あらすじ
100年に1度咲く花の蜜を舐めてしまった怠け者の少年・茂。
ベーダー怪人・ハチドクラーのスタミナ源でもある蜜を舐めた茂はゴリラのように大暴れ。
一方、茂から蜜の在りかを聞いたハチドクラーも蜜を摂取し、無敵となり…。
心なき力を与える甘い蜜 最強ベーダー怪物の弱点を砕け
今回のベーダー怪物は、蜂の巣と蜂蜜の瓶が合体したような容姿を持つハチドクラー。
なかなか卵が出てこない難産であり、ヘドラー将軍をして「史上最強のベーダー怪物」というハチドクラーだが、孵化したばかりの状態では全く覇気がなく、ヘドリアン女王も呆れるばかり。
しかし、100年に1度咲くという赤い蜜の花を摂取することで、最強の力を引き出すという。
蜜の力を得た状態では、頭部のハチの巣からの砲撃や胸の蜂を飛ばす攻撃を得意としてデンジマンを苦戦させる実力を持ったベーダー怪物だ。
ヘドラー将軍は赤い蜜の花が咲いていることを確認してハチドクラーを誕生させたものの、ベーダー一族が赤い蜜の花を発見した時には、既に花の蜜は全て失われ、花も枯れていた。
ベーダー一族が赤い蜜の花を見つける前に、怠け者で食い意地の張った少年・茂が偶然にも赤い蜜の花を発見し、その蜜の香りに誘われて蜜を食べてしまったのである。
運動が苦手だった茂は蜜の力で怪力を発揮するようになり、サブタイトルの「ゴリラ少年」というフレーズが可愛く思えるほどの大暴れを見せ騒動を引き起こす。
だが、赤い蜜には怪力を与える効果だけでなく、人間にとっては猛毒となる作用も秘めていた。
茂が食べきれず、瓶詰めにして隠していた蜜を求め、ベーダーは茂を襲う。
そして、茂の身体は蜜の毒に蝕まれてしまうのだった。
果たして電子戦隊は茂を救い、最強のハチドクラーを倒すことが出来るのか…。
次元の狭間のベーダー魔城では、ヘドラー将軍が何度レバーを操作してもベーダー怪物の卵が孵化せず、ヘドリアン女王が待ちくたびれていた。
ヘドラー将軍によれば、この卵から生まれるベーダー怪物は史上最強で、それゆえに生まれるまでは時間がかかるのだという。ヘドリアン女王は飽きて昼寝に入ってしまった。
甲斐甲斐しく女王の寝支度を整えるミラーとケラーが、本当に女王を慕っているのが見て取れる。
ヘドラー将軍はなんとか卵を孵化させるべく、懸命にレバーを操作するのだった。
その頃、地球では怠け者で大食漢の少年、茂が河原に寝そべりバナナを食べていた。
そこに通りかかったアスレチッククラブの子供たちは、茂を運動に誘う。
だが、茂は運動などバカバカしいとまるで興味を示さず、アスレチッククラブに通う子供たちに、体を鍛えて何になる、オリンピックの選手にでもなるつもりなのかと嘲るのだった。
アスレチッククラブの子供たちは、結局そんな茂を相手にせずに去っていく。
バナナを平らげた茂が帰路についていると、偶然、赤い花が光を放っている光景を目撃した。
光に吸い寄せられた茂は、人間が今まで見たこともないような赤い花から放たれる甘くかぐわしい香りの虜となる。幾多もの蝶がその蜜に吸い寄せられていたが、蝶はどれも動かなかった。
茂は蜜を舐め取ると、たちまちのうちにその味の虜となり、この蜜を誰にも渡すものかと考える。
だが、彼はその蜜には恐るべき毒が含まれているのだと知る由もなかった。
その頃、ベーダー魔城ではヘドラー将軍の頑張りで、ようやくベーダー怪物が孵化した。
だが、姿を現したベーダー怪物・ハチドクラーは、なんだかどうにも覇気がない。
出てきたばかりでくたびれており、座り込んだハチドクラー。
ヘドリアン女王は、こんな腑抜けがデンジマンと戦えるかと、ヘドラー将軍を珍しく叱責する。
ヘドラー将軍は、ハチドクラーに好物の餌を与えれば、見違えるほどに力がつくと弁解。
そして、その好物の餌とは、100年に1度だけ、岩の間に一輪だけ咲く深紅の花。
ヘドラー将軍は既に花を見つけており、ヘドリアン女王はミラーとケラーを回収に向かわせる。
だが、その深紅の花こそ、茂が蜜の甘さに魅了された花だった。
ベーダー魔城でそんなやり取りが行われていることなど知る由もない茂は、深紅の花を絞り、蜜を空き瓶の中に取れるだけ取り尽くす。すると、不意に茂の体内から言い知れぬ力が沸き起こった。
湧き上がる力のままに、巨木を殴りつける茂。すると、巨木はへし折れてしまった。
アスレチッククラブでは、赤城が子供たちに空手の稽古をつけていた。
一方、黄山の料理に飽きた青梅はレパートリーを増やすように文句を言い、緑川は一心不乱にトレーニングに励むなど、電子戦隊の面々は一時の平穏を思い思いに過ごしていた。
そんな中、あきらは、このところ動きを見せないベーダー一族の動向を気にしていた。
青梅はベーダー一族がデンジマンに恐れをなしたのではないかと楽観的だが、緑川はベーダー一族が陰で陰謀を巡らせていることを感じ取っていた。
アスレチッククラブから帰っていた子供たちの前に、茂が立ちはだかった。
運動が苦手なことを馬鹿にされたことを内心で恨んでいたらしい茂は、湧き上がる力のままに暴力を振るう。パトロールの途中で通りかかったチーコも、茂によって怪我を負わされてしまった。
その頃、深紅の花の在り処へ向かったミラーとケラー、ハチドクラーは、深紅の花が既に枯れ果てていることを目撃する。花の周辺では、蜜を吸った蝶が死に絶えていた。
ミラーとケラーはダストラーに、蜜泥棒の捜索を命じる。
怪我をしたチーコは、アスレチッククラブを訪れ、茂の驚異的な力について話していた。
怠け者で運動が大嫌いな少年が、急に強くなるなんて何かがおかしい。
その頃茂は、アメフトの試合に加わって、タックルを仕掛ける選手を次々に突破。
無双状態のままトライを決め、勝ち誇る茂。だが、その様子を変装したケラーが見ていた。
その頃、ベーダー魔城では、ヘドラー将軍が深紅の花を持ち帰れず、蜜泥棒も見つけられなかったダストラーたちを叱り飛ばしていた。
ハチドクラーはよほど深紅の花の蜜が恋しいのか、持ち帰った枯れた花にすがりつき、その様子に苛立ったヘドリアン女王にみっともないと叱り飛ばされる。
そこに、茂が蜜泥棒であることを突き止めたケラーが報告に現れた。
改めてミラーとケラー、ハチドクラーは茂の元へと向かうのだった。
ミラーとケラーについて行くが「俺も、行くわ…」と覇気がないハチドクラーの様子が面白い。
力を持て余した茂は、コンクリートブロックの塀を破壊するなど暴れまわる。
緑川とあきらは茂を問いただすが、緑川は茂に投げられ植え込みに頭から埋まってしまう。
クールでニヒルな緑川の、珍しいコメディチックなシーンだ。
今まで自分を馬鹿にした周囲へ仕返しをしようとする茂は、チーコと同僚が乗るパトカーの進路妨害をし、それを注意されるとなんとパトカーを引きずって河原の斜面へ押しやる。
ブレーキが効かず、チーコたちを乗せたパトカーは川に突っ込んでしまうのだった。
心なき力を振るい調子づく茂だが、ミラーとケラー、ハチドクラーが彼を尾行していた。
蜜を詰めた瓶の隠し場所へ向かう茂を、ミラーとケラーはダストラーに襲わせる。
だが、流石にゴリラ少年となった茂は強い。ダストラーも一人では投げ飛ばしてしまう。
そこでダストラーは、鎌を持って複数人で取り囲み、茂の身動きを封じた。
ハチドクラーは茂へ、胸についた巨大な蜂をけしかける。
死にたくなければ蜜を何処に隠したのか教えるように詰問された茂は、木の上に蜜を詰めた瓶を隠していることを話す。ミラーとケラーが蜜を回収に向かう中、茂の助けを求める声を聞きつけた緑川とあきらが、デンジスパークして茂を助けに向かった。
蜜を回収したミラーとケラー、ハチドクラーは一時撤退する。
そして、デンジグリーンとピンクに救われた茂は、突然苦しみ始めた。
深紅の花の蜜は、強い力を与える代わりに毒を含んでいたのだ。
茂の皮膚に、蜂の巣のような模様が浮かび、うわ言のように花の蜜と口走り続ける。
緑川とあきらは茂を病院に運んだが、医者もこんな病は見たことがなかった。
5人揃った電子戦隊。茂が毒のある蜜を吸ったことを知った電子戦隊は、茂の血液を採取し、デンジランドで分析を始める。黄山は、蜜に毒ガスの成分が検出されたことを突き止め、酸素を補給することが唯一の生存への道であることを導き出す。
あきらは急いで病院に連絡し、茂は病院で高気圧酸素療法を受けることになった。
ベーダー魔城では、ハチドクラーが深紅の花の蜜を、頭部の瓶へと蓄えていた。
すると、深紅の花の蜜の効果でハチドクラーはみるみるうちに力を発揮する。
無敵のベーダー怪物となったハチドクラーは、デモンストレーションのようにダストラーたちを蹴散らし、ベーダー魔城の壁を破壊。さらに、勢い余って柱まで壊し、城が崩壊しかける。
最初はその力に満足していたヘドリアン女王も、調子に乗るなと叱り飛ばすのだった。
無敵となったハチドクラーは怪力で人間を地獄に送るべく、街で暴れ始めた。
トラックの窓ガラスを破壊し、逃げようとしたトラックにロープを結びつけ、怪力で動けなくする。パトカーで駆けつけたチーコも、パトカーを持ち上げられ、投げ飛ばされる。
この回のチーコは茂にも襲われ、ハチドクラーにも襲われかなり不憫。
パトカーが川に突っ込んだり、投げ飛ばされてひっくり返っても無事なのが不幸中の幸いだ。
街中がパニックに陥る中、デンジマンが駆けつけた。
「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
高らかに名乗りを上げた5人の戦士と、ハチドクラーの戦いが始まった。
統率の取れた動きで襲いかかるダストラーを、デンジマンは個々の得意技で撃退する。
ハチドクラーは、巨大な蜂をけしかけデンジイエローを襲わせる。
さらに、顔の蜂の巣から砲撃を放ち、デンジマンを襲う。
デンジマンはデンジジャンプで距離を詰め、キックを決め反撃。
最後のトドメのデンジブーメランを炸裂させた。
細胞組織を組み換え巨大化したハチドクラーに対し、デンジマンもデンジタイガーを呼ぶ。
「ゴーゴーデンジタイガー」が今回も流れて嬉しい。
ハチドクラーは槍の先端から毒ガスを噴出し、デンジマンを苦しめる。
格闘戦においても凄い力でダイデンジンを圧倒するハチドクラーだが、頭の瓶にエネルギー源の深紅の花の蜜が詰まっていることを看破され、デンジボールで瓶を破壊される。
エネルギー源を失い弱ったところに、ダイデンジンの電子満月斬りが炸裂。
ハチドクラーは一刀両断されるのだった。
その頃、茂も高気圧酸素療法が功を奏し、毒の現れだった蜂の巣模様が消え無事に回復。
深紅の花の蜜の毒には持続力がなかったために、毒の効果が消えたのだという。
目を覚ました茂は何も覚えていないというが、緑川が持ってきた赤い花の花束を見て、深紅の花の蜜で死にかけたことを思い出し震えるのだった。
その後、アスレチッククラブには、努力無しに身に着けた力には必ず毒がある、上手い話には裏があるという教訓を身に着けた茂が、赤城の空手の稽古に加わっていた。
汗だくになりながら、なんとか稽古をこなす茂。
世の中、決して上手い話は転がっていない。そう、一歩一歩の努力が、明日への大きな力となり、悪との戦いを恐れぬ、デンジマンのような強い力を生むのだ。
さあ、君たちも明日に向かって飛び出そう!
ハチドクラーを孵化させるまでも一苦労、孵化してからも一苦労で、蜜を吸い尽くしてしまった茂に翻弄されて四苦八苦するベーダー一族の描写が楽しい回。
さんざ孵化するまで待たされた挙げ句、生まれてきたのが腑抜けのベーダー怪物だったことがよっぽど期待外れだったのか、あれほど重用し提言を素直に受け入れてきたヘドラー将軍のことを愚か者と叱責するヘドリアン女王も、身内には優しいだけに珍しい一面を見せていた。
とはいえ、ハチドクラーが好物を摂取すれば最強になるという弁解に素直に耳を傾けるあたりに、ヘドリアン女王のヘドラー将軍への信頼の厚さが見えるとも言える。
全く覇気がなくすぐに座り込んだり、蜜を回収できなかったにも関わらず枯れた花にいつまでもすがりつくハチドクラーも面白い個性を持ったベーダー怪物。
そんなハチドクラーが蜜の力を得ると、とたんに調子づいてベーダー魔城の壁を壊し、柱を壊してあわやベーダー魔城崩壊寸前の大事故を起こしそうになっているのも面白い。
茂も、ハチドクラーと同じように蜜の力を得るとそれを制御できないように暴れ回っていたことを思うと、単なる毒性以上に、湧き上がる力を与えることで、力を使いこなす正しい心を持たない者の身を滅ぼすことが深紅の花の蜜の真の毒性とも言えるだろう。
茂はこの経験を経て、努力をせずに身に着けた力には裏があるという教訓を得た。
上手い話には裏があるという教訓は、彼の今後の人生の財産となるはずだ。