あらすじ
ブラックサタンのサメ奇械人を追って海に飛び込んだ茂。
しかし、そこで海中戦闘員に襲われ、海の中では思い通りに体が動かず苦戦を強いられる城茂。
何とか状況を変えようと、陸に上がろうとするが…。
ブラックサタン海中要塞攻防戦!卑劣なタイタンの罠を打ち破れ!
今回のブラックサタンの奇械人はサメ奇械人。
手柄を上げてブラックサタンの大幹部になる野望を抱いているサメ奇械人は、ブラックサタンが伊勢の鳥羽湾の海底に建設した海中要塞の警備を任務としている。
海底基地の付近で漁をしていた海女のきく江がブラックサタン海底基地の秘密を知ったと思ったブラックサタンはきく江を拉致し、ブラックサタンの暗躍を追って海中要塞付近を調べていた城茂に助けを求めたきく江の息子・一郎を利用し、アジトがある鮫が島に城茂を誘き寄せる計画を実行。
伊勢を舞台に、ストロンガーとブラックサタンの攻防戦が勃発することになった。
海底基地を巡る戦いの中、サメ奇械人が得意とする水中戦で一時はストロンガーを倒したかに見えたことで、ブラックサタン大首領はサメ奇械人の上司である百目タイタンが手柄を上げたことを喜び、ジェネラルシャドウの前で生え抜きの百目タイタンを称賛しようとする。
だが、ジェネラルシャドウはストロンガーが生きていることを察知しており、恥をかかされたブラックサタン大首領はジェネラルシャドウにストロンガー抹殺を命ずる。
ジェネラルシャドウがストロンガーと決着をつけるべく決斗を挑む中、百目タイタンは卑劣な策略を巡らせてその決斗に水を指し、ストロンガー抹殺の手柄を上げようとするのだった。
生じ始めた不協和音は止むことなくブラックサタンを蝕み続ける。
果たしてストロンガーは、ジェネラルシャドウと百目タイタンを退けることが出来るのか…。
ホバークラフトが海を走る、平和な伊勢の鳥羽湾。
真珠と海女で知られたこの入り江にも、ブラックサタンの黒い魔手は密かに伸びていた。
漁をしていた海女のきく江を迎えに来た、きく江の息子の一郎は、きく江からアワビが全く顔を出さない異変を聞き、不吉なものを感じてきく江に家に帰ろうと促す。
だが、きく江はそれを聞かずに再び海に潜っていってしまった。
すると、きく江は海の底で、異常なまでに巨大な真珠貝を発見。
きく江は不漁を取り返すつもりだったのか、明らかに異常な真珠貝に不用意に近づいてしまう。
すると、貝はとたんに口を閉じ、きく江は海中で身動きが取れなくなってしまう。
きく江の異変を海上から知った一郎は、母を助けるため慌てて海へ飛び込むのだった。
その頃、不穏な気配を漂わせる鳥羽湾には、モーターボートを操る城茂の姿もあった。
例によってブラックサタンの陰謀を嗅ぎつけ、鳥羽湾を調査していた城茂は、そこできく江を発見できず、どうすることも出来ずにいた一郎と遭遇。
一郎に助けを求められた城茂は、潜水服に身を包み、海中へと向かった。
海底で城茂が見たのは、ブラックサタンが建造した海中要塞だった。
だが、その接近は基地内のブラックサタン戦闘員の知るところとなり、ブラックサタン戦闘員はきく江が誘い込まれた巨大な真珠貝の口を開く。
この真珠貝は近寄る人間に対する罠であり、海中要塞の出入り口になっていた。
真珠貝から、潜水服に身を包み出撃したブラックサタン戦闘員を発見した城茂は、きく江が行方不明になった原因がブラックサタンの陰謀であると察知する。
そして、海底の陰からは、サメ奇械人が城茂の様子を窺っていた。
ブラックサタン戦闘員は銛を突いて城茂を攻める。
さらに姿を現したサメ奇械人を発見した城茂は、水中でコイルアームを出し、変身する。
水の中で高圧放電をしたら自分も感電して危ない気もするが…。
兎にも角にも、アーク・フラッシュを迸らせ、城茂はストロンガーに変身した。
サメ奇械人を捕まえたストロンガーは、そのまま地上へとジャンプ。
得意な地上戦に持ち込むことに成功した。サメ奇械人は、ストロンガー抹殺に意気衝天。
何でも、ストロンガーを倒してブラックサタン大幹部になりたいらしい。
「ここならこっちのものだ!行くぞ、サメ奇械人!」
「黙れ!俺はお前を殺す!そしてブラックサタンの大幹部になってやるのだ!」
だが、百目タイタンを生え抜きというだけで重用する一方、ジェネラルシャドウを自ら呼び寄せ大幹部に取り立てながら余所者だと冷遇するような組織では、手柄を上げて大幹部に成り上がったとしても、所詮は成り上がり者だと冷遇されて終わりな気はする…。
とにかく、手柄を上げようと燃えるサメ奇械人の猛攻が始まった。
サメ奇械人の右腕には小さなサメの頭部があり、その牙で攻撃する「シャーク牙」がストロンガーを襲う。しかし、それを振りほどいたストロンガーは一気呵成に反撃を加えた。
このままストロンガーの勝利かと思われたその時、助けを求める一郎の悲鳴が響いた。
ブラックサタン戦闘員が一郎を捕まえ、人質にしていたのだ。
卑劣な戦術にストロンガーの気が逸れた隙をつき、サメ奇械人は反撃を開始する。
シャーク牙でストロンガーを痛めつけたサメ奇械人は、さらにサメの頭部からロケット弾を撃ち出す「シャークロケット」でストロンガーを撃ち抜き、ストロンガーは海中に没するのだった。
ブラックサタンのアジトでは、ブラックサタン大首領の高笑いが響いていた。
「でかしたぞ百目タイタン、ストロンガー殺しの賭けはお前の勝ちだ」
卑劣な人質作戦を用いるあたりで想像はついたが、サメ奇械人は百目タイタンの部下だった。
そして、ブラックサタン大首領は生え抜きの百目タイタンの部下がストロンガー抹殺に成功し、余所者のジェネラルシャドウに恥をかかせることが出来たのでこの上なく上機嫌だった。
ブラックサタン大首領が何をそこまでジェネラルシャドウを冷遇したいのかはよくわからないが、ジェネラルシャドウはここで無駄に憤ることもなく、冷静に事実を報告する。
「お言葉ですが大首領、ストロンガーはまだ死んではおりません」
「ほざくな負け犬め!ストロンガーは死んだ!俺の部下のサメ奇械人が殺したのだ!」
「黙れ!これを見ろ!」
シャドウはスペードのAのカードを百目タイタンに見せつける。
そのカードはスクリーンになっており、シャークロケットから生き延びた城茂は水中から這い上がる姿がまざまざと映し出されていた。百目タイタンもこれには言葉を失う。
百目タイタンのみならず、自らも恥をかかされたブラックサタン大首領は激しく憤り、百目タイタンを叱責。ジェネラルシャドウにストロンガー抹殺を命じる。
百目タイタンは第二の手を売っていると食い下がるが、ブラックサタン大首領も流石に百目タイタンの詰めの甘さに憤っているため耳を貸さず、ジェネラルシャドウを出撃させた。
生え抜きの大幹部としてのプライドを地に落とされた百目タイタンの怒りは頂点に達する。
その頃、ユリ子とおやじさんは、フェリーで船旅を楽しんでいた。
優雅な船旅におやじさんが満足していると、なんとそこに城茂の声が聞こえてくる。
なんと城茂が海岸からフェリーへ向けて泳いできたのだ。
ニュー美しまホテルへ向かった一行。だがその様子を、陰からタイタンが監視していた。
ユリ子が城茂から一郎親子の話を聞いていると、そこに一郎が現れた。
一郎は母親が鮫ヶ島にいることがわかったと教えられた城茂とユリ子は鮫ヶ島へ向かう。
城茂の治療のため、救急箱をホテルから借りてきたおやじさんは置いてけぼりにされてしまった。
城茂たちが乗ったボートに飛び乗ろうとして失敗し、海に転落してしまうあたりのバイタリティは素晴らしいが、ちょっと向こう見ずすぎる…。
一郎の案内で、鮫ヶ島へ到着した城茂たちの前に、ジェネラルシャドウが現れた。
決着を望むジェネラルシャドウは、きく江を探そうとする城茂の行く手を阻む。
城茂はユリ子を一郎とともに行かせ、ストロンガーに変身してジェネラルシャドウを迎え撃つ。
ストロンガーのキックとジェネラルシャドウのシャドウ剣の交錯。
ジェネラルシャドウのシャドウ剣の一撃を、ストロンガーが白刃取りして電ショックを流す反撃が決まれば、続くストロンガーの電キックを、ジェネラルシャドウはシャドウ剣で防御する。
両者譲らぬ死闘がいつ果てるともなく続く中、そこに水を差す大声が響いてきた。
百目タイタンはユリ子と一郎を捕らえ、ストロンガーに二人の命と引換えに変身を解除するように要求する。汚い手を使って決斗を邪魔する百目タイタンに怒るジェネラルシャドウ。
だが、ブラックサタン大首領の前で恥をかかされた屈辱を晴らすべく、ストロンガー抹殺の手柄をジェネラルシャドウから奪おうとする百目タイタンの言動は狂気に満ちていた。
ストロンガーは結局百目タイタンの要求を飲み、戦闘員に捕らえられる。
ストロンガー抹殺に一歩近づいた百目タイタンの目は、怪しく輝いていた。
アジトに捕らえられた城茂たち。復讐に燃える百目タイタンは、城茂には眼の前で振り子のように揺れるギロチンの刃で死の恐怖を味わわせようとし、ユリ子には中世ヨーロッパで拷問に用いられたという鉄の処女[アイアンメイデン] での処刑を行おうとしていた。
タイタンは一郎を利用して城茂たちを鮫ヶ島へと誘い込んだのである。
鉄の処女の針がユリ子に迫り、ユリ子を助けるために城茂が身を起こせばギロチンの刃が首を刎ねる。絶望するユリ子を励まし続ける城茂だが、ついに鉄の処女の扉が完全に閉じてしまった。
針に全身を貫かれたユリ子の悲鳴が響く中、ジェネラルシャドウが処刑部屋に現れる。
ジェネラルシャドウは城茂の拘束を破壊し、あくまで自分との堂々とした対決を望む。
「お前を殺すのは俺なんだ。お前は俺と戦って、死ね!」
鉄の処女の針に貫かれながらも、ユリ子はなんとか生きていた。
ジェネラルシャドウは手負いの城茂を倒すことに価値を見出さず、城茂たちを見逃す。
だが、脱出を急ぐ城茂たちは落とし穴の罠に嵌り、落ちた先には一郎親子もいた。
十重二十重の罠を仕掛けていたタイタンの高笑いが響く。
タイタンは城茂たちをさらに絶望させるために、設置していた砂時計を見せる。
この砂時計の砂が落ちきった時、アジトのある灯台は爆発してしまうのだ。
落とし穴が閉じられ、タイタンとサメ奇械人は灯台から悠々と脱出する。
城茂はストロンガーに変身して脱出を試みるが、閉じた扉は開かない。
フェリーに乗り込んだタイタンは、伊勢湾の海の上から灯台の爆発する様子を眺めようとしていた。ストロンガーとタックルが力を合わせても脱出できない中、砂時計の砂が尽きようとする。
ストロンガーは最後の手段として、自らの拳にストロンガーとタックル、二人の全エネルギーを集中する決断をする。失敗すれば自爆するかもしれない一か八かの手段。
だが、ストロンガーは一郎ときく江を戦いの巻き添えにしないために、賭けに出た。
二人の拳が重なり、全エネルギーを集中させたパンチが壁を突き破る。
こうして、灯台の爆発寸前に、ストロンガーとタックル、一郎親子は無事に脱出した。
一方、フェリーから鮫ヶ島の様子を見ていたタイタンは、灯台の爆発を確認し、今度こそ自分がストロンガー抹殺という手柄を上げ、ジェネラルシャドウに勝ったと確信する。
だが、ストロンガーに勝ったことよりも、ジェネラルシャドウとの手柄争いに勝ったことを喜んでいる時点で、タイタンは完全に戦う相手を見失っていた。
そこに、城茂の口笛が響く。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ。俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!行くぞ、タイタン!」
ストロンガーとタックルはフェリーのブラックサタンを次々に排除していく。
タイタンは百目タイタンになり、ストロンガーをフェリーから地上まで投げ飛ばすと、身体を目玉を火の玉として飛ばし攻撃。ストロンガーは倒れ伏し、倒されたかに思えた。
百目タイタンはさらにタックルに迫り、強烈な一撃を加える。
だが、ストロンガーが敗北したように見せたのは、さんざん人を騙した百目タイタンへの意趣返しだった。密かにフェリーに忍び込んだストロンガーは、油断した百目タイタンに奇襲をかける。
完全に油断したところに連続攻撃を食らった百目タイタンはグロッキーになり、さらにストロンガーのエレクトロファイヤーを頭部に直接叩き込まれて大ダメージを負う。
ついに百目タイタンの最期かと思われたその時、水中からサメ奇械人が現れた。
サメ奇械人はストロンガーを水中に引きずり込み、身体を高速回転して渦巻きを作り出す「渦巻地獄」でストロンガーの動きを封じる。
だが、ストロンガーは海底の岩を掴み、岩を抱えたまま渦巻きに巻き込まれることで、渦巻地獄の威力を逆用してサメ奇械人に岩をぶつけて体当りし、大ダメージを与える。
自らの技の威力でグロッキーのサメ奇械人はフェリーの上へと逃れるが、そこにはタックルが待ち構えていた。タックルの一撃と電波投げが炸裂し、サメ奇械人は吹っ飛ばされる。
そして、そこにストロンガー電キックが炸裂。サメ奇械人は海中に落下し爆散した。
ジェネラルシャドウの妨害に失敗し、自らの策略全てを打ち破られ、ストロンガーとの直接対決でも敗北寸前に追い込まれた百目タイタン。ジェネラルシャドウはそんな百目タイタンを嘲笑う。
「めでたしめでたし、だ…フハハハ!」
「何…?」
「ストロンガーは、俺が殺す」
「大きな口を叩くな!ストロンガーは俺が殺すのだ!」
「出来るかな、お前に…フハハハハハ…!」
一郎親子は救われ、伊勢湾に平和が戻った。
一郎親子は城茂たちに、お礼の伊勢海老をプレゼントする。
ストロンガーとタックルは、ブラックサタンの陰謀を追って次の旅に出た。
だがその頃、おやじさんは鮫ヶ島へ向かう際に置いていかれたまま、水上を漂流していた。
かくて、ストロンガーは強敵サメ奇械人を倒した。
だがその時、シャドウとタイタンは、ストロンガーを倒すべく新たな決意を固めていた。
負けるな、ストロンガー!
ブラックサタン大首領の前で恥をかかされたことで、ジェネラルシャドウを出し抜きストロンガー抹殺の手柄を上げようとした百目タイタンにより、またしてもブラックサタンはストロンガーを倒しうるジェネラルシャドウをストロンガーと戦わせることに失敗した。
もちろん、それはそもそもブラックサタン大首領がジェネラルシャドウに恥をかかせるべく、シャドウの眼の前で百目タイタンとその部下のサメ奇械人を称賛したことが原因である。
ジェネラルシャドウを手柄争いの当て馬に使うことで、百目タイタンの戦意を高めようとしたブラックサタン大首領の目論見はもはや完全に瓦解し、ストロンガー抹殺よりも、ストロンガー抹殺の手柄争いでジェネラルシャドウに勝利するため、ジェネラルシャドウの足を引っ張ることを目的に行動した百目タイタンの本末転倒な行動が今回の敗因だ。
戦う相手を完全に取り違えたことで、百目タイタンはますます追い詰められていくことになる。
幾多の戦いを経てストロンガーとタックルの連携も磨かれており、サメ奇械人を痛めつけたところにタックルが追い打ちを仕掛けることで、これまで奇械人相手には通用していなかった電波投げを、奇械人にも炸裂させることに成功している。
また、閉じ込められた灯台からの脱出もストロンガーとタックルの二人のエネルギーを集中することで成し遂げられており、ふたりで戦うからこその活躍を見せてくれているのが嬉しい。
市川治氏の声がカッコいいサメ奇械人は、手柄を上げて大幹部になりたいという上昇志向の強さを覗かせたことで印象深い奇械人。水中を得意とする怪人らしく、水中戦ではストロンガーを苦しめる実力も見事で、サメというカッコいいモチーフにふさわしい活躍を見せていた。
とはいえ、前述したように生え抜きだけが重要されるブラックサタンで成り上がりの大幹部になったところで、ブラックサタン大首領からは冷遇されるだけのような気もするが…。