「電子戦隊デンジマン」第23話「天井裏を歩く悪魔」感想

2024年8月26日月曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

青梅の友人である若松鉄夫は、2カ月以上も洗濯をせず、風呂には10日間も入らない不潔な生活を送っていた。そこに目をつけた怪物・コケラーは、若松の体で人間の美的な感覚が狂う細菌を繁殖させ、不潔な人間を奴隷としてベーダー星と同じ環境のベーダー魔境を作ろうとする。

不潔な身体を狙う悪意 世を拗ねる友の心を洗え

今回のベーダー怪物は苔の怪物であるコケラー。
人間の美的感覚を狂わせる細菌を培養し、その細菌の作用で不潔な生活を厭わなくなり、社会生活が困難となった人間たちを拉致、彼らを奴隷として働かせることで、ベーダー星と同じヘドロで汚染されたベーダー魔境を地球に建造するのを任務とするベーダー怪物だ。

そんなコケラーの標的となったのが、青梅の友人だった売れない画家、若松鉄夫。
2ヶ月以上も洗濯をせず、風呂にも10日以上入らない不潔な環境で暮らす若松だが、かつては青梅と、お互いの夢を叶えるため頑張ろうと誓いあった仲だった。
だが、青梅がベーダー一族と戦うためにサーカスを辞めたことを知った若松は、友である青梅に裏切られたと感じ、世を拗ねるようになってしまう。
果たして青梅はコケラーを倒し、若松の心を救うことが出来るのか。

ベーダー怪物・コケラーは、とあるアパートへ忍び込んでいた。
コケラーが忍び込んだ部屋は、悪臭がし、部屋の掃除も行き届いていない。
洗濯物はニヶ月放置されており、歯を磨いた跡も、風呂にも10日は入っていないようだった。
コケラーは、こうした不潔な人間を探していたのだという。

その頃、青梅はあきらとともに、あきらの似顔絵を書いた似顔絵師の下へ向かっていた。
何でも、その似顔絵師はあきらにどうしても似顔絵を書かせてほしいと頼み込んできたが、書き上がったのはあきらと似ても似つかない絵。その上、向こうから似顔絵を書かせてほしいと頼んできたにも関わらず、代金を払うように要求してきたのだという。
困ったあきらの相談を受けた青梅は、似顔絵師を懲らしめようと共に似顔絵師のいる公園へと向かったのだった。だが、なんとその似顔絵師は、青梅の旧友である若松鉄夫だった。

若松をアスレチッククラブにつれてきた青梅は、あきらの似顔絵の代金として100円を支払う。
あきらの似顔絵を書いたのが若松だと知った青梅は、先程までの憤りは嘘のように、たった100円で似顔絵を書いてもらえるなんて安いものだと言い、似顔絵をきれいな絵だと褒める。
あきらが呆れる一方、黄山は不潔な格好で体臭がキツい若松に苦い顔を見せる。
青梅はそんな若松を擁護し、懸命にもてなそうとするが、青梅が自分の知らない相手と仲良くして人生を謳歌していることを知った若松は、卑屈な目で青梅を見つめて帰ろうとする。

青梅は若松を引き止めるが、若松は青梅のような堕落者の同情はいらないと怒り始めた。
青梅と若松は、かつて若松は漫画家に、青梅はサーカスのスターになると約束し合い、どんなに貧乏をしても女性に目もくれず頑張ろうと励ましあった過去があった。
だが、今の青梅はサーカスを辞め、あきらと仲良くしていることが若松には許せない。
貧乏画家を抜け出せない若松は、すっかり卑屈な性格となっており、仲間とともに充実した生活を送っている青梅への嫉妬や羨望が爆発してしまうのだった。
自分と一緒に貧乏をしているときならアンパン一個でも喜んでもらうが、すっかり充実し、自分よりも恵まれた生活をしている青梅からの同情、哀れみはもらいたくない。
世を拗ね、自分より恵まれた人間を許せない卑屈さが爆発した若松は去っていくのだった。
残された青梅は、若松は夢を叶えるため頑張っていた頃と何も変わっていないと強がり、笑顔を見せるが、旧友に拒絶されたことにはショックを隠しきれずいた。
青梅は若松を励ますため、あきらにもう一度絵のモデルになってもらえるように頼む。

アパートの部屋に戻った若松。その部屋は、冒頭にコケラーが忍び込んだあの部屋だった。
コケラーが目をつけた部屋の主は若松だったのだ。
布団に横たわり、青梅への失望を叫ぶ若松は、天井から苔が広がっていくのを目撃する。
やがて、苔は巨大な膜となって若松の身体を包み込み、苦しむ若松は意識を失う。
その苔こそ、コケラーが化けたものだった。コケラーはそのまま若松を拉致しようとする。
だがそこに、あきらが若松の部屋を訪ねてきた。コケラーは押し入れに身を隠す。

青梅の願いを受け部屋を訪ねたあきらの腕に、若松が手を触れる。
すると、あきらの腕に苔が広がり始めた。
若松は前後不覚のまま、あきらに迫る。あきらの悲鳴を聞いた青梅が駆けつけ、若松を止めようとするが、若松は暴れ出し、青梅は床に叩きつけられた。
その一瞬の隙をつき、若松は壁を突き破って待機していたゴミ収集トラックの荷台に落下。
さらに、コケラーもそこに合流すると、トラックは走り去ってしまう。

ベーダー魔城では、ヘドラー将軍がヘドリアン女王に、コケラーが進める、「人類ベーダー奴隷化実験」のモルモット作りの進捗を報告していた。
近頃の人間は中流階級の生活をしているものが多く、ベーダーの奴隷にふさわしいような汚染された環境に適した人間が多いことに意外そうな表情を見せるヘドリアン女王。
ヘドラー将軍は、いつの世にも不健康で不潔な生活を余儀なくさせられている者はいるものだとほくそ笑み、モルモットの数が揃い次第、第二段階の実験に移ろうとする。

アスレチッククラブに戻ったあきらは、自分に襲いかかった若松に怒り心頭。
青梅は必死に若松を弁護するが、赤城も生活が荒れると心も荒むものだと語る。
それでもなお、若松はボロを着ていても心は錦、そういう心意気の男だと若松を信じる青梅。
そこに、チーコたちが現れた。
なんでもこのところ、怪しい男達による妙な事件が立て続けに起こっているのだという。
不潔な格好をした男たちが、次々に植木鉢を破壊したり、道行く人の着物を汚染。
チーコたちも、怪しい男に突然組み付かれ、制服に苔が付着したのだという。
青梅はその話を聞き、若松があきらの腕を掴んだときと同じ現象が怒っていることに気づく。

洋品店を男が襲い、店を訪ねていた人々の衣服を汚染した。
通りかかった青梅に追われた男は、川へ逃げ込むと今度はゴミを水の中へ投げ入れる。
そんな男を追い続ける青梅だが、突然銃声が響き、男が撃たれて倒れた。
銃声の先にはコケラーがおり、青梅はこの事件の背後にベーダー一族がいた事を知る。
コケラーの口から、地球をベーダー化する計画が進行しつつあることを知った青梅は、若松もその計画の一部となっていることを知り、若松を助けるべく、コケラーを追う。

青梅はデンジブルーにデンジスパークし、コケラーと戦う。
スクリューキックでコケラーにダメージを与えたデンジブルーだが、コケラーは「ゴミ嵐」で煙幕を張り、姿を消して逃亡した。だが、青梅は自分の体に付着した苔に気づく。
青梅が持ち帰った苔を分析した黄山は、その苔の中の細菌が地球にはないものだと解析。
この細菌は、人間の美的感覚を鈍らせて、美しいものや綺麗なものへの憎しみを掻き立てる。
若松はこの細菌に侵されたことであきらへの憎しみを掻き立てられたのだ。
さらに、この細菌は人間の体温と不潔な環境で最も作用する。
そのため、ベーダーは若松のようにボロアパートで食うや食わざるやの生活をし、不潔な環境での生活を余儀なくさせられている人間を狙い、拉致して奴隷に変えていたのだ。

その頃、ヘドラー将軍は、地球にベーダー星とそっくりの環境であるベーダー魔境を建設。
人間奴隷化計画の舞台にするため建設されたベーダー魔境で、コケラーによって細菌を植え付けられた人間たちは昼夜問わず働かされ、労働力とされていた。
このままでは、ベーダー奴隷とされた人間たちの手でベーダー魔境が拡大してしまう。

電子戦隊の面々は、コケラーを誘き出すために一計を案じた。
監視下の元で、変装した青梅に4畳半のボロアパートで不潔な生活を送らせ、新たなベーダー奴隷候補の人間を探しているコケラーを誘き出そうというのだ。
青梅がいい加減、不潔な生活に辟易していると、突然横たわっていた床がどんでん返しで回転。
下層に落ちた青梅に、コケラーの巨大な苔が覆いかぶさった。
部屋の様子を監視していた赤城たちも、眠っている青梅に動きがなく、青梅がそんなに寝相が良いはずがないと異変に気づいて部屋へと向かうが、既に部屋はもぬけの殻だった。

ベーダー城では、コケラーが新たに連行した奴隷を見てヘドリアン女王がほくそ笑んでいた。
ヘドラー将軍は、さらに面白い趣向を用意しているのだという。
ベーダー魔境で奴隷へ指示を飛ばしていたコケラーは、ベーダー魔境の拡大のために、ベーダー奴隷たちを死の危険があるガスが充満する地点へと向かわせようとする。
人の命を使い潰す残酷な趣向に、満足した笑みを浮かべるヘドリアン女王。
そして、コケラーがその残酷な任務に選んだのは、若松だった。

完全に自我を奪われた若松は、青梅の目の前で死のガスが充満する地点へ向かっていく。
たまらず若松を救出へ向かった青梅を、ダストラーたちが襲った。
コケラーは青梅の変装こそ見抜いていたが、自分の細菌で青梅の自我を奪ったものだと思っていた。しかし、青梅は黄山が細菌を研究して作り出した免疫を打ち、自我を保っていたのだ。

青梅はデンジブルーにデンジスパーク。
その様子をベーダー城から見ていたヘドリアン女王たちは驚愕し、ベーダー魔境まで乗り込んできたデンジブルーにベーダー魔境の恐ろしさを見せるように命じる。
コケラーの念力で、ベーダー魔境のゴミが宙を飛び、デンジブルーを襲った。
デンジブルーは通信で助けを呼ぶが、ベーダー魔境の妨害電波がそれを阻む。
しかし、デンジブルーは隙をついて妨害電波発生装置をコケラーの手から弾き飛ばす。
デンジブルーの反応をキャッチし、電子戦隊の仲間はデンジタイガーで出動した。

ベーダー魔境上空に飛来したデンジタイガーは、デンジシャワーを発射。
デンジシャワーによって体表から細菌を洗い流したことで、ベーダー奴隷となった人々は正気に戻る。デンジブルーから逃げるように促された若松は、その声で青梅がサーカスのスターになるという夢の代わりに、人々のために戦っていることを知るのだった。
5人揃ったデンジマンは、高らかに名乗りを上げる。

「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
デンジマンとベーダー一族の一大決戦が始まった。
デンジブルーは果敢にコケラーに飛びかかり、ヘビのような動きのブルースネークでコケラーを痛めつける。反撃のゴミ嵐を浴びてしまうデンジブルーだが、そこにデンジレッドが真空蹴りで助けに入った。デンジレッドのデンジパンチが叩き込まれる。
コケラーは槍を振り回し、爆発を起こしてデンジマンを襲うが、デンジマンは必殺の電子稲妻落としを決め、コケラーを打ち破った。

だが、コケラーは巨大化。デンジマンも、デンジタイガーからデンジファイターを出動させ、デンジファイターはダイデンジンに変形する。
ダイデンジンはコケラーの槍を真剣白刃取りで受け止め、デンジボールで痛めつける。
そして、最後のトドメの電子満月斬りを決め、コケラーを打ち倒すのだった。

戦いは終わり、若松は卑屈な心をもデンジシャワーで洗い流されたのか、青梅へと謝罪。
青梅と若松は和解し、青梅は夢を諦めざるを得なかった自分の代わりに夢を叶えるように若松を励ますのだった。あきらも、そんな若松にパンを差し出し、彼の前途に幸有るように祈る。
青梅と若松が旧交を温めていると、青梅の服もいつしかボロになってしまうのだった。
若者の夢を踏み躙るベーダーの陰謀は、デンジマンの怒りの一撃で粉砕された。
明日に夢を繋げる世界を守れ!戦え!われらのデンジマン!

ヘドリアン女王すら、今は中流階級の人間が多いと思っているように、日本は平均的には豊かな国になった。だが一方で、いつの世も経済格差はつきものであり、貧困の中にある者が、自分以外の要因に原因を求める他責思考で、社会や恵まれた境遇の他者への憎しみを募らせることも多い。
令和の今、SNSの普及で誰もが容易に自分の考えを発信することが可能になった。
だが、その技術の発展がもたらしたのは、困窮の中にある者が、社会や自分より恵まれた他者へ募らせた憎しみを発信、それが多くの人の共感や反発を呼び、発信者の憎しみがより加速するという、憎しみの発信が憎しみをさらに増幅するエコーチェンバー現象である。

自分の生き方を顧みて、より良く生きるために自分の行動に自分で責任を取る生き方は容易ではない。だが一方で、社会や自分より恵まれた境遇の他者を憎んでも、何も解決しないのも事実だ。
サーカスを辞め夢を諦めながら、仲間に恵まれて充実して生きる青梅の姿が、夢に生きようとして困窮する若松にとっては裏切りであり、羨望と憎しみを感じるものだったことは想像に難くない。
世を拗ね、青梅への心を閉ざしてベーダー奴隷になった若松には、それでも彼を気にかけて励まそうとする青梅が友人として側におり、それによってベーダーから救われた。
本当に自分の困窮から救われたいなら、社会や恵まれた他者への憎しみによってSNSで繋がった「同士」ではなく、本当にお互いを気にかける「友人」が必要だということだろう。

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