「電子戦隊デンジマン」第18話「南海に咲くロマン」感想

2024年7月31日水曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ベーダー一族は太古の海を支配していた海彦一族を復活させることで人類を支配しようとする。
海彦一族の血を引いた人々が、ベーダー怪物・カイガラーの吹く笛の音で次々と水棲人間に姿を変えていくなか、あきらの幼馴染み・洋太郎も失踪する。
デンジマンは洋太郎たちを救うためにベーダー一族に立ち向かうが…。

運命を弄ばれた水棲人間 愛と哀しみの別れ

今回のベーダー怪物・カイガラーは、かつて、海に住み海を支配していた水棲人間の一族・海彦一族の血を引いた人間たちに、笛で奏でる潮騒の音を聞かせることで彼らの身体に流れる海彦一族の血を呼び覚まし、身体を水棲人間へと変え、自在に操ることが出来る。
ベーダー一族は海彦一族を操ることで海を支配しようと目論見、カイガラーに海彦一族の血を引く者たちを覚醒させるが、その中にはあきらの幼馴染である洋太郎がいた。

海彦一族はかつて、自然豊かな時代に海に住んでいた水棲人間の一族である。
時代の流れの中で、陸に住む人々の中に溶け込んでいった海彦一族の末裔は、普通の人間として平和に暮らしていた。だが、カイガラーの笛の音によって水棲人間へと変貌してしまう。
そんな海彦一族の末裔の一人である、あきらの幼馴染の洋太郎は、競争ばかりの現代社会に疲れ果て孤独を味わい、南の海でゆっくりと暮らしたいという素朴な夢を持っていた。
そして、水棲人間へと変貌したことでついに陸に住む人間たちと相容れない存在となった絶対的な孤独へと追い込まれてしまう。果たしてあきらは、洋太郎の心を救えるのか…。

遠い遠い昔、魚のように、海の中でも生きる事の出来た人間がいたという。
誰もその姿を見た者はいないが、その人々のことは、「海彦一族」と呼ばれて、ある海辺の村の昔話の中に語り継がれている。海岸には、彼らの遺した青い足跡が、海に向けて刻まれていた。

ヘドラー将軍は、ヘドリアン女王に海彦一族について語っていた。
海彦一族はただの伝説ではなく、海を奪われて絶滅した。
しかし、ごく少数の者は陸へ上がり、今日まで生き残っているのだという。
その者たちすらも、既に自分が海彦一族である自覚はない。
だが、新たに生み出されたベーダー怪物・カイガラーは、その笛で波の音を奏で、海彦一族の遠い記憶を呼び覚まして水棲人間へ変え、デンジマンと戦うよう語りかける能力を持つ。
ヘドリアン女王は、海彦一族を利用してデンジマンを倒すように命ずるのだった。

深夜、アスレチッククラブにいたあきらは夜中にも関わらずプールの水の音を聞く。
プールで何者かが泳いでいることに驚いたあきらは悲鳴を上げ、電子戦隊も集まってきた。
電気を付けると、プールで泳いでいたのはあきらの幼馴染である海原洋太郎だった。
洋太郎はカナヅチで、それを克服すべく泳ぎの訓練をしていたのだ。
どこか鈍臭い洋太郎がお辞儀をすると、距離が近すぎたせいで青梅に頭突きをかましてしまう。
洋太郎は、周囲のみんなに馬鹿にされたことで意地になり、彼女と一緒に泳ぐところを見せると啖呵を切ってしまったのだという。泳げもせず、彼女もいない洋太郎は、あきらに助けを求める。

翌朝、河原で子どもたちと一緒にランニングをしていた男の元に、波の音が聞こえてきた。
波の音を聞いた男は苦しみ始め、手足が水かきになり、背びれが現れ、顔は鱗に覆われる。
これこそがカイガラーの笛の音の効果であり、海彦一族の血を引いていた男は潮騒の音によって海彦一族の記憶を呼び覚まされ、水棲人間へと変えられてしまったのだ。

パトロール中のチーコの眼の前でも、海彦一族の血を引いていた警官が水棲人間へと変わってしまう事件が起きた。酒屋で働いていた男も、潮騒の音により水棲人間へと変わる。
こうして、カイガラーは瞬く間に三人の海彦一族を支配してしまった。
それを感知したアイシーの命を受け、電子戦隊は出動する。
眼の前で水棲人間に変わった警官が残した足跡を追い、行方を調べていたチーコから水棲人間へと変わった海彦一族の人々の名前を聞いた電子戦隊は、彼らの名字に共通して「海」の字が入っていることと、洋太郎もまた「海原」という「海」の入る名字であることに気づくのだった。

その頃、洋太郎とあきらはボートに乗って湖でのデートを楽しんでいた。
洋太郎は、このまま南の海まで行けたらいいなと夢を語る。
お金を貯めて、誰もいないエメラルドグリーンの南の海で暮らしたいと語る洋太郎。
あきらにその理由を尋ねられた洋太郎は、人間社会に嫌気が差していると話す。
仕事も恋愛も競争ばかりで、不器用な自分には生きる場所がないように感じていた洋太郎は、人間社会の中で孤立感を感じていた。
あきらはそんな洋太郎の心に寄り添い、逃避願望に逃げずに頑張ろうと励ます。
あきらの優しさに心打たれる洋太郎だったが、その耳に、カイガラーの笛の音が聞こえてきた。

苦しみ始めた洋太郎は、あきらの眼の前で水棲人間へと姿を変える。
そして、あきらの乗るボートには、三人の海彦一族が近づいていた。
カイガラーはあきらを殺すように洋太郎を操ろうとするが、洋太郎は苦しみながら湖に落ちる。
水棲人間になって泳げずに苦しむ洋太郎を救おうと手を伸ばすあきらは、三人の海彦一族によって湖に引きずり込まれる。そこに駆けつけたデンジマンは、デンジスコープで湖に引きずり込まれたあきらを発見、救出へ向かう。
カイガラーもダストラーたちを向かわせ、湖での戦いが始まった。

なんとかあきらを救出したデンジマンは、ダストラーを蹴散らす。
カイガラーは笛から銃弾を放ち、デンジマンの目を欺いて逃亡。
さらに、洋太郎を含めた海彦一族たちも連れ去られてしまった。
目を覚ましたあきらは、洋太郎を捜索する。
だが、水棲人間となっても十分に泳げない洋太郎はカイガラーやヘドラー将軍から見限られる。
ヘドラー将軍は、デンジマンを倒すと女王に誓ったにも関わらずデンジマン抹殺に失敗した責任をカイガラーに問い詰め、カイガラーは十分に泳げる海彦一族三人に、海岸のコンビナートを襲わせて海岸地帯を火の海にする作戦を立てるのだった。

だが、カイガラーの作戦はすぐに瓦解した。
水棲人間となった3人の遺体が岸に流れ着いているのが発見されたのである。
海彦一族が海に住んでいた時代は、海も空気も綺麗だった。
文明社会の発展による大気汚染・水質汚染が進んだ現代には、海彦一族は適応できなかったのだ。
せっかく見つけ出した海彦一族をみすみす死なせたカイガラーは、ヘドラー将軍に叱責される。
だが、カイガラーはひとり残った洋太郎を利用する作戦を思いついていた。

カイガラーたちが姿を消した隙をつき、洋太郎は逃亡を図る。
だが、それこそがカイガラーの作戦だった。海彦一族は地上では生きていけない。
洋太郎が追われた果てに必ずあきらに助けを求めることを計算したカイガラーは、洋太郎をあきら、ひいては電子戦隊を誘き出すための罠として利用しようとしているのだ。

デンジランドに電話がかかる。
アイシーの指示で電話を受けたあきらは、洋太郎の助けを求める声を聞くのだった。
水棲人間となり、もはや人間社会で生きていけない洋太郎は、南の海に行きたいと願う。
赤城たちは、そもそも洋太郎がアスレチッククラブのプールにいたことすらもベーダー一族の罠だった可能性を指摘し、あきらを往かせまいとする。
だが、あきらに洋太郎からの電話を受けさせたアイシーは、海彦一族が平和を愛する一族であることを知っており、あきらに洋太郎を助けるように促していた。
子供の頃から社会に疎外感を感じて孤独に生き、そして今、仲間の海彦一族が全滅した今、世界で最も孤独になった洋太郎を救うべく、あきらは洋太郎の元へ走る。

洋太郎のもとに駆けつけたあきらの前に、カイガラーたちが現れた。
ダストラーの銃撃を躱したあきらは、銃を奪ってダストラーを一掃する。
それでも続く熾烈な追撃を避け、海岸へと向かうあきらと洋太郎。
ベーダー一族は、山道に残る青い足跡を洋太郎のものだと思い、その後を追う。
だが、青い足跡は幾多の方向に分かれていて、カイガラーはどれが本物かわからず混乱する。
デンジマンたちが手分けして青いペンキを水かきに塗り、偽の足跡をつけていたのだ。

ようやく砂浜へと到着したあきらと洋太郎。
だが、追われ疲れた洋太郎は、もはや体力も気力も尽きていた。
水棲人間となったまま生きていても仕方ないと悲嘆に暮れる洋太郎に、あきらは綺麗な水と平和を愛した海彦一族としての姿を誇りに思うように励ます。
そして、自分たちはそんな美しい自然と平和を守るために戦っているからこそ、それを愛する海彦一族の末裔である洋太郎に生きていてほしいのだと、洋太郎を元気づけるのだった。

気力を取り戻した洋太郎と、あきらはついに海に到着する。
洋太郎は海の美しさに、自分とあきらが笑い合う平和な光景を夢に見る。
だがそこに、先回りしていたカイガラーたちが現れた。
洋太郎を草陰に隠したあきらはデンジスパークし、単身カイガラーに立ち向かう。
そして、デンジレッドたちも駆けつけて、名乗りを上げた。
「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」

デンジマンは得意技を用いてダストラーを蹴散らす。
カイガラーの砲撃や、笛を用いた幻術に苦戦しながらも、デンジタワーでエネルギーを高め、5人同時のキックで反撃を決めるデンジマン。
そして、デンジスティックを構えたデンジマンは、5人同時に空中からデンジスティックを叩きつける新技「電子稲妻落とし」を決め、カイガラーに大ダメージを与えるのだった。

だが、カイガラーは細胞組織を組み替えて巨大化した。
デンジマンもデンジファイターを呼び、変形したダイデンジンに乗り込む。
笛をマシンガンにして攻める巨大カイガラーに、ダイデンジンはデンジ剣を地面に突き立てて火柱を走らせて反撃。弱ったところに電子満月斬りを叩き込み、カイガラーを倒した。

戦いは終わった。だが、海岸に洋太郎の姿はなかった。
あきらは、大海原へ向かって泳いでいく洋太郎の姿を目撃する。
「これでいい…これでいいのよね…洋太郎くんは、夢だった南の海へ向かっているんですもの…綺麗な南の海なら、あの人も生きていける…」
「さよなら、日本。さよなら、あきらちゃん。俺は、今初めて自由になったんだ。のんびり、気楽に、南の海で暮らすさ…。遠く、南の海から、地球の平和を祈っているよ…」
かくして、最後の海彦一族は、波間にその姿を永遠に消した。
そして、海彦一族の物語は、デンジマンによって後世に語り継がれるであろう。

陸に住む人間に溶け込み、自らのルーツを忘れ平和に暮らしていた海彦一族の面々を、一方的に利用しようと目論見み水棲人間へと変え、みすみすと無駄死にさせたカイガラーの非道が目立つ回。
ただ一人生き残った洋太郎も、もはや普通の人間に戻れず、同族である海彦一族も絶滅したことで、たった一人で生きるしかない絶対の孤独へと追い込まれたその非道は、一方的に海彦一族を利用し弄んだもので、決して許されるものではない。
アイシーがあきらに洋太郎を助けるように促したのも、自分たちデンジ星の住民と同じく、ベーダーによる一方的な侵略で滅びゆく種族への憐憫と同情だったことも、想像に難くない。

人間社会に馴染めず、逃避願望を抱いていた洋太郎。
だが、あきらの励ましでなんとかまだ人間社会に踏み留まり頑張ろうとしていた彼の心は、無惨にもベーダー一族の陰謀によって踏みにじられ、水棲人間へと変えられた彼はもはや陸では生きられない身体となってしまった。それでもなお、自然と平和を愛する種族であった海彦一族の証である水棲人間の体を誇りに思うように励ましたあきらの優しさは、洋太郎の心を救ったと思いたい。
一人、南の海で暮らすことを選んだ洋太郎が、そうして初めて自由になれたのだと残した言葉は、自分を励ましてくれたあきらを、少しでも心配させまいとした洋太郎の強がりなのだろう。
自然と平和を守るために戦うあきらを思う洋太郎の愛が、涙の海を漕いでいく。

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