「電子戦隊デンジマン」第19話「私の星の王子さま」感想

2024年8月7日水曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ベーダー一族が、ワールド太陽熱研究所を襲撃した。
その狙いは、ワールド太陽熱研究所が研究を進めていた、太陽熱を利用するクリーンモーターにあった。ベーダー一族はクリーンモーター開発を阻止するべく、唯一生き残った研究所員の松本直也を暗殺するため、直也の妹・なるみの恋心を利用しようと接近し…。

魔に魅入られた少女の悲恋 星の王子の誘惑

今回のベーダー怪物は、蝦蟇のベーダー怪物であるガマラー。
蝦蟇に乗った忍者の姿から自在に姿を変える能力を持つベーダー怪物で、忍者に妖術で使役される蝦蟇をモチーフにした怪物らしい忍者としての能力がユニークなベーダー怪物だ。
そんなガマラーは、公害を発生させない太陽熱を利用したクリーンモーター「太陽熱モーター」の開発を阻止するため、その研究を行っていた研究者・松本直也の暗殺を目論む。
しかし、直也は電子戦隊の面々に護衛されており、その突破は困難だった。

そこで、ガマラーは直也の妹である少女・なるみに目をつける。
変身能力で、童話「星の王子さま」を思わせる美しい容姿を持つ少年・なつきへと変身したガマラーは、なるみに接触することでその心を支配し、なるみの恋心を利用して直也が研究を続ける自宅への侵入を試みる。果たして、電子戦隊は直也を守ることが出来るのか…。

ワールド太陽熱研究所に、怪しげな車が来訪した。
研究所の前でエンストを起こしたらしい車の主の女性に、警備員が声を掛ける。
エンジンの様子を見ようとした警備員は、女性にボンネットを下げられ、ボンネットと車体の間に首を挟まれ動けなくなってしまう。そして、警備員が動けない間に、女性は不審なトラックを研究所の敷地内に引き入れる。女性の正体は、変装したケラーだったのだ。

ワールド太陽熱研究所では、石油の代わりに太陽熱で動くモーターの開発を進めていた。
研究を進める科学者の一人、松本直也のところに、妹のなるみと愛犬のコロが尋ねてくる。
同僚は兄を思うなるみを気遣い、直也をなるみの元へ向かわせる。だが、直也と入れ替わるように、まんまと研究所に侵入したベーダー一族が研究室へ向かっていった。

直也がなるみとコロと対面し、一時の安らぎを楽しんでいた頃。
研究室に侵入したベーダー一族は、太陽熱モーターの研究成果を破壊する。
直也が家を一人で守る妹を気遣っていると、コロが突然唸り始めた。
その声で、直也となるみが異変に気づいた時には、時すでに遅し。
研究室には炎が上がり、研究員は重症を負う。太陽熱モーターの設計図は全て燃やされていた。

ベーダー魔城では、ヘドラー将軍が、ミラーとケラーが回収した太陽熱モーターの資料を読み上げていた。太陽熱モーターを自動車のエンジンに利用すれば、オキシダンと二酸化硫黄、二酸化窒素などの汚染物質は尽くカットされるのだという。
それは、汚れた大気を好むベーダー一族には死活問題だった。大気が汚れた毒々しい東京の空気を好むヘドリアン女王は、大気をクリーンにする太陽熱モーターの開発を完全に根絶すべく、ミラーとケラーにワールド太陽熱研究所の生き残りである直也の抹殺を命ずるのだった。

ミラーとケラーは、ダストラーを率いて直也の自宅を襲撃した。
だが、そこにデンジブルーとデンジイエローが現れ、ダストラーを倒す。
黄山と直也は旧知の仲で、ベーダー一族のワールド太陽熱研究所襲撃事件を聞きつけた黄山は、ワールド太陽熱研究所唯一の生き残りである直也を護衛すべく待機していたのだ。
夜になり、全員合流したデンジマンは、直也の自宅周辺をデンジマシーンやデンジバギーでパトロールしていた。すると、直也の家の庭に繋がれていたコロが、何かを察知して突然吠え始める。
コロの様子を見に外に出たなるみが、その隙にベーダー一族に襲われることを危惧した青梅は、なるみの安全のためにコロの面倒を見ることを買って出るのだった。
直也は、重症を負った他の研究者に代わり、太陽熱モーターの開発を続けることになっていた。

その頃、ベーダー魔城ではヘドラー将軍が新たなベーダー怪物を誕生させていた。
卵から生まれたベーダー怪物17・ガマラーは、ヘドリアン女王に「星の王子」になり、可愛い娘を誘惑することを命じられる。すると、ガマラーは蝦蟇に乗った少年忍者へと姿を変え、そこからさらに、西洋風の衣装を着た「星の王子」の姿へと変わる。
星の王子さまの衣装は、なんだかちょっとビートたけし氏扮する「タケちゃんマン」っぽい。

その頃、電子戦隊の面々とアスレチッククラブの仲間たちは、アスレチッククラブに通う子供たちのリーダー的な存在だった、大石源一の家の蕎麦屋に集まっていた。
なんでも、源一は北海道の祖父の牧場を継ぐことになり、北海道へ転向することになったのだという。赤城は、源一に北海道に行っても空手の精神を忘れないように声を掛ける。
日本一の牧場主になってみせると意気込む源一を、電子戦隊の面々は称える。
チーコがパトカーで駅まで送っていき、源一は去って行った。
子役レギュラーキャラの降板自体は他の番組でも例があるが、しっかりと退場シーンと退場する理由が描かれる丁寧な展開で、突然いなくなってしまった唐突感がないのは丁寧な作劇。
この回の本筋とは関係がないのだが、それでも退場する場面を挿入したことで、なんだかいつの間にかいなくなっている…という不自然さをなくしているのが見事だ。

研究に没頭する直也を、そばでガードする黄山。
黄山は直也の自宅に赤外線センサーと思われる警備装置をつけるなど、厳重な警備で直也を護衛していた。兄を案ずるなるみに、直也は必ず太陽熱モーターを完成させることを誓う。
翌朝、ヌンチャクの稽古をしていた青梅は、コロの吠え声を聞きつける。
短いシーンだが、大葉健二氏のキレのあるヌンチャク捌きが見られるのが嬉しい。
コロの吠える先には、青梅も見たことがないほどに大きな蝦蟇がいた。
蝦蟇が何処かへ去っていった後、なるみがコロの散歩をするために家の外に出た。
だが、コロはリードを振り切って何処かへ走っていく。なるみは慌ててその後を追った。

コロを追って公園に来たなるみは、同級生が何者かをいじめている現場に出くわす。
変な服を着ているという理由でいじめられていたのは、ガマラーが化けた星の王子だった。
星の王子を助けたなるみは、見つめ合っているうちに星の王子に魅了される。
宇宙から来たのだと身振りで示す星の王子と握手したなるみは、その瞬間星の王子の世界に引きずり込まれ、テレパシーで彼の言葉が理解できるようになった。
心が通じ合えば、離れていても話し合う事が出来ると言う星の王子の言葉に、なるみは彼が宇宙から来た星の王子であると信じ込み、一人ぼっちで孤独な彼に友だちになってほしいと頼まれ、それを受け入れてしまう。星の王子は自身の持つ超能力として、光線を出して木を破壊する能力を見せ、なるみに不思議な指輪を嵌める。すると、指輪から虹の橋が生じる奇跡が起こった。
二人は虹の橋を渡り、星に乗って広い宇宙を見る。

だがそこに、青梅の声が響く。
なるみは急激に現実に引き戻され、眼の前にいたはずの星の王子の姿はそこになかった。
その夜、直也にお茶を持ってきたなるみは、見たことがない指輪を指に嵌めていることに気づかれ、友だちにもらった景品だと誤魔化し、部屋を出ていく。
それを見ていた黄山は、指輪がオパールでも、ルビーでもない、無論、景品のガラス玉でもない、地球のものと思えない材質であることを見抜き、不穏なものを感じていた。

自分の部屋に戻ったなるみは、指輪に触れながら星の王子との逢瀬を思い返していた。
すると、そこに星の王子の声が響く。
星の王子は心が通じ合っているからこそテレパシーが通じ、500mもの距離を超えて声が聞こえるのだと説くと、寂しいのでさっきあった場所まで来てほしいと囁く。
星の王子に心を魅了されたなるみは、表でコロと遊びながら警護をしている青梅の様子を窺い、裏口から家を出て星の王子に会いに行く。なるみと対面した星の王子は、指輪を手元に持っていたものとすり替えると、なるみの前から去っていくのだった。

星の王子こと、なつきを探していたなるみの前に、青梅と黄山が現れる。
黄山は、なつきがなるみに渡した指輪をデンジランドで調べ、それが多面レンズ、一種のカメラであることを見抜く。ベーダー一族がなるみを利用してスパイに仕立て上げようとしていることに戦慄する電子戦隊。だが、なるみはなつきに夢中だ。
電子戦隊は、なんとかなつきの化けの皮を剥がすべく、作戦を練るのだった。

ベーダー魔城では、直也が太陽熱モーターの設計図の復元を完了したことを知ったベーダー一族が危機感を募らせ、ガマラーに大至急、直也の抹殺するように命じていた。
そして、自室にいたなるみの耳に、なつきのテレパシーが再び響く。
部屋を飛び出そうとしたなるみを制した直也は、恐ろしいベーダー一族がなるみを騙そうとしているのだと懸命に諭すが、なつきが星の王子であると信じ込んだなるみは聞く耳を持たない。
誰も自分の気持ちをわかってくれない苦しさに耐えかねたなるみは、部屋に籠もるのだった。

ベッドで休んでいたなるみの耳に、またしてもなつきのテレパシーが響く。
なつきは、部屋の警報装置を切れば君に会えるんだとなるみを唆す。
君に会いたいと懇願するなつきの声に心を動かされ、なるみは見張りをしている青梅が寝ている隙に、警報装置のスイッチを切ってしまうのだった。
星の王子の姿をしたなつきは、超能力で扉の鍵を開け、研究室で休んでいる直也を刺し殺そうとする。だが、その直也はデンジレッドの変装だった。
なつきがなるみを利用して警報装置を切らせることを見抜いていた電子戦隊は、見張りをしている青梅に寝たふりをさせ、なつきを家の中まで誘き出す作戦を取ったのだ。

逃亡を図るなつきは、デンジマンに包囲される。
少女の心を弄ぶ悪魔へ怒りを燃やすデンジマンの前に、なつきを庇おうとなるみが立ちはだかる。
なるみの心を傷つけまいとし、ベーダー怪物としての姿を見せまいとしていたデンジマンだったが、完全に悪魔に魅入られたなるみの心を闇を晴らすため、荒療治を行う。
カーテンで隠されていた巨大な鏡がなつきの姿を映し出すと、そこに映っていたのは醜いベーダー怪物・ガマラーだった。恋心を抱いた星の王子の醜い正体に、なるみは卒倒する。

追い込まれたガマラーは、星の王子の姿から、蝦蟇に乗った忍者へと変身。
そして、ベーダー怪物の姿となった。
デンジマンは高らかに名乗りを上げ、少女の心を弄んだ悪魔へ戦いを挑む。
分身から、稲光を呼ぶ忍術でデンジマンを翻弄するガマラー。
部屋の家具が乱れ飛ぶ大混乱の中、デンジマンはガマラーを外へ引きずり出す。
巨大な蝦蟇になり、瞬間移動してデンジマンを翻弄するガマラー。
デンジマンはデンジブーメランを炸裂させるが、ガマラーは巨大化した。
デンジマンも対抗すべく、デンジタイガーを呼ぶ。

いよいよ挿入歌「ゴーゴーデンジタイガー」が初披露。
高揚感あふれるメロディと共に、デンジタイガーからダイデンジンが発進した。
ダイデンジンはデンジボールでガマラーを痛めつけるが、ガマラーは巨大なキャッチャーミットになってデンジボールを受け止める。グーにはパーで対処する、じゃんけんの流儀。
ならば、パーにはチョキで対抗するように、ダイデンジンはデンジ剣を取り出した。
電子満月斬りでガマラーを一刀両断したダイデンジンだが、ガマラーはなんと再生。
まさか、ガマラーは不死身なのか?
そう思った矢先、デンジマンは、地上に蝦蟇に乗った少年忍者がいることを発見。
少年忍者こそがガマラーの本体であることに気づき、ダイデンジンを降りる。

緑川=デンジグリーンを演じる内田直哉氏が歌唱する「輝け!デンジマン」も初披露。
軽快さと勇ましさを兼ね備えたメロディが、最終決戦を彩る。
ガマラーの本体は蝦蟇を操り、デンジマンを襲う。
そして、巨大な岩石に化けたダストラーが襲いかかる中、ガマラーの本体は火遁の術で、デンジブルーの周囲を炎に包む。デンジレッドはデンジスティックから放水するデンジウォーターでブルーを救い、5人揃ったデンジマンは再び最後のトドメのデンジブーメランを放つ。
ガマラーの本体は倒され、少女の純粋な恋心を弄んだ悪魔は滅ぶのだった。

電子戦隊の活躍で、直也はついに太陽熱モーターの設計を完成させることが出来た。
電子戦隊がそれを祝っていると、なるみが空に向けて風船を放っていた。
切ない表情で、星の王子に別れを告げるなるみ。
幼き悲恋に別れを告げ、少女は一つ大人になった。
電子戦隊の面々は、12歳という多感な時期に、恋心を悪魔に弄ばれたなるみを暖かく見守る。
少女は、心の星の王子さまに別れを告げた。
デンジマンは見た。事件を通して一段と成長した少女の姿を。

自身の目的のために、少女の心を弄ぶベーダー一族の非道が際立つ回。
恋は盲目とはよく言ったものだが、恋心によって少女の心を支配し、テレパシーによって孤独に苦しむ星の王子を思う優しさに付け入ろうとしたその悪逆さは、誰かを好きになった、恋心を抱いた経験のある人なら、その思いを利用される苦しさが否が応でも感じられ、人の心を汚す悪魔であるベーダー一族の恐ろしさを改めて実感させられる。
切ない恋と別れを知ったなるみが、その思いに別れを告げ成長したのがただ一つの救いか…。

今回、いよいよ挿入歌である「ゴーゴーデンジタイガー」や「輝け!デンジマン」が初披露。
勇壮さと軽快さを兼ね備えたメロディが各場面を彩り、より戦闘シーンを盛り上げている。
それに合わせるように戦闘シーンにも工夫が凝らされ、一度は等身大戦でトドメのデンジブーメランを決め、巨大化したガマラーをもダイデンジンの電子満月斬りで撃退するが、本体を倒さない限り不死身である特性を持つガマラーを相手に再び等身大戦が展開される3段構えの戦闘シーンは非常に見応えがあり、幻術を使うことでデンジマンを幻惑するガマラーのキャラも立っている。
通り一遍の等身大戦からの巨大戦で決着という流れに甘んじず、各話で工夫を凝らした戦闘シーンを展開して視聴者を飽きさせない工夫がされているのが素晴らしい。

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