
尊敬していた兄の野球選手としての栄光を試合中の事故で失ったことで絶望し、その事故の要因となった玉木を恨む球太は、過去に囚われ悲しみに包まれていた。
しかし、そんな境遇を悲観せず、リハビリに励み自分の夢を親友に託した兄の姿を見て、自分がいつまでも過ぎたことに囚われていたことを悟るシーンは大きな感動を呼ぶ。
球太の悲しみに寄り添いながらも、過去に囚われ玉木を恨み続ける彼を厳しい言葉で病院まで連れて行き、兄の姿を見た球太が改心することを信じる青梅の温かい心も秀逸な描写で、子供の将来を思う良心的な大人として描かれた素晴らしい描写になっている。
忌まわしい過去を乗り越えようとする人間の心の強さと、傷ついた少年の心に寄り添い、その将来を思って正面から向き合おうとする大人としての在り方が描かれた名作エピソードだった。